MISSING PARTS3 the TANTEI stories(ドリームキャスト)
 FOGが送る、本格推理探偵ADV第三弾。
 「ドリームキャスト最後のオリジナルタイトルか?」とまで言われた本作…はたしてシリーズをきれいに締めることが出来ただろうか?


1.メーカー名:F・O・G
2.ジャンル:移動型ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:ある意味いやらしい展開ではあるけど、意味が違うもんねえ
5.オススメ度:前作クリア経験者はA。ただし、旧作未経験者には激E(理由は後述)
6.攻略難易度:激A
7.その他:今回もセーブポイント不足に悩まされる事必至。ビジュアルメモリを複数用意したいところ。


(ストーリー)
 主人公・真神恭介は、とある事情から鳴海探偵事務所に勤める事になった唯一の探偵で、しかもまだ新米。
 さらに所長代理の鳴海京香は、行方不明の所長であり父親の誠司に代わって経営しているだけで、探偵としての経験も技量もほとんどない。
 そんな状況のため、ほとんど仕事の依頼もこないのだが、それでもなんとかやりくりを続ける毎日であった。
 しかし、恭介はひょんな事から知り合ったアンティークショップ“セクンドゥム”の主人・月嶋成美の元でも働くハメになる。
 探偵と、アンティークショップの雑用係(実際は成美の下僕)という二足草鞋を履く事になった恭介の運命は如何に?! 
 (以上、『MISSING PARTS』レビューより引用)


第5話【迷いの懐中時計】
 “ストーリー解説は省略します”

第6話【追憶のペンダント】
 “ストーリー解説は省略します”

 2003年8月某日――

後藤夕貴(以下、夕) 「…終わったね…」
中島茜(以下、茜) 「終わりましたね…ついに」
「なんつーか…こう、色々と言いたい事はあるんだけど…うまく言葉がまとまらんわ」
「わかります、わかりますよ元締。
 だけど、とりあえず今はレビューに入るより先に、前作前々作レビューへのナビゲートをしなくては」
「そ、そうね…。
 それに、このタイトルのレビューだけはなぜか対話形式だって事も、最初に言っておかないとね」
「そーそー。性懲りもなく三回目ですからね☆
 …って元締。今回は最初っから私がここに居る事について、疑問はないんですか?
 せっかく劇的な登場シーンを考えて来たってのに」
「一体ナニを企んでいたのかすげー興味あるんだけど、今回はそんな事意識してるゆとりないのよ。
 それに第一、放っといたって俺がミッシングパーツ解けば湧いて出てくるんだし、もういちいち説明するのもめんどくさいよ」
「あ、ひっどーい!(怒)」
「というよりな。今回はとてもそんなおちゃらけから始める気分じゃないのよ。わかるでしょ?」
「あ、ああ…それは確かに。って、すでに充分おちゃらけてるんですけど(笑)。
 でも、だから今回に限っては、各話ストーリー解説がカットされているんですね?」
「今回は、2つともかなりショッキングな展開だったからねえ。
 いつもはあまりネタバレ意識しないようにしている自分でも、今度ばかりはネタバレ避けなきゃならんって気持ちが働いてさ。
 5話くらいだったら、ホントはまだ核心の導入部に過ぎないから、やっても平気なんだけどね」
「でも、それぞれの真犯人について語らなきゃならない部分は一杯あるでしょ?
 特に今回は、これについて衝撃の事実が判明するんですから…どーするんです?」
「色々悩んだ結果、今回は本文内では核心部のネタバレは極力避けて、ヤバイ部分は別ページにする事にしたよ」
「なるほど。
 …でも、本文でもまったくネタバレナシ…という訳にはいかないんですよね」
「必然的にそうなる。
 だから一応いつもの雄叫びは必要やね。
 おい、茜ちん。いっちょ頼むや」
「人をペンギン村の不良娘みたいに言わないでくださいよ、もう!
 では…

 今回もネタバレが含まれていますので、
 プレイ中・購入予定の人はくれぐれもご注意を!!
「おっと、実は今回はこれもあるんだ。
 こいつも読んでくれ」
「え? なんですかこのメモ…?
 え〜と、

 なお、このページで扱っているタイトルの性質上、
 本文の中には『MISSING PARTS1』および『同・2』の
 真犯人名称・ネタバレ
が連呼されておりますので、
 こちらについてもプレイ&購入予定のある方はお気を付けください!


