『仮面ライダー龍騎』
第45話 20歳の誕生日
2002/12/15 放映
(Story)
「1人倒れたか」とインペラーの死を感じ取った士郎は、幼い日の優衣が1人泣いている姿を思い出しながら兄と妹の絵を撫で「泣くな優衣」と呟いた。
そして、佐野満が行方不明という新聞記事を見ていた真司は、佐野が助からなかったことを知って落ち込んでいた。
蓮の「奴は自業自得だ。お前も二度と顔も見たくないとか言ってなかったか」という言葉に
それと「死んでもいい」ってのは違うだろ
と返した真司は、東條の行動を追って清明院大学や東條の家を探し歩いたという蓮に割り切れないものを感じていた。
「東條のような奴でも倒すのは反対ってわけか」と言う蓮を前に、それでも人の命を奪うことに抵抗のある真司は、上手く気持ちを伝えられないことをもどかしく思うのだった。
そして、外に出掛ける優衣の手が蒸散しかけていることに気付いた真司は目を疑うが、取り敢えず深く追求はしなかった。
そんな花鶏に、大久保が大荷物を抱えてやってきた。
家賃や税金の滞納のため、事務所を閉め出されてしまった大久保は、真司の下宿先である花鶏の店先を借りてOREジャーナル編集部を設置しようと考えたのだ。
大久保や令子は、反響は最悪だったものの、鏡の中の怪物の件についてまだ諦めてはいなかった。
めぐみと島田を北岡の事務所に入り込ませ、令子は取材を続けていた。
そして、沙奈子と大久保が揉めている最中、優衣から蓮に迎えに来てほしいとせっぱ詰まった声で電話が入り、ただごとでないと感じた真司と蓮は花鶏を飛び出した。
そのころ優衣は、鏡の向こうに見える幼い頃の自分から
20回目のお誕生日が来たら、消えちゃうよ
と告げられて、蒸散する自分の身体に気付いて混乱していた。
駆け付けた真司と蓮の前で、蒸散が止まった優衣は
あたし、消えちゃう。20歳の誕生日が来たら
と言って、元々幼い頃の記憶はあまりないが、最近は士郎と2人でモンスターの絵を描いているところしか思い出せないのだと話し始める。
その時、真司達はモンスター:シアゴーストの気配を感じ、優衣を残して戦いに向かう。
変身する直前、蓮は真司に
優衣の話、多分本当だろうな
神埼が仕組んだことは、全て優衣のためだと言われてきた
奴の目的が優衣を消さないことだとしたら話は合う
と言った。
ライダーの戦いの目的が優衣の消滅を防ぐためらしいと知った真司は驚くが、取り敢えず目前のモンスターを叩くため変身してミラーワールドへ。
シュートベント“メテオバレット”、ファイナルベント“飛翔斬”で計3体のシアゴーストを倒した2人だったが、もっと多くのモンスターがいる気配に気付いていた。
現実世界に戻った2人は、倒れた優衣に気付かずに走ってくるトラックがオーディンに弾き飛ばされるのを見た。
そして、姿を見せた士郎は、蒸散を続ける優衣に
優衣、心配するな
お前は絶対消えない
そのためだけに俺は存在している
と言って手を握り、その蒸散を止めてしまった。
一方、インペラーを自分が倒したと思っている東條は、佐野を殺したことで自分がどれだけ強くなったかを試すため、警察に負われ続けている浅倉に戦いを挑む。
だが、浅倉は東條を相手にせず、鉄パイプで襲い掛かろうとしてきた東條に、逆に
おい、インペラーを殺ったのは俺だぜ
見たのか? 奴の最期を
俺だよ、トドメを刺したのは
と答えて戦意を奪ってしまった。
そして王蛇と戦うのを諦めたタイガは、龍騎達同様にシアゴーストの気配に気付いて戦っていたゾルダに襲い掛かる。
ねぇ、聞きたいんだけど、やっぱりトドメを刺さないと倒したことにならないのかな?
香川先生なら答えを教えてくれるだろうけど、もう倒しちゃったし
佐野君を倒したのは僕じゃなきゃいけないはずなんだ
僕が英雄になるために
ミラーワールドでは、シアゴーストの発生が続いていた。
(傾向と対策)
さすがに大企業の新社長様の失踪となると、社会もそれなりに反応するらしい。
新聞によれば、「今月12日」「佐野商事新社長行方不明」で、「公開捜査に踏み切」ったとあるから、数日待ってから身代金目的以外の原因と考え、公開捜査に踏み切ったらしいことが分かる。
百合絵の証言はどうなるのかという疑問はあるけれど、真司が佐野の死に気付く理由としては御の字だったと言えるだろう。
そして、すっかり自分で殺したつもりになっている東條は、自分的理論『大切な人を沢山犠牲にすれば、それだけ強くなる』を試すべく浅倉を挑発するが、浅倉の「見たのか? 奴の最期を。俺だよ、トドメを刺したのは」の一言で前提を崩されてしまい、寝ている浅倉に鉄パイプを持った自分という圧倒的なイニシアチブを放り出して、しかも「この車は置いて行け。気に入った」と車まで巻き上げられて退散する羽目に。
前回ボコボコにされたのが相当応えたんだろうか?
