「総括・水戸黄門第29部」(3)キャラクター編(完全気分次第掲載)


 3日もサボっちゃいました…
 まあその分、書きこめるときにはバシバシ行っちゃえ! って事で許してね♪


 まずは新生黄門ファミリーのキャラクターの変更を、簡単におさらいしてみましょう。

 主人公である黄門様ですが、これまでの黄門様と大きく違うのは、良く言えば石坂浩二という役者を最大限に生かそうとしているところでしょう。
 今までの黄門様の、どちらかというと明朗でいかにもその辺にいそうなおじいちゃん、というイメージを希薄にして、新たにインテリっぽく普段から浮世離れした(というか、庶民に見えない)風格を漂わせたキャラに設定しています。
 実際の黄門様も、新し物好きで学問好きだったようですが、これはそのまま俳優・石坂浩二のイメージとオーバーラップしており、このキャスティングは役者とキャラ、どっちを先に設定したのか(鶏が先か卵が先か、ってとこか?)結構悩むほどにマッチしている、と言って良いでしょう。

 助・格コンビも、これまでは「能力の違いはあれどキャラ的にはあまり違わない」(まあ、へドリアン女王に対するミラーとケラー、といったところでしょうか?)といった風だったのですが、今回は二人の性格面も

助さん=いかにも有能な家臣らしく、現実家で情に流されにくい。
格さん=ちょっと頼りなげで人情家…というかお人よし。

と、正反対といっても良いくらい明確なキャラ分けがなされており、これまで過剰気味だったお供の者達を削除した分、残留メンバーのキャラを明確にしております。

 反対に、架空人物を演じる由美かおる様演じる“お絹”は“お銀”にちょっと影の部分を加えた程度のキャラで、今回は私的な配下を持たされ、彼女達が動く分その活躍を大きく減らされており、この辺は後述しますが「史実に基づいた黄門像」という作品作りを明確に感じさせます。
 これに前述のおるいをムードメーカー的に配置…といった所でしょうか。

 またファミリー以外のサブキャラで、老中・柳沢吉保を悪役に設定。
 これは、実際には稀代の悪将軍である徳川綱吉を作品上悪役にする事が無理であるための、いわば悪役代行であり、この辺りの史実上の問題点も今までのシリーズよりも上手にクリアーしております。

  他に黄門様を付けねらう刺客として「次郎坊」(演じるは物真似タレントのコロッケ)。

 これらのキャラが、いわゆる「史実に忠実な」作品の中で活躍する事となった訳です。
 その作品ですがこれもまた当然今までとは違った作りになってます。
ワンパターンの排除というよりも… お約束のない作品といった感じで、それまでの視聴者はもちろん新規で番組を見始めた方たちの度肝を抜く程、イメージを一新しておりました。
 何しろ初期数話は、良く言われる「印籠を出さないじゃん!」なんてことはまだまだ序の口。
 黄門様が旅に出るまで4話を費やして説明するわ(しかも、水戸藩を追い出されるようにして旅に出るという、これまたビックリな設定!)、黄門様は越後のちりめん問屋じゃないわ、助さん格さんじゃなくて「助三郎」「格之進」って意識的に呼んじゃうわ…。
 ここまで来ると、イメージ一新というよりもう別の作品、と言った方がいいんじゃないかってくらい明確な違いを打ち出してました。

  また脚本も、これまでのような単純明快なものでなく、一つ一つのシチュエーションを大事に描き深みを増すようにし、黄門様が出てきて全てがハッピーエンドという「完全・勧善懲悪」からの脱却を目指すという…まあ言ってみれば、「見終わってすっきりする」というより「余韻を残す」ような作風を心掛けていたように思われます。
これはこれで面白かったし、実際、新しいファン層の獲得にも成功したようです。
 しかし…これらのスタッフの「狙い」は、同時に大きな問題も起こしてしまったのです。

  これはスタッフもある程度覚悟はしていたのでしょうが…
 今回の作品のカラーに、これまでの視聴者が拒否反応を起こしてしまったのです!

  お決まりシーンの排除は「見せ場が無くなった」と取られ、シチュエーションを丁寧に描きこんだストーリー展開は小難しくとられ、勧善懲悪性の希薄化は何だかもやもやを残すだけの中途半端なお話に取られ…
 しかも、これまで馴染んできた劇中音楽(「ああ人生に涙あり」のインストとか)の使用を極力控えたのも「ありゃ?」と違和感を感じさせる事になったんでしょうね。
 これまでの決まりきった展開を、これまた決まりきったように毎週視聴してきた方達が、この急な流れの変更についていけなかったのも分らなくはありません。
…まあ厳しい言い方をすれば、過去のパターンに縛られすぎて新しい作風の良さを見逃していたのではないか、となるのですが…

 ただ私、旧作ファンに指示されなかった最大の理由は、上記のものとは別なところにあると思うのですよ。
 これについてはまた後述しますが、とにかくこの拒否反応は視聴率にも如実に現れたらしく、思ったとおりというか残念にも、中盤からてこ入れともとれるマイナーチェンジが行われます。

