5.中途半端なオモチャ達
『龍騎』の主な商品ラインナップは、
(1) 変身ベルト『Vバックル』
(2) なりきりグッズ:『ドラグバイザー』など8つのバイザー
(3) なりきりグッズ:ドラグセイバー
(4) 10種類の『R&M』シリーズ
(5) 玩具の王道:ソフトビニール人形:RHシリーズ
(6) 色々な形態で発売されたアドベントカード群
(7) 食玩、ガシャポン、プライズ系
(8) ラジコンバイク『ドラグランザー』『ダークレイダー』
というところだろう。
まず、『ライダー』シリーズの伝統的主力商品である変身ベルトは、今回は、スイッチを入れると出るベルトの出現音、カードデッキを差し込んだときの変身音と、デッキからカードを引き抜くときの音を再現している。
カード引出部の端に接触センサーを露出させ、カードや指が触れた際に音が出るようにしたというアイデアはナイスだと思う。
『龍騎』の場合、ベルト・バイザー・デッキが揃ってようやく劇中でのアクションが再現できるため、これが発売された時点で、主力ラインナップがバイザーとデッキのセットになるのだろうと予感させられた。
Vバックルの商品には、龍騎・ナイト・ゾルダのカードデッキが付属しているため、ドラグバイザー・ダークバイザー・マグナバイザーの商品にはデッキが付属していない。
シザース、ガイ、ライアなど途中で消えることが前提になっているライダーのバイザーは当然の如く発売されなかったものの、その後発売されたベノバイザーにデッキが付属していたため、その期待はいや増したのだが、結局デッキが同梱されたバイザーはベノバイザーだけということになってしまった。
13人のライダー全員に共通するベルトに、それぞれのライダーが自分の持つカードデッキを差し込むことで変身するという設定になっているのだから、これを持っていればその後のバイザーと共にカードデッキが発売されることを期待するのは当然と思うのだが、どうしてその当然が果たされないのか、不思議でならない。
呆れたことに、ドラグバイザーツバイにも龍騎サバイブのデッキは入っておらず、だったらどうしてわざわざデッキの色を変えたのかと聞きたくなるような商品展開だ。
年末に、トイザらスで13人分のデッキが同梱された『限定版Vバックル13ライダーセット』が発売されたが、これは通常販売品と同列に論じるわけにはいかないだろう。
ともかく、バイザーとデッキが同梱で売り出されたのはベノバイザーセットだけということになる。
だが、これとてVバックルを揃えないと“ベルトのバックルからカードを抜いてバイザーに装填”というライダーの基本アクションは再現できないことに変わりはない。
つまり、Vバックルとバイザーが一組にならざるを得ないというわけだ。
まぁ、別売の商品を複数買うことで商品体系が完成するというシステムは、商品相互の牽引力を生み出す方法論でもあるし、先売りの商品に合体する商品を後日出すという前提の物も少なくない(『クウガ』『アギト』の変身ベルトも、増加パーツ装着を前提にしている)から、別段文句を言うほどのことでもない。
だが、ブラックドラグバイザーやデストバイザー、ドラグバイザーツバイ、ダークバイザーツバイの4つが、先のトイザらス限定品を入手する以外にデッキを入手する方法がないというのは問題だ。
例えば龍騎のデッキからクリスタルブレイクのカードを取り出し、デストバイザーに装填するという遊び方もできるわけだが、やはりちょっと違和感を伴う。
本編中で他人のカードを装填するという行為自体は、26話『ゾルダの攻撃』で、ゾルダのカードをドラグバイザーに装填するという形で果たされているが、それでもカードが出てきたのはゾルダのデッキからだったし、その効果はゾルダに帰属していた。
この演出そのものがオモチャのプレイバリューのためのものだったという可能性もあるわけが、それにしても、龍騎のデッキからクリスタルブレイクのカードが出てきたりしたら、やはり違和感バリバリになるはずだ。
