MISSING PARTS2 the TANTEI stories (ドリームキャスト)
 FOGが送る、本格推理探偵ADV第二弾。またまたドリームキャストで登場!
 工場が稼働している限りDCで出し続けると豪語する本シリーズ、果たしてこの先どうなっていくのか?

1.メーカー名:F・O・G
2.ジャンル:移動型ADV
3.ストーリー完成度:B
4.H度:涼雪のチャイナドレスと寄せ上げ胸だけでA(まて)
5.オススメ度:前作クリア経験者にのみ、A
6.攻略難易度:激A
7.その他:今回は分岐と結末があまりに多岐に渡るため、セーブポイントが絶対的に足りなくなる事必至!


(ストーリー)
 主人公・真神恭介は、とある事情から鳴海探偵事務所に勤める事になった唯一の探偵で、しかもまだ新米。
 さらに所長代理の鳴海京香は、行方不明の所長であり父親の誠司に代わって経営しているだけで、探偵としての経験も技量もほとんどない。
 そんな状況のため、ほとんど仕事の依頼もこないのだが、それでもなんとかやりくりを続ける毎日であった。
 しかし、恭介はひょんな事から知り合ったアンティークショップ“セクンドゥム”の主人・月嶋成美の元でも働くハメになる。
 探偵と、アンティークショップの雑用係(実際は成美の下僕)という二足草鞋を履く事になった恭介の運命は如何に?! 
 (以上、『MISSING PARTS』レビューより引用)


【託されたペーパーナイフ】
 恭介のパートナー・白石哲平は、かつての舎弟・亮太より一本のペーパーナイフを預けられた。
 そして、それを持っている事を絶対内緒にしてくれという。
 不可解な頼みの上、柏木久蔵宅に直接届けられた事から、哲平は「なにかやっかい事に巻き込まれているのでは」と心配し、恭介に話しを持ちかけた。
 亮太の行方を求めて哲平とともに探索を開始する恭介。
 哲平が過去に縄張りにしていた枕ケ崎を訪れた時、彼らはふとした事から中国人の少女・涼雪(リャンスェ)と出会う。
 そして、彼女に絡んでいた三人組タカ・エイジ・ヒロヤはかつての哲平の知り合いであり、彼の過去の一端を知っている人間だった。
 彼らと共に、以前よく通っていたという店・ハードラックを訪れる恭介と哲平。
 その中でのやりとりから、恭介は哲平の昔の姿を少しずつ理解し始めていた。
 
 そんな時、ハードラックの外で、タカが人間の死体を発見した!
 裏のドブ川にはまりこんだ形で倒れているその死体は、ワイヤー状の凶器で絞殺…吊り殺されたようだった。

 そこから連続発生する、謎の殺人事件。
 しかし、その犠牲者達は、あろうことか…


【傷ついたテディベア】
 先の事件の衝撃から、毎晩悪夢に悩まされるようになった恭介。
 そんなある日、珍しく鳴海探偵事務所に依頼の電話が来た。
 依頼内容は、「一週間でとある人物を捜して欲しい」というもの。しかも、おおまかな年齢と名前しかわかっていない。
 早速その依頼を受け、活動を開始する恭介は、途中で出会った奈々子と共に、友凛病院へと向かう。
 先の事件で入院した哲平を見舞うためだったが、そこで、恭介達は奈々子の担任教師である池辺と出会う。
 奈々子の学校での生活状況などを聞きながら、池辺を駅まで見送る恭介…
 しかし、恭介は彼と二度と会う事はなかった。

 「先生、死んじゃったよぉ!」
 翌日の朝、恭介は奈々子からの電話で驚愕の事実を教えられるのだった。


 11月某日…
後藤夕貴(以下、夕) 「ふむふむ…やっと終了か。今回は、いやなんとも…」

 ピンポーン♪(突然闇夜に鳴り響くチャイムの音) 

「こんちわ! ご無沙汰でーす」
「へ? 誰? …って、待てよ? このパターン確か以前にも…」
中島茜(以下、茜) 「いやだなあ、またまた忘れたんですか? 相変わらず脳内タンパク質足りてないんじゃないですか」
「そ、その超失礼な物言い…
 そして、このゲームを終わらせた直後にわざとらしく登場するヤツは…茜かっ!」
「いえ、ですから一つ前に名前出ているじゃないですか」
「そんな事ぁどーだっていい!
 おいおい、今年最初に来て以来じゃないか。まさかまた『ミッシングパーツ』のレビューを会話式にしようとして参上したのではあるまいな?」
「はは、いいじゃないですかその程度のご都合主義は。私もプレイしたんですから。
 で、今回は…」
前回のレビュー読んでない人間には全然わからないやりとりなんだけどなあ。まあ、それはリンク先を見ていただくとして」
「知らない人や、上のリンクに飛ぶ気のない人にむけて自己紹介します!
 私・中島茜は18歳の女の子。去年高校を卒業したばかりです♪ ようやく一人暮らしになれてきて、彼氏イナイ歴1年です♪
 九拾八式工房とは、『九拾八式(同人誌版)』が出る前から文章原稿書きとして参加させていただいてましたぁ☆」
「…ほおお、今年(2002年)末で我が『九拾八式』レーベルは丸9年迎えるんだが、お前、小学校の頃からうちに小説投稿してたんかい。
 すごいなーいや本当に驚いた。あの時、もうてっきり高校卒業しているものだと思ってたんだがねー。へーー」
「いや、ホラ昔『後出しキャラは極端な事させておけば認知度が上がる』って誰かが言ってたじゃないですか」
それは、オレがPS版『To Heart』のレビューで書いた事だっ!!!
「で、今回はどーでしたか元締?」
「あっさりと先の展開を流しおったな。…うん、最初の感触は“前回とほとんど変わりなし”という感じだったね」
「そりゃそうでしょう。ゲームの構造も画面もシステムも、ほとんどが使い回しなんだから」
「使い回し…というと、なんか悪く聞こえちゃうなあ。
 念を押すと、これは“当初から予定されていた”事だから、決してマイナス要素じゃない。遠羽市という舞台、主人公の周辺環境が前回とまったく同じだから、一年近く間が空いたにも関わらず連続性が感じられるんだ」
「ふむふむ。では、他には?」
「目新しいものがパッと見にないというのは事実なんだけど、このタイトルを手にした人のほとんどはそれがわかっているだろうから、全然構わないと思うのね。
 自分が感じた“前回と同じ”というのは、むしろストーリー全体のクセみたいなものよ」
「ああ、第一印象は確かにそんな感じがありましたね」
「そう。ずっとそれが続くわけじゃないけど、“そろそろ犠牲者が出るかな”とか、“そろそろ変化が起きる”みたいなのがある程度予想付いてしまうんだよね。
 もちろん、そういう部分は些細な事なんだけど。とにかくそんな所かな」
「でも、難易度は確実に上がってますよね」
「そう! 前作では、こんなに攻略に難儀した記憶がないんだわ。
 というより、前作は分かれ道のどっちを選ぶ的な要素だったのに対して、今回は“道のいたる所につまづきの石や落とし穴が大量に存在している”って感じか」
「? …ちょっと伝わり悪いんですけど」
「つまり、前作はルート決定によって分岐するというベクトルが強い構成で、話が進むにつれて“プレイヤーの推理はさほど関係ない”という事実に気付かされるようになっていた気がするの。
 だけど、今回はダイレクトにプレイヤーが推理しなくてはならず、その上に行動を逸らせるためのトラップ的仕掛けがいたる所に点在しまくっていると」
「パッと見はあまり変わった感じがしないんですけどね」
「そう、だから…ある程度話が進むと“これは前作と同じに考えてると大変な事になる”という事実に気付かされる。
 そういう意味では、先に言った“前とあまり変わらない印象”というのは、巧い隠れ蓑になっている気さえするね」
「選択できる回数が1回とか3回なのにも関わらず、選択肢が6つくらい一度に表示されるなんてのも、今回はかなり多かったですからね」
「決定的なのはなんとなくその直前の雰囲気でわかるんだけどね。強烈な例外があるとはいえ」
「物語としては、どんな印象でした?」
「結構単純」
「えーっ? そうですか?! それはちょっと異論だなあ」
「おっと茜ちん。勘違いしないでくれたまいよ。
 話が単純というのは、あくまで“ストーリーを人に説明すると単純なものになってしまうけれど…”という意味だよ。途中経過すべてが単純というわけじゃない」
「つまり、このゲームをやる気がない人に説明すると、あまり面白さが伝わらないって事ですか?」
「そう。やっている間は色々な仕掛けに翻弄されるし、こっちも先が読めなかったりできりきり舞いさせられるから楽しいけれど、説明文にしたらあっさりだよ。
 まして、結構“お約束”のお話だったしね」
「ひょっとして、第3話のアレ…?」
「という訳で、今回はこの辺で早速各話レビューに移行しませう」
「−−−−っと!
