『仮面ライダー龍騎』
第42話 401号室
2002/11/24 放映
(Story)
サバイブ化を解いた龍騎の背後からデストクローで襲い掛かったタイガだが、トドメを刺そうと振り下ろしたデストバイザーは、オルタナティブ・ゼロによって止められた。
ゼロの「命まで奪う必要はありません」という一言に、なおも手を緩めないタイガだったが、やがて落ち着いてデストバイザーを引っ込めた。
香川、佐野と共に現実世界に戻った東條は、おべんちゃらを言っている佐野に
君、さっきは城戸君を応援してなかった?
と詰め寄るが、佐野は、にこやかに
俺は自分を高く買ってほしいだけですよ
と笑う。
病院を退院した北岡は、吾郎に
俺、ライダーとして前より弱くなったかな?
それとも、自分で思っているほど強くなかったってことかな?
と尋ねる。
再び花鶏に現れた佐野は、真司から香川達が優衣を狙っていることを教えられる。
何とか戦力を強化しようと考える真司は、“花鶏での飲食無料”を条件に佐野を雇うことにする。
一応契約を受けたような顔をしていた佐野は、真司の経済力に見切りを付けて、清明院大学401号研究室へやってきた。
真司同様戦力強化を考えていた香川は、佐野を『君に我々のことが理解できるとは思えない』と評価した上で、敢えて契約することにする。
そのころ、浅倉の前に士郎が現れ、香川と東條の居場所を教えていた。
翌日、北岡の事務所を訪れた令子は北岡に昨日のことを尋ねるが、北岡の「くだらない夢物語を追い掛けてないで、もっとマシな仕事があるでしょう。いい加減目を覚ましたらどうです」という言葉に腹を立てて、飛び出して行った。
この言葉は、ライダーの戦いに近付きすぎている令子を少しでも遠ざけようとする北岡なりの優しさだった。
だが、その優しさが自分の弱さの源だと気付いてもいる北岡は、「このままでは終わらない」と、東條と決着を着けるべく401号室へと向かう。
そして、真司から佐野を雇ったと聞いた蓮は、「あいつが信用できると思うのか!?」と真司のバカさ加減に呆れ果てて、香川と話を付けるべく、やはり401号室へと向かい、真司も一緒に行くことに。
そして、401号室に浅倉・北岡・蓮・真司の4人が揃ったが、既に研究室はもぬけの殻だった。
人に知られ過ぎた401号室に用はないと、香川は部屋を畳んでしまったのだ。
香川は、東條に人として欠けているものを取り戻させるべく、妻子を呼んで4人で食事をする。
だが、目の前で繰り広げられるアットホームな雰囲気に、東條は苛立ちを募らせていく。
その後、インペラーが操るゼール種のモンスターによって優衣をミラーワールドにさらったゼロ達は、妨害する龍騎を足止めしつつ、サイコローグやゼール種モンスターを使って優衣を殺そうとする。
だが、優衣の目が恐怖に見開かれた瞬間、モンスター達の動きが止まり、逆にインペラーやゼロを襲い始めた。
契約もなしにモンスターを操り、薄く金色に光る優衣の姿。
サイコローグを弾き飛ばし、「化け物め!」と優衣の目前に迫ったゼロだったが、タイガに殴り飛ばされてしまう。
驚くゼロに、タイガは
先生…僕、ミラーワールド閉じるの、嫌になっちゃって
ライダーの戦いで勝ち残るのが真の英雄かな…って
と言って、ファイナルベント“クリスタルブレイク”でゼロのデッキを砕いてしまった。
変身を解いた東條は、徐々に蒸散していく香川の骸に
先生は僕にとって一番大事な人でした
だから、先生に犠牲になってもらわないと…
僕が英雄になるために
ごめんなさい、先生、ごめんなさい
と涙を流しながら微笑む。
一方、優衣は、様子がおかしくなったまま佇み、龍騎の呼び掛けにも応えない…。
(傾向と対策)
唯一の常識人:香川英行死亡。
惜しい人を亡くしてしまった。
ミラーワールドやモンスター、ライダーを使っての士郎の計画(なんだろう、きっと)を、世のため人のために潰すことを望み、そのためには最愛の家族を犠牲にすることも辞さないという“大儀のために生きる”男の姿を見せていたのに、悪い弟子を持ったがために志し半ばにして倒れてしまった。
彼を見ていると、『機動戦士ガンダム0083』での「哀れ、理想を持たぬ者を導こうとした我が身の不覚!」というデラーズの最期を思い出す。