そこまで言わなくても、例えばドラグバイザーツバイで遊ぶなら、やはり赤い龍騎サバイブのデッキからカードを抜きたくなるのが人情だろう。
龍騎サバイブが好きならなおのことだ。
それが大多数の人は再現できないとなれば、やはり“何のためにデッキの色が変わることにしたのか”聞きたくなるというものだ。
このバイザーシリーズにはほかにも問題がある。
ベノバイザーやダークバイザー、マグナバイザーは、カードを装填しても音声を発しないのだ。
しかも、ダークバイザーツバイは一応音声を発するものの「サバイブ」「サバイブ」としか言えないし、ブラックドラグバイザーは劇中では声が他のバイザーと違うはずなのに、商品はノーマルのドラグバイザーと同じ声しか出ない。
だから、「ソードベント」「ガードベント」などの様々な音声を劇中のそれと同じように楽しめるのは、ドラグバイザーとドラグバイザーツバイの2種類だけということになる。
ほかのバイザーはスイッチを入れるとランプが光って音が鳴るだけで、カード装填時と未装填時に音が違うというギミックしかない。
つまり、ほかのバイザーを買っても、カードを装填して「ソードベント」などと喋らせるという遊び方はできない。
更なる落とし穴として、そのことはテレビCMを見ている普通の人には理解しづらいというのがある。
『DX龍召機甲ドラグバイザー』のCMを見てみると、ドラグバイザーで様々な音声を発した後、『翼召剣ダークバイザー』がまるで同じ性能の品物であるかのように画面に現れる。
確かに、CMをよく見ていれば、音声が出ているときに画面に映っているのはドラグバイザーだけなのだが、知らないで見ている人には、『ダークバイザーも同じようにカードを装填すれば喋る』という印象を与える。
もちろん、商品のパッケージ等には「喋る」などとは一言も書いていないから、いざ買おうとしてそのことに気づくという人もいるだろうが、そうと知らないまま買ってきてしまう迂闊な人も結構いたのではあるまいか。
実際、鷹羽の知人に、喋らないことに気付かずにダークバイザーを買おうとしている人がいたが、そのことを教えたら買うのをやめてしまった。
そういう人や、買ってから気付いた人も結構多かったのではないだろうか。
決して詐欺などと言う気はないが、商品ラインナップとしてかなり不親切な作りになっているのは間違いない。
何しろ、鷹羽のように王蛇が好きで、ベノバイザーで「ユナイトベント」したい人間は、無理矢理改造するかライダーの頂点に立たない限り望みを叶えることができないのだから。
なりきりグッズのもう1つの雄:武器関係も中途半端だ。
「武器」として発売されているのはドラグセイバーだけ。
ウイングランサーもベノサーベルもギガランチャーもない。
これは、ただでさえ大型・(ちょっと)高価なバイザーがラインナップされる都合上、ほかのライダーの分まで武器を売るのは辛かったということなのだろう。
とはいえ、武器が1つではあまりにもつまらない。
ナイトやゾルダのようなサブ主人公達のバイザーが武器の形をしているのは、そういった面もあってのことだろう。
2つのバイザーツバイがそれぞれ単独で武器に変形するのも同様の理由(それだけではないが)だ。
逆から見れば、龍騎のバイザーがガントレットタイプだからこそ、武器が発売されたのかもしれない。
つまり、なりきりグッズとして、変身ベルト、バイザー、武器の全てを揃えられるのは、メイン主人公である龍騎だけだが、サブ主人公の2人も、バイザーを武器兼用にすることで一応グッズを揃えられるよう配慮したのだろう。
どうせなら王蛇のバイザーも武器になるタイプにすればよかったかも。
結局、一通り声が出るバイザーという点では龍騎しか該当がないということになり、なりきり商品としては、ほかのライダーは全員揃えようがないということになる。
人気分布がどういうものだったかは知らないが、少なくとも“龍騎がダントツ人気で、ほかは大して人気がない”というものではないのだから、せめてメイン数人については喋るバイザーを発売してほしかった。
