『仮面ライダー龍騎』
第32話 秘密の取材
2002/9/8 放映


(Story)
 フェニックス・エキスプレスから飛び降り、自力で岸まで泳ぎ着いた浅倉を、ベノスネイカーら3体が威嚇するが、浅倉は平然としていた。
 
 翌日、死んだはずの浅倉が船内に現れたことが大きく報じられる。
 当然、乗員・乗客の行方不明事件に浅倉が関わっているとの見方が有力だった。
 そして、蓮は、船内でのバズスティンガーとの戦いの際に浅倉が自分達と戦わなかったことから、契約モンスターに餌を与えるために追い込まれているのだろうと推測していた。
 浅倉なら人間を襲わせそうなものだと言う真司に、蓮はメタルゲラスとエビルダイバーは、浅倉が契約違反になるのを望んでいるのではないかと答える。
 「あいつを助けて喜ぶ奴はいない」…蓮の言葉が真司に響いた。
 
 翌日、真司は実加の様子を見に港北医大病院を訪ねる。
 真司は、船での一件以来顔見知りになった看護婦との会話から、実加が船内で一晩側にいた浅倉を頼りにしていることを知る。
 帰ろうとした真司はモンスターの気配を感じ、バズスティンガー達がまだ実加を狙っているらしいことを知って実加の病室に戻る。
 慌ててカーテンを閉めようとする真司を制した実加は、外に浅倉の姿を見付けて安堵の声を漏らした。
 心配になった真司は、実加の側にいることにして、大久保に「秘密の取材」と連絡を入れた。
 それを電話の向こうで聞いていためぐみは、「秘密の取材」という言葉に憧れ、メモを残してこっそり出掛けてしまった。
 浅倉は、3体の契約モンスターの催促を受けながら
  そろそろ奴らも限界か?
  モンスターが現れるのが先か、それとも俺が食われるか…

とバズスティンガーの出現を待ち続けていた。
 
 そのころ、令子は、アメリカのアクレー大学で士郎を教えていたポトラッツ教授を訪ねて士郎の実験中の死亡を確認するが、その姿を、ミラーワールドから士郎が見つめていた。
 ポトラッツ教授は、士郎が行っていた実験とは何かという令子の質問に、誰にも分からないことだと答える。
 そして、令子が監視ビデオの画像プリントを取り出すために目を離した一瞬に、教授の姿は消えていた。
 令子は気付かなかったが、鏡の中にはガルドサンダーの姿があった。
 
 一方、真司は、診察に来ていた北岡と偶然出会い、浅倉が今置かれている状況を話す。
 北岡は帰り道に浅倉の前に顔を出し
  ライダー同士の戦いなら奴らものる
  やるか?

と言う浅倉を
  冗談。自滅してくれそうな奴と、なんでわざわざ戦わなきゃいけないわけよ?
と嘲笑って帰っていった。
 
 その夜。
 いよいよ威嚇を強めてきた3体に、浅倉は
  まだだ! まだ待てるはずだろう、お前