G3-X・ピンク 第23話『風見志郎・ダブルタイフーン!』
野獣のような唸り声が背後から聞こえ、振り向く藤兵衛。
藤兵衛「!」
突如!煙りの中から、イナゴ・ロード《ネブラ》が出現!
「フジュルルゥゥ―――!」
その鋭利な牙で藤兵衛に襲いかかろうとした、その瞬間!
「トイヤー!」
鋭い突きと蹴りでネブラを蹴散らす一人の男!
「志郎!!」
藤兵衛は喜びと驚きが入り混じった声で、その名を呼んだ。
「トウッ!」
なおも襲いかかるネブラを、空中高く投げ飛ばす『風見志郎』!
藤兵衛「志郎!」
駆け寄る藤兵衛だが…
志郎「オヤジさん…俺は何故…ここに?」
藤兵衛「!? …」
志郎の言葉に強張る藤兵衛の顔…
あの時…
藤兵衛(ひょっとして…俺達が乗っていたヘリを襲った衝撃波は、V3の『逆ダブルタイフーン』の暴風だったのか?)
志郎の両肩を掴み、問い掛ける藤兵衛。
藤兵衛「何も覚えていないのか? …ひょっとして…逆ダブルタイフーンを使ったショックなのか?」
志郎「逆ダブルタイフーン?!」
藤兵衛の言葉を受け、記憶を辿ろうとする志郎。
だが…
ネブラ「ファウゥ――!」
新たなネブラが頭上から襲いかかる!
志郎(記憶を蘇らせる《余裕》は今は無い…)
危険を察知した志郎が、俊敏な動きで奇襲攻撃をかわす!
ネブラ「グアゥオゥ――!」
一撃目をかわされたネブラだが、瞬時に二撃目の攻撃を繰り出してくる!
志郎(左ミドルキック!)
蹴り足に対して、右膝に右肘を加えてブロックする志郎。
志郎(何!)
身体に当たる直前! …一瞬、ネブラの蹴り足が止まった!
次の瞬間!
蹴り足を上げて、止めた態勢から伸びるように左ハイキックが繰り出された!!
ドコオッ!!
右側頭部に痛烈にヒット!
志郎「クッ!」
ネブラ「フウゥゥ――!」
吹っ飛ぶ志郎を追うネブラ!
立ちこめる霧の中に両者の姿が消えていく。
藤兵衛「志郎!」
呼び掛けてみても、返事は無かった。
霧の中に叫び声が飲み込まれていく…
視界から両者の姿が消え、不安にかられる藤兵衛。
志郎「おやっさん! 手強いな…こいつらは…」
何処からか…志郎の声が聞こえてくる。
藤兵衛「志郎! 何処にいる?!」
志郎「『変身』しないと、勝ち目は無さそうだ」
決意を感じさせる志郎の言葉。
藤兵衛「志郎! 逆ダブルタイフーンを使用して、まだ3時間が経っていないんだ! 変身は無理だ!」
煙りの中に響く、重い藤兵衛の叫び。
逆ダブルタイフーン使用後、3時間はV3に『変身不可能』な風見志郎…
志郎「おやっさん! 無理でもやらなくては!
…どんなに絶望的なピンチに襲われても、諦めない…
五里霧中の絶望の中でも諦めなければ、突破口は必ず! …見つかる!」
ダブルライダーの双方を折衷した変身ポーズをとる志郎。
「変・身! ブイ・スリャァー!」
………作動…しない…二つの風車………
藤兵衛「…やはり…駄目か…」
志郎の姿は見えないものの、変身不能を敏感に感じ取る藤兵衛。
だが……
藤兵衛「……!」
再び聞こえる、志郎の声!
「ふん!」
初動作…両腕を右方向に水平に構えて始まる、二号ライダーの変身ポーズ。
「変…」
……キュル……キュル…キュル! …
微かに動き始める力の風車!
「身!」
キュル! キュル! キュル! …
微弱だが、確実に回り出す力の風車!!
第二動作…左斜め上に挙げた両腕から繰り出す一号ライダーの変身ポーズ。
「ブイ!」
ギュル! ギュル! ギュル!…
力の風車に呼応するかのように、技の風車も回り出す!
「スリャァァ―――!!」
ギュウゥ――ン!!
志郎の決意と熱意に反応して、ベルトのダブルタイフーンが高速回転を始めた!
志郎(あと…もう少し…)
「トウッ!!」
ジャンプする志郎!
ゴオォォ―――!!
志郎(風よ! 大自然の力よ! …俺に力を! …与えてくれ!!)
風のうなりと志郎の叫び!!
グオォ―――ン!!!……
力と技の風車が回る!!
藤兵衛「…! オオッ!」
空中回転し、藤兵衛の眼前に降り立つ異形の影。
噴煙にたなびく2枚の白マフラー…赤い仮面の異形の戦士!!
「仮面ライダーV3!!」