…と考えているうちに、ふと、G3にしてもギルスにしても、光る鳴る系のオモチャが出ていないことに気が付いた。
昔懐かしい『RX』のロボライダーやバイオライダーのベルトも、光る回る系のデラックス商品ではなかったし。
そう考えると、光る鳴る系の機能を持つバイザーが主人公のほかに5人分も出ているというのは、意外と凄いことかもしれない。
しかも、色変えで作れるリュウガはともかく、完璧に悪役である王蛇やタイガのバイザーまで出ているのだから、本来賞賛されるべきことなのかも。
悪役のなりきりアイテムが一通り出たのは、『重甲ビーファイター』のブラックビートで、変身アイテム:ブラックコマンダーと武器:ジャミングマグナムが出ていたくらいしか思いつかないし、それらはいずれもブルービート達のものを流用して作れるものなのだから。
バイザーの場合、ほとんど全部形が違うから、手間はそれだけ掛かってるんだよなぁ。
「仮面ライダーだから出て当然」ではなく、「よくぞ悪役の分まで」と言うべきなのかも。
次に、『龍騎』のもう1つの主力商品であるR&Mシリーズについて触れてみよう。
細かいことは、このサイト内にある『嗚呼、人生に玩具あり』で語られているので、具体的に個々の商品のプレイバリューや出来については触れないことにする。
この商品もまた、非常に中途半端な印象を受けるものとなっている。
このシリーズは、前作、前々作での装着変身シリーズに代わって登場した商品で、ライダーと契約モンスターの可動フィギュアをセットにし、モンスターのパーツを外すとライダーの武器等になるというものだ。
例えば龍騎の場合、龍騎と契約モンスター:ドラグレッダーの可動フィギュアがセットになり、ドラグレッダーの頭部がドラグクロー(ストライクベント)に、前足と後足がそれぞれドラグシールド(ガードベント)に、尻尾がドラグセイバー(ソードベント)になり、龍騎のフィギュアにはめたり持たせたりすることができる。
モンスターの種類や形状によって、ライダーの武器になるパーツの数が違うという点については、『嗚呼、人生に玩具あり』を読んでもらえば分かるとおり、かなりのばらつきがある。
特に後発の龍騎サバイブ、ナイトサバイブはモンスターがバイクに変形するだけだし、タイガは、武器として分離するパーツがたったの1種類と、コンセプトが変わったのかと思うほどだ。
しかし、このシリーズが中途半端なのは、そんな生やさしいところではない。
番組中のシーンを再現できないような作りになっていること自体が問題なのだ。
モンスターのパーツを外してライダーに持たせるということは、その際モンスターはパーツが欠けた状態になるということだ。
例を挙げれば、龍騎がストライクベント「昇竜突破」を使う場合、番組中では、ドラグクローを装着した拳を突き出す龍騎の右側で、ドラグレッダーが火を吐いて敵を攻撃している。
だが、R&Mの場合、ドラグクローを龍騎にはめた時点でドラグレッダーの頭部がなくなってしまうため、隣で火を吐いているという構図は作れない。
つまりこの状況をR&Mで再現するには、ドラグレッダーの頭部が2つ必要なのだ。
これだけなら、隣にドラグレッダーを配置した番組側演出が悪いということになる。
だがファイナルベントでは、全てのライダーが契約モンスターと連携して技を繰り出すことになる。
従って、王蛇のヘビープレッシャー、タイガのクリスタルブレイクなど、武器を併用するファイナルベントは絶対に再現できない。
この問題は深刻だ。
もちろん、ナイトの飛翔斬のようにそもそもオモチャで再現不可能な技もあるが、あれは背中に合体したダークウイングが、そのままナイトを包み込んでドリル状に変形しているわけで、龍騎のドラゴンライダーキックにおけるドラグレッダーの炎の描写同様、気合いとイマジネーションで保完可能だろう。
火を吐くキャラのオモチャ数あれど、本当に火を吐くオモチャはそうはない。