 …あ、そか。なるほど」
「今回、威や多々良の事を避けて話を進めるのなんか、絶対に無理だからね」
「…そこ、断り入れたからっていきなり言わないの!(怒)」
【第5話 迷いの懐中時計】
「で、シリーズ最終作前半部ともいえる5話なんですが、これについては、もう語るべき部分が1箇所に集約されてしまいますね」
「まあ…ね。否定しない。
 事件そのものの印象が、最後のアレで一気に塗り潰されてしまうから…」
「なんか、前回のレビューもいきなりラストの展開に触れまくって始まりましたが、今回はそうするなって方が無理でしょ」
「だろうさ。おいらみたいに、あの衝撃の事実に唖然茫然としてしまった人は多い筈だよ。良い意味でも悪い意味でも」
「では、早速隔離ページ…いきますか?」
「仕方ないよね。
 では…」
第5話 衝撃のラストの展開と真犯人について
「さて、では核心部の話は避けたので…概要から行きましょうか」
「5話は、これまでの4話とほとんど同じような始まり方で、事件も、部分的にトンデモな展開はあるもののいたって普通の流し方だったね。
 あまりにも変化に乏しいように見えるから、“ホントにこれ完結編の手前なの?”と疑いたくなったのだが…って、あれれ。
 結局“最後にどんでん返しが”という事にまとまっちゃうなあ、どうしても」
「うーむ、話題がループしちゃうんで軌道修正しますが、私は、事件と同時進行で“鳴海所長の行方と失踪の理由の模索”と“謎の組織の正体究明”という謎解きを並行させていた事に、感動しましたね。
 結局所長は6話にならないと帰っては来ませんが、この地道な情報収集と考察、いかにも全体が“推理している”という感じで面白かったです」
「確かにね。
 でも、自分は所長の資料整理と情報のピックアップでかなり混乱した人だったり(笑)。
 かろうじて、どのファイルにどの内容があるかは覚えたんだけど、その関連を決定するのには疲れた。
 メモしときゃ良かったよ」
「しなかったんですか!
 あれ、自力でメモしとくとかなりわかりやすいですよ。
 ああいう風に、プレイヤーが努力すればそれに見合った結果に辿りつく、という基本スタイルはかなりツボでした」
「そうだね。MとかGとかの件については、プレイヤーは推測しかできないから、キャラクターが大まかに推理を進めてくれるし。
 意外に謎解きそのものは難しくなかったようにも感じる。…終わった後の印象論だけどね」
「そうですか? 整理後の情報統合には結構苦労したように思いますよ?
 もっとも、それは前作から時間が経っていて記憶がぼけていたからだというのもありますが」
「前作が2002年10月頃のプレイだった記憶があるから…今回はだいたい10ヶ月空いたのか。
 前回のレビューで“春頃の予定”なんて言ってたのが懐かしいなあ(笑)」
「時間が経ちすぎていたもんだから、前作までに公開された情報…青島組や友凛病院なんかの事、一部思い出すのに手間かかりましたよ」
「わかるわかる。今回からは、今まで以上に情報戦的意味合いが強まったからね。
 主人公が直接関わったわけではない青島組や、大門寺局長、鷹野財務局長の事とかは、把握するのも難しかったわけだけど」
「こういう所も、メモするべきだったかもしれませんね。
 人間関係表みたいのをテキトウに描いていくと、突然わかりやすくなります。
 そういう推理も必要だよ、という遠回しな含みもあったんでしょうかね?」
「どうなんだろね。
 自分みたいに、あまりメモ取らない人間にはとにかくこの辺難しいかも。
 どうしても腑に落ちないところは、思いきって過去の2作品引っ張り出すくらいの気概があった方がいいのかも」
「過去2作で思い出しましたが、今回のパッケージコピー…大嘘でしたね(笑)」
「そのソフトだけでも楽しめます…ってやつね。
 ああ、確かにこれ以上ないってくらいの大嘘だったわ(大笑)
「それどころか、前4話分の断片情報を正確に思い出して推理する所が各所にありますからね。
 素敵なほどに“一見さんお断り”ソフトと云えましょう(笑)」
「とにかく、今までの3タイトルの中でもっともプレイヤーの知力と推理力、そして記憶力と注意力を求められるのは間違いないね。
 そのあり方は、多少どうかと思う部分もあるけれど…」
「でも、5話はまだいいですよ。
 タクシー運転手殺害から公安殺害までの流れ、そして情報としてだけ流れてくる警官殺し…
 この辺りの展開は、やっぱりわくわくしますね」
「なんかそれだけ聞いてると、他人の不幸で喜んでいるかのように感じるから不思議だ(笑)」
「ちょっと、そりゃひどい(笑)。
 まあ、この作品は結局6話が要なんですが、いつものような事件の雰囲気を残した5話を、うまく布石として昇華させたという姿勢は評価したいですね」
「それは同感…だが」
「…あれ、ひょっとしてまた誰かに文句でも?
 前回奈々子叩いた事、読者さんにとっては結構不評だったみたいですけど?」
「おう安心しろ。全部終わらせた今でも、あいつはやっぱり不要だったとしか思えないぞ。
 だが、今回言いたい事はそれじゃない。
 前回危惧していた事の一つが、見事に的中した事が辛くってね…」
「前回?
(…と云いつつ、ネットに接続して前回のレビューを見る)」
「次回、主人公がメインの位置に来るだろう事は当然と考えて…メインヒロインって、やっぱり京香や成美になるのかな?」
「言えてるな。すでに、今回はかなりこの二人の使い方に苦労したらしき痕跡が見えるからね。
京香なんか、いなかったとしても成り立ってしまうかのようで…」
……これ、か……
「どー思う?
 俺、今度ばかりは京香に呆れたよ。
 まさかここまで本格的な“役立たず”だとは思わなかった!
 これなら、時々核心を突いてくる奈々子の方がまた役に立つんじゃないか?!」
「くわっ、そこまで言いますか?!
 元締的には、前回の暴言以上の問題発言では?!」
「いや、まったく居なくてもいいとは言わないよ。
 ラストで、▼○×□■×●▽たのは、京香が居たおかげなんだし」
「あ〜、やばいやばい。やばいところに触れちゃってるよ。
 さっきわざわざ隔離したのに…」
「しかし、それは別に、この話で京香が何か活躍した結果発生した要素ではないんだよね。
 極論を言えば、“ただ京香がいれば”それだけで片付く事だ。
 この話の中で、京香はろくな事してないじゃん。
 また“探偵業はズブの素人”って事にも益々拍車かかっちゃっただけだし、あまつさえそれを依頼人の前でやってしまっている。
 …あえて言おう。今回はタダのお荷物以外の何モノでもなかったと!!」
「うわっ、言っちゃった!
 全国3億人の京香ファンを敵に回したよ、この人!」
「どこでどういうリサーチしてその数字を出したのか、激しく追及したいが」
「元締はそう言いますけど、私はやっぱり京香は必要だったと思いますよ。
 よくあるじゃないですか、その人がそこにいるだけで周りが動いてくれる…ってタイプ。
 彼女はそういう位置付けにいる事が、最初から定められていたキャラクターだったんじゃないかと考えますが」
「それはわかっているんだって。それだけの器や裏付けがあるキャラだったならね、納得はしたんだけど、そうじゃなかったじゃん」
「そう言われても〜(泣)。
 まあでも、言いたい事は少しだけならわかりますよ。
 存在意義についてはともかくとしても、“うまく使えていたか”と言われると、ちょっと辛いようには思う所もあります」
「だろ〜?
 たとえ一瞬でもいいんだ。なんか『おっ』と思わせる行動があればね。
 6話の話になるが、成美だって、ああいう状態だったにも関わらず日中に外へ飛び出して主人公を引き止めているだろ。
 ああいう“目を引く”シーンって印象に残りやすいし、掛け値なしに良い場面になるけれど、京香の場合目を引くシーンったって、『事件現場でうれし泣き』くらいじゃん。
 まして、それって極度のファザコンから来ているだけの事でしょ?
 結果的には意味のあった場面かもわからんけど、すっごく薄っぺらい気がするよ」
「薄っぺら…そこまで言うか、この人…」
「では、茜ちんにクエスチョン。京香がメインの場面で、記憶にしっかり残っている場面を他に思い浮かべてみよう。
 ややこしくなるといけないから、5話に限定して」
「え〜と…