金次第でいつ裏切るかもしれないインペラー:佐野を雇ったり、ライダーなどという自分が潰すべき存在を味方にしていたりと、力に傾倒した布陣を敷く人物だったのが敗因ということだろうか。
東條や仲村を優衣を守りそうなライダーと戦わせ、その隙に自分1人で優衣を襲ってさえいれば成功しそうな気もするが、仲村の失敗で自分達の存在をライダー側に知られて警戒されてしまったのが一番の敗因だろう。
香川のやっていたことは、“放っておいても多くの犠牲者を出し続ける”モンスター達の存在を考えれば、正しいと言わざるを得ない問題だった。
その点では、正しく北岡が言ったとおり、真司の同類なのだ。
ただ、真司は『1人も犠牲を出さない』という理想論を貫こうとしているから、香川達と相容れないだけだ。
北岡にしてみれば、“ミラーワールドを閉じる”ということは、とりもなおさず自分の助かる可能性を潰すということであり、それを真司が知れば、やはりミラーワールドを閉じるわけにはいかないという結論に達するだろう。
真司は、“自分のせいで人が死ぬ、或いは自分が救えるかもしれないのに救わない”ことを嫌っているだけで、自分の知らない人がどこかで死ぬことはあまり考えていない。
香川は、多くの人を助けるために、自分の大切な人を諦める覚悟をしていた。
それは、たとえヒロイズムだったとしても、誰にも文句を言えることではない。
香川なら、恵里や北岡のことを知っても「だからといって、他人を殺していいということにはならない」という正論でもって反論できるだろう。
ちょうど『龍騎』の中CMで『生きるために森を焼く人に、森を守ろうという言葉は届かない』と言っているのがあるが、かつて『ビーファイターカブト』の『重甲ストライキ』という話で、“敵の攻撃で家を失った人達に家を与えるべく役所が木を伐採させているのを、主人公が止めようとする”という話があった。
『ビーファイター』は、昆虫達のエネルギーを与えられた強化服「インセクトアーマー」で戦う戦士の物語であり、『木を切ればそこに住む昆虫たちが住処を失うから』というのが主人公の言い分だった。
だが、木を切る側は「昆虫のために、家を失った人を救うのをやめるわけにはいかない」という理由から木を切り続け、結果としてインセクトアーマーは人間を守ることを拒絶してしまった。
まぁ、朝の番組だからカブトが木を切る人間を襲うという展開にはできなかったのだろうが、なかなか目の付け所のいい展開だったと思う。
結果的に、インセクトアーマーは敵の方がより悪い奴ということで戦ってくれたのだが、「何のために戦うのか」という根元的な問題のあることを思い知らせてくれた。
香川の戦う根本は、“モンスターに襲われることになる人々を守る”ということで、そのためにミラーワールドそのものを閉じる(それがどういうことかは不明だが)ことが必要だった。
彼は、交通事故などで死ぬ人までも守ることを目的にしているのではなく、士郎の独善によって殺されてしまうことになる人達を守ろうとしたのだ。
家族にとっては迷惑な話だが、香川の正義感が士郎を許せなかったのだろう。
一方、東條の戦いは全く意味が違う。
東條は、「英雄」「犠牲」という言葉の響きに酔っているだけで、極端なことを言えば、自分を英雄と呼んでもらいたいだけなのだ。
だから、香川が闇雲に英雄になることを求める人物でないということが分かった段階で、香川についていっても自分の望む英雄にはなれないと思い、自分なりの「英雄」像を模索し始めたのだろう。
しかし、理想を持たない東條には、自分なりの英雄が何か分かっていない。
だから香川の言っていた「目的のためなら、それが大切なものであっても犠牲にする」という部分を「大切なものを犠牲にする」とすり替えて、「僕が英雄になるために、先生に犠牲になってもらわないと」という妙な話にしてしまったのだ。
涙を流しながらそれでも笑っていたのは、狂気の始まりなのか、開き直りなのか…。
まぁ、ライダーの頂点を目指して戦うという普通のライダーになったわけだけど、タイガの強さってのは不意打ちの強みが主だから、正面切ってほかのライダーと戦うのは辛いだろうな〜。
