G3-X・ピンク 17話『須藤雅史・未確認生命体第4号VS28号』
道路A
サイレンを鳴らし、疾走するTRCS2001と黒覆面車。
「まだ、合流ポイントには着かないのですか?」
焦りと不安の気持ちが入り混じった声で問いかける氷川。
須藤「間もなく到着します…落ちついてください」
氷川「落ちついてなんかいられません。こうしている間にも小沢さんは…!」
突如、目眩のような症状に襲われ、伏せる氷川。
須藤「大丈夫ですか? …G3-Xの装着は無理なのでは? …」
氷川「大丈夫です」
伏せたまま、返答する氷川。
須藤「無理をしない方が良い。…私がG3-Xを装着しても…」
氷川「大丈夫です!」
顔を上げ、同じ言葉を繰り返す氷川。
須藤「貴方は正義感の強い人だ」
ポツリと呟くように言う須藤。
氷川「それは須藤さんも同じではないですか? 須藤さんも人一倍、正義感が強いから警察官になったのでは?」
須藤「……それは…そうですが……」
少し間をあけ、答える須藤。
お化けマンション近くの上空
河野刑事、立花藤兵衛を乗せたヘリが、お化けマンションに向かっている。
澄子の指示で立花藤兵衛に事情聴取を行なった河野だが、藤兵衛の表情、言動から(今回の事件に関与はしていない)…と長年培った『刑事の勘』から直感
「真相を突き止めたい」と願い出た藤兵衛と共に、戦いの現場に急行しているのであった。
藤兵衛「しかし…まだ信じられない…ライダー達が人を襲ったなんて…」
河野からG3ユニット襲撃事件を説明されたものの、今だ半信半疑の藤兵衛。
「あれが『お化けマンション』です」
ヘリの操縦士が説明した、その時!
ドオオオオォーーーン!!
轟音と共に大きく揺らぐ機体!
G4のミサイル攻撃と、V3のダブルタイフーンの暴風&エネルギーが激突した際に起こった衝撃波がヘリを襲ったのである。
危機回避の為、高度を上げるヘリ。
河野「これは近付かない方がいいな」
炎と煙が空に舞い上がっていく光景を見ながら、呟く河野。
藤兵衛「いや、俺は行く!」
河野「!」
藤兵衛「どうして、こういう事が起こったのか…俺はどうしても知りたい」
『ギガント』と『ダブルタイフーン』の激突による衝撃波で、お化けマンションの外壁が再び崩壊!
無数の瓦礫が、城 茂、V-1システム、V3に降り注ぐ!
G4の攻撃を警戒しつつ、お化けマンションを見やるG3-X・ピンク。
澄子「……」
土煙が視界を塞ぎ、G3-XのMDSS・Ver2の2倍の視認感度を誇るオレンジアイザーでさえ、彼らの生死が確認できない…。
道路B・走る黒覆面車
傷の痛みと目眩に耐え、前方を見据えている氷川。
その表情は今までに見せた事がない、厳しいものである。
その表情を横目で見ながら、言葉をかける須藤。
須藤「氷川さん。その身体で戦うのは、やはり無理だ」
氷川「………」
須藤「命と引き換えになるかも知れませんよ」
氷川「しかし、僕は警察官として…又、G3ユニットの一員として使命を遂行しなければなりません」
須藤「………」
氷川「須藤さんは以前、『合同捜査本部』に所属されていたと言っていましたね」
須藤「………」
氷川「未確認生命体相手の戦いも命がけだったじゃないですか」
須藤「………」
氷川「だから、僕の気持ちも分かる筈じゃ…」
須藤「『合同捜査本部』に所属していたといっても、僅か1週間程の在籍でした」
氷川「……」
須藤「未確認生命体第26号A(キノコ種怪人メ・ギノガ・デ)及びB(ギノガ変異体)との戦いで戦線離脱者が続出し、欠員補充として配属されたのですが…」
氷川「……」
須藤「未確認生命体との戦いで、私は死にかけましてね…」
「!」となる氷川。
須藤「あれが初めての戦いだったのですが…」
言葉を続けながら、遠い目になる須藤……。
1999年5月2日・台東区内・09:46a.m.
覆面車を運転する須藤が緊迫した表情で通信を聞いている。
笹山「全車に連絡。28号が台東区浅草橋で男性二人を殺害した模様。所轄の署員が現着して実況検分に当たっています。
詳細は入り次第報告しますが、付近を巡回中のパトカーは現場周辺の警戒に当たってください」
須藤「近いな…(通信し)こちら須藤。浅草橋に急行します」
サイレンもけたたましく、スピード全開で急行する須藤の車……。
蔵前・街角
ズシッ!