>1. 最初の殺人現場から懐中時計を拾って、それをわざとらしく隠し続けていた。
>2. 上同・現場状況の報告をいつわっていた。
>3. 今回のメインヒロイン(おい)・皐月ちゃんと2人で一日お散歩していた。<実は調査
>4. 無理して体調を崩した。
>5. 成美に対して一人で怒っていた。または面倒を見ていた。
>6. 成美と仲が悪くなった原因を、恭介に説明した。
>7. 所長が犯人でないと判明して、泣いた。

 ……ふはっ!
「そんなものだろ?
 つまりはそういう事だ」
「ううっ、で、ですが…。
 ……だ、駄目だ。あらがおうにもその材料が見当たらない(悶死)」
「真面目に話せば、最後くらい“探偵”としての活躍が欲しかったんだよね。
 もちろん、それ以外でもいいけど“主人公や所長などではなく、京香でなければできない事”って意味で。
 どうもFOGのゲームの場合、女性キャラは事件や物語そのものに対して関わり方が控え目に描かれててしまう傾向があるんだけど、京香は仮にも鳴海探偵事務所の所長代理なんだから、それなりの事をしていただかなくてはならんのに…これって問題があるんじゃないかと思う訳だ」
「でも、京香の記憶や思わぬ言葉で、所長についての情報が次々に表面化するっていう事実もあるんですが…」
「それって、所長出てきたら全部終わりじゃん」
「…ぐげっ。そ、それを言われると…」
「思わぬ発言が飛び出て慌てましたが、それでは事件そのものはどうでしょう?」
「真犯人とその裏付けについては別ページですでに語ったからいいとして…。
 今回のはシリーズ最後の不可解連続殺人だったわけだけど、やっぱり3話の密度には劣っていたかな。
 事件そのものがあまり特徴的じゃない気がして、印象に残らない。
 まあ、そもそもこの事件は奇異性がにじみ出るような性質じゃないから、別にいいんだけど。
 公安の死体で、多少それっぽい雰囲気作ろうとしていた気配はあったが」
「それについては自分も同感です。
 やっぱり、3話が最強でしたからね」
「もっとも、5話は発生した事件だけを追いかければいいというモノではなかったから、これでいいんだと思う。
 これ以上濃厚で、かつ不可解さ溢れる猟奇色バリバリの事件だったら、かえって困惑していた」
「三流のアダルト探偵物ADVだと、そういう方向に流れやすいですよね(笑)」
「そうそう。
 だから、今回みたいに“事件を起こした理由”がしっかりしていて、それに伴うレベルがキープされて進行していたというのは、大変良い事だと思う」
「その辺、安心してプレイできるのが最大の魅力ですよ。
 先の例ではないですが、練り込みが足りないシナリオやシナリオライターの思いつきで進展していくダサ系ADVだと、一時的に良い展開になっても最後まで気が抜けませんからね。
 まったく別な意味で(笑)」
「そう。FOGのシナリオに対する信頼感みたいなものは確かにあるんだよね」
「ですが、私ちょっと疑問に思う事がありまして」
「あれ、まだ誰か納得のいかない事でもしでかしてたっけ?」
「違いますよ!(笑)
 この殺人事件に対して、なんかすっごく納得のいかない事があったんです。
 最初の運転手殺しと、警官殺しはまあいいとして、あの公安の奈良垣の死体遺棄…どうしても納得できないんです」
「えと、何かおかしな事でも?」
「あの公安・奈良垣の遺棄死体の死臭、防空壕の外にまで漂っていたんですよね?」
「そうだよ? 発見のきっかけみたいなものだからね。
 でも、それが何か…」
「ここからは、かなりグロい話になるんですが。
 実は私が持っている“検死官の記録”の本の中に、これとよく似たケースで発見された死体の話があったんです。
 当たり前ですが、実際に起こった事件の記録です。
 それによると、時期は真夏。
 死体はジュラルミンのトランクに入れられていて、鍵を掛けられている。
 六畳間アパートの床下に隠されていたトランクから発見されたという経緯だったんですが、死後20日間放置されていたという事で、もうすんごいぐっちょんべろりな状態だったらしいんです
「…ふむふむ」
で、閉ざされた室内は腐敗臭充満で、死体は年齢はおろか性別もわからないくらい“真っ黒”になっていて。
 人間の死体って、ある程度以上腐敗すると黒ずんでくるらしいですね。
 発見した時には、腐敗した液がリアルで噴き出していて、もうとんでもない状態だったらしいんです
「ぐげげっ…。食事中に読みたくないなぁ」
「何が言いたいかというと、環境がまるで違うとはいえ、おそらく先の例でアパート内に充満していたのとある程度以上同じレベルの“腐敗”じゃないと、周囲にそれとわかる臭いが漂うとはちょっと考えづらいんです」
「確かに状況においては一日から二日で腐敗は充分始まるし、腐敗汁もそれくらいで発生するね」
「とにかく、防空壕跡の一番奥という、気温が少し高めの時期でも比較的涼しげと考えられる場所に遺棄された“トランク入りの死体”は、いったいどれくらいの間あそこに置かれていたんだろうか? という疑問がつきまとっていまして」
「そう? 他には何かある?」
「ここで、公安・奈良垣の失踪を巡った状況を考えてみると、かなりおかしな所がありまして。

 まず、奈良垣はいつ殺されてあそこに遺棄されたのか?
 そして彼の失踪に警察側が気付いて、掛井警視が派遣される事が決定したのはいつなのか?
 15日夜、上遠羽でタクシーに乗った犯人は、何のためにその日現場へ行ったのか?
 すでに以前殺されて、現場付近に転がされていた奈良垣の死体を再び隠し直すために再度現場に行ったというなら、なぜ最初の段階で遺棄しなかったのか?
 再遺棄のためにトランクをわざわざ調達に行ったとするなら、その後、証拠隠滅のために起こした殺人事件はあまりに間抜けではないか?

