G3-X・ピンク 第19話『Gの戦士・その名は…』
 聞こえないか君…
 聞こえるだろう君…
 ほら あの男の騒音…


 いや、唄が………


『♪ ガンガン♪ ガンガラガンガ♪ ガンガラガンガ♪ ガン♪』
 『軍艦マーチ』のメロディー
 …いや、『がんがんマーチ』を口ずさみながら『スズキランディ50』を駆る男…
 ゴリラをモデルにしたような銀色の仮面を被り、同じく銀色の強化服(?)を身に纏っている。
 両胸には、それぞれ赤く『G』の文字が入っており、腹部には巨大なベルトを装着。
 そして背中には、彼の名が書かれた幟を立てている。

『日本一 がんがんじい』

がんがんじい「何や? 何や?」
 前方の封鎖された交差点で警戒中の警察官が『がんがんじい』に呼びかけている。
警察官「この先は通行禁止になっています! 引き返し…何だ! あいつは?!」
 その珍妙なる格好に一瞬、唖然となり、声が裏返る警察官。
がんがんじい「退け! 退け! 緊急車両や! スーパーヒーローのお通りや! 退かんかい!! 退かんと『がんがんブレイク』を、お見舞いするでぇー!」
 叫びつつ、一気に交差点を突破する『がんがんじい』!
警察官「オイ! ▲◇○×※! ……」
 制止した警察官が、まだ何か叫んでいるが、構わず走り去るスズキランディ50。
がんがんじい「この先には何かあるでぇ! がんがんじい様の勘に間違いはあらへん!」

 根拠も無しに突っ走る『銀の仮面の暴走戦士』。


海岸付近の道路・合流ポイント

 合流ポイントで停車するTRCSと黒覆面車。
 氷川、すぐに飛び出し、辺りを見まわす。
氷川「まだ、来ていない…一条さん! まだですか? こうしている間にも、小沢さんが!」
 過酷な戦いに赴いている澄子の事を思うあまり、思わずきつい調子で言う氷川。
「心配するな。まもなく到着する時間だ」
 氷川の心情を察しつつ、冷静に答える一条。


道路G

『♪ ガンガン♪ ガンガラガンガ♪ ガンガラガンガ♪ ガン! ♪ ガンガラガンガ♪ ガンガ♪ ガガ…』
 飽きもせず、エンドレスに『がんがんマーチ』を唄い続けるがんがんじい。
がんがんじい(ん?)
 その歌を掻き消すように、後方からサイレン音を高らかに響かせながら走ってくる警察車両。
 合流ポイントに急行するGトレーラー!
 並ぶ間も無く一気にスズキランディ50を抜き去って行く…
がんがんじい「ヤッパリ! ナンかある! 何かとてつもない陰謀の匂いがするでぇー!
 がんがんじい様は悪のある所、必ず! 現れる! よ――し! 行くでぇ――!!」

 深く考えずに突っ走る『銀の仮面の迷走戦士』。


海岸付近の道路・合流ポイント

一条「笹山君! 我々は合流ポイントに到着した。あと、どれぐらいで合流できる?!」
 TRCSの通信機で呼びかける一条。
 「一条さん! 今、到着しました!」
 笹山望見の応答が終わらぬうちに、聞こえてくるサイレンの音。
 サイレン音の方向に振り向く三人。
 白の車体のGトレーラー1号車(ACTROS2535)が近づいて来る。
氷川「来た!」
 思わず、駆け出す氷川。
 その氷川を追おうとするが、TRCSのコール音が鳴っているのに気付き、通信に応じる一条。
榎田「一条君、お待たせ!」
一条「いえ…」
 TRCSの通信機から聞こえてくる榎田ひかりの声に、心強いものを感じる一条…


お化けマンション

 G4の水流波が、G3-XPを枯葉のように宙に舞わせる。
 瞬間…意識が飛ぶが、地面に叩きつけられて、再び意識を取り戻す澄子。
 G4の容赦無い攻め。そしてストロンガー、ライダーマン、V3との連戦で体力の消耗が激しい澄子。

(このままでは、G3-XPより私の方が先にやられてしまう…そしてG4と連動している人間も…)

 焦りの色が濃くなる澄子。


Gトレーラー1号車・OPルーム

氷川「小沢さんは?!今、どうなっているんです?!」
 OPルームに入るや、問いかける氷川。
笹山「それが…現在、通信不能の状態で状況確認が取れないんです」
氷川「!」
笹山「V3と交戦中という所までは確認が取れたのですが、その後、送受信ができない状態になり…現在、原因を調査中です」
氷川「……」
 ただならぬ状況に混乱、困惑する氷川。

