『仮面ライダー龍騎』
第40話 兄と妹の記憶
2002/11/10 放映


(Story)
 ミラーワールドでサイコローグに襲われた優衣をガルドストームが助け、両者の去った後に士郎が現れた。
 士郎が自分を助けたことに気付いた優衣は、
  兄妹と思わないなんて言ったこと謝る
  お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ
  だから本当のこと教えて

と言うが、士郎は
  お前は何も心配するな
と言い残して、光と共に消えてしまった。
 優衣は、駆け付けたナイトに保護され、無事に脱出する。

 一方、龍騎にトドメを刺そうとしたタイガは、オルタナティブ・ゼロに止められ、変身の解けた真司は九死に一生を得た。
 そして、イグアナの写真を見ていた島田は、背景に妙な怪物が映っていることに気付いて大久保に見せていた。
 その怪物は、位置関係から言って到底映り込みようのないことから、鏡の中にいるとしか思えないという島田・めぐみの意見に、令子も、怪物は士郎の映り方と同じなのではないかと考える。
 大久保は、専門家に分析してもらうことにした。
 
 そして、研究室に戻った香川は、東條に
  君が英雄になろうとする気持ちは素晴らしいものです
  しかし、仲村君だって我々の立派な仲間でした

と、無闇に殺そうとする東條を諭すが、東條は
  そうは見えなかったので。それに、弱かったです
とあっけらかんと答える。
 香川は、怒りを堪え
  東條君…英雄とは、苦しいものなんですよ
  君もそこを理解しないと本当の英雄にはなれませんよ

と諭すのだった。
 
 その夜、病院に運ばれた真司は、様子を見に来た優衣と蓮に、東條にやられたこと、東條が優衣を狙っていることを話した。
 そして
  あいつ(東條)、訳分からないんだよ。仲間だって平気に…
  それでも、それがあいつにとって正しい方法なんだ
  あいつだけじゃない、ライダーはみんな、自分が正しいと思うことをやってるだけで
  俺なんかが割り込む必要ないんだ

と肩を落とす。
 蓮は、真司に
  そうだ。それを理解したり、止めようとしても無駄だ
と言い、帰っていった。
 
 翌日、森本との接見を待っていた浅倉だったが、接見室にいたのは北岡だった。
 北岡は、森本に一服盛って、浅倉の担当弁護人になったのだ。
 怒りに燃えて暴れる浅倉を、刑務官達が抑え込む。
 
 真司の見舞いに来た大久保・島田・めぐみが帰った後、真司は、タイガの「1つを犠牲にする勇気のない人にライダーをやってほしくないかなぁ」という言葉を思い出した真司は、龍騎のデッキを床に放ってしまった。
 見舞いに来た優衣は、落ちているデッキを見て真司の苦悩を知り、
  お兄ちゃんも、ライダーと同じように自分が正しいと思うことをしてるんだと思う
  全部あたしのために
  前にそれを知ったときは、お兄ちゃんを止めようと思った。真司君のように
  でも今は、それもあるけど、お兄ちゃんのために止めたいって思う
  だってお兄ちゃん、ちっとも幸せそうじゃないから

と言う。
 そのとき、香川や蓮、真司、東條らライダー達に士郎の気配が感じられた。
 士郎は、やってきた香川に
  香川、お前に英雄になるチャンスをやる
  お前の家族にモンスターを付けた
  オルタナティブのカードデッキを渡して全て廃棄するか、このまま俺の邪魔をするか、お前が選べ
  多くを救うために1つを犠牲にする勇気、だったな

と脅しをかけてきた。
 だが、東條は、
  そんなの無駄な脅しだよ、香川先生は英雄なんだから
  1つの犠牲だよ、それぐらいいいと思うけど

と簡単に答える。
 怒る蓮に、士郎は戦って答えを出せばいいと促し、タイガ対ナイトの戦いが始まった。
 そして香川も
  答えは出てるんですよ! 最初からね
  あなたのファイルを見たときから、全てね

とオルタナティブ・ゼロに変身する。
 そして、「家族に伝えることは?」と尋ねる士郎に「ありませんよ」と言ってミラーワールドへと向かった。
 
 そのころ、浅倉は、北岡に一杯食わされたことを知って駆け付けた森本弁護士を身代わりにして脱獄していた。
 そして、士郎から王蛇のデッキを渡されてミラーワールドに向かう。
 