 …ほぉら、出てくる出てくる疑問の山♪」
「どうも15日の時点で奈良垣が音信不通になっているらしい…という情報があったと思ったから、それより以前に殺されたとはちょっと考え辛いという背景もあるね。
 奈良垣殺害については、警察上層部自体が内訳を知っているという事実があるから、ある程度の情報隠蔽・操作はできると思う」
「多分、腐敗臭でもさせておかないと恭介達が死体に気付いてくれないかも…という気持ちもあったんじゃないかとは思うんですけどね。演出の都合って奴ですか。
 だけど、考えてみればあんな所に突然“防空壕跡”なんていう『ほーら、いかにも何かありげでしょ?』ってな環境が出現する訳ですから、その結末として、新鮮ピチピチの死体が発見されたって別におかしくはないでしょう。気付かせるための演出とするにはどうも…」
「死体を、魚介類か何かみたいに表現するのはやめてくれよぉ(泣)。
 思わずイケスではね回る死体の群れ想像しちゃったじゃないか〜!!」
「…その発想の方が相当エグい…
 でも、どうですか、この辺については?」
「じゃあ、ちょっとだけ反論ね。
 実は…こういう展開、実はそんなに不自然じゃなかったりするんだ
「ええっ?!」
「いや、実は自分もこの部分気になって調べたんだけど、よくよく考えたらこういう考え方もある。
1. 防空壕の入り口から臭いが漂うという事は、その流れ方にある程度の指向性が発生していたという可能性。
2. 防空壕の深さ・形状によっては、必ずしも冷暗所になりうるとは限らない
大気循環状況や地熱の影響などによって、かえって蒸し暑い可能性もある。
3. トランクが隠されていた草自体が対象を蒸し上げるような暖房効果を発生させていた可能性」
「……ああ、なるほど!
 つまり、野外に放置されているよりも保存状態が悪くなる可能性もあるという事ですか?」
「例えば、普通に亡くなった仏さんを布団に寝かせておくだけでも、2日も経てば死臭が出てくる。
 もちろん環境にもよるが、“室温”“換気状況”“布団内の温度・湿度”の差によって、意外に短時間で傷みが出てくる可能性はあるし、逆に結構長く持つ事も考えられるよ。
 また、野外なら臭いは拡散するだろうけど、防空壕っていわば奥の詰まった筒みたいな形状だからね。
 臭いは拡散せず、特定方向へとまとまって流れていくだろうから、余計はっきりするだろうね」
「…トランクという不確定要素はありますが、それを除いて考えたとしても、あまりよろしくない状態でしたか」
「本当にそうなるかどうかは、実物用意してシミュレーションしない限り解らない訳だが(笑)」
「さりげなく恐ろしい事言わないでくださいよ、もう!
 けど、上記可能性の3はちょっと納得できないですね。
 草ったって、多分実際はカサカサなんじゃないですか? 通気性とか良さそうに思えますが」
「いや、それが実際はそうでもないんだ。
 実際に枯れ草の束の中に包まれた事があるとよくわかるんだが、あれってすっごく暑いんだよ
 草の隙間の空気が外に逃げにくくなっている上に体温や地熱で暖められるから、すぐに温度が上昇した上にそれがキープされる。
 今回の場合、ケース内の死体からの温度は遮られていたと考えられるけど、地熱があっただろうからね。
 相当なものだったと思うよ」
「…な、なんでそんな事知ってるんですか?! 元締ってば(笑)。
 でも、なるほど。そう考えていくと、短時間で腐敗臭が発生するという事も充分考えられる訳ですか」
「もちろん、ここまで検証した上でああいう設定にしているかどうかは知らないよ。
 ちなみに、夏場だとアパートの中の死体は2〜3日で蛆虫が発生。部屋の外にも“生ものが腐っている”ような臭いがしてくるそうだ」
「しまった…言いくるめられてしまった(笑)。
 そう考えると、掛井警視が派遣されてくるまでの時間が妙に短いというのとも、繋がるんですね?」
「そう。なんとなく、事実判明から辞令が下りるまでに時間がかかりそうなイメージがあるけど、必ずしもそうではないようだね。
 奈良垣は定時連絡を入れていたのに、15日夜からそれが途切れたらしいというのは、森川の言葉から推察できる。
 公安は、その任務の重要性・危険性から、その行動などについて上から入念な警戒が成されていた可能性が高い。つーか、まず間違いなくそうだ。
 だとすると、その連絡が途切れた瞬間に大急ぎで対策が講じられ、その結果妙に迅速に掛井が動いたという可能性は否定できない。
 掛井が奈良垣の顔を知っているというのも、関係しているだろうし」
「なるほど、だとするとやっぱりその点についてはさほど重大な問題にはならないんですね。
 ――でも、実はそれだけじゃないんですよ。他にも疑問点がありまして。
 そもそも奈良垣は、なんであんな場所に呼び出されたんでしょう?」
「一応理由付けはあったね。
 さっき隔離した例のアレに抵触するから、ここでははっきり書けないが…」
「もし15日夜に奈良垣が殺されたのだとしたら、いくら前の事件をネタに誘い出したとはいえ、どうして無防備にあんな所へ出向いてしまったんでしょう?
 呼び出しは罠だったわけなんですから、現場付近には誰も居ないという状況だった筈…普通ならその時点で異変を感じるでしょうに。
 それとも奈良垣自身は、それを異変と実感できるような状況にまだいなかったという事なんでしょうか?」
「そっか。言われてみれば…。
 ああいう呼び出し方されたんなら、普通は他にも何人か警察関係者がいると考えるのが普通だもんな」
「まあ、奈良垣が異変に気付くより先に攻撃を受けた、と考える方が建設的なのはわかりますけどね。
 それより、運転手殺しの時は凶器を残さなかったのに、どうして警官殺しの時は凶器を現場に捨てていったんでしょう?」
「あ〜、それは俺も思った。
 深く触れられていなかったからあえて流したんだけど、あれって何だったんだろう?」
「う〜ん、ちょっと良くは…
 なぜか物的証拠として重要視されていないのも気になりましたが…なんといいますか、これはひょっとして“状況証拠が適当に扱われている”という事で、警察の、事件に対する違和感を匂わせるという意図だった…とか?」
「ううむ…とにかく、違和感に対するフォローが薄かったというのは事実かな、と思う。
 この辺は深く考えないでスルーした人もいただろうけど、元々“深く考察させる”事が目的の作品だからね。
 こういう些細な事で、まったく違う推理が働いてしまう可能性だってあるわけだ。
 でも、それって“わざと推理の方向性をズラさせる”というのとは違う気もするんだよね」
「ミスリーディングを狙った仕掛けの場合、最終的な答えがわかってしまった後で再検分すると、その意図が理解できたりするものなんだけど、ここはそれでも違和感しか残らない部分ですからねー」
「ま、こういう事もある…という事だろうさ。
 決して話そのものが面白くなかったわけではないからね。
 …ただ、実はこの辺りの問題で、犯人選定を間違えた身としては、やっぱクヤシイと(笑)」
