第2回 宇宙刑事シャリバン
−初級編−
『宇宙刑事シャリバン』は、1983年から1年間にわたって放送された作品だ。 前年の『宇宙刑事ギャバン』に続く宇宙刑事シリーズ2作目であるとともに、この後1996年放送の『ビーファイターカブト』まで続く通称“メタルヒーローシリーズ”の2作目でもある。 このメタルヒーローシリーズは、更に『ギャバン』を1作目として、3作目である『宇宙刑事シャイダー』までを宇宙刑事シリーズ、5作目『時空戦士スピルバン』までをコンバットスーツヒーローシリーズと細分化されている。 これらの違いを簡単に説明しよう。 まず『宇宙刑事』は、正に「宇宙刑事」とタイトルが付くシリーズで、完全に同一の世界観を有する。 コンバットスーツヒーローシリーズと言ったときは、「宇宙刑事」と冠しておらず世界観も違うが、類似する設定群を持つ『巨獣特捜ジャピオン』と『スピルバン』を含む。 そして、メタルヒーローシリーズと言うと、その後の『超人機メタルダー』や『世界忍者戦ジライヤ』などの“金属的な外観の装甲を持つヒーロー”全般を指す。 なお、『ビーファイターカブト』の翌年から放送された『ビーロボ カブタック』『鉄ワン探偵ロボタック』についても、それぞれヒーローモードになったときの外観がメタルヒーロー的であるため、メタルヒーローに含める人もいる。 さて、宇宙刑事シリーズというのは、バード星に本部を置く銀河連邦警察から地球に派遣された宇宙刑事が、宇宙犯罪組織の魔の手から地球を守るためにその特殊装備を駆使して戦う物語だが、この設定は当時大変斬新なものだった。 銀河連邦警察という組織をバックに、主人公をそこの刑事、敵を地球に本拠を置く犯罪組織とすることで、戦う目的と理由が明確化される。 これは、『ウルトラマン』などに代表される宇宙人がその特殊な力や進んだ科学で地球を守るために戦う物語に特有の“どうして宇宙人が命懸けで地球を守ってくれるの?”という疑問を素直に解消してくれるものだった。 更に、いずれの作品でも、主人公は地球育ちという“仕事以外でも地球を守りたい理由”が与えられ、戦いが職業的にならないよう配慮されている。 『シャリバン』は、銀河パトロール隊長に昇進したギャバンの後任として地球に赴任した伊賀電が、シャリバンのコードネームと赤いコンバットスーツを与えられ、パートナーのリリーと共に、魔王サイコ率いる宇宙犯罪組織マドーと戦う物語だ。 シャリバンは、「赤射」の変身コードを叫ぶことで、赤いコンバットスーツを1ミリ秒(0.001秒)で装着する。 このコンバットスーツには、 目を光らせることで赤外線探知・透視能力などを発揮するサーチャースコープ などが装備されている。 宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する
では、そのプロセスを見てみよう (赤射のシーンをリプレイ)「赤射!」 灼熱の太陽エネルギーがグランドバースのソーラーシステムにスパークする スパークしたエネルギーは赤いソーラーメタルに転換され、シャリバンに赤射蒸着されるのだ というナレーションが入る展開もほぼ同じだ。 次に、基本武装がレーザーブレードとビームであることは変わらないが、ギャバンのビームが右手から発射するレーザーZビームだったのに対し、シャリバンでは右腰にホルスターを設け、クライムバスターという銃を持たせて、商品展開を増やす形にした。 一応書いておくと、ギャバンも一時期右腰に銃をぶら下げていたことがあったそうだ。 また、母船も、ギャバンでは超次元高速機で、戦闘時には下半分を分離して戦闘マシンにしていたのを、シャリバンでは超次元戦闘母艦として総合戦闘力を与え、更に戦闘形態バトルバースフォーメーションに変形することで一応人型ロボットに進歩した。 「一応」というのは、これが艦首を引っ込めて艦体の後ろ半分を起こして上半身とし、手足をはやしただけの変形で、腹部に短くなった艦首が残っており、人型と言い切るには非常に不格好だったからだ。 通称「駅弁売り」と呼ばれたこの変形の格好悪さは、続く『シャイダー』に登場するバビロスの“艦首が2つに割れて足になる”変形により解消されることになった。 なお、『宇宙刑事』シリーズは3作とも主人公に女性パートナーがいるが、それぞれ存在理由は異なっている。 烈のパートナーであるミミーは、コム長官の娘で、烈がバード星に移り住んでからの幼なじみ兼恋人であり、勝手にドルギランに乗り込んでついてきてしまった、いわば押し掛けパートナーだった。 大のパートナーであるアニーは、宇宙刑事養成学校で訓練中だったが、故郷のマウント星がフーマに滅ぼされたため、フーマと戦いたいと志願して、大が地球に赴任する際、一緒に地球に来ることになった。 電のパートナーであるリリーは、実はどういう経緯でパートナーになったのかはっきりしない。 ただ、電が養成学校に入学しないまま採用された特殊ケースであることから考えると、教育不足の電を補佐するために付けられたのだと思われる。 なお、『シャリバン』48話では、ミミーが烈に会いに行く途中で宇宙海賊に誘拐されており、特番『3人の宇宙刑事』では、もうじき結婚式を挙げることが語られている。 