 今回もネタバレ全開で行くので、ここから先、プレイ予定のある人は充分注意してくださいね!
「一応真犯人そのものは伏せていくけど…今回は、具体名出さなくてもモロバレになっちゃうからねえ…」
【第3話 託されたペーパーナイフ】
「突然でなんだけど、これはある意味すっごく“残念”なお話」
「どーしたんですか突然に?」
「いや、すっごく面白かったんだけど…オチが…。とにかく、この回については“あんなオチはもう勘弁”って感想に尽きるのよ」
「いきなり禁断の部分に触れようとするヤバイレビュー展開ですね。
 まあわかりますよ。かなり悲劇的な展開ですし、あれではあまりに涼雪が報われないというか…」
「んにゃ。そんな話はしてない」
「え?! 違うんですか?」
「正直な事を言えば、自分は涼雪の結末については納得しているんよ。
 “自業自得”ではある訳だし、ああいった形での裁きが下されたと考えるならば、それはそれで説得力だとも思う」
「そーですかねえ? あれ、あまりに酷いんじゃないですか? せっかく改心しかけたというのに…」
「彼女に思い入れてしまった人なら当然抱く感傷だよね。
 でも考えてごらんな。
 涼雪は、たとえ真犯人に命ぜられた形であったとしても、人間の命を…いや、それ以前に自分の良く知る人間を無感情に殺害している訳だ。
 それが問われる問われないはともかくとしても、彼女に裁きの結末として皮肉なラストが訪れる事は、むしろ当然の流れだと思っているよ」
「そーですか…。
 いや、ホラ最近はキャラクターへの感情移入が強くなるタイプのストーリーのゲーム多いですからね、たとえ殺人者であっても、ヒロインを殺すとかってなると、反発や衝撃がデカイんですよ」
「だろうね。だから、あそこで涼雪を殺してしまった事については、英断として素直に拍手を送りたい。
 けど、決して反骨精神じゃないよ。
 逆に、いくら訳有りとはいえあんな冷酷な殺人鬼がエンディングの後にのうのうと、しかも主人公と一緒に生活する事になりました…なんて展開になってたら、自分はもうその段階で放り出しただろうね。評価もD以下だよ」
「元締、そういう所厳しいですからね」
「単に、けじめがキチンとつかない話が嫌いなだけだよ。
 もちろん、今回の真犯人みたいに“決着着けられませんでした”というのが前提になっている構成は別だけどね」
「あの…それはいいですけど、さすがにいきなりラストから触れ始めるのはまずいでしょ。最初の方から行きましょう」
「ぬぬう、確かに…。では、このオチについての話はひとまず置いといて…」
「なぜかモーレツに嫌な予感がするんですけど…。そうしましょう後にしましょう」
「自分としては、この話は非常に面白い展開だと思うんですよ」
「どんな所が?」
「まず、亮太という存在が非情に巧く使われていたという事と、このシリーズの前提である“失われたパーツ”がどういうものだったのかという事です」
「あれれ、そういえば…。今回のペーパーナイフって、全然欠けたパーツがなかったような」
「いいえ、ありましたよ」
「えーっ? なんだよそれは。絶対なかったって」
「鞘(さや)」
「いや、だってアレは主人公が考えついた嘘で…」
「実在するかどうかは関係ないんですよ。あれが最終的に実行犯確定の決め手になった事実上のキーアイテムだった事は間違いない事実ですから。
 そう、いきなり3話で変則技かまされた訳ですよ。“欠けたパーツは必ずしも存在しているものとは限らない”という」
「…あ、なるほど…そういう考え方もあるのかー」
「第一話がオルゴールの部品、第二話がカメオの装飾の宝石…。それぞれ、まったく別な使われ方しているのも興味深いですね。
 この後の“テディベアの右目”もそうですが。私は、今回のこれが“パーツ”としては一番面白いテイストだったと思いますよ」
「亮太が、ほとんど出てこないままで進むというのも面白かったよね」
「そう、亮太はキーパーソンなので当然なんですが。
 この話って、妙に“居る事はわかっているんだけど実質的な登場はしていない”という存在があまりに多くて、全体的に“虚像”を追わされているのではないかとすら感じさせる所があるんですよ。
 だから、会ってもいない相手の事で主人公が泣いてしまっても、なんとなく気持ちが理解出来てしまう」
「亮太・ナイフの探索者・青島組々長・渡瀬…すでに最初から死んでいる人間も含めれば、本編内で直接活動していない重要キャラクターは多いモンね」
「そう。ちょっと凝っている作りではあるけれど、それ自体には何の特徴もないアイテムである筈のものに、これだけ多くの思惑が絡んでの争奪戦になるというのは面白いですよ。
 まして、そこに哲平の過去や焦り、連続殺人事件なんかが絡んでくる訳ですから…」
「たしかに、これだけ複数の縦線と横線を組み合わせたのは見事なんだよね。その上で、前作以上に複雑な分岐を設定したんだから尚更と。
 そういう意味から見ると、なんだかとんでもないくらいに完成度が高い…のは、わかるんだよ」
「…? な、なんか妙に歯切れ悪いですね元締?」
「いや、問題はその“縦線”そのものでさ」
「?」
「実は、連続殺人事件が起こった段階でいや〜な予感がし始めたんだわ。
 ひょっとしてこれって途中からペーパーナイフ争奪の事がおざなりになるんじゃないかって」
「は? そんな事はないでしょう? 真犯人の動機もそこから始まっている訳だし、謎解きの直後にも奪回されているんだから」
「そーーーかなあ? ナイフが奪回された段階で、あのアイテムの役目は終わっているんだよ?