「うむ、私怨でしたか」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさ(泣)」
「そういえば、比較的始めの方で突然暴走しだした成美さんの事についてはほとんど触れていませんが、これは?」
「もちろん、次の6話でやりましょう。
 ちょっとここまで長くなり過ぎちゃったからね」
【第6話 追憶のペンダント】
「さて最終回…。
 いきなり、これまでのエピソードのフォローからスタート(笑)」
「なんかイヤな言い方ですね〜。
 というより、あれはむしろ“おさらい”的な意味合いが強いでしょ。
 前作・前々作の内容を忘れてしまった人達向けというのもあるんだし」
「5話のラストからここに至るまでに、だいたいのプレイヤーは過去の事件を反芻して、それぞれの関連性を模索していると思うんだよね。
 それにぴったり合うように始まる“回想”は、なかなかに好きだ」
「ただの回想じゃなく、再検証になっているところがニクイですよね。
 その時点でプレイヤーも感じていただろう事『第二話の事件に関連なんかあるのか?』という事についても、きちんと追っかけで触れているのは感心しました」
「しかも哲平だもんな、切り出しが(笑)。
 やっぱり、こいつ第一印象とは比べ物にならんくらい頭いいと思うよ」
「こういうとすっごく語弊がありますが…
 メイン男性陣は、すべてそれなりに優秀ですからね」
「とはいえ、さっき散々悪口言った京香も、ここではそれなりに推理働かせているから、頑張ってるとは思った」
「それはともかく。
 疑問は、やっぱり第二話の関連のあり方でしょうか」
「大門寺局長のアレか。
 悪いが、アレはどう考えても“こじつけ”にしか思えなかったなあ。
 実際はそうじゃなかったのかもしれんけど、印象としてはそれ以上になれなかったよ」
「そういえば…カメオの呪いでああなったんじゃないかって話とか、局長の幽霊の話とかも、まったく触れませんでしたね」
「とはいえ、そこに強烈な違和感があるだけで…あとはうまく繋げたと思うよ、自分は。
 第一話の事件の絡め方も、ラストがああいう終わり方をしていたからそこにこじつけた…という見方もできなくはないけど、個人的には、そこまで突っ込むのはヤボだと思う」
「自分はこっちの方が違和感強かったタチです。
 どう考えても、恭介達が考えついたような展開が裏にあったとは思えない」
「ここでまた深く追求すると隔離ページのアレにひっかかるから…って、ああ、なんだかとってもやり辛いなあ今回は!」
「仕方ないですよ、ご自身で設定した制約なんですから。
 まあとにかく、違和感がなかった訳ではないとはいえ、うまく繋げたのは見事です。
 たとえこじつけ的な繋げ方をしていたとしても、その途切れ目は丁寧に消されていたと思いますよ」
「その辺りは、木原や不思議ビバレーツ、カサギ製薬などの関係…つまり、テキスト上でのみ語られていた組織関係図の方に色濃く出ていたように思うね。
 ちょっとマイナーな部分で目を外しがちだけど、3話で亮太の死体が発見された倉庫に絡んだ情報とその露呈経緯は、大変密度が高かったと思う」
「組織関係図といえば、MAYGの例の絡みですが…。
 あの情報そのものは意外に単純な意味だったわけですけど、そこに辿りつくまでの恭介の推理立ては見事でしたね。
 あれによって、彼の優秀さがさらにアピールできたわけで」
「もうここまでで何度となく表現されてきた主人公の能力の高さだけど、今回のが一番際立っていたような気がするね。
 もっとも、それは終盤、所長がヨイショしまくるから、というのもあるんだけど」
「恭介の推理ったって、実際はプレイヤーがやっている訳ですけど…。
 しかし、作品のストーリーを追っかけていくと、やつぱり恭介すごいって事に落ち着きますからね」
「6話は、前半部は5話までの事件のおさらいと断片情報の集結・再考に費やして、その分後半は動きまくるんだけど、なぜか終盤に近付くにつれて、テンションがダウンしていくような錯覚もあるんだよね。
 面白い事は面白いんだけど、基本的に“考える事”だけしか武器を持っていない主人公に対して、後半の展開はあまり彼にそぐわないものが多すぎたように思えるんだよ」
「あ、それは…突っつかれると結構イタイところですね。
 確かに、恭介はどこかに乗りこんだとしても、相手を説得するか同行した人に物理的対処をしてもらうしかできないわけですが…。
 わかっているんですけどね。
 恭介がガンガン銃をぶっ放したり、格闘しまくったり超人的な戦闘をしたりして状況を打開する存在ではないって事は。
 だけど、だからこそ“こんな場に出向いていってどーするつもりだ?”という気持ちもあるんですよね。
 私、最後の方で船に乗りこもうとしていた所で、“そこは所長にまかせろ!”と真剣に思いましたもの」
「確かにネ。
 真っ当に考えたら、主人公はあまりに無防備に船に乗り込んでしまったんだよね。
 行程はともかく、よくまあ五体満足で出て来れたものだ」
「最後に船に乗りこんで…というと、やはり思い出すのが『EVE bursterror』ですが、あれの場合、乗りこんでからたっぷり時間をかけて展開を描いたため、かなり無理がありそうなのにも関わらず違和感は薄かったですけどね。
 今回みたいに、乗り込んで何もされず、そのまま黒幕の前まで連れて行かれ…なんて展開、ちょっとショートカットしすぎだと思います」
「おおっと、だんだん内容がきな臭くなってきたね。
 この6話の犯人…もとい、組織パーツの真の黒幕として登場する人物もかなり意外な存在だからね。
 ボロが出る前にまた隔離しようか?」
第6話 組織パーツの黒幕について
「今回はこんなんばっかですねー。
 6話は、他にも色々語るべき所がありますが、Aim関連で今までのゲストキャラが総出演してくれたのは嬉しかったですね!」
「浩司と潤、唯の再登場は、早い時期から情報が出ていた上に、ソフト発売前からなんとなく耳に届いていたし。
 でも、美由紀の再登場は、個人的に意外&ツボだったね。
 “まだ性格悪いままなのかな?”なんて思わず邪推してしまったけど(笑)、こういう登場なら大歓迎かと」
「早速、5話の皐月ちゃんや睦美も登場してますからね。
 ホント気分はオールスター(笑)」
「…って、ここまで書くとまどかについてはノータッチか、この非国民! とか言われそうなんで、そちらについても嬉しかったなあという事で(笑)」
「なんか投げやりですねえ」
「というより、自分としては“朱原一家総登場”というシチュエーションの方が嬉しかったんだよ。
 こういうゲーム展開・構成ならば仕方ないという事はよくわかっているんだけど、基本的に再登場キャラクター達はすべて“情報供給ターミナル”に過ぎない立場だったからね。
 浩司なんかは、それまでの経緯なんかを丁寧に聞いて反応してくれてたから、あまりそういう印象ないけどさ。
 潤に対してなんか、“そんなあっさりでいいのか?”って感じの接し方だったもんね。
 ある意味、あんなに萌え萌えだったっつーのに(笑)。そっけないったらありゃしないよ主人公♪