 ナイトは、トリックベント“シャドーイリュージョン”で時間を稼ぎ、ブラストベントでタイガとゼロを吹き飛ばして、ファイナルベント“疾風断”でゼロを狙う。
 ゼロはファイナルベント“デッドエンド”で迎え撃ち、相討ちになった。
 そこにやってきた王蛇は、前回自分を痛い目に遭わせたタイガを当面の敵と決めて襲い掛かる。
 
 そのころ真司は、
  優衣ちゃん、俺、全然答え出てないけど、結局じっとして黙ってられないみたい
と再びデッキを手に立ち上がっていた。
 
 タイガ対王蛇、ゼロ対ナイトの戦いが続く中、大量のゼール型モンスターが現れた。
 遠くからファイナルベント“エンドオブワールド”で一掃しようとしたゾルダも、マガゼールの不意打ちを食らって乱闘の中へ。
 そこに龍騎サバイブが乱入し、ファイナルベント“ドラゴンファイヤーストーム”でゼール軍団を一掃する。
 そして、龍騎サバイブは、ゼロに「香川さん、あんたの家族無事だよ」と言う。
 香川の妻子に襲い掛かったガルドストームは、真司がドラグレッダーに追い払わせたのだ。
 そして、「香川先生はそんなこととっくに超越してるんだ」と言うタイガに
  俺が助けたいから助けただけだ
と答える龍騎。
 そこに、戦い足りない王蛇が襲い掛かる。
 ライダー達の身体が時間切れで分解を始める中、同じく分解を始めたゼロは、龍騎サバイブを見つめる。
 
 そしてOREジャーナルには、鏡に写っていた怪物はガラスの中に存在するという分析結果がもたらされていた…。


(傾向と対策)
 いや〜、濃い内容だったと言うか詰め込み過ぎと言うか…。
 今回一番の目玉は、鷹羽的には“士郎の思惑を見事にぶち壊す真司という存在”だと思っている。
 どういうことか、簡単に説明しよう。
 ライダー達がなぜ士郎の元に集合したのかということは、今回の大きな謎だと思うが、これは、士郎なりの策略だったと言える。
 真司が香川母子を救えたということは、士郎が母子を狙っていることが分かっていた。
 つまり、士郎が香川に言った言葉は、真司達その場にいないライダーにも聞こえるようにしていたということなのだ。
 だから、話がいい加減終わりかけたころに到着した蓮と東條も話にきっちりついていけたのだ。
 デッキから離れていた浅倉が聞けたかどうかは不明だが、士郎がデッキを渡す際、「お前も行って戦え」と言っただけで「祭りの場所」と言っているのだから、ちゃんと聞いていたと思ってよかろう。
 さらに、インペラーの配下と思われるゼール軍団が乱入したのもそういった流れだったはずだ。
 どうして士郎はわざわざ集めたのか。
 それは、香川の選択がどっちになっても構わないようにしたのだと思われる。
 つまり、香川が妻子可愛さに引けば、集めたライダーにバトルロイヤルをさせてライダーを減らすことができ、香川が引かなければ、ライダーのバトルロイヤルに巻き込まれることになる。
 北岡のように、香川の目的を知らないまま参戦すれば、ライダーの1人として殺す可能性もあるわけだから、一挙両得だ。
 どうやら直接手を下せない理由があるらしい士郎としては、最高の葬り方と言えるだろう。
 香川が生き残っても、妻子が死んだという精神的ダメージは与えておけるわけだし、香川を冷たい男と認識した蓮などを焚き付ければ、ライダー対ゼロの戦いを仕組みやすくなる。
 ところが香川の妻子は殺せず、ライダーは1人も死なない、香川も生きているという結果になったのは、真司の乱入のせいだ。
 そういう意味で、それらの思惑をことごとく潰してくれた真司は、正に計算外の行動を取る男だったわけだ。
 
 ちなみに、香川は本気で妻子を犠牲にしてでも士郎の計画を潰す道を選んだらしい。
 士郎が妻子を人質に取ることは、当然予想済みだったのだろう。
 妻子を自由に行動させていたのは、どうせ反射物のないところに幽閉することはできないからで、逆に言えば、この日が来ることを予期していたし、そのときどうするかも決めていたわけだ。
 実質何も犠牲にしていないしする必要もない東條とは、かなり覚悟が違うらしい。
 東條が香川にとりあえず従っているのは、そういう部分を知っているからなんだろう。
 とはいえ、やはり人間として心が痛むようで、答えを言う前にかなり逡巡していたのだろう。
 真司が妻子を守ってくれたということについて、彼がどういう判断をするのか、最後にどういう気持ちで龍騎サバイブを見ていたのかが、今後に影響を与えそうだ。
 