だが、いくらなんでも、ない爪を気合いで補って敵を捕らえているつもりになれというのは酷だ。
また、本編では、ゾルダが武器を持って立っている隣にマグナギガが並ぶシーンが何度かあったが、R&Mでは、それをやるとマグナギガの手がなくなっていたり足がなくなったりしているため、並べることはできない。
これは、武器召還とモンスター召還が同時にできるという設定上、致命的なミスとなる。
ライダーが武器を持ったらモンスターと並べられなくなるのでは、そもそも両者をセットにして売る意味すら色褪せてしまうのだ。
オモチャが悪いとまで言い切る気はない。
武器パーツを重複して売れば、それだけ高くなるし、モンスターから武器を供給されるという印象が薄れるわけだから、これは企画時点で既に宿命づけられた欠点なのだ。
商品展開の企画の段階で気付くべきだったろう。
卵が先でも鶏が先でも構わないが、番組の企画時点で大事なことを何か忘れていたとしか思えない。
もう1つ、特徴的だったのがアドベントカードシリーズだ。
Vバックルやバイザー、カードダスや食玩系、R&Mシリーズ同梱、カードのみのスターターセットなど、様々な形態で発売されたカードは、ウインナーなどに封入された一部のカード以外はバイザーに装填可能な統一サイズになっていた。
内容については、どのシリーズに何があったかまでは調べきれなかったが、全部で355種類あったらしい。
当然、それらカードの中には、本編には登場しないものも多々あった。
有名所では、オーディンのサバイブカード“無限”がある。
実はサバイブのカードには、龍騎の“烈火”、ナイトの“疾風”のほかにオーディンの“無限”があり、3枚を並べるとゴルトフェニックスの絵が出来上がるのだが、この無限のカードは、45話『20歳の誕生日』でラスト画面の脇に映っているだけで、本編中では使われていない。
一説には、オーディンは最初からサバイブになっているという話もあるが、これについては、ファイナルベントのカードの背景がほかのノーマルライダー達と同じだったり、士郎が持っていたデッキがオーディンのものと同じ(龍騎・ナイトのサバイブはデッキの色が変わっている)反面、オーディンのベルトそのものが龍騎達と違って金色だったり、人間でない特殊なライダーだったりすることなどから、どちらとも言えない。
ともかく、わざわざ3枚並べることが前提でデザインされたカードが番組中で揃わないというのでは、せっかく並べられるようにした甲斐がないというものだ。
そして、それ以上に、カードを使ってのバトルという色彩が薄まっている『龍騎』に対応したゲーム用カードに、果たしてどれくらい需要があったのか知りたいものだ。
カードゲーム用に買って使った人ってどれくらいいるんだろう?
ところで、後に述べることになるが、ライダーはテレビ本編ではとうとう13人揃わなかった。
そのせいもあってか、番組放映中に発売された商品で、13人のライダーを全部揃えられる商品はほとんどない。
出番や活躍場面の少ないライダーを商品化するのは難しい中、シリーズとしては番外編(EX)扱いのものもあるが、どこでも手に入る最もスタンダードなアイテムであるソフビ人形RHシリーズが全員揃っているというのは、結構美点かもしれない。
なお、番組終了後には、食玩HRFシリーズなどライダー13人が揃うものも結構出ているらしい。
ちょっと調べたところでは、『メガハウス チェスピースコレクションDX 仮面ライダー龍騎』、『HRF 超集結! 仮面ライダーコレクション』で揃っているそうな。
また、『バンダイ HG・仮面ライダーシリーズ』と『バンダイ 仮面ライダーアクションポーズシリーズ』の2シリーズを合わせる事でも、一応一通り揃うとのこと。
これは、番組の終了に伴い、商品のメインターゲットが、主に好きなヒーローだけを買う子供から、全員集めることを主目的にする好事家にシフトし始めたせいだろう。
世の中、購買力のある層を中心に回るということか。
資本主義だなぁ。