宇宙刑事シャリバン最終回『赤射・蒸着』
(ストーリー)
 サイコラー出現とのシャリバンの報告を受け、応援のためギャバンとコム長官がドルギランで地球にやってきた。
 また、同時にオルガナイザーも、イガ星戦士達に“地球で最終決戦近し”の檄を飛ばしていた。
 幻夢城へと続くサイコゾーンの入口を探す電を戦闘員アウトローの集団が襲う。
 地球へとやってきたイガ星戦士団と共に戦う電の前に、再びサイコラーが現れた。
 
 そして、ギャバンも加え、幻夢界で遂に最終決戦が始まった。
 ギャバン・ダイナミックとシャリバン・クラッシュの必殺技同時攻撃も、不死身のサイコラーには通用しない。
 やがてサイコラーは姿を消し、「お前達は永久に幻夢界から出られない」と魔王サイコの声が響く。
 幻夢界は、サイコラーを倒さない限り解除されることはないのだ。
 脱出不能になった2人の前に、イガクリスタルの守護者である聖なる者が現れる。
 聖なる者は、なぜイガクリスタルを守ってくれなかったのかというシャリバンに「いずれ分かる」とだけ答え、幻夢城への道筋を案内するコンパスを残して消えた。
 
 コンパスの導きで幻夢城に突入し、ドクターポルターらを倒してサイコと対峙した2人は、サイコの高圧電流攻撃でコンバットスーツのメカが狂いはじめて絶体絶命の危機に陥る。
 そのとき、イガクリスタルがサイコの前に現れ、サイコのエネルギーや高圧電流を吸収し始めた。
 聖なる者は、このときのためにイガクリスタルを幻夢城内に持ち込ませておいたのだ。
 「一緒に撃つんだ!」ギャバンとシャリバンは、エネルギーを吸われて力を失ったサイコとサイコラーに、それぞれ必殺技を放つ。
 命を二分して持っているサイコ達も、同時に倒されればもう再生はできない。
 遂に魔王は倒れ、幻夢城も崩壊した。
 
 マドーは滅んだ。
 電は、イガ星を再興するために旅立つことになった。
 喜ぶ電に、コム長官は「言っておきたいことがある」と言う。
 「イガ星再興のために全力を尽くせ、でしょ? 分かってますよ」と答える電に、長官は「違うな。本日ただ今より、イガ星地区担当刑事を命ずる」と新たな使命を与えた。
 みゆき達イガ星人を乗せ、地球を飛び立つグランドバース。
 その前方にイガクリスタルと聖なる者が現れ、イガ星に向かって飛んでいった。
 聖なる者は、イガ星の守護神だったのだ。
 苦しかったマドーとの戦いの日々、志半ばにして逝ったヘレンやビリーのこと、地球での暮らしなど万感の思いを胸に、電は地球を後にする。
 
 
(傾向と対策)
 このエピソードは、2つの重要な意義を持っている。
 1つは“コンバットスーツ姿のギャバンとシャリバンが共闘する唯一の回”であることだ。
 コンバットスーツ姿のギャバンは48話で登場しているし、電と烈が一緒の画面に並んだことはあるが、コンバットスーツ姿のギャバンとシャリバンと並んだことはなかった。
 また、次作『シャイダー』では、ギャバンもシャリバンも本編にはイメージシーンのイラストでしか姿を出していない。
 最終回後の特番『3人の宇宙刑事 ギャバン・シャリバン・シャイダー』では、3人がコンバットスーツ姿で並び立つ姿が一応画面に出てはいるものの、ただ出てきただけであり、特にアクションなどはしていない。
 そういうわけで、この共闘は実に貴重だったりする。
 
 2つ目は、東映トクサツには非常に珍しい盛り上がりつつ綺麗にまとまった最終回だということだ。
 東映トクサツは、最終回で失速するパターンが実に多い。
 『仮面ライダー』シリーズの大部分のように首領との対決が拍子抜けするようなものだったり、『シャイダー』みたいに大帝王クビライの頭部にとってつけたような身体を付けた上に、数万年前の伝説の戦士の乗り物がブルホークに飾りを付けただけのシロモノ(小道具作るのをケチった)だったり、『メタルダー』のようにいきなり亡霊が襲ってくるといった具合だ。
 このように、それまでの盛り上げが嘘のような変な展開をしたりして、素直に感動できなかったり、感動した後で振り返ってみると疑問点が山のようにあったりするものが多いのだ。
 
