G3-X・ピンク 『深海理沙・兇銃GM-01改4式』

黒覆面車内

須藤「事件後…第28号に重傷を負わされた私は『合同捜査本部』からの離脱を余儀無くされました」
 遠い目のまま、語り続ける須藤。
須藤「『合同捜査本部』には一刻も早く復帰したかったのですが、右手の回復具合が思わしくなく…」
 その言葉に、視線を須藤の右手に移す氷川。
氷川「……」
須藤「射撃大会で優勝した事がある腕にも、狂いが生じるようになりましてね…」
氷川「……」
須藤「リハビリには励んでいたのですが…結局、『合同捜査本部』への復帰は叶わず…未確認生命体事件は終結し、『合同捜査本部』は解散」
氷川「……」
須藤「あの時は事件が終結した安堵感と…何か、やり残したようなものがあるような…複雑な気持ちが交錯しました」
氷川「………」

須藤「しかし、その後…」
 短い間の後、再び語り始める須藤。
須藤「未確認生命体による一連の事件が再び起こる事を予期して、警視庁が考案した二つの計画に私は興味を持ちました」

氷川「『S.A.U.L.』と『G3システム』…」
氷川の言葉に頷く須藤。

須藤「そう、新たなセクションとして警視庁刑事部…若しくは警備部に『未確認生命体対策班』が設立されるという計画。
そして、対抗装備の開発である『Project G3』」
氷川「……」
須藤「正義を貫くには『力』が必要…第28号の事件で、その事を痛感した私は何としても、『未確認生命体対策班』に配属されたかった」
氷川「……」
須藤「特に第4号をモデルとした特殊装甲強化服『G3』は是非、装着したいと思っていました」
氷川「……」
須藤「G3を装着して、第4号に匹敵する…いや、それ以上の力を得るのは興味深い…」
氷川「……」
須藤「だから、装着員募集の告知の時は逸早く立候補し、テストを受けたのですが…」
氷川「……」
須藤「結果…選ばれたのは…あなただった」
 一瞬、須藤の表情に暗い影が差した。


お化けマンション

 破壊と爆風、煙の余韻が収まり、再び対峙するG3-XPとG4。
 
 どう動くべきか…迷う澄子。
 どう動く? G3…自信に満ちた表情の理沙。

「ESP信号伝導率89.4%…」

 動く気配の無いG3-XPを、じっと見据えるG4にトレーラーからの通信が…
理沙「ふッ…」
 通信を聞き、口元に笑みを浮かべる理沙。
 そして…
 構えていた『ギガント』を地面に置き、右足の簡易ホルスターから【GM-01改4式】を取り出すG4。

 ドウッ!

そのG4より早く、GM-01改を発砲するG3-XP!

ドウッ! ドウッ! ドウッ!

 矢継ぎ早に連射!

 G4の胸部ユニットに浴びせられる銃弾!
 GM-01改4式を発砲せず、余裕で受け続けるG4。
理沙「G4にGM-01が効かない事ぐらい、分かっている筈…」

 ドウッ! ドウッ! ドウッ!
 ひたすら、撃ち続けるG3-XP。

理沙「天才小沢澄子も、戦いに関しては凡才…という事ですか?」
澄子「……」
 理沙の言葉に反応せず、なおもトリガーを引き続けるG3-XP…


Gトレーラー

「小沢さん!無駄弾は使わない方が!」
 澄子に呼びかける尾室。
 「武装」表示モニターに映し出されているGM-01改の残弾数が20を切っている…


お化けマンション

 ドウッ! ドウッ! ドウッ! ………
澄子「!」
 GM-01改の銃口からマズル・フラッシュが消え、静寂が流れる…
 GM-01改を右足に収めるG3-XP。
G4「 もう、お終いですか? …今度は私の番ですね」
 仮面の中で不敵な笑みを浮かべる理沙。
 敵意と憎悪の光を放っている理沙の瞳が、G3-XPの胸部に照準を合わせる!
澄子「!」
 お返しとばかりに、胸部ユニット目掛けて集中砲火!
 激しく襲いかかってくる銃弾の嵐!
澄子「うっ!…」
 弾着の衝撃に、特殊装甲強化服に守られた澄子も一瞬、意識が遠くなりかける…
 舞うように倒れるG3-XP !
理沙「貴方の踊る姿をもっと、見たいですねぇ…早く、お立ちなさい! 小沢管理官!」
 からかうような口調から一転…静かだが強い口調で言い放つ理沙。
「 ! 」
 澄子、仮面の中で唇をきつく噛み締める。


G4トレーラー

「ESP信号伝導率93.3%!」
 コントロール室で慌ただしく動き回る人の中…
 ESP-BOXの中で、頭部、両手、両足を拘束され、身動き一つしない響子。
響子「……」
 目を瞑り、額には薄っすらと汗を滲ませている。