 俺、倉庫の冷凍室のアレの後、絶対ナイフの事は横に追いやられたような気がしてならない」
「根拠をうかがいましょ?」
「まず、冷凍室での発見の段階で“見立て殺人”の解答は一通り揃っていて、例の吊り殺しとは基本的に別な目的のものだった事が判明するっしょ?」
「ふむふむ」
「あの事件には主人公達を別にしても、“事件に翻弄される者”と“翻弄して楽しむ者”の思惑が絡み合っている事になる。
 本来はこういう展開の場合、前者が事件を起こしてその中でとんでもない真実が…という流れになるのが基本だと思うんだけど、そこに後者みたいな思想を持った存在を加えちゃったから、なんかものすごく浮き上がったものに見えてきちゃうんだよね。
 もちろんお約束を踏まえる必然性はないんだけど、今回ばかりは奇をてらいすぎたかと…」
「よくわかりませんが…つまり、やるなら最後までペーパーナイフ争奪戦に統一して欲しかった、という事なんですか?」
「そうとも言う。
 真犯人の本当の目的が“主人公の実力を試すだけだった”というのも、正直ピンとこない。
 真犯人の独特のキャラクター性に救われている部分があるけれど、あれ、どう考えてもストーリーに融合しているとは思えないんだなー」
「そう言われると…まさかシリーズ通しての“仮想敵”が登場するとは思いませんでしたし」
「ああいう“大物”が現れるというなら、それにしかるべき事件内容が必要だと思うんだよ。
 だけど、それにしては今回の事件はあまりに規模が小さすぎる気がしてね。
 確かに被害者も多いし、組織単位で見たらかなりの規模で被害が出ている事だってのはわかるんだけど、起こる事件が事件だけに“なんか違う”感覚がつきまとう」
「そういうなら、むしろ映画の『BROTHER』みたいに、2大勢力の衝突のさなかに発生する抗争と事件…って方がしっくりくるんでしょうね」
「このシナリオの疑問点は、推理物というジャンルに固執したために、その背景にあるべき物の印象が二転三転してしまったという事だね。
 自分に言わせると、だけど。
 よーく考えると、これって途中から“この事件の根本的原因は、途中から貴方(主人公)になってしまったんですよ”と言われているような気さえするし」
「あー、だんだん解ってきた。だったら、最初から“真犯人対主人公”的な図式にして欲しかったと」
「個人的な考えだし、完成度が高かった事そのものは認めているから“問題点”とは言い難いんだけどね。とにかくこれだけ言いたかった」
「という事は、元締はあの“真犯人”はあまり好みではないと?」
「いや、そんな事はないよ」
「えっ?」
「ああいう、はっきりしっかりした“悪役”キャラは、近年なかなか見れるものじゃないよ。
 わざとらしいくらいに裏表がしっかりしているし、顔だって引き締まっていてかっこいい。あの表情はシビれるね。
 オレ、実はこのゲームでは今のところこいつが一番のお気に入りだよ(本気)!!」
「あ、ああ…そう。も、元締、好きだもんねぇああいう敵キャラ…(^^;」
「だから、第4話でまた出てきた時は飛び上がるくらいに喜んだものよ」
えーーーーっ?! だ、第4話で出てくるの?!
 私、全然知らないよ! ど、どこで出てくるの?」
「6日目…とだけしかいえないかな。残念ながら攻略ページではないのでこれ以上触れられないけど」
「…ガーン、ショック…」
「もっとも、遭っててもそうでなかったとしても、その後の影響がほとんどないように仕向けたというのは、さすがというか…」
「でも、なんだかんだでやっぱり面白かったですよコレ。
 得体のしれない事件に巻き込まれた恭介の心境と、過去のしがらみに捕らわれて翻弄される哲平…前回指摘していた“哲平との繋がりが今一つ伝わらない”という部分が、これ以上ないくらいに補われていましたね」
「そう…気味悪いくらいにピッタリと。まさか…関係者の方に見られ…」
「ホラ、すぐそういう方向に考えちゃうんだから。同じような感想を持った人が、アンケートに書いて送ったって考えた方が自然でしょうが」
「いや、つい…ね。以前、ホントにスタッフの方が掲示板にいらした事もあったもんで…(これは本当)」
「そーらしいですが、それとこれとは無関係ですって。
 でも、前作の疑問点がこうやってしっかり補完されていくというのは気持ちいいですよね」
「それはある。正直、前作までの哲平の印象って“得体の知れないヤツ”というのが強かったけれど、これで根底がしっかりしたから、かなり親近感が持てるようになった」
「ほとんど主人公食っている場面もありましたし」
「今回って、第3話が哲平、第4話が奈々子絡みという事でずいぶん心配したんだけど、少なくともこの話に限っては杞憂に終わったね」
「いきなり不満爆発しかかってますね〜。まあ、第4話の件は後回しにして…
 哲平の話に主人公が付き添うという形の物語としてみると、大変素敵な仕上がりだった事は否定しないでしょ?」
「いきなり深いキャラクターになっちゃったよね。
 多分いないとは思うけど、もしも1より先に2から始めた人なんかいたら、哲平の描写の違いに呆気に取られるんとちゃうかな?」
「元・鉄砲玉って…昔のヤクザ映画とかVシネマ系にありそな設定ですが、ゲームでは珍しいですよね。あれも新鮮でした」
「とか言って、色々調べてみたら結構あったりして♪
 …ま、それは冗談としても、単に鉄砲玉というのを過去を示す記号的な扱いにしないで、亮太との交友の途絶の理由として絡めていたり、哲平自身が裏に通じている理由付けになっていたりと、多方面に効果を発揮しているのも注目すべき所だね。
 特に、ご隠居との関わりとか…」
「あれだけで納得できちゃいますからね」
「ご隠居の、あの時の表情…ブルッと来たね、マジで。個人的にはすごい説得力があったもの」
「かといって、哲平が主人公…といった展開じゃないのは見事でしたよね」
「相変わらず、FOGはその辺のキャラクターの動かし方がうまいと思うなあ。掛け値ナシで」
「で、今回の“推理”面での絞殺だけど…」
「センセ、字ぃ間違ってますよ! 推理の考察ですか…それって、私の役目?」
「おいらのキャラクターじゃないからねー」
「まあ、そうおっしゃるなら…。
 今回は、前作以上に“プレイヤーに推理させる”事を主体に置いていますね」
「前は、たしか“推理をさせたいのかただのADVをやらせたいのかはっきりしない”みたいな事を書いていたんだよね」
「そうなんですよ。で、今回ももちろんADVである事には変わりないんですが、プレイヤーの推理力と記憶力にずいぶんと挑戦しているような作りになっていました。
 結果、プレイヤーが“推理=選択を間違える”と、どんどんあらぬ方向に進んでしまうようになると」
「死んじまうわ、ただ一方的に痛い目見て終わるわ、涼雪と最後の会話も交わせないわ…」
「第4話に至っては、全然関係ない人が犯人として逮捕されてしまったり、協力者の看護師が逮捕されるなんて事にもなりますからね」
