G3-X・ピンク 第6話『立花藤兵衛・一杯のコーヒー』
立花藤兵衛…
仮面ライダーのトレーナーとして肉体的、精神的に彼らを鍛え上げ、『少年仮面ライダー隊』の設立、ライダーマシンである『新サイクロン』の設計・開発、『ジャングラー』の製作等、常に7人の仮面ライダーをサポートし続け…彼らから『おやじさん』と慕われた男。
現在は神奈川県三浦市にある『日本の漁師町』といった風情の小さな町で『立花レーシングクラブ』を開業している。
いつもは店頭だけでなく、歩道にも様々な車種のバイクが置いてあり賑やかな佇まいなのだが、今日はシャッターが閉めきられ、ひっそりとしている。
店の入り口には『臨時休業』の張り紙が…。
「遅いな…」
パイプの煙を吐き出し…短く呟く立花藤兵衛。
藤兵衛(茂の奴…一体、いつになったら戻ってくるんだ?)
「チョット、買い物に出かけてくる」と言い残し、城 茂が『立花レーシングクラブ』を出てから、もう一時間以上経過している…
藤兵衛(てっきり、花を買いに行ったものだとばかり、思っていたんだが…)
それほど広くは無い事務室内で城 茂の帰りを待ちわびる藤兵衛。
他には、本郷、一文字、風見、結城、神、山本の姿が見える。
皆、久し振りの再会だというのに、会話の無い状態が続いている。
藤兵衛も本郷達の顔を見た時は再会を喜んでいたのだが、『今日』という日を考えると次第に口数が少なくなっていた。
ふっ…と溜め息をつき、コーヒーの入ったマグカップに口をつける藤兵衛。
コーヒー…
「コーヒーが入ったわ…飲む?」
ユリ子…
「ヘエー。珍しい事もあるもんだ。ユリ子とは長い付き合いだけど、コーヒーを入れてもらったのは初めてだぜ!」
「おやじさん。何、湿っぽい顔してんだい…あっ!美味いコーヒーがあるんだ」
茂……
いつしか、あの日の回想にふける藤兵衛。
目を閉じれば、昨日の事の様に思い出すあの日…。
辛く、哀しい日……。
………………
立花レーシングクラブへ急行するGトレーラー。
OPルームにはバックアップクルーの尾室、桜井の姿が見える。
澄子は…杉田からの無線を受けている。
杉田「立花レーシングクラブ周辺住民の避難が完了しました」
澄子「予定時間より早いわね」
杉田「主要道路と周辺の封鎖も完了。今後、立花レーシングクラブに到達するまで、一般車両との遭遇はありません」
澄子「誘導ポイントは当初の予定通りでいいのね?」
杉田「変更はありません。三浦市南下浦町の三浦海岸、そして『O・M』へのルート…どちらも確保しています」
澄子「了解」
杉田「ただ、気になる事が…」
澄子「?」
杉田「我々がこの区画の封鎖を進行する前に、一部の周辺道路が緊急の工事、交通事故で封鎖状態にあったのですが…」
澄子「……」
杉田「これらに作為的なものを感じるんです」
澄子「作為?」
杉田「我々以外に何かが動いている気が…確証はありませんが…」
澄子「分かったわ。…後は私達に任せて」
杉田「健闘を祈ります」
杉田との通信が終わるや、すぐさまスイッチを切り替え…
澄子「封鎖完了。立花レーシングクラブに到達するまでの間、一般車両と遭遇する可能性は無いわ。…飛ばしなさい!」
Gトレーラーの運転手に指示を出す澄子。
急加速する戦闘指揮車! Gトレーラー!
桜井「小沢さん…」
指示を終えた澄子に声をかける桜井と尾室。
桜井「どういう事なんでしょう?」
尾室「偶然でしょうか?」
二人とも、杉田の言葉が気になり、澄子に問いかけているのだが…
澄子(私達以外で封鎖計画が展開されていた? …7人ライダー?…それともライダーの背後には組織的な何かが?…)
二人の言葉も耳に入らず、考え込む澄子。
暫し沈黙が流れるが…それを打ち破る衝撃音が、激走するGトレーラー前方から聞こえてきた!
ババババババババババババ!!!!
地面を疾走する電流火花!!!!!
Gトレーラー運転手「!」
ギリギリの所で直撃を避け、急停車するGトレーラー!
激しく揺れるOPルーム。
不意をつかれ転倒する澄子、尾室、桜井。
澄子、素早く起きあがり、モニター画面を凝視する。
澄子「確かに…『一般車両』とは遭遇しなかったわね…」
モニター画面には、一台のバイクが停車しているのが映し出されている。
尾室「小沢さん!あいつは?…」
澄子「そう…あの男が…私を襲った仮面ライダー…ストロンガー!」
ブォン!ブォン!!ブォンッ!!!
真紅のマシン『カブトロー』が挑発的な轟音を響かせている。
が…
澄子(攻撃を仕掛けてくる気配が無い…こちらの出方を待っている?)
ストロンガーの真意を図りかねる澄子。
…だが、思案している時間は無い…
澄子(それじゃあ…こちらから仕掛けさせてもらうわ!)
大きな瞳に決意を込め…
澄子「ここからなら『O・M』が近いわね…」
運転手に、ポイント『O・M』への誘導を指示し…
澄子「行くわよ!」
尾室と桜井に声を掛け…
ハンガーへ向かい、G3-Xピンクの装着に入る小沢澄子。