G3-X・ピンク
第5話『北條 透・VICTORY CHASER』
◆警視庁内・廊下
「少し、一条主任と話があるから…」
…と、河野にGトレーラー・OPルームでの待機。尾室には『対仮面ライダー装備』の持ち出し準備を指示する澄子。
それぞれに散って行く二人。
澄子、一条に向き直り…
澄子「私はこれからG3-Xピンクを装着して、7人ライダーの集合ポイントに向かいます」
一条「私も援護に行きます!」
澄子「いえ…それより、お願いがあります」
一条「?」
澄子「氷川君の事です」
◆関東医大病院内・個室
点滴やバイタル計測器などに繋がれ、ベッドで眠っている氷川。
それを脇で見守っている椿。
椿「全身に打撲を負っているが、命に別状は無し。…タフな男だ。
…しかし、こいつも一条同様、開いてみたくなるような腹筋してんな…」
椿の呟きに気付かず、眠り続ける氷川。
◆警視庁・駐車場
V-1システムを装着した北條が歩いて来る。
一面にシャッターの降りたメンテナンス・スペースの前で立ち止まり、オートロックのテンキーを押す。
シャッターがゆっくりと上がっていく。
明かりをつけて倉庫内に入り、グランドツアラー・タイプの一台のバイクに近付いていく。
そのバイク…『VICTORY CHASER』。
北條が、対アンノウンの為に立案したV-1システムと共にV-1システム専用に作られた高性能の白バイである。
V-1システムが不採用になり、お蔵入りになっていたが、今ここに日の目を見る事になった。
手にしていたジュラルミンケースを開き、電磁警棒としても使用可能なグリップ『ビクトリー・アクセラー』を取り出す北條。
バイクの右ハンドル部にそれを差し込むと、液晶パネルに『4桁の暗証番号を新規に設定してください』というガイドが表示された。
仮面の中でニヤリと笑い、『0508』と入力する。
エンジンがかかり、スロットルを吹かしてみる北條。
ドウン! ドウン!
「待ちなさい!」
「!」
…声のする方向を見る北條。
北條「小沢さん」
入り口に澄子が立っている。その後方には尾室の姿も見える。
澄子「単独行動をするつもり?」
北條「(フッと笑って)私はただ、久し振りに乗るので、感覚を確かめていただけですよ」
澄子「どうかしら? …今にも飛び出して行きそうだったけど?」
北條に歩み寄る澄子。
北條「いかに私とV-1システムが優れていても、7人ライダーを相手に1人で立ち向かおうとは思いませんよ」
仮面を外し、答える北條。
澄子「玉砕覚悟で出動するかと思ったけど…あなたに、そんな肝っ玉があるワケないわね」
北條「状況に応じて柔軟に対応する。それが私の戦い方です。
突撃するだけの不器用な戦い方しかできない、あなた方G3ユニットとは違いますよ」
澄子「ハイハイ」
反論するのも馬鹿馬鹿しく、適当に返事をする澄子。
北條「それより、V-1システムを装着後、待機という事でしたが、いつまで待たせるつもりですか?」
北條の言葉に、やや表情を引き締めて…
「対仮面ライダー装備が用意できたわ」
手にしていたジュラルミンケースを開け、リング状のホルダーに収まった弾丸を取り出す澄子。
澄子「これは、あなたが以前に『アギト捕獲作戦』で使用した特殊ガス弾の成分を百倍に濃縮して充填したプラスチック弾よ」
無言の北條。
言葉を続ける澄子。
澄子「これが敵の体内で炸裂すると毒性成分が皮下組織に急速に浸透し、細胞を破壊する」
北條「仕留める事が可能…という事ですか?」
澄子「トドメを刺すのは無理かもしれないけど、一時的に活動を停止させる効果は期待できるわ」
北條「捕獲用ですか…」
ニヤリと微かに笑う北條。
澄子「これが専用ライフルよ」
澄子の言葉を受け、ライフルが入ったジュラルミンケースを北條に手渡す尾室。
澄子「私は…」
別のホルダーを取り出す澄子。
澄子「この筋肉弛緩弾を…」
北條「手回しが良い事だ」
澄子「ただ、この筋肉弛緩弾…効果があるかどうか…。
薬の量が少なければ効かないし、多ければ呼吸機能や循環機能まで弛緩して死んでしまう」
北條「…」
澄子「資料を元に対ライダー用の装備を万全にしたかったのだけど、データが…」
北條「情報管理室なら…」
澄子「データなんて殆ど無いわ。分かっているのは、彼らは改造人間という事よ」