「驚いたのが、死ぬ人間すら変わってしまうという事かな。
 最近、結末だけがちろっと変わるだけのADVを腐るほど経験してきたから、こういう途中展開も情け容赦なく変わるマルチADVは、久しぶりかつ大変新鮮だったね」
「確かに、言われてみればそうですよね〜。久しぶりに心底楽しみましたもの。
 推理そのものの難易度はそんなでもないんですけど、プレイしている間は世界観に集中しているのと、提示された情報が断片的にしかわからないから混乱が生じてしまったりして、その辺のわやくちゃがまた楽しと♪」
「ただ…ちょっと気になったのが最初の方ね」
「? 何かありましたっけ?」
「やったらと主人公の判断能力を試される選択肢があったり、裏を読んで選択したつもりが普通の回答だったり、その逆もあったりと大変解りづらい。
 まして、例のハッカーとのやりとりなんて『なんでテメーの嗜好にこっちが合わせなきゃならねーんだ!』ってのがあってねー」
「あいつって…やっぱ、第5話以降の伏線か何かなんでしょうかね?」
「あ、今後の伏線については後でまとめる事にするよ。ここで語り出すとごちゃごちゃするから(もうしてるし)。
 とにかく、制作側の思惑に沿った選択が不明瞭すぎて、プレイヤーのそれと合わないってのは結構あるみたい」
「一番カチンと来たのが“権力に云々”ってヤツでしたね。
 中には“今は従っているけど、いずれは…”という野心を持っている人間だっているでしょうから」
「そう。まるでそういう価値基準の違いをすべて認めない…といわんがばかりの選択肢は、非常に気分を害するよ」
「一部相手のご機嫌伺いのためだけとしか感じられない選択肢までありますからね」
「一部どころか、結構沢山あったよ。特に第4話…」
「よっぽど4話について言いたい事があるんですねえ…(^_^;」
「それはそれとして、推理そのものの方向性はどうよ?」
「やや納得いかない部分はありますが、それはまあ個人差って事で流せると思いますし、実際かなり楽しめましたよ。
 ただ惜しむらくは“妙なところで単純”なトリックがある事ですかね」
「いや、それは…難しいものばかりではなく、単純なものも交えて起伏を付けたんじゃないの?」
「ムラがありすぎなんですよ。
 一見複雑な理由があるように見えた見立て殺人がモロに“そのまんま”ってオチだったり、犯人の隠蔽が事実上ほとんど成されていなかったり…」
「…犯人の隠蔽がされていない〜? なんでやねん」
「いえね、トリックや実際の行動は別なんですよ。
 そういう物語上の材料は置いといて、ただ純粋に設定だけを見ても、実は犯人がモロバレなんですよ」
「…? なんかその言い方だと、登場キャラクター一覧見ただけで犯人がわかっちまうような感じだなあ」
「ああ、せっかく遠回しに言ったのに…。でも、そう、その通りですよ」
「?!?! …一応、その理由を聞こうか」
ロナルド・ノックスの十戒という、推理小説などのお約束事みたいのをまとめたものがあるんですよ。
 その中に“中華人を登場せしめてはいけない”というのがありまして。
 『チャン・ルウの切れ長の目が…』と書いてあったら本を閉じてよろしい…とまで書いてます。
 中国人などは何となく超自然・超合理的なイメージを与えてしまうかららしいんですけど、こういう書き方されると“中国人が出たら、もう結末は…”と解釈されて然りみたいな雰囲気も出ちゃうんですよ(資料提供:柏木悠里)」
「…って、おいおい。それじゃあ、せっかくここで真犯人隠しても…」
「はい。でもこれってあまりシャレになってない心理なんですよ。
 かなり古い概念ではありますし、元々は人種偏見から来たものだという見方もありますからあまりよろしい傾向ではないのですが…
 実際の思惑はともかく、この作品でもそのままズバリだったのはかなりイタかったです」
「…ま、まあ…なあ。確かに、真犯人はもうこういうののコッテコテなパターン踏襲したヤツだったしなあ」
「これは私の憶測でまったく根拠はないんですが、なんだか途中からシナリオの方向性を“真犯人追求から、シリーズ通しての敵キャラ登場”に切り替えたかのようにすら感じるんです」
「ま…真犯人はともかく、犯人の正体は途中で明確にバレてしまうからな」
「あの天狗橋での涼雪との会話は、絶対にまずかったですよ。
 あの時点で、私は先のような事を感じ始めましたもの」
「あ、あのさあ…でもお前って、たしか前回『犯人先読み型のプレイヤー(読者)』の姿勢批判していなかったか?」
「そーですよ。だから問題なんです。
 つまりこの辺って先読みなんかする気が全然ないプレイヤーにまで丸わかりというくらいに明確な提示なんですよ。これってさすがにまずくありません?
 いくらその後に“動機の追及”“目的の確認”という重要なものがあるとはいえ、一番面白い部分が先に抜け落ちてしまう訳ですから…」
「待て待て。そうとも言い切れないぞ。
 あれは、推理の解答をある程度臭わせておいて、そこまで入念に描いてきたキャラクター像とのギャップを狙った演出かもしれんだろ?」
「ギャップ?」
「たとえば涼雪なんかは、潤(第一話)や唯(第二話)と比較しても異常なくらいに入念に描かれているんだよ。
 普段の生活姿勢からその性格、考え方や主人公達への対応云々…。
 最初の登場の仕方から考えると、なんか妙に丁寧だっただろ」
「ま、まあ…確かに」
「という事は、それだけ丁寧に書かれた涼雪の背景には、とんでもない“裏”があったという結末が出てきただけで、物語としては充分な起伏になりうると思わないかい?
 だからこそトゥルーエンド時の主人公との会話も引き立つし、第4話になってもまだ引きずっている事にも納得がいくし…」
「…うーむ、そういう発想もありますか」
「茜の指摘もいちいち同意なんだけど、そういうのもひっくるめて、第3話はかなり“異質”な話だったという事で落ち着けるべきだろうな。
 第二話までや、この後の第4話と同一視してはいけないくらい性格が違うんだよ、きっと」
「そうですねぇ。いくら感極まったからって、主人公プロポーズまでしちゃうし」
「いいじゃない、アレ。
 あのシーンで『俺の肉奴隷になってくれ!』なんて叫んで呼び止めてたら、思いっきり興ざめだったぞ」
なんでそこでそういう発想が出てきますか、あんたって人は?!
「ま、なんつーか…推理面考察をこれだけで片づけるのはちと乱暴な気がするけど…」
「ところで元締、渡瀬とかの殺しの手口見て、なんか言いたい事ないの?」
「(ギク)…な、なんの事かなあ?」
「本編中でも言われてたものねえ。どっかの時代劇みたいだって」
「…俺に、何をさせたい?」
「はい、殺し技の解説入れてね。
 日本中のほとんどの人が、あれから三味線屋勇次の殺しを連想するでしょうから♪」
「いいかげん知らない世代だって多いわい!