 ――まあ、潤のいない間に涼雪なんて強大なライバルが登場していたんだから、しょうがないか(爆)」
「潤はちょっとだけ可哀想でしたね。
 恭介の前で自分の服装を再チェックしたりしてたのに…わかってやってよ恭介って(笑)。
 まあ、それどころじゃなかったんだから仕方ありませんが。
 でも、エンディングとか、その手前辺りで突然グランドヒロイン的な扱いを受けていたのは笑えましたね。しかも局所的に」
「爆弾騒動の後とか、エンディングの画面の話だね?
 エンディングなんて、もう妙に肉付きがよくなっていて、まるで別人(笑)。
 すっげえ気合い乗せて描かれているのな」
「そうそう、あまりの気合いの入り方に、潤だって気付かなかったくらい(笑)」
「まあその辺はいいとして…6話の事件はどうだったかな?」
「結末については別項で述べているので、最大の事件“Aim開催の真の目的”について考えましょう。
 あれについては、どうでしたか?」
「いささか乱暴な言い方だけど、途中で読めた。
 というか、イベントを開催してお偉方が沢山集まり…って話になっている段階で“まさか全員集めてドッカーン! …なんて事じゃないよな?”と自然に考えてしまったよ。
 まさかその通りになるなんて、まったく思わなかったけど…かえってゾッとしたよ。いろんな意味で」
「一カ所に大勢の関係者を集めて…とした時点で、ほとんどモロバレでしたからね。
 でも、これは私自身が勝手に思っているだけの事なんですけど、この最終目的そのものをギリギリまで隠蔽しておこうという意向は、実はあまりなかったんじゃないですかね?」
「そのココロは?」
「やっぱり、あまりに単純すぎるという事と、やり方が乱暴すぎるからという事です。
 むしろ、次世代派の目的よりも、その背景や人物関係に対しての謎解きの方を中心に添えていたような気配もありましたからね。
 “イベントで奴らは何かをするだろう”という事そのものは、最初から分かり切っていた訳ですし」
「なるほど。
 だから、そちらについてはあまり“意外性”を絡めなかったと」
「そういう事なんですけど、どうですかね?」
「自分は断定できるだけの材料を見出していないからなんとも言えないけど、確かにそういう感じはするね。
 ただ目的やその暴露方法についてはともかくとして、この件の一番大事なキモは、“爆弾解除”イベントと、さっき隔離した例のアレだからね。
 ここが締まらないとあかん訳で…」
「…締まって…いたかどうかはちょっと疑問ですかね」
「ところどころ首を傾げたくなる所が多いんだ。
 たとえば爆弾解除。
 威がヒントを用意して、その結果阻止できたというくだりはともかく、そのヒント内容がね…」
「あ、アレね!
 私も、何を示しているのか最初まったくわからなくて…」
「問題自体はそんなに難しくないからいいんだけど、中にはその解答がすぐに数字に結びつかないものも多くてさ。
 “光なき姫と騎士”とか“月と海の女王”なんて、誰を示すかわかっても年齢を持ってくるなんて思わなかったもの」
「でも、他に引っ張り出せそうな数字ってないですよ?」
「いや、これは単純に発想の問題だと思うから、文句であっても指摘ではないよ(笑)。
 自分は“何かの物理的個体数”か“日付”だと思ったの。
 終戦記念日とか、ペーパーナイフの話の時の主人公の台詞がヒント(?)になってたって事もあったからね。あともう一つ日付のがあるが、これは割愛ね」
「でも、よく見れば日付は2つ、個体数の問いかけも2つ、誕生日も2つ…なんですよね」
「…ううっ、ど、ど〜せアホだよ俺は!!(号泣)」
「まあ謎解きの内容はいいんですけど、ちょっと当てはずれだった事がありましてね。
 私、あの文章を書き写してから実際に使うまでに、てっきり再考するチャンスがあると思ってたんですよ。
 3話のペーパーナイフの時もあったじゃないですか。ああいうノリで。
 そしたら、自主的に見ようとしない限り本番まで考え込むチャンスがない…アレは参りました。
 しかも、内容が内容じゃないですか」
「一見さん完全お断りクイズ集だもんね、アレ。
 『3』内にヒントがあるものも確かにあるけど、あれはあくまで、前作までをやっていて初めてそれと気付くようなものばかりだもんね」
「あれはどうかと思いましたよ。
 しかも、クリアした後に初めて“恭介でなければ解けない謎だった”なんて言われてしまう。
 最初の頃は、そういうものだってわからなかったもんですから、真剣に悩みましたよ。
 ありったけのセーブデータロードしなおして、それらしき物を模索したり…」
「ちょっと伝わりが悪かったという事かな。
 せめて睦美がスイッチョンするまでに、一度くらい合同検討会が欲しかったねえ」
「あ、そうかそういえば…睦美がスイッチ入れちゃったんですよね、アレ」
「そうなんだよなあ。“ちょっと待てぇいっ!”と思ったもの。ありゃあないよ」
「確かに、スイッチが入った事によって緊迫感は出ましたが…きっかけがきっかけだけに“どこか違う”感がぬぐえませんでしたよ。
 あれで会場爆発しても、絶対恭介のせいじゃない。睦美が諸悪の根元でしょ☆」
「いや、待て待て、落ち着け(笑)。
 その前に、仕掛けていった奴が悪いんだからさ」
「とにかく、ここだけじゃないですが、所々に“これでいいのかな?”という展開が散りばめられていたのは疑問でしたね」
「個人的には、タカが大活躍してくれたって事ですごく好きな展開なんだけどね、あそこ」
「今回なかなかおいしいキャラでしたよね、タカって。
 あとは、エミーさんかなあ」
「爆弾ドキドキ大作戦の前に、一応の決意を伝えてくれるタカ…
 最悪の第一印象が、まさかここまで好転するとは(笑)。
 3話で彼を死なせたままだった人は、さぞや驚いた事でしょうに」
「元締、そりゃちょっと違うような気がします…」
「さて、まだまだ語るべき事が沢山あるんだけど、さすがに文章量が押してきたので、そろそろ最後のポイントに。
 キャラクターの中でも、色々面白い展開があったり裏事実が出てきたり…」
「ご隠居が撃たれたり、前作で話題になっていた昭沢医師が登場したり…サミーの国籍が訳解らなくなったり(笑)」
