『仮面ライダー龍騎』
第38話 狙われた優衣
2002/10/20 放映


(Story)
 蓮の変身を見た後、聖中央病院に戻った恵里は、再び眠りに就く予感を感じていた。
 そんな恵里に真司は、蓮を連れてくると約束する。
 そして花鶏に戻った真司は、そこに香川と一緒にいた男:東條悟がいるのを見て驚いた。
 これ幸いと、東條にミラーワールドの閉じ方を尋ねる真司だったが、東條は「無理だよ」とにべもない。
 「協力者は多い方がいいだろう」と言う真司に、東條は
  はっきり言って、1人でも十分かもしれないし
  勇気さえあれば、誰でも英雄になれるしね

と断ってきた。
 「一刻も早く戦いを止めないと死ぬかもしれない奴がいる」と更に詰め寄る真司に、東條は
  それって、仮面ライダーナイト?
  彼は、英雄とはかけ離れたところにいるみたいだね
  自分のためだけに戦ってる

と答え、真司は東條の態度に苛立つ。
 そして、東條の優衣を見つめる視線に不安を抱くのだった。
 
 翌日、真司は、東條が優衣をミラーワールドに引きずりこもうとしたライダー(オルタナティブ)である可能性に気付き、優衣の元へと走る。
 恵里に見舞いに向かう優衣に追いついた真司は、優衣を狙って現れたオルタナティブを追ってミラーワールドに入り、「お前、東條悟だろう!」と呼び掛けるが、オルタナティブは何も答えないまま攻撃してくる。
 時間切れを迎えて去っていったオルタナティブを追った真司は、東條を見付け、オルタナティブが東條であると確信し、「なぜ優衣ちゃんを狙う!?」と問い詰める。
 東條は
  ミラーワールドを閉じるため、かな
  神埼優衣が死ねば、全てが終わる
  神崎士郎の求めるものも、神埼優衣あってのことだし
  彼女がいなくなれば、ミラーワールドも、ライダーの戦いも全てが無効になるんだって
  香川先生が全部調べた
  彼女がいなくなれば、みんなモンスターに狙われることもなくなるらしいよ
  大勢の人が助かるとしたら、小さな犠牲だよね

と言い、先程戦った相手が香川の作った「オルタナティブ」であることを教えて去っていった。
 真司は、ミラーワールドを閉じるためには優衣を犠牲にしなければならないと知って愕然とする。
 
 その後、清明院大学では、仲村が「東條がミラーワールドを閉じる方法を真司に教えてしまったせいでやりにくくなるかもしれない」と怒っていた。
 「彼も仲間になるかもしれないし」と弁解する東條に、仲村は苛立つ。
 そして、香川の「我々は英雄にならなければ」という言葉にも
  正直、そんなことどうでもいいんです
  神崎士郎の計画を潰してやれれば、どうでも

と答えて、東條に二度と邪魔しないよう念を押した。
 
 一方、東條の言葉に悩んでいた真司は、優衣からの連絡を受け、蓮を探し出して恵里が再び意識不明になりそうだと伝える。
 蓮は、真司の
  お前がほかのライダーを全部倒して、それで恵里さんが助かったとしても、恵里さんは喜ばないと思う
という言葉に、
  そんなことは分かってる
  それでも生きていてほしい人間がいる
  たとえ世界中を敵に回しても、そいつを死なせたくないと思う
  それが間違ってるかどうか関係ない
  そのためだけに俺は戦う

と答えた。
 真司の胸に、「1つを犠牲にできる勇気を持つ者が真の英雄なんです」という香川の言葉が響いた。
 蓮を連れられないまま聖中央病院にやってきた真司は、オルタナティブの気配を感じてミラーワールドへ。
 そして、その直後に病院に来た蓮は、医師を押しのけて恵里を連れ出す。
 昔のように海に行った2人。 
 恵里は蓮に
  お願いだから、あたしのためじゃなくて自分のために…
と言って再び眠った。
 そして蓮は恵里の寝顔に優しく微笑んで
  ああ。俺はそうしてる
と答えた。
 
 ミラーワールドでオルタナティブと戦う龍騎は、オルタナティブの剣を弾き飛ばし
  1つを犠牲にするのは勇気でもなんでもない
  俺は、大きな犠牲も1つの犠牲も出さない
  綺麗事かもしれないけど、今はそれしかない

と言って立ち去ろうとする。
 オルタナティブは、その背中に不意打ちを食らわせ、ファイナルベントのカードを引き抜く。
 だが、そのとき別の「ファイナルベント」の声が響き、突然出現したデストワイルダーが、オルタナティブを引きずり出した。
 そしてクリスタルブレイクを食らったオルタナティブの変身が解け、仲村の姿になる。
 慌てて駆け寄る龍騎に、仲村は
  お前は、間違ってる
と言い残して消滅した。

 現実世界に戻ったタイガを追った真司は、その正体が東條であることを知る。
 「自分が何したか分かってるのか!?」となじる真司に、東條は
  でも、もうやっちゃったし
と涙を流しながら答えるのだった。
 