 …し、仕方ねーなあ。はいよ、吊り殺しの元祖・三味線屋勇次の解説ね」
「またテキストリンクですか。前回と同じ逃げ方ですね」
「言い方わるいなあ…。だって、この解説ほとんど本文と関連ないじゃん」
「元締が解説入れるのは、もうお約束という事ですよ♪」
「はいはい…。ご要望に応えて、ちょびっとだけマニアックな事まで書いておきましたともさ」
「ちょっとですか、これ…?」
「で、先の推理の話にかかるようだけど、マルチエンドの方向性について語ってから第4話に移りたいんだけど」
「マルチエンドというと…あの、被害者の数が変わるとか?」
「そういうのもあるけど、今回って主人公が“この場面で謎解きをしないと”という場面が何カ所かあるでしょ。
 謎解きそのものは置いておくとして、そのスタイルはどうかな、と」
「第3話では、7日目辺りの…」
「ストップ! 今回は、6日目以降の立ち回りでは7日目に事件が起こらないままで進んじゃって、攻略が一日ズレこむ事もありうるのを忘れるな!」
「あ、そうか…。だとすると、露骨に言わなきゃならないのね。
 最終日のセクンドゥムのやりとりかな。あの辺はそれまでの確認事項的な選択肢しかなかったですよね?」
「あとは、見立て殺人の元になった子守歌の分析も重要だよ」
「そうか…ここまで話していて思ったんだけど、さっき散々述べた真犯人の思惑や物語の方向性に対して、この謎解きはかなりしちめんどくさいものがあるかもしれませんね」
「最終解答が冷凍庫のアレへの導きだから一番重要なんだよね。
 この辺は読解力を求められる部分だけど、面白いというのとめんどくさいというのが微妙なんだよね。自分は面白かったが」
「すでに丸わかりなのに、“答えだけじゃなくて式も書け”って言われている計算問題みたいに思いました」
「そうだね、これがさっきの話との差異から生まれる違和感なんだと思う。
 やっぱ、謎解きはどんなになっても最終的な解答にインパクトがあるのは事実だから、それが先に悟られるようでは、どんなに緻密な造りでも“失敗”だったと言わざるをえないね。
 解読をやっている最中は面白くても、いざ答えを出してしまうと…」
「この話の本当の謎解きは、突き詰めれば“どうすれはタカを死なせずに済むか”という部分だけですよね?」
「ああ、そうなっちゃうんだね。それがランクを分ける最大のポイントだし。
 しかも、真犯人から散々嫌みったらしく付け加えられるくらいだしさあ」
「アレはかなりしんどかったですよ。私、いまだにはっきり“どこが切り替えポイント”なのか自覚してないんですよ。
 これを見定める事の方が、子守歌やセクンドゥムのアレよりも何十倍も難しいかと…」
「ひょっとして、それ俺が答えていいの?」
「え? 元締は知っているんですか?」
「当然じゃん。で、今回もっともブチギレしまくったポイントに抵触してっから、言うべきかどうか迷ってだんだがな」
「え? じ、じゃあひょっとしてまさか…」
「そう、その答えは“奈々子”
うわ−−−−っ、やっぱしそうなんですか?!
「7日目中盤辺りで、紫宵と奈々子、哲平と主人公が一同に介する場面あるだろ?
 あそこで奈々子と会話して、亮太の行方を聞く。
 この時『他の場所で会った事はないか』って選択肢を選び損ねると、それだけで事件が一日間延びしてしまうんだ」
「え、でもたしかあそこって…」
「あそこをしくじっただけで、紙袋の第四の指紋の持ち主も解らずじまいになるわ、涼雪は即死するわ、ランクは落ちるわ二日酔いにされるわと散々な目に遭うんだよ」
「わちゃ…! まさか彼女に命運の鍵を握られていたとは…!」
「いや、実際選択肢を選んだ後の情報はかなり貴重なんで、正規の流れから外れてしまう理由も解らなくはないんだが…
 あそこって、ヘタしたら紫宵がしゃしゃり出てきて会話を終わらせられるんだよな」
「選択肢制限…」
「展開上、納得はする…しかし、あいつに運命を左右されたのかと思うとすっげぇ腹立たしい!
 未消化で検出されたスイカグラタンの使い方といい、小道具(?)の利用法とかもめちゃくちゃ巧かっただけに、これだけはなんともガマンできないものが…怒怒怒怒」
「も、元締?! い、一体どうしたんですか?! ねえってば?!」
「とにかく、奈々子に対して怒っている理由は第4話で述べるっ!!
「あの、ひょっとして…最初の方で言ってた“オチ”って、第3話のエピローグの事とかじゃなくて…」
「これの事っ!」
「ぐわっ! やっぱりそうだったか!」
【第4話 傷ついたテディベア】
「なんか、第3話の緊張感が良い意味で解消される、ほんわかした話でしたね」
2人も被害者が出て、誤認逮捕がいくつも出る上にもっとも猟奇度高かった話を、お前は“ほんわか”と表現するのか?!
 …まあいいか。確かに、第4話はやっとミッシングパーツっぽい話に戻ってきて、ホッとさせられた所はあるしな」
「第3話のアクの強さと、第4話って絶対比較しちゃいけないですよね。これこそ別物として切り分けなきゃならないかも」
「事件は唐突に小規模になるけど、第一話でも出てきた友凛病院が事件の舞台になって、しかも陣堂医師が犠牲者になるなんて結構な意外性もあるし。
 充分面白かった」
「陣堂って、第二話に出てきて散々訳の分からない事呟いて、とっとと姿消したあの人ですよね?」
「そう。だけど、まさかあの人がああいう形で犠牲者になるとは…正直かなり衝撃だった」
「まあね。最初の頃では、とても死ぬような存在に思えなかったし。まして、その後がアレですものねぇ…」
「ううっ、本シリーズ一二を争う“萌えキャラ”の予感だったのに…」
勝手に“萌え”の概念を書き換えないでくださいよ、そこ!!
 良いキャラだった事は認めますけどね。
 でも、やっぱりプレイヤーがそう感じるという時点で、あの使い方は正解だったのでしょうが」
「池辺先生も、いきなりの訃報に驚かされたものさ。ああいう演出はさすがね」
「虚の突き方が実に巧いんですよ。
 第3話では、なんか構成に無駄な力が入っている感じがあって素直に楽しめなかった部分があるんですけど、この話は素直に事件に没頭できたというか」
「ま、これもオチについて色々思う事あるけどね」
「…また奈々子ですかぁ? ひょっとして。
 奈々子コーナーは後でちゃんと設けますから、そういう話は…」
「ちゃうちゃう!
 これも、最後にとんでもない部分があってズッコケさせられるんだよ。
 第3話とは違う意味で脱力するぞ。腹にサラシでも巻いて覚悟決めとけ」
「わかりましたよ…。
 あ、元締ちゃんと後ろ向いててくださいよ。
 うら若き乙女の柔肌見ようなんてしたら、月に代わってリボルバーファントム炸裂ですからね!」
ホントに巻こうとするなっ! 気色悪い事言うなっ!!
「で、まどかちゃんですけど」
どーしていきなりそこから入るんじゃい!
「元締、さっきから怒りっぽいですよ。もっとカルシウム摂りましょう」
「カルシウムって、摂ってもきちんと吸収されねーと意味ないんだけどな。
 …それはともかく、一応メインヒロイン…なんだろーなぁ、まどかって。てっきり、佐藤秀美かと思ったら」
「生肉で出来たマリオネット見て悲鳴上げたっきり退場ですからね。実に根性がない。お姉さん情けなくって涙出てくらぁですよ」
「そ、そーいう表現するかなぁ、普通?!
 …ま、まあしかし…俺もそう思ってたから」
「そういえば、そのシーンってBGMが“インターネットしている時”の曲なんですよね。
 夜の病院で死体が踊っているというなかなかに恐怖のシチュエーションなのに」
「あ、そういえばかなり場違いな音楽だった気が…」
「選曲ミスかバグだったんですかね?
 まあそれはおいといて…まどかですけど」
「いやにまどかにこだわるな」
最強の萌えキャラじゃないですか!