「でもまあ、やっぱり注目すべきはやはり…“成美、貴女はやっぱりヴァンパイア!!”かな?(爆)」
「大嘘こかないでください(笑)
 でも、日光嫌いというのにあんなディープな設定を引っ張り出して来たというのは、素直に驚きでしたね」
「いやホント。
 どういうこじつけで日光嫌いとするか、正直かなり邪な期待をしていたんだけど…ホントごめんなさいって感じだったわ。
 ちゃんとストーリーに絡んでいたし、それによる悲壮感もちゃんと出てたし、皆がそれに対して真剣に受け止めていたし」
「日光そのものというより、そこから引っ張り出されていくという光景に恐怖する、でしたっけ?」
「自分的にはもう腹の底から納得しちゃったんで、反論や指摘のしようがない。いや、お見事!
 日光を嫌う病気を調べる必要もなかったし…って、仮に病気だったにしても、そうするとストーリーにあまり絡まないからなあ」
「本作ではほとんど登場場面がなくって、どちらかというと損な役回りだった成美さん…私にとっては一番意外でしたね」
「まあ、主人公の実の姉だった、というのはどうでも良かったんだけどね(笑)。
 でも、両方とも無事だったという結末が残っただけでも意味があったんだろう。
 あれだけ長い間に渡って悲惨な事態が多発してきた事件だったんだから、彼らが生き残った事には意味があったように思うよ」
「お、珍しくハッピーエンドを褒めてますね?」
「おいおい、勘違いせんでくれよ。
 ちゃんと必然があるんだったら、わしゃバッドエンドでもハッピーエンドでも不可思議エンドでも何でも褒めるよ」
「ふ…不思議エンド?
 なんですかそれ?」
「(無視)
 惜しむらくは、こういった背景みたいのがもう少し京香にもあれば…って、あれ、一応はあったなそういえば」
「彼女だって、母親殺されてそれをずっと疑問に思ってて、父親はそれに関連した事件を追っていて…悲惨極まりない状況なんですけど」
「まあ、そうだけどね。
 6話については、印象は薄いもののそんなに悪い気はしてないって。問題があったのは、表面に出張った5話に関しての話」
「さらわれた件については…」
「不思議ビバレーツか。
 そういえば、俺は最初タカを経由して呼び出し状もらっていったパターンだったんだよね。
 どうもその日、会場へ行く手前でわざとタイミングをずらすとそうなるらしいんだけど…庄司が死んじまうとは思わなかったよ」
「え、彼って死んじゃう展開あるんですか?!」
「威がまったく居る様子がない状態で、社長室に行くとね。
 自分の口に銃口ねじ込んで…ドキューン」
「うわ、それ見落としでした。
 今回、ホント別展開が多くて…とても全部漁れた自信なかったですもん」
「とにかく、京香が捕まってそれを助けに…という展開そのものは大変サスペンス感があってよかったのですが、囚われている最中、京香にほとんどリアクションがないのが残念だったな。
 せっかく6話冒頭や、黒幕の正体追求の辺りで色々がんばって考えている様子見せていたのに、もったいない」
「あ〜よかった。
 ここに至って、また京香バッシングなんか始められたらどうしようかと思いましたよ」
「まあ何にせよ、ところどころムラがあった割には、最終回に相応しい内容だったのではないかと。
 成美や京香、主人公達の過去の謎と、事件の根底にあったもの、これらすべてを一つにまとめきっただけでも、相当な完成度だと思ってる。
 前回のレビューでの懸念が、まるで杞憂だった訳だ」
「そうですね、しっかりまとめられた内容で大変良かったと思います。
 ただ、実はまだ一つだけ納得のいかない所がありまして…」
「え、まだあるの?
 そろそろ総評に移りたいんだけどなぁ〜…」
「いえ、今回の内容ではないんですよ実は。
 前作…正確には、4話ラストの場面なんですけど、そこにちょっと気になる事が…」
「? え〜と、何か問題になるような所あったっけ?」
「エミーさんですよ。
 彼、最後に出てきた時なんて言いましたっけ?」
「確か…ペンダントを探していると言った主人公に対して、“悪い事は言わないから、おやめなさい”みたいな感じの事を言ったんじゃなかったっけ?」
「そうです。
 ですが、全部やり終わってみてわかる事なんですが、あの時点で、エミーさんはペンダントの事はほとんど何も情報らしいものを掴んでいないんです」
「え、そ、そうだっけ?」
「あの時点でエミーさんがああ言うという事は、杉内事件や真神のお母さん殺害事件、その裏にいるパーツの目的や、現在誰があのペンダントを持っているか…可能性論も含めて、この6話の裏側の真実をおおまかに知っていた、という事にもなりかねないんですよ」
「あ、そうか。
 あのペンダントがとんでもないものだって本格的にわかってきたのは、杉内一家失踪事件を突き止めたあたりからだったな」
「ところが、エミーさんはその事件の事についてほとんど何も知らない様子だったし、そうでなかったにしても、裏側の事実には気付いている様子はありませんでした。
 だとすると…あれは一体どういう意味を込めた警告だったのか…未だに納得がいきません」
「もしや、自分達が辿り着いていない展開なんかがあって、その中で説明していた…なんて事だったら嫌だなあ」
「そうだとすると、もうお手上げですよ〜!
 ホント、どこまで風呂敷が広がっているのかわからないんですもの〜(泣)」
(総評)
「な、長い…長いぞ今回はっ!
 という訳で、全体をまとめてとっとと進めるぞ!」
「シリーズ物の最後というとどうしても言いたい事は増えますからね。
 『とらいあんぐるハート3』の時もそうだったんでしょ?」
「まあね。でも今回は、これでもかなり言いたい事をカットしてきたつもりなんだよね。
 今は亡き木原の人物関係や組織の構成についてとか、ハーメルンとか…
 でも、このペースでやりはじめたらきりがないからね。それだけ注目すべき所が多かった、として締めるしかあるまいよ」
「では、早速。
 さっきも元締がおっしゃってた通り、これまでの話をすべてまとめきったという事で、この『3』は大した出来になってましたよね」
「細かな問題点があったり、解決しきらないもやもやした部分もあるにはあるけど、とにかくこれは大したもんだと思う。
 プレステ2版も、SIDE-A/SIDE-Bとして2本に分類して発売する事になったようだからね。