さて、今度は内容面を見てみよう。 『シャリバン』は、内容でも『ギャバン』を受け継ぎ、発展させている。 『ギャバン』では、烈には地球を守ることのほかに“行方不明の父を捜す”というもう1つの目的があった。 烈の父ボイサー(演:千葉真一)は、亡き星野博士の発明:太陽エネルギーを増幅して強力な破壊光線にする画期的な兵器ホシノスペースカノンの設計図の秘密を握っているため、マクーに捕らわれて生死不明だった。 結局、烈はボイサーの救出には成功したものの、ボイサーは間もなくマクーの拷問で受けたダメージが元で死んでしまい、それと同時に遺体にホシノスペースカノンの設計図が浮かび上がる。 設計図は、ボイサーが死んで体温が下がると浮かび上がる仕組みになっていたのだ。 彼が捕らえられながらも自害できなかった理由はそこにあった。 そして、マドーもまたホシノスペースカノンの秘密を狙っていた。 『シャリバン』15話では、星野博士の娘である月子がさらわれ、月子を守るために烈がマドーの拷問を受けることとなった。 烈は、父が死を賭して守り抜いた秘密を守るため、拷問に耐える。 結局、シャリバンの活躍で2人は救出され、月子はバード星で守られることとなった。 この際明らかになったのだが、グランドバースのメイン武器であるプラズマカノンは、ホシノスペースカノンを実用化したものだった。 ボイサーの死によりバード星にもたらされた設計図は、改良を加えられ、次なる地球の守り手の武器になったのだ。 このことは、ホシノスペースカノンがバリバリの新鋭兵器であるということを意味している。 何年にもわたってマクーが追い求め、今またマドーが欲しがっていることがそれを端的に示し、なおかつそれら組織と戦う宇宙刑事がそれを装備しているのだ。 また、これが太陽エネルギーを利用しているという点で、シャリバンのコンバットスーツにも同様の技術を応用している可能性が窺え、同時にグランドバースがソーラーシステムを搭載していることに大きな説得力を与えるのだ。 そして、“主人公の個人的な目標”という方向性も別な形で継承されている。 冒頭から父探しというテーマを強調していた『ギャバン』と違い、『シャリバン』では、伊賀電は当初は特別なバックボーンを持たない者として描かれていた。 だが、19・20話で、電の父:電一郎の出身地である奥伊賀島は2000年前マドーに滅ぼされたイガ星人の末裔が住む島であり、電自身もイガ星人の血を引いていることが語られる。 イガ星人がおしなべて高い運動能力を持っていることからすると、電の高い身体能力は、その血に由来する部分もあるのだろう。 このとき、マドーがイガクリスタルを狙っていることと共に真っ赤に燃える身体と正義の心を持った若者が、いつかマドーを滅ぼしてくれるというイガ星の伝承が語られるのだが、“真っ赤に燃える身体”と言えばシャリバンのコンバットスーツが頭に浮かぶわけで、これ以降、物語はイガ星再興を賭けた戦いとしての様相も呈するようになる。 20話のラストで、イガクリスタルはイガ星人の末裔であるみゆき達と共に次元の彼方に姿を消し、最終回近くまで色々な時代や世界を彷徨っていた。 また、この後、宇宙各地に散らばっているイガ星人の末裔達も度々地球にやってくることとなった。 特に、マドーを相手に戦ってきたベル・ヘレンとベル・ビリー姉弟の死は、電にイガ星再興を強く意識させることとなる。 こうした中、やがて電は、マドーと戦うイガ星人の代表のような立場になり、イガ星に伝わってきたイガ獅子の剣を“聖なる剣(つるぎ)”として戦闘時に使用するようになる。 これは、シャリバンが手をかざして「聖なる剣よ!」と叫ぶと手の中に現れるというもので、敵の攻撃で武器を失った後の切り札のような扱いだった。 前述のオルガナイザーは、活動の一環として、対マドーの抵抗組織をまとめ上げようとしていたのだが、イガ星戦士達は苦しい戦いを何代にもわたって続けてきていたため戦力が減少・分散しており、うまくいっていなかったのだ。 そんなオルガナイザーにとって、公的機関に所属し、着実に戦果を上げているシャリバンの存在は、求心力として申し分ないものだったと言える。 最終決戦の際は、イガ星戦士達が地球に集結し、団結して戦うに至っている。 戦いが終わり、イガ星に向かうグランドバースの中で、戦士団が戦士の印であるイガ獅子のペンダントを合わせ、電が「これは、ヘレンとビリーの物だ」と言って2人の遺したペンダントを付け足したときに、ペンダントから集まった光がイガクリスタルを呼び出したのも、そういった背景を視覚化したものと言えるだろう。 こうして『シャリバン』は、 ついて来いよ ついて来いよ 戦おうぜ
ついて来いよ ついて来いよ 誰かのために Shine Shine Shine シャリバン Shine Dash Dash Dash シャリバン Dash 怒り 涙 微笑み 自由 未来 きらめき 宇宙刑事シャリバン というOP2番の歌詞が流れる中、希望の星に向けて旅立つ姿で幕を閉じる。 前作以上に世界観を広げた理想的な第2作だった。 |