 とりあえず何でも適当に萌えとく貴方に、とやかく言われるすじあいありませんわ」
「おい…つい最近まで女子高生。その辺にしとかねーと正体バレちまうぞ(笑)」
「だいたい、元締が変なんですよ。
 陣堂が萌えだとか、3話ラストのタカの微笑みが萌えだとか、潤が萌えだとか…貴方は本当の“萌え”の意味がわかっていないでしょう。
 しかも、それらは一歩間違えたらすっごくヤバイ発言に聞こえるじゃないですか。
 そもそも、数年前一晩がかりでMr.Boo氏に説明されたでしょうに、貴方は…」
どわーーーーっ!! こんな所で萌え談義なんかすんじゃねーっ!
 いいじゃねーか、とりあえず萌えときゃ受けは取れるだろうが。
 だいたい、潤はお前が勝手に…」
「ほとんど動き回らないという変わった存在なのに、きちんと存在感アピールしてましたし、重要な役割を持っていましたよね」
……っっ!!
(↑いきなり矛先を変えられて、引っ込みがつかない)
「涼雪と比べると登場頻度も少ないし、描き込みも大した事ないけど充分な登場人物たりえている。
 やはり、こういう部分からも第3話の特異性が垣間見えますね」
「…お、お、お前なぁ…」
「ただの“テディベアの持ち主”に甘んじなかったのはさすがですね。
 朱原一家は、最終的に全員が物語進行に貢献してますからね。うーん、実に無駄がない…」
「…ま、まあ…。深夜に一人でうろつく神経はどーかとは思うが、ね。
 それが物語の重要なファクターになってんだから、文句も出ないわ」
「今回のアイテム・テディベアのルーくんについてはどうでした?」
「あー、それについてはちょっと思う事がある。
 今回のって、元々は事件に無関係だったのに、萌えキャラ・陣堂が細工に利用したために巻き込まれてしまったというものに過ぎないからな。
 なんつーか、あまり存在に重要性を感じなかったりする」
「…もう、萌えはいいですって。
 そうなんですか? 私はそんなに不自然さは感じませんでしたが」
「なんつーか、あのルーク(テディベアの名前)が希少価値が高いとか、オークションで高値になったとかのエピソードがまったく本編に絡んでいないというのがひっかかるんだ。
 今回はペーパーナイフといい、実はセクンドゥムや成美に引っかける必要性がさほどなかったりするんだ」
「そ、そーですか?」
「3話でのセクンドゥムの重要性は、紫宵の来訪と実行犯断定の推理の場になっているだけで、ペーパーナイフの存在意義はすでになくなっていた頃だ。
 4話は、たしかに“欠損した右目”を修復するという事と“マイクロフィルム発見”というポイントがあるにはあるけど、それは別にセクンドゥムである必然性はない」
「ちょっと待ってくださいよ。でも、右目のパーツは成美さんがいたからこそ入手しえた訳で」
「そこ」
「え?」
「だから、どーして今回の“ミッシングパーツ”がルークの右目だったのか? という事さ。
 あれは、ただ陣堂がこれを持っていて云々というくだりの決め手になっただけで、右目である必要性がないんだ。
 仮に右目の欠損がなかったとしても、あの話はそのまま進行出来た筈。第一、どうして右目だけが取れるわけ?」
「えーとですね、ぬいぐるみのパーツってのは結構固い物で作られている部分ってのがあるんです。
 今のはよくわかりませんが、昔のは目とか鼻とかを固く分厚いボタン状のパーツを縫いつけるというのがポピュラーでして、ボタンの横から指を差し込むと、縫い目の部分などがしっかり確認できるくらいだったんですよ。
 だから、そういう所に袖が引っかかったりして振り回した時、糸がもろくなっていたりしたらプツリと外れてしまうというのもあり得るわけで…」
「うーん、物理的な理由じゃないんだが…。
 俺が言いたいのは“なんか無理矢理欠損部分を作った”だけにしか思えないという事なんだけど」
「セクンドゥムや成美さんという存在がハナっからこのゲームに存在しなかったとしても、テディベアじゃなくて普通のぬいぐるみだったなら、事足りてしまうってこと?」
「そう。朱原夫との連絡をつける際のキーになったものではあるけど…。
 とにかく、あまりピンとこなかったという事にまとまるかな」
「でも、それって第一話のオルゴールでも言えた事じゃなかったですか?」
「オルゴールの場合は、それ自体にメッセージ性があったでしょ。
 あれと比較するならば、今回のルークはまだ事件には関わっていた方だよ、確かに。
 でも、関わった割には必要性を感じないというのは、どうもね。
 なんつーか、無理矢理骨董に絡めた感が強過ぎなんだよ。今回に限っては」
「うーん、そんなものですかねぇ…?」
「では今度はこちらから。
 事件内容とか、推理自体はどうだった?」
「今回は主人公の活動がとっても面白かったと思いますよ。
 細かい謎を解明していく過程とか、精神状態とか…。
 特に、前回の事件がトラウマになって残ってしまっている部分とかはとっても良くキャラクターを引きたててましたね」
「最初、“なんだぁ、今回は哲平抜きなのかぁ”と思った段階で、すでにシナリオの術中にはまっているんだよね(笑)。
 で、こんなよろよろの状態で大丈夫なのか主人公…とすら思わせてしまう。
 プレイヤーをそこまで導いた段階で、キャラクター作りは完全に大成功だったね」
「そうですね。今回は妙にキャラクターが生き生きしてました。
 全体的に影が薄い京香も要所でいい味出してたし、特に氷室刑事と森川がね」
「そう書くと、森川が刑事じゃないみたいだ(笑)。
 そう、さっきは触れ忘れたけど、今回あの刑事コンビが本当においしいんだ。
 さらに加えて、突然浮上した“森川、京香に萌え萌え”という事実。ちょっと唐突だったけど、よく見るとちゃんと伏線張られていたんだよね」
「あの車の中のやりとりで、森川が好きになってしまいましたよ」
「単純な憎まれキャラにしていないのが見事だよね。いつも、嫌になる手前ギリギリの所で引いているからそんなに印象が悪化しないし。
 ラストも、あいつがいなかったら締まらなかったわけだしなあ」
「どうも氷室刑事の利便性と融通の広さに隠れて損している感があったんだけど、今回の森川は合格点にオマケつけてプレゼントですよ☆」
「なんかキャラの話に逸れてしまった。で、話は?」
「突然狭い範囲の話になってしまって戸惑いはありましたが、よくまとまっていたと思いますよ。
 実際、掛け値無しで楽しめましたし。
 ただ、気になる点がいくつかありまして…」
「ああ、多分俺とは全然違う部分を指していると思うんだけど、そちらの感じた気になる点を教えてよ」
「思いきり真犯人に触れてしまいかねない部分なんですけど…
 今回の事件の発端になった“毒”ですが、私、最初これについて“まさか病院内の人間が犯人という事はあるまい”と思ったんですよ」
「あ、言いたい事がわかったような…」
「だいたい合ってると思いますよ。
 あの毒が、病院内もしくはその関連から真犯人が入手したというのであれば、それが見えた段階で真犯人は確定してしまうんですよ。
 推理するまでもなく、ね」
「たしかに、あの辺りはムチャだったなあ」
「そもそも、病院内での事件というクローズフィールドタイプの推理ドラマにするには、登場ゲストが少な過ぎなんです。
 看護師が4人に医師が2人、院長…あとは入院患者とその関係者だけですからね。
 しかも、人間関係などから犯行動機などが絶対にないだろうとしか思われない人物が大半を占めていて… 」
「そうかあ…。あの毒の入手経路という点に目をつけたプレイヤーをうまく欺くためには、せめて医師クラスの人間がもっと大勢欲しいところかもしれない」