鈍い音と共に、老人の頭部が地面に落ちる。
「ジュンチョグ・ザ」(順調だ)
満足げにカウンターブレスでカウントする、モヒカン頭の長身の男。
顎にピアスを着け、右の首筋にグロンギのタトゥが見える…。
道路
キッと口を結んだ一条が覆面車を運転している。
そこへ合流してくる一台のバイク。
「一条さん、先に行きます」
バイクの男の声に頷く一条。
ヴオオオオオーーーン!!
フルスロットルで猛ダッシュするバイク!
一条「頼むぞ」
一条もそれを追い、スピードを上げる。
路地
物陰から先程のモヒカン頭の男が、ゆらりと現れる。
そこへやって来る一人の青年。
青年「!」
男の異様な風体にギョッとする青年。
ゆっくりと青年に近づいて行く男。
男「ゴラゲ・グ・バギン・グ・ドググ・ビンレ・ザ」(お前が18人目だ)
意味不明の言葉…。
血走った目…。
得体の知れない恐怖に引きつり、硬直したまま動けない青年。
モヒカン男「カットする」
青年を見据えてニヤリと不気味に笑い、一瞬にしてエビ種怪人 メ・ゾエビ・ギに変身!
青年(未確認生命体!?)
異形の姿に変身し、大量虐殺を行なっている謎の存在…未確認生命体 。
現実の恐怖が一気に押し寄せ、踵を返して逃げる青年。
メ・ゾエビ・ギ「ビガグバ!」(逃がすか!)
ジャンプして、青年の頭上を超え着地!
振り向くや、両腕をクロスさせて一気に迫る!
メ・ゾエビ・ギ「ブヂバシザ!」(首刈りだ!)
両手の甲から鋭利な鎌状の刃が伸びてくる!
ガギッ!
青年の首にクロスチョップ!
抵抗する間もなく、意識を失う青年。
ズッ…
首の両側にめり込んでいく刃。
その時!
ズギューーーンッ!!
銃声が響き、メ・ゾエビ・ギの腕に銃弾が命中!
メ・ゾエビ・ギ「! …ザセザ?」(! …誰だ?)
メ・ゾエビ・ギの視線の先には、コルト・パイソン357マグナムを構えた須藤がいた。
メ・ゾエビ・ギ「ヅギパ・ガギヅバ…」 (次は、あいつか…)
視線を青年に戻し、再び両腕に力を込める!
須藤「やめろ!」
すかさず銃を発射する須藤だが、弾丸はメ・ゾエビ・ギの甲羅状の身体に弾き飛ばされる。
メ・ゾエビ・ギ「ゴパシザ」(終わりだ)
ジョギ! ッン!!
18人目の犠牲者…
メ・ゾエビ・ギ「ボンゾパ・ビガラザ!」(今度は貴様だ!)
次なる標的を須藤に定め、迫るメ・ゾエビ・ギ。
須藤(クッ!)
眉間を狙い撃つ須藤!
ズブッ!!
寸分の狂いも無く、眉間に命中した弾丸がめり込む!
だが次の瞬間…
須藤「何!?」
めり込んだ弾丸が弾き出された!
須藤(急所…奴の急所は?)
今度は心臓部に狙いを定め、引きがねを引く!
ギギンッ!!
弾き返される弾丸…。
須藤「通じない! …!」
攻撃が一切通用せず、呆然とする須藤
メ・ゾエビ・ギ「ゴンバロボパ・ビババギ!」(そんなものは、効かない!)
ジャンプして、距離を詰め、左手の鎌を須藤の右手に振り下ろすメ・ゾエビ・ギ!
咄嗟に飛び退く須藤だが…。
シュカッ!
右手をかすめる刃先。
須藤「ぐあッ!」
拳銃が! 血飛沫が飛ぶ!
停滞する事なく、次の攻撃を仕掛けるメ・ゾエビ・ギ。
クロスさせた両手を須藤の首に!
首筋に食い込む刃の感触。
須藤(シザース!)ピンチに陥る須藤!
………………………
2001年・黒覆面車内
ここまで話をして、フッと息をつく須藤。
氷川「……」
須藤「357マグナムも、法律も…人間離れした力と明確な殺意を持った未確認生命体を前にしたら、何の役にも立ちませんよ」
氷川「…それから…どうなったのですか?」
須藤「恐怖と傷の痛みで意識が真っ白になりかけた、あの時…『彼』が駆けつけてきたんです」
氷川「『彼』…」
……………………
1999年5月2日・蔵前・09:55a.m.
ズッ……
クロスした両手の刃が須藤の首に食いこもうとしている…。
メ・ゾエビ・ギ「ギブグ・ギギ!」(死ぬがいい!)
首を刈られようとした、まさにその時!
ヴオオオオォォーーーーン!!
轟音と共に迫り来る一台のマシン! トライチェイサー!!