お化けマンション

 再度、胸部に照準を合わせて待機しているG4…
 G4を見据えながら、立ちあがろうとするG3-XP。
 仮面下…表情を変えずに引き金を絞る理沙。
 火を吹くGM-01改4式!
 再び、G3-XPの身体が地面に叩きつけられる!
澄子「……」
 伏したまま、起き上がらない…
理沙「フッ…大人しくなりましたねぇ…小沢澄子は威勢がいいだけ…
澄子「……」
理沙「その威勢の良さもなくなりましたね」
 澄子、俯いた状態で呟くように…

「…負けない…」

理沙「?」

「あなたには絶対に負けないわ!!」
 顔を上げ、叫ぶ澄子。

理沙「どうやら、あなたは現実を直視できないタイプのようですね」
 二人に新たなる緊張感が走る。
理沙「つまらない虚勢を張っても、仕方が無いのに…」

ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!!! …
再び、火を吹く銃口!
乱射されるGM-01改4式!

ギギギン! ギギン! ギギン! ギン!! ギギン!
頭部、右肩、左肩、右足、左足…各所に着弾!

澄子「くッ!」
 何とか踏み止まるG3-XPだが…
理沙「フっ…」
 仮面の下で不敵な笑みを浮かべ、なおもトリガーを引き続ける理沙。

ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!!!

 跳ね上がるGM-01改4式!
 胸部に集中砲火!
 跳ね飛ばされるG3-XP!


Gトレーラー・OPルーム

 グリーン・モニターに表示された胸部ユニットが赤い点滅を繰り返している…
「胸部ユニットに強度のダメージ! …小沢さん! このままじゃあ、勝ち目無いですよ!」
 オペレーター席の尾室の顔が青ざめている。

澄子「落ちつきなさい! 尾室君!」
 スピーカーから流れる澄子の声にハッ! となる尾室。
澄子「サポートする側の貴方がシッカリしないと!」
尾室「すいません」
澄子「ボヤボヤしないで! 駆動系への電力配分を増加!
尾室「はい!」
 澄子の指示に頷き、素早くキーを操作する尾室。


G4トレーラー・コントロール室

「ESP信号伝導率96.4%!」


お化けマンション

 伝導率が上がる度…
 体内に流れ込むエネルギーを感じる理沙。

理沙(今度こそ…)
 全ての生命を凌駕し、最強の『力』を持ったマシンになろうとするG4。
 理沙の瞳は怪しい輝きを放っている…


澄子「クッ!」
 度重なるダメージを受けながら三度、立ち上がるG3-XP。
澄子(深海にも…G4にも負けるワケにはいかない。)
 澄子の瞳はまだ力を失ってはいない…

 GM-01改4式を右足のホルスターに納めるG4。
理沙「G4の新たなる力を見てもらいましょう」
 言い終わるや、右腕を指先まで一直線に伸ばし、地面に向ける。
 その指先が光を帯び、きらめいた瞬間!

 突然! 地面が隆起した!

澄子「!」
 ただならぬ事態…澄子の顔に緊張が走る!
 裂ける大地! その割れ目から噴出する水!

澄子「!!」
 驚愕するG3-XPに向けられるG4の右手。
 その右手が再びきらめき、大地から湧き出た水がG3-XPに襲いかかる!!
澄子「うッ!」
 高圧放水銃を遥かに凌ぐ水流に弾き飛ばされるG3-XP!
澄子「超能力?」
 G4の予期せぬ攻撃に戸惑いの色を隠せない澄子…


黒覆面車内

氷川「須藤さんも『力』を追求していたのですね…」
 静かな口調で須藤に語りかける氷川。
氷川「僕もG3-Xという『力』を持っていながら、『アギト』になりたい…『アギトの力』を持ちたいと考えていた事があります」
須藤「……」
氷川「しかし、『アギトの力』は強大すぎた…『力』を捨てようとした人、呑み込まれた人…そういう人を目の当たりにしてきたら、自分は『強大過ぎる力』を持つより、普通の人間として考え、行動する事の方が大事なのではないかと思えるようになってきて…」
須藤「……」
氷川「『アギト』だけでは無く、『G4』もそうでした」
須藤「……」
氷川「その『強大過ぎる力』に『人』は自分自身を見失ってしまった」
須藤「それは『力』の所為では無く、その『人間』が弱いから…そうなった…」

 不意に須藤が呟いた。
氷川「それは……」
 言葉に詰まる氷川。

 その時…

「あそこが、合流ポイントだ!」
 TRCSで先導している一条からの通信が入る。


お化けマンション

 G4の間断無い水流攻撃に宙を舞うG3-XP。
澄子「うッ!」
 地面に叩き付けられ、突っ伏す身体。

理沙「貴方の舞い踊る姿は、とても優雅ですね」
 愉快そうな理沙の言葉。
澄子「踊っているのは貴方の方よ!」
理沙「?!」
澄子「貴方は『強大な力』に踊らされている」
理沙「……」
澄子「G4の力を手にした時から『心』を支配されている」
 毅然と言い放つ澄子。


理沙「支配しているのは私の方です」

 冷静に、そしてキッパリとした口調で返答する理沙。


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