「看護師の数をもう一人減らして、医師を増やすとか…。
 医師2人のうち一人は被害者である陣堂なんですから、残った若林一人では“怪しいうちにも入らない”んですよ」
「最後の犯人候補がたった3人、しかもそのうちのほとんどが“選択肢に出てくる事自体無理がある”からなあ」
「そういう所に不満を感じたんですよ。
 ましてや真犯人自体、プレイヤーの“まさかそんな…”という気持ちを煽る事すらなしえていないわけで」
「まあ…規模や仕掛けの割には、妙にチープな事件だったという印象が残ってしまうってのもあるしね」
「もう少し、謎への探求心を煽る工夫があってよかったと思います。
 せっかく“踊る死体”とか面白いシチュエーションがたくさん用意されていたというのに…もったいない」
「最後の決め手がマイクロフィルム…ってのも、なんか突然にありがちな展開にされてしまったし」
「まさか今時マイクロフィルムと来るとは思いませんでした」
「いや、それは別にいいんだよ。
 マイクロフィルムってのは、現実にも金融機関とか博物館とか官庁などで多用されているし、法的証拠性の高さや規格の統一性も認められているんだから」
「…は、はあ…」
「だけど、自分が気になったのはそれが出てくる事よりも“保存”についてなんだよね。
 現像処理済み写真フィルムの場合、温度・湿度や保存環境の汚染状態によって大きな影響が出るんだ。
 光なんかは当然として、水分やカビ、微生物や化学物質との反応・接触で劣化する事なんかザラなのよ。
 だから、ものすごーい厳重な管理が必要なシロモノなんだね。
 病院で使用されていたという事そのものには違和感はないのだけど、それをめぐってのやりとりが、あまりにも…」
「…あ、ああ…そ、そうなんですか…」
「特に、マイクロフィルムを呑み込んだと思って死体を解体しちゃうって所ね。
 そんな事したらもう何の役にも立たなくなる可能性が高いんだけど、それが考察に入った上でのシナリオ構成だったかというと…ちょっと、ねえ」
「なんか、妙に詳しいですねマイクロフィルムに…」
「ふふふ(謎)。仮に何かでコーティングしてあったとしても、体内に入った時の悪影響は計り知れないものがある。
 それだけデリケートなものらしいからね」
「まあ、あの演出にはもっと別な意味があったわけですし、なくてもいいとは申しませんが」
「もっと物理破損に強い媒体を持ち出してもらった方が良かった…ってな所かな?」
「まあ、そうかもしれませんが。
 かといってスマートメディアみたいなものを出されたら…緊張感なくなるかな?
 それはいいとして、もうちょっと材料を工夫してもらえれば、事件内容そのものの密度をより高められたかな、なんて考えると複雑なんですよ」
「面白かったからこそ、もっと突き詰めて欲しかったという所かな?
 だけど、俺は大きな不満と問題を見出しているよ」
「不満は、これまでの前振りでと---ってもよくわかりますよ(^_^;)。
…だけど、問題って?」
「まず不満だけど…このシリーズ最大のお邪魔キャラ・奈々子を前面に押し出したってぇのは、正直どーかと思うなあ
「あ、やっぱり…地雷踏んじゃったかな?」
「一話でも二話でも思った事なんだけど、奈々子って、ほぼ間違いなく制作側が思っている以上にプレイヤーに不快感を与えているキャラだと思う。
 もし、それがわかった上で意図的にああいう性格に設定しているんだとしたら、相当悪質だよ」
「…実は、これについては私も一部同意なんですよ。
 悪い場面ばかりではないけど、さすがに今回の病院潜入って提案にはクラクラきましたもの」
「始末に終えないのが、それでちゃんど事件解決に反映してしまう事なんだよね。
 あんなデタラメなキャラのデタラメなアイデアのためにストーリーが好転しても、全然嬉しくないよ」
「非常識な事しかしないキャラクターって、このゲームのシナリオには合わないんですよ。
 可愛げのあるドジを通り越して、明らかに意図的な破壊行動をしているってのが見えてきちゃうと、こちらとしても食傷気味になるわけで」
「普通、あんなバイトいたらどんな事情があってもクビにするだろうに。自分が店長だったら有無を言わさず宣告だね。
 まあ、それも2話くらいまでのやりとりならばまだ許せるんだよね。サイバリアに行かなければいいだけだし。
 だけど、今回はどーも無理矢理ストーリーに絡めたって感じが強くってさあ…」
「そうですか? 今回の導入部とか3話くらいならばまだ…」
「百歩譲って、3話レビューの時に触れた運命の選択については認めましょ。
 だけど、今回のあの病院での奇行、腹立たなかった奴っているのか?
 陣堂の死体に向かって飛び出していった時、マジメに殺意がほとばしったぞ!」
「ああ、エキサイトしてるよ元締…帰ってきて…」
「まともに考えれば、あの時点であいつは自分の発案そのものをぶち壊しにしていた可能性もあるじゃん。なのに、よくあの程度で落ちついたよ。
 なんか、シナリオ全体が奈々子のおバカな行動を容認するためにご都合主義に走っているかのような気さえする」
「そ、それはさすがに言い過ぎでは…? あれがなければ主人公は物置に入れなかったわけだし」
「だから、意味が生まれちゃう事が逆に腹立たしいんだってば。
 そこまでして無理にストーリーに絡める必要がある?
 奏っていう見事な眼鏡っ子…もとい、ゲストキャラがいるんだから、そいつと絡ませれば充分事足りるじゃん」
「怒ったんですね、相当怒ったんですね元締…。非常識キャラ大っ嫌いだものねぇ…」
「奏にリジィ、まどかに学園長と、あんなに多くの萌えキャラが出てきたのに、なぜ奈々子を使う必要がある! うがーっ!!
「さりげにまた萌え概念覆そうとしてるよこの人!
 それに、学園長と病院に潜入してどーするってのよ(笑)」
「とにかく、奈々子についてはホントに考え直していただきたいと思うよ。
 第3話での正装や、第4話ラストでわざわざ復唱される池辺先生の“奈々子評”なんかから特別扱いしたかったって感じがプンプンするんだけどね。
 とにかく、奈々子はもういらん! 消してしまえ!!
「ああ、とうとう爆発しちった…」
「で、さっき言ってた問題とは?」
「そう、実はこの4話ラストには、奈々子の存在をも超越するほどの問題があるんだ。
 これ、何回もリプレイして確認したものなんだけど…」
「うーん、そんな重大なことがラストにあったの? 全然気付かなかったけど」
「えーと、前回も触れた“探偵ランク”なんだけど、本作はランクによって次の話に進めなかったり(3話のみ)する他に、シナリオが大きく変わるというものがある」
「そうね。前作でもそういうのがあったけど、今回は展開が変わるわ死亡者数まで変わるわ」
「4話でも、全然関係ない人間が逮捕されたりするんだけど、そういう部分の切替になる選択肢があまりに巧妙すぎて、なにがなんだかわからなかったりするんだ。
 時には、そこに至るまでの積み重ねがすべて無視されてしまうって事も珍しくないし」
「さっきの、奈々子の選択肢もその一つな訳ですか。
 だけど、事件に直接抵触しているような内容の選択肢だったら、いくらなんでも…」
「いいところに気がついた。
 ところが、4話にはその条件から大きく外れてしまう“重要な”選択肢があるんだよ」
「ええっ?! い、一体それは何ですか?」
「4話ラストは、森川と共に犯人を包囲して云々…という奴なんだけど、実はこの手前の選択肢、どれをえらんでもそこから先の展開が同じという大問題があるんだ
「……って、それ、犯人を特定する選択肢じゃないですか!!