 『シャリバン』ではラスト4話の間に、
  • イガクリスタルが奪われたとき、なぜか聖なる者が助けてくれなかったこと
  • サイコゾーンは幻夢城に通じていること
  • サイコゾーンへの入口は日本の各所に隠されており、マドーはそれを利用していること
  • 1話から度々登場していた坊主頭の男がサイコの分身サイコラーだったこと
など、様々な情報を巧くまとめあげ、
  • そのサイコを倒す決め手となったのが、奪われたイガクリスタルだったこと
で、決戦目前に大切なイガクリスタルを奪われてしまった失敗が失敗ではなく勝つための(聖なる者による)布石だったことになり、更に、サイコを倒すためには、サイコとサイコラーを同時に倒さねばならないことで、同時必殺技という見せ場にもはっきりとした理由が与えられた。
 
 こうやってまとめ上げた戦いの後に、コム長官が「本日ただ今よりイガ星地区担当刑事を命ずる」と言ったことにも大きな意味がある。
 実は、グランドバースは「シャリバン」というコードネームの宇宙刑事に与えられた装備であり、「シャリバン」の担当地区が地球である以上、グランドバースに乗ってイガ星に行くのは公私混同の上に命令違反なのだ。
 本来、電がイガ星再興を目指すなら、宇宙連邦警察を退職した上で自力で宇宙船を調達し、それに乗ってイガ星に行かなければならない。
 電としては、ごく自然にグランドバースを移動手段として使おうとしていたわけだが、これをこのままやっていたら、恐らく後年、作品の欠点として指摘されていたことだろう。
 『シャリバン』では、これをコム長官の口から語らせ、電が「あ…!?」と驚いてみせることでオチとしての笑いとなり、同時にコム長官の粋な計らいで、イガ星再興を宇宙刑事の仕事の一環として行えるようになったことを示してもいる。
 ちなみに、シャリバンのパートナーとして地球に赴任していたリリーは、イガ星担当としての辞令を貰っておらず地球に残っている。
 『3人の宇宙刑事』では、後日談として、リリーが宇宙刑事養成学校の教官となってバード星に帰ったことが語られた。
 時期的には、『シャイダー』で沢村大が地球担当を拝命したのと同時と思われる。
 
 ところで、この最終回はこういったドラマ部分は本編のごく僅かに止まり、残りはアクションシーンとなっている。
 言ってしまえば、“ほとんど戦ってばかり”の最終回なのだが、このアクションがまたハイレベルときている。
 
 ギャバンとシャリバンは、同系列のヒーローであるが故に、同種の武器と技を持っている。
 このエピソードでは、最終決戦にしてダブルヒーローの初共闘と、ただでさえ視聴者のボルテージをあげまくる上に、細かいカット割で両者を交互に映しているので、非常にテンポがいいのだ。
 例えば変身シーンでは、
烈「蒸着!」
電「赤射!」
烈「ジョウ!(ジャンプ)」
電「ジュウ!(ジャンプ)」

(2人で交差しつつ前宙返り)
(烈、壁を蹴る)
(電、壁を蹴る)
(2人で並んで前宙返りしつつ光球に)
(光が消えてコンバットスーツ姿になって着地し、それぞれが振り向く)

シャ「宇宙刑事! シャリバン!!」
ギャ「宇宙刑事! ギャバン!!」
といった具合だ。
 この1行分ごとにカットが変わっている。
 
 また、戦闘中にも
シャ「シャリバンキック!」
ギャ「ギャバンキック!」
シャ「スパークボンバー!」
ギャ「ディメンションボンバー!」
と、同種の技を連続で決めている。

 その上、幻夢界に入るときも
ギャ「サイバリアーン!」
シャ「モトシャリアーン!」
とやっているのだ。

 残念ながらドルとグランドバースが共闘するシーンはないのだが、単純にアクション物として見た場合でも、トクサツ好きなら燃えること請け合いのシーンが続出する。
 
 そして、最後のトドメのシーンでは、
ギャ「一緒に撃つんだ!」
シャ「はい!」
ギャ「ギャバン・ダイナミック!」
シャ「シャリバン・クラッシュ!」
と続く。
 とにかく2人の戦闘シーンは、好対照をなしていて見ていて小気味いいのだ。
 
 
 戦闘シーンだけでも十分いける最終回なのに、綺麗に終わっている…これがどんなに素晴らしいことかは、東映トクサツ好きならきっと分かってくれるに違いない。