そして「俺がインペラーを殺した」とか言い出しそうにないゾルダのところに相談に来たわけだ。
えらく物騒な相談の仕方だと思うが。
さて、遂に真司達も知るところとなった優衣の蒸散だが、どうして20歳の誕生日なのか、ライダー同士の戦いの意味は何なのか、そして士郎がタイムベントを使ってまで復活させたあの兄妹の絵は何なのかということについて、ちゃんと説明してくれることを期待しよう。
で、ここで真司は新たな選択肢に迫られることになる。
士郎の目的が優衣の消滅を防ぐことだという可能性を蓮に示された真司は、取り敢えず反論する材料がないからそれを信じることになるだろう。
となると、ライダー同士の戦いという士郎の仕組んだルールは、それが優衣を救うことに直結していると言わざるを得ない。
つまり、“ライダー同士の戦いを止める”イコール“優衣を見殺しにする”ということになる。
近い将来に起こる優衣の死が、ミラーワールドでの蒸散と非常に似かよっている以上、ミラーワールド関連の力でなければ救えないことは理の当然だから、真司が取るべき道は
1 ほかのライダーを殺してでも優衣を助けるために戦う
2 ライダーを助けるために優衣を見捨てる
の2つしかない。
図らずも香川の言っていた「多くのために1つを犠牲にする勇気」の有無を試されることになったのだ。
この場合、蓮は元々「恵里のためにほかの全てを犠牲にする」という決意を持っているわけで、ライダーとして戦い続けることが優衣を救う道ならば、これまでどおり戦うだけでいい。
ほかのライダーは優衣がどうなろうと知ったことではないから、やはり関係ない。
問題なのは真司ただ1人だ。
これまで真司が問題を先送りし続け、多くの犠牲を出し続けてきたことのツケを払うときが遂に来るのだ。
どちらにせよ、誰も殺さない・殺させないという真司の信念は自らの意志で破らねばならない。
これまでのような「救えなかった」ではなく、積極的に「殺す」となるのだ。
これで『ドラゴンボール』的展開が許されるなら、最後の1人になった上で、「今までライダーやモンスターの犠牲になった人達全員を生き返らせておくれ!」が使えることになる。
だが、最後のライダーが望みを叶えられるというのが空証文(つまり嘘)だった場合、或いは士郎が『勝ち残るのはオーディンに決まっている』という考えから最後の望みで優衣を救おうとしていた場合は、結局優衣かライダー達の命のどちらかが犠牲になるのだ。
しかも、いずれの場合も恵里の命は救えないという、非常に分の悪い勝負だ。
蓮は、今回真司に「お前は…禿げるぞ」と言っているが、本当は「お前は、そのままでいい」と言おうとしていたのだと思う。
何度自分が死にそうになっても懲りずに平和ボケしている真司が、蓮には眩しい存在でもあるからだ。
ただ、それを言うには照れくさいから、真司が頭を掻きむしっているのを揶揄して「禿げるぞ」と誤魔化したのだ。
ただ、優衣の命が懸かっていることを知った今となっては、真司の平和ボケは優衣にとって命取りになりかねない。
今後、蓮はどうするのだろう?
さて、北岡事務所に居着くことになった“珍しいクリスマスの飾り”達は役に立たないとして、令子はどこで何の取材をしているのだろう?
ちなみに、OREジャーナルが事務所を閉め出されたのは、主に家賃・税金の滞納が原因と思われる。
というのは、パソコンなどの動産に差し押さえを食らうのはともかく、どう考えても自社ビルではない、つまりOREジャーナルの財産でないあの事務所が差し押さえられるとは思えないからだ。
つまり、過去数か月にわたって家賃を踏み倒してきたOREジャーナルが、とうとう大家の逆鱗に触れて賃貸契約解除&資産の差し押さえという手段に出られたところ、そのままでは税金を取り立てられなくなる税務署が、税金分を保全すべく差し押さえに参加した(税金というのは、差し押さえられた物品の競売価格から真っ先に配当を受けられるので)というところだろう。
無論、購読者の多数が解約を申し入れたことにより次回分の購読料収入がアテにならなくなったことが大家を怒らせる引き金になっている可能性はあるが。
金色のザリガニですら購読者が離れなかったのに、鏡の中の怪物だけで潰れる一歩手前まで来てしまったのには、そういう事情があると思われる。
さて、今回の見所は“ちゃんとシートベルトをしている浅倉”だろう。
特に、警察に見付からないようにシートを倒した後は、もう外した方が目立たないと思う。
PS ところで、本編中やたらと「倒す」という言葉が出てくるけど、これは「殺す」という意味で使われているのがほとんどだったりする。
やっぱ朝の番組で「殺す」を連発するのは難しいってことだろうか。