「そうなんだ!
 実は、そこに至るまでの展開を理想的に進めた上で辿りつくと、そこの三択のどれを選んでも、エンディングも探偵ランクも変わらないっていう事実が確認されているっ!!」
(元締のセーブデータから確認中)
「……あっ、ホントだ。
 アホな選択した直後に真犯人が特定されちゃうから、主人公の選択に意味がないのか…」
「一応、森川と合流するタイミングがズレるという違いはあるけどね。
 これを知った時はさすがに引いたよ。いったいどーいうシステムでランク測定してたやら」
「こ、こればかりは…フォローのしようがないです…」
「本来なら、ここのミスだけでランクを下げてもおかしくないくらい大事な場面の筈だし、プレイヤーだってそれを警戒してかかるだろうに。
 これ、ひょっとしてバグか何かだったのかな…?」
「わからん…。このデータではまともに進めばRANK-Aになるものを利用しているんだけど、ね。
 もしかしたらAA狙いの時には落ちるのかもしれん」
「まあ、それならばまだ話はわかりますが。さすがにAAは取れませんでしたか」
「及ばず…ね。とはいえ、やっぱりそれでもなんか変だよここは」
(総評)
「さて、色々と…ほとんど文句しか言ってないような気すらしますが」
「いや、ごく一部をのぞいては“こうだったら良かったのにな”という程度のものだし、決して現状の内容が悪いとか、面白みに欠けるというものではないよ。
 とにかく安直ではあるけれど“やっている間はとっても面白いし、楽しめる”というのは事実だし」
「謎解き物が終了してしまうと、全体を見直せる分評価が最初と変わったりしてしまうものですからね」
「そう。例えばテクモの『零〜ZERO〜』も最初はめっちゃくちゃ怖いけど、3周もすれば怖さが軽減してしまうよね。
 でも、だからってあのゲームを“全然怖くない”と評価したりはしないでしょ、普通は」
「遠回しな表現ですが、言いたい事は解ります。
 続編も大変楽しみですしね…って、このゲームまたドリキャスで出るんですよね?」
「最後までドリキャスにつき合うつもりらしいね。
 少なくとも末期の水を取る気ではいるんじゃないかと…」
「一部では、第三部発売後にすべてを統合した版をPS2で出すのだろうか…という懸念が広がっていますが…」
あ、その話マジ
…え゛っ、今なんと?!
「実は、これについてはある方面からちゃんと裏は取った。
 実際にいつの発売になるかはともかくとして、いずれやるつもりはあるらしいよ。
 急激な予定変更でもない限り…つまり、これをまとめている段階では間違いなく事実だよ」
だったら、PS2版買った方がいいって事になりますよね、第三部については…?
「いんや、自分はどっちにしてもドリキャス版買うし、その後にPS2版も買うよ。
 内容修正の可能性もないとは言えないし、細かな違いもチェックしたいし。むしろ希望」
「まあ、貴方という人は…次にPS2版『久遠の絆・再臨詔』買ったら、いったいいくつ目の久遠になるんですか?」
4つ目じゃないかな?
 でも、まだドリキャス版の保存用新品買い直していないから、まだまだだよ」
「…(-_-;」
「それはともかくとして、次は来春(2003年)を予定しているらしいから、今から楽しみだよ。
 すでに本作でいくつもの伏線を提示しているからね」
「おっ、やっぱり最後の締めのネタはその辺なんですか?」
「そうだね。
 第3話で登場した謎の“偽・柴田”の正体や、主人公の求めるペンダントの逸話、恵美の忠告、さらに…(第3話の真犯人)との確執、あからさまにアレな第4話の最初の依頼…
 まだまだあるけど、ホントに収拾つくのかかなり不安でもある」
「これらをすべてまとめ上げて、最後にきっちり違和感なく終わらせる事が出来たなら、相当すごいレベルの内容になりますよコレ」
「うーん、自分らはここしばらく、“伏線振りまくだけ振りまいて全然収集つけなかった”某人気番組を見続けてきたせいか、不安度はかなり高まっていたりする」
「アレとこれを比較するのは失礼でしょ(暴言)。
 だけど、わかりますよその気持ち…。
 今回は、次回作への伏線提示と同時に事件を進行させたという事もあり、すでに所々にほころびらしきものが見えていますから。
 まだ、ほころびかどうかは断言できないのかもしれませんが」
「この作品は、ど真ん中に位置しているだけあって、本当の評価は次回作をクリアしてからでないと下せないのかもしれないね。
 それが自分の最終的な評価かな」
「なるほど…大変参考になりました」
「次回、主人公がメインの位置に来るだろう事は当然と考えて…メインヒロインって、やっぱり京香や成美になるのかな?」
「普通に考えたらそうですが、主人公にメールを出している昔の友人の誰かという可能性もありますよね。
 それはそれとして、あの二人がメインヒロインの位置に来るのだとしたら…扱いは相当慎重にやらないと、とんでもない事になっちゃいますよ」
「言えてるな。すでに、今回はかなりこの二人の使い方に苦労したらしき痕跡が見えるからね。
 京香なんか、いなかったとしても成り立ってしまうかのようで…」
「いいんですよ。
 彼女は、最後に主人公を迎えに来るという重要な役割があるんですし」
「じゃあ、成美は適度に場を引っかき回すトラブルメーカーってか?
 否、実際は後ろで事態を静観している知恵袋的な存在なんだろうが」
「主人公が“帰るべき”所として存在している京香は、やっぱり大切ですよ。
 というか、主人公の周りの人達って、いなくても話に影響はないかもしれないけど、いてくれる事によって得られるものが大きいんですよ。
 あの登場人物群が半分程度しかなかったら、もっと殺伐としていましたよきっと」
「久遠の時はまさにそんな感じだったものな」
「だから、そういう位置付けにいる人達をヘタに動かす事は、とてつもない危険をはらんでいるとも言えますね。
 現状維持が絶対良いとは言いませんが、充分な練り込みに期待したい所ですよ私は」
「すでに、今回哲平を動かして好転、奈々子を動かして失敗しているからな」
「奈々子は…まあ、成功とは言えませんね、少なくとも」
「やっばり、これまでの4回分の事件であらかたの人物背景が把握できた訳だから、プレイヤーがそういう状態にあるという事を理解した上での“嬉しい裏切り”を強く望みたい。
 …って感じで締めかな?」
「そーですね、お疲れさまでした」
「おー、乙です!
 しかし、今回妙に綺麗に終わりそうだなぁこの会話レビュー…」
「でも、“最終回で全員死亡”なんて『警視庁殺人課(81年)』みたいなオチだけは、いやですよねー
「最後にそう持ってくるか、元女子高生(笑)!」

(後藤夕貴)


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