笹山「それと、一つ気になる事が…」
氷川「?」
笹山「戦闘地点へ誘導する為、ルートの確保を行なっていた杉田さんからの報告なんですが…」
氷川「……」
笹山「杉田さん達が、立花レーシングクラブ周辺区画の封鎖作戦を進行する前に、一部の周辺道路が緊急の工事、交通事故で封鎖状態にあったという事なんです」
氷川「……」
笹山「確証は無いが、作為的なものを感じる…我々以外に『何か』が動いている…杉田さんは、そう仰っていました」
氷川「!」

『何か』が動いている? …切迫している事態!
(急がなくては…)焦る氷川。


海岸付近の道路・合流ポイント

がんがんじい「ガンガ♪ ガンガ♪ ガンガ♪ ガガ♪ ガンガ♪ ガンガ♪ ガーン♪♪ …あっ! さっきの車やないか!」
 がんがんマーチの途中…停車しているGトレーラーに気付くがんがんじい。
 Gトレーラーの傍にはTRCSと黒覆面車も停車している。
がんがんじい「緊急車両が停まっている…という事は、敵もすぐ近くに居るっちゅう事やな」
 ミニバイクを停めて、辺りを見回す『がんがんじい』。
 しかし…それらしい者も見当たらず、耳を澄ましても…聞こえてくるのは波の音だけである。
がんがんじい「おかしいなぁ…俺の見当違いなんやろか? ……あっ!!」

 ふと…空を見上げて声を上げる『がんがんじい』。
 ちぎれたような雲間に見え隠れする黒い物体?
がんがんじい「何や? あれは? …黒い…雲?? …いや、違う! これは怪しい…怪しいでぇ!
 そうか! この緊急車両は、あれを追ってるんやな!」
 頭の中…冴えているのか? いないのか? 爆裂寸前の『がんがんじい』。
がんがんじい「よっしゃあ! 俺も早く追いかけな…ちゅうてもコイツじゃあ、追いつけんか…」
 『スズキランディ50』を見やり、小さな溜め息をつく『がんがんじい』。

 だが……

がんがんじい「……! …ええ事、思いついた♪

仮面下、笑みを浮かべる男…その名は矢田勘次。


Gトレーラー1号車・OPルーム

榎田「氷川君。焦る気持ちは分かるけど、少し落ちついて」
 氷川の眼を見据えて、声をかける榎田。
 凛とした中にも優しさが包まれている眼差しと声に落ちつきを取り戻す氷川。
 そこへ一条と須藤が飛び込んで来る。

 緊張した空気の中、指示をする一条。
一条「氷川主任には今からG3-Xを装着して、ガードチェイサーで現場に急行してもらう」
氷川「はい」
 一条の言葉に頷く氷川。
一条「その後に私もG3-Xを装着して続く事になる。榎田さんと笹山君は氷川主任と私のバックアップ…」
氷川「! …一条さんもG3-Xを装着?!」
 驚愕する氷川に構わず、なおも言葉を続ける一条。
一条「須藤君はOPルームで緊急事態に備えて待機を」
 須藤、榎田、笹山…それぞれに決意の表情を見せて頷く。

氷川「一条さんもG3ユニットに配属されたのですか?」
 一条の指示が終わるや、改めて問い掛ける氷川。
一条「小沢管理官は以前から、対アンノウンの戦力として氷川主任装着のG3-Xだけに依存している事に限界を感じていて、抜本的な解決プランを検討していた」
氷川「………」
一条「その答えがG3ユニットの二班体制だ」
氷川「………」
一条「私と榎田さんの配属は決まっていたんだが、新たに配備されるG3-Xの調整に時間がかかって、正式に活動するのはまだ先の予定だった」
氷川「それが今回の事件で急遽?」
 一条、軽く頷き…
一条「緊急出動になったワケだ」
笹山「私もGトレーラーに乗る事になって、驚きました」
一条「7人ライダー襲撃事件後の演習ルームにおける笹山君の迅速で的確な対応を認めた小沢管理官がG3ユニットに急遽、推薦したんだ」
氷川「G3ユニットの拡大…」
 一条と笹山の話に反応せず、一人呟く氷川。
一条「小沢管理官は君の負担を軽減したいと、ずっと考えていた」
 再び、氷川の方に向き直り、肩をポンと叩く。

「……小沢さん……」

 一条に軽く頭を下げ、厳しい表情でハンガーに向かう氷川誠。

 榎田と笹山も装着準備の為、後に続く。

「私は一旦、Gトレーラーを降りてTRCSで追走します」

 その一人一人の表情の確かさを見てOPルームを退室する一条薫。


←BACK
→NEXT