切り札とも言うべきフリーズベントは、ナイトとインペラー以外の全員が見たわけだから、そう簡単にはかかってくれないだろう。
モンスターを呼ばずに正面攻撃だけしていればフリーズベントは使えないし、遠遠距離攻撃がバイザーだけであろうタイガでは、正面切っての戦いは辛かろう。
とかいって、いきなりシュートベント持ってたら笑えるけど。
さて、契約相手を失ってしまった佐野は、どうすればいいのやら。
いつの間にか画面から消えてしまってたけど、まさか死んだ訳でもあるまい。
いくら真司がお人好し(バカ)でも、さすがに二度と相手はするまい。
かといって、ほかのライダーではあんな奴を信用するはずもなく、雇ってくれる人のいない傭兵なんて存在価値がない。
鷹羽が北岡の立場なら、噛ませ犬として雇ってタイガにぶつけ、双方がファイナルベントを使ったころに乱入して一気にエンドオブワールドをかますんだけど、「自分の力」に拘っているであろう北岡では、そんなことはするまい。
北岡としては、自分の優しさが弱さに直結していることに気付いてしまったわけだが、それでも負けるわけにはいかないという決意があるようで、純粋に“戦うためだけに戦える強さ”を持っている浅倉を最後の敵としてほかのライダーを倒すつもりになってきたようだ。
ゾルダも本来不意打ち型というか遠くから狙い撃つタイプなので、きっちりトドメを刺す癖さえ付ければ、そうそう負けるはずないんだけどね。
他人の家で栄養補給する男:浅倉は、やはり普段は貧しい食生活を送っているようだ。
多分イモリの黒焼きという線で狙ってるんだろうけど、冬眠してるのを掘り起こしたのかな?
どうでもいいが、浅倉が食べてた肉は白身っぽかったけど、イモリを焼いてもああいう色にはならないよ。
まさか、あれはトカゲ…?
それにしても、今回の演出にはちょっと首を傾げてしまう。
401号室に4人集まって真司をけなして終わるだけってのは何?
特に浅倉がまっ先に帰っちゃうってのは変すぎ。
大体、「城戸がバカだと思う人」で手を挙げる直前の浅倉の笑顔がさわやかすぎる。
あれって、前々回に刑務所を脱走したときのさわやか笑顔と同じくらい浅倉らしくなかった。
もっと腹が立ったのは、東條の腕の中で蒸散していく香川の図。
タイガがクリスタルブレイクを決めたのは、階段脇の案内板の字の向きから言って間違いなくミラーワールドだった。
だが、東條が香川の亡骸を抱いているシーンでは、案内板の文字から見て現実世界だったようだ。
てことは、香川の死体は現実世界で蒸散してしまったということになるんだが…なぜ?
それとも、案内板は鷹羽の見間違いで、実はあそこはミラーワールドだったんだろうか?
だとすると、デッキが壊れたゼロが香川の姿に戻ったのをタイガが抱きかかえて歩き出し、香川の蒸散が始まったころにわざわざ自分も変身を解いたってこと?
そもそも、このシーンは香川を殺した東條の泣き顔を描きたいがためだけに作られたように思える。
つまり、39話『危険のサイン』のラストで「仲村君のために泣いたのは本当じゃないかな。残念だったし。城戸君のためにも泣くかもね」と言っていたことを、香川を殺した後で泣かせることで実証したかったのだろう。
だったらだったで、せめて死体を現実世界に持ち帰ったってことにすればいい。
その後で死体を放置して歩き去るとかすれば、目的は果たせるはず。
なんで死体をなくす必要があるんだろう?
手塚だって死体が残ったんだから、別に構わないだろうに。
奥さんと子供が可哀想。
さて、今回の見所は“ウルトラセブン飛びしている優衣”だろう。
ラストシーンの優衣は、肩の状態から言って、うつぶせに寝ているのを頭側から撮っている。
もちろん胸を隠すためなんだろうけど、水着とか着せて、斜め上から撮るようにすればいいのに、どうして真上方向から撮りたかったんだろう?
PS そういえば、優衣がおかしくなった後、頭に響いていたモンスターの名前はディスパイダー、レイドラグーン、テラバイター、ギガゼールくらいしか聞き取れなかったけど、レイドラグーンってまだテレビには登場してないんですけど…。