 そのころ、401号室では香川がオルタナティブのデッキを見つめ、病院では優衣の身体が再び分解を始め、旧神崎邸では士郎が何事かを考える側にオーディンが立ち、関東拘置所では北岡と令子が浅倉に面会に訪れていた。


(傾向と対策)
 ようやくタイガの正体判明。
 とはいえ、どうもよく分からない行動理念の持ち主のようだ。
 「英雄」という言葉に妙な憧れを持っているようにも見えるし、ミラーワールドを閉じるという「英雄的行為」を自分だけで成し遂げたいという功名心のようなものも感じられる。
 東條が仲村と一緒にいた以上、優衣が花鶏にいることは承知の上のはずで、それを偶然を装って花鶏のアルバイトとしてやってきたというだけでも、何らかの目的を持って演技していることは間違いない。
 となれば、仲村の死に流した涙も当然その可能性が高いわけで、場合によっては香川をも出し抜こうとしかねない。
 第一、“優衣を殺したくなくなったから仲村を殺す”というのは、どう考えても矛盾している。
 優衣に惚れたってんなら分からなくもないが、そんなことはないだろう。
 ミラーワールドを閉じることだけが香川の目的とは考えにくいこともあって、“その先の何か”を独り占めしようとしているとも思えるのだ。
 次回予告に登場したオルタナティブは当然香川なのだろうから、これを殺してしまえば真相を知る者はいなくなるのだから。
 この点、士郎の計画を潰して復讐したいという明快な目的を持っていた仲村の動機は理解しやすい。
 研究室の仲間を犠牲にして計画を進めた士郎に対し、その意趣返しのために邪魔をするというのは、その裏に自分の大学生活も犠牲になったという純粋な怒りがあるが故、非常に分かりやすい。
 対して東條の場合、何が目的なのか、非常に分かりづらいのだ。
 人は普通、何らかの形で自分に益のないことはやらない。
 その目的が一般的な利益ではなく、自己満足や誰かへの保護欲の類だったとしても、自分が“嬉しいと思う何か”がその先になければ、努力しようという意欲は湧いてこない。
 この点、蓮は「それでも生きていてほしい人間がいる。たとえ世界中を敵に回しても、そいつを死なせたくないと思う」と、“恵里が側にいること”を求めて戦っているから、共感を呼ぶのだ。
 東條は、そして香川は何を求めているのか。
 香川は、36話『戦いは終わる』で、「私達は、あなたが作ったミラーワールドを潰します」と言っている。
 これは、科学者としての功名心から来る言葉なのかもしれないが、士郎のミラーワールドを潰した後で、自分のための何かを見出すつもりと考えることもできる。
 だとすれば、東條の目的が、香川の目的の横取りということもあり得る。
 
 対して、香川達に直接攻撃を仕掛けない士郎&オーディンは何を考えているのだろうか。
 この前ナイトにトドメを刺そうとしたことから考えて、オーディンが最後のライダー以外直接殺せないとかいうわけではなさそうだ。
 タイガの正体や居所が分かるのなら、そして少なくとも香川はライダーではないようだから、彼を殺すことは簡単なはず。
 それをしないまま、優衣が命を狙われても放っておくというのは、何らかの理由で手を出せないということか。
 401号室に籠もられると手が出せないというなら、あそこがデッキ誕生の地だろうから納得するとして、外を出歩いている最中も何もしてこないのはなぜだろう?
 一度は、蓮を使って倒させようとしていたくらいだ、自分では手を下したくない理由があるはずだ。
 優衣の身体がまた少し分解をしていたりして、急がないとならない状況ではありそうなものだが。
 そういや、やっぱりオーディンは元気だったみたいだけど、なぜか士郎の隣に立っていたところを見ると、素直に士郎がオーディンというのではなく、何らかのワンクッションがありそうだ。
 
 ところで、「大きな犠牲も1つの犠牲も出さない」豪語した直後に仲村という直接ではないが犠牲者を出してしまった真司は、今後どうするんだろうか?
 ミラーワールドを閉じるということが優衣の命を奪い、恵里の回復の決め手を失わせるということを理解した上で、それでもほかの手段でミラーワールドを閉じようとするのだろうか?
 しかも、優衣を犠牲にすればミラーワールドのモンスターが人を襲わなくなるという話を聞いた上で。

 
 さて、今回の見所は“とうとう名前も貰えなくなったモンスター”だろう。
 ナイトと戦っていたレッツゴー3匹は、OPクレジットを見ても「モンスター」としか書いていない。
 しかも、3匹まとめて飛翔斬一撃でお亡くなりになってしまった。
 可哀想すぎる…。

 そういや、ナイトが左手でカード抜いて腰に下げたダークバイザーに突っ込んだのって初めてだ…。
 それだけ余裕がなかった(右手の剣を手放す暇がない)ってことなんだよね。




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