 はたしてこれがベタ移植なのか、何かしら追加要素があるのか興味深い所ではあるけど…現状では、もう11月には発売してしまう予定らしいから、さほど大きな変更は期待できないだろうね」
「しかし、2本に分けるという事は、プレステ2版で初めてやった人は、3話ラストを引きずったままSIDE-B発売まで待たなきゃならなくなる訳ですか。
 そりゃあかなりきついでしょうね(笑)」
「あはは、それ同感♪」
「ま、それはそれとして…全体の雑感はどうですか?」
「難易度は、色々な理由を含めて過去最高だったと思う。
 推理の選択肢は、事実上一つもミスが許されない雰囲気の上、次々に入る情報を記憶しつつ推理を働かせ、さらに主人公や氷室の推理も交えながら考えをまとめなければならない…。
 んでもって、とどめに過去の4話の中の情報のピックアップまで要求されるから。
 これは、高い探偵ランクを一発目から狙うんではなく、とりあえずざらっとやって全貌を掴んでから再度挑戦して、そこでまだ見ていない分岐展開をチェックしていく…というのが、一番肩のこらないプレイスタイルだと思う」
「一作目の時は、まだかなり荒削りな部分があったり、推理がさほど関係ないような側面もありましたが、前作からそれを打開してさらに昇華したって感じですね。
 キャラクターも、登場する度に魅力ある存在になっていきますし、それを逆手に取った演出も見事で…」
「今回の犯人・黒幕などに対して、主要人物達は妙に優しすぎるような部分が見えてそれがちと気にはなるんだけど、その辺はあまり強く突っ込まないのがスジってものなのかな?」
「もちろん、捕まったり死んでしまったりすれば、それでその人間の罪が精算される訳ではないですけど、恭介達から見れば、そこから先を追求するのはまた違う事なんでしょう。
 何せ“俺達探偵は逮捕権を持たない”ですからね。役目はそこで終わっている。
 だから、犯人達の罪を追求するのは、別の人間によって、ゲームで語られない部分で行われるべきだと私は思うんですよね」
「そうだね。
 実際、6話のインターネットニュース報道では、5話の犯人が写真付きで公開されていたし…。
 あれ、複雑な心境だったね。
 茜の言う通り、あれがある意味で“事後裁かれている”光景だったのかもしれん」
「そういう、さりげない所まできちんと手を入れていたところが、『MISSING PARTS』シリーズの魅力だったと思いますよ」
「ドリキャス最後の本格推理ADVとして、綺麗な幕を引いた…としていいかな?」
「なんだかんだでまだいくつか出る予定のタイトルはあるみたいですが、シリーズを構成するようなものはないでしょうし、推理物というのは元々あまりないですからね。
 嘘にはならないかもしれません」
「このタイトルはこれで終わり…。
 なんだかんだ言いたい事言ってきたけど、久々に燃えさせてくれた名作だったからねえ。
 すっごく名残惜しいような気がする。
 間違いなくプレステ2版も買うだろうけど、実質的にはやはりこれでおしまいなんだよなあ、ハア…」
「ホントに落胆してませんか元締?
 でも、いつかきっと続編が…って祈っていれば、なんとかなるかもしれませんよ?
 メカ威との空中ドリル対決は期待できないかもしれませんが、祈りはきっと通じますよ♪
 『魔法のプリンセス ミンキーモモ』だって、まさかの続編が出来たじゃないですか!」
だから、どーしてそういう例えが湧いてくるんだよお前はっ?!
 まして、いくらやってくれたって、10年も経って初心を忘れられてたから、アレはな……って、止めろよお前!
「という訳で、本日よりこの『九拾八式工房』にて、【MISSING PARTS続編制作激しく希望! 超ドリル対決を叶えるために】と題して大々的な署名を行います!
 署名人数50000人を超えたら、FOG様に直談判に参りますから、皆さんご協力お願いしま―――す♪」
勝手に企画捏造するな――っ!!
 (皆さん、本気にしないでね♪)」
「ときに、ちょっと嬉しい事があったので、報告ね♪」
ぴらっ☆ MISSING PARTS テレホンカード
あーっ!!
 なんですか、このテレカは?!
「見ての通り、『MISSING PARTS』のテレホンカードですよ♪
 なんと、ソフト内のアンケートハガキを送ったら、ものすごい短時間でこれが届いてしまいました♪」
「(FOGのサイトを見ながら)…あーっ、ホントだ!
 すごいじゃないですか元締! 懸賞当てたわけですね!
 以前、HGIFセーラームーンワールドの10周年フィギュア当てて以来じゃないですか!
「だからお前、どうしてそういう話を持ってくるかなあ?
 …いや、どうもこのテレカ、実質的には全員プレゼントみたいな状態になっているらしいよ?
 サイトの掲示板を見ていて思ったんだけどね。
 ちなみに、俺はソフト発売後40日くらい経過してからアンケート出して、余裕だったっぽい」
「わーっ、元締、いきなりですがここで失礼します!!
「ほえ? どしたんよいきなり?
 さては早速アンケート出しに行くの?」
「いや、実は私、ソフトに混入されているチラシやハガキって、ある程度以上時間が経つと処分しちゃうタチなんですよ。
 で、昨日ゴミ箱に捨ててしまったような気がしまして…。
 うち、明日可燃ゴミの日ですから、急いで帰って回収しないと!
 マミーに捨てられてしまう〜っっ!!
「ま、マミ〜?!
 ーそ、そうか…。とりあえず、がんばってくれ。
 ちなみに、今の時間は午前3時だが」
「お袋が無精して早出ししてなければ、まだなんとか!
 では、これで失礼します!」
「おい、呼称変わってるぞ。
 どーでもいいけど、始発もまだ出てないが…間に合うのか?」
「いざとなったら、ターボユニットとガードラー使いますから。ではっ!!」
「…何者だよ、お前…」
 それから数時間後。
 すっかり夜も明けた頃、後藤夕貴の元に携帯メールが届いていた。


 中島茜は、泣きながら二枚目の『MISSING PARTS3』を買うために出かけたそうな…(笑)


(後藤夕貴)


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