 それにしても、北岡は凄いことをしたものだ。
 一服盛って食あたりを起こさせ、強引に弁護人になってしまうなんて。
 ま、現実にはちょっと無理な技だが、要するに一刻が惜しい勾留中の弁護活動だからと、森本に弁護人を退任させて後釜に座ったか、森本の代理人として委任状でも無理矢理取ったか、というところだろう。
 ただ、退任だとすると、森本を浅倉に会わせた刑務官は、権限のない人を接見させたということになり、ちょっと微妙な立場になるから、委任状かな?
 もっとも、一度は選任された弁護人だから断りきれなかったとも考えられるか。
 いずれにしても、現実的な方法とは言えないので、あまり細かく突っ込まないことにしよう。
 で、デッキが手に入るとウキウキしながら接見室に来たら、北岡に「一緒に勝ち取りましょう。有罪を!」などと言われた浅倉君は、どうやってか拘束具のベルトを切ってしまったらしい。
 今回は、多分森本が「顔くらい自由にしても大丈夫」と外した際に、「苦しいから少し緩めてくれ」とか言って胸の前で交差しているベルトを外した瞬間に、腕を自由にして森本を抑え込んだのだと思うけど、多分森本が来なくても、取り調べや裁判の移動などの折りに刑務官に緩めさせるつもりだったんだろう。
 北岡が弁護士ではデッキを取り戻すのは簡単ではないから、とりあえず脱出を、というわけだ。
 入れ替わったところで、悲鳴を上げると同時に何かを被って火を付けることで、顔を隠したまま担架で脱出させてもらったんだろうなぁ。
 最初のベルト切断は、多分火を付けるのに使ったと同じライターとかでやったんだろうけど、どこに持っていたのかは謎。

 なお、森本を不用意だと思う人が多いだろうから、一応のフォローをば。
 タイムリーなことに、最近名古屋刑務所で刑務官による暴行事件が起きたが、森本のような『人権派』の人には、ああいうことが日常的に行われているのではないかと考えている人が多いらしい。
 だから、留置とかするときはもっと気を使え、と。
 要するに、「独房に入れるだけで十分だろう!」という意見だ。
 死刑廃止論者も割とそうだが、加害者側の人権を云々言う人って、なぜか被害者側の人権についてはあまり考慮してないような気がする。
 その是非について、身体で理解しただろう森本氏の今後が楽しみだが、当然彼の再登場はあるまい。
 
 さて、そんなわけで浅倉に復活されてせっかくの計画がパーになってしまった北岡だが、ま、彼については責任云々という問題は生じないだろうから、ますます警察やら拘置所側から「浅倉の行動を推測できるのはこの弁護士だけ!」みたいな信頼が厚くなることだろう。
 それにしても、「久しぶりに格好良く決めてみようか」と言った直後に叩き落とされて、ナイトに「…よっ」とか情けない挨拶をしているところがラブリーだった。
 
 ライダーにはそれぞれの正義がある…そのことに改めて気付かされた真司は、自分にできることはないと落ち込んでしまった。
 落ちていたデッキを見てそのことに気付いた優衣の一言で、真司も自分なりの正義を追求することにしたわけだね。
 それにしても真司君、君の行動って「行き当たりばったり」って言うんだよ。
 まぁ、だからこそ話が転がるんだけど。
 
 で、遂に“鏡の向こうにいる何か”に辿り着いてしまったOREジャーナルだけど、あんな荒唐無稽な世界にどこまで迫れるのか? 楽しみだ。
 初めての意見の一致で意気投合しそうなめぐみと島田にも注目、かな。
 それにしても、前回どう見ても島田が狙われていたはずなのに、どうして生きてるんだろう?
 

 さて、今回の見所は“異様に広い個室に入院した真司”だろう。
 誰が入院費出すの? 真司って社会保険大丈夫? 運び込んだ(救急車呼んだ)のは香川だろうから、彼が払ってやるのだろうか?
 一応、自分とこの学生の不始末だし。


PS チェンジ、マシンザボーガー! って、あれ?
 サイコローグのバイクって、バンペーラ(トライチェイサーとかの元車)じゃない!?


←BACK
→NEXT