トライチェイサーを駆る『彼』の名は五代雄介!
メ・ゾエビ・ギ「!?」
両手の動きを止めるメ・ゾエビ・ギ。
意識が薄れかけている須藤の耳にも、その音は聞こえていた。
須藤(TRCS?…)
五代「変身!」
『邪悪なるもの あらば 希望の 霊石を 身につけ
炎の 如く 邪悪を 打ち倒す 戦士あり』
トライチェイサーに乗ったまま、『赤いクウガ』に変身する五代!
ブオオオオォォーーーーン!!
ウィリーして、前輪を鎌首のように持ち上げ、メ・ゾエビ・ギを跳ね飛ばす!
「クウガ!」
激しく転倒するも、素早く態勢を立て直し、叫ぶメ・ゾエビ・ギ。
ヴオオォーン!
凄まじいエンジン音を響かせて、追撃疾走! トライチェイサー!
前輪を持ち上げて、或いは後輪を撥ね上げての打撃攻撃!
華麗なトライアル技術で翻弄するクウガ!
宙を舞い、地面に叩きつけられるメ・ゾエビ・ギ。
メ・ゾエビ・ギ「ゴセパ・ゲンシヅン・ビシガビラ! メ・ゾエビ・ギ・ザ!」
(俺は戦慄の切り裂き魔! メ・ゾエビ・ギ・だ!)
怯むことなく立ち上がって、吠えると、左右の鎌を振りかざして突進!
クウガもトライチェイサーから降り立ち、突撃する!
おびただしい出血…意識が朦朧とする中、28号と4号の戦いを見つめる須藤。
強大な力を持った悪と正義の戦い。
『壊す者と護る者』の戦い。
「…力が欲しい…」
小さく呟く須藤……
メ・ゾエビ・ギ「ゴセバサパ・ビゲサセバギ! ゴパシザ! クウガ!」
(俺からは逃げられない! 終わりだ! クウガ!)
素早い攻撃に圧倒されて、後退していくクウガ。
クウガ「超変身!」
ベルト(アークル)の発光部(モーフィンクリスタル)が青く光り輝き、赤から『青のクウガ』に変身!
『邪悪なるもの あらば その技を 無に 帰し
流水の 如く 邪悪を なぎ払う 戦士あり』
その特性を活かした俊敏な動きで跳躍を繰り返し、攻撃をかわす『青いクウガ』
クウガ「オリャァッ!」
攻め疲れが見え始めたメ・ゾエビ・ギの背後にキックを仕掛ける!
そして、メ・ゾエビ・ギに一瞬の隙を作らせると、空中高くジャンプし、前方回転!
回転途中で『赤いクウガ』に変身し…
クウガ「ウォリャァッ!」
加速をつけたパンチを決める!
大きく吹っ飛んだメ・ゾエビ・ギは建物に激突!
メ・ゾエビ・ギ「!」
瓦礫に挟まり、身動きが取れない…
クウガ、すかさずトライチェイサーの元にジャンプして今度は『紫のクウガ』に変身!
右側ハンドルのトライアクセラーを抜いて、大剣・タイタンソードにする。
『邪悪なるもの
あらば 鋼の鎧を 身につけ 地割れの 如く 邪悪を 切り裂く 戦士あり』
『紫のクウガ』がタイタンソードを手に、ゆっくり迫る
メ・ゾエビ・ギ「ギブゾ! クウガ!」 (行くぞ! クウガ!)
瓦礫から出たメ・ゾエビ・ギが、両手をクロスさせた態勢でダッシュ!
クウガ「!」
歩みを止めて、上段にタイタンソードを構える『紫のクウガ』。
メ・ゾエビ・ギ「ビガラン・ブヂゾ・ドス!」(貴様のクビをとる!)
クロスチョップがクウガの首を襲う!
クウガ「ウォリャァーッ!」
タイタンソードを振り下ろすクウガ!
ガキッン!!
頭部に斬りつけられる直前に両手の刃でタイタンソードを受け止めるメ・ゾエビ・ギ。
互いに力を込める両者だが、形勢が変わらぬまま時が流れる……
クウガ「フンッ!」
均衡を破るべく、気合を込めた声を発するクウガ。
メ・ゾエビ・ギの両腕が僅かに下がっていく…
クウガ「オリャァーッ!!」
再び気合を込め、叫ぶクウガ!
同時にタイタンソードの刀身が伸び、メ・ゾエビ・ギの額に突き立てられた!
必殺技! カラミティタイタン!!
刀身から広がった封印エネルギーがベルト(ゲドルード)に伝わっていく!
ビシッ!!
ベルトのバックルに亀裂が入り…
ドオオオオオオオォーーーーーン!!!!!
光りと共に爆発するメ・ゾエビ・ギ!