 いや、これがもう…ねえ。凄かったですよぉ〜。
 これまでのお約束パターンを再び導入、具体的にはクライマックスの決まった時間のチャンバラシーン導入や、おなじみ印籠披露のシーンなんかをこれまたお馴染みの音楽を流して見せちゃったりして、それなりに見せ場を作ろうとしていましたけど…
 いや、見てて辛かったですねえ。

 なにしろ、お話の密度は落とさずに(まあ、落ちたときもありましたが)お約束シーンを導入しても、取ってつけたような感じにしかならず、しかもそのお約束パターンも、これはスタッフの意地だったのかそれまでとは違う…というか無理やり違えたような演出…印籠これ見よがしに悪人の顔に近づけたり、殺陣の途中で妙に悲壮感漂う音楽流したり…かましちゃったんで、もう不協和音鳴りまくり。
 まあ、こんな展開もある意味「石坂黄門」の特徴となるのかもしれませんね。

 でもでも、私この作品が受け入れられなかった本当の理由って、実は登場人物に感情移入できない…っていうか配役・俳優のキャラクター共に馴染めなかった事じゃないかと思っています。
 例えば黄門様ですが、これまでの「普段はいかにもその辺にいそうな人のいいおじいちゃん」というイメージははあまり感じられず、“身分を隠していてもどことなく気品を漂わせている、いかにも高貴な身分”といった風でしたが、これはそれまで身近な存在であった黄門様を引き離されてしまった、と感じた人が多かったのかもしれません。
  この新・黄門様と演じる石坂浩二さんのインテリっぽいキャラがばっちりはまってしまったのも、ここでは裏目に出たといって良いでしょう。
 何しろ放送当時、どこかの新聞サイトで「今回の黄門の評判が悪いのは石坂浩二の“史実に基づいたお話にしたい”というこだわりから娯楽性を排除したのが原因」とかかれたものがあり、まあこれはゴシップみたいなものなので事の真偽は不明ですが、実際これを読んで「石坂浩二ならやりかねん」と思った人も、結構いたんじゃないですかね?

 サブキャラについても、とちょっとシビアというか冷たさを感じさせるキャラになった助さん、そしてどこか抜けているようだけど、ギャグキャラというわけでもない格さん(演じる山田純大の当初の演技力もアレだったんですが)
は、黄門様同様「頼りがいのある庶民の味方」という感じは薄れていました。
 貧乏くじを引いた形になったのは、もっとも荒唐無稽なキャラの要素が強いお絹や次郎坊で、物語の展開に上手く絡ませられず―特に次郎坊は演じるコロッケの熱演が時として際立つというか、浮きまくって見えてましたが…。
 更に皮肉な事にこの二人、パターン路線に戻ったらますます出番が減ってしまうという、実はスタッフももうどう使ったらいいのかわかんなくなってたんじゃないかって邪推したくなるほど、扱いがぞんざいでした。
  正直、とてもスケジュールの都合だけが問題だったとは思えません。
 唯一、おるい様はそのムードメーカー的な役割を全うしている所からそれほどの酷評は聞きませんが(むしろ、好評だったんでしょうね…ってこの部分確証ないですが)、全般的に私自身「馴染みにくいキャラばかり」という印象は持ちました。


 結局、今回の「水戸黄門」ってあまりにもやりたい事をやりすぎたというか…キャスト一新して気負いすぎた、という点は否めません。
 お話にしてもキャラにしても、いわば「視聴者に新しい刺激を」という考えから色々変えすぎて、結果的にそれまで視聴者に「安心していられる場所」を奪ってしまった、と受け取られちゃったんです。
 巷でよく聞かれる「石坂黄門バッシング」の根底は、この部分にあるんです。
 先日もゲンダイネットのHPで、石坂黄門がバッシングされてました…まあこれに関しては、言い分があまりにメチャメチャな物なので引用はもちろん参考にもしてませんが。

  シリーズ終盤に「水戸黄門鑑賞推進委員会」に参加してくださった朝倉だんさんは、石坂黄門を見て「今までのとはずいぶん変わってますね」とコメントされてましたが、この終盤部、実はかなり従来のスタイルに戻ってきていた回だったんです。
 このように、それまで作品を見ていた方にも見ていない方にも完全に固定観念のついてしまったシリーズの場合、ちょっとスタイルを変えただけでずいぶん違った作りに受け取られてしまうのに、スタッフは「新生・水戸黄門」という作品に対して気負いすぎて、この部分に気づかなかった…いや、おそらく気づきながらもあえて無視したんでしょう…それが予想以上に拒絶されてしまったんです。

 見方を変えれば、この作品が第29部でなく…過去のシリーズの無い一作品としてみた場合、これらの問題は殆ど消えてしまう可能性もあるのです。
 もちろん最終的な個人の嗜好というのはあるので断言すべきではないのでしょうが、今より良い評価は受けられた、と思うんです。


つづく



 …んでふっと見てみたらこれでツリー19本目のレスになるんですよね〜。
 あと一回で終わればツリーのみと20回でちょうどいいんだけど、終わるかな〜
 何せ、かいてる本人がいつ終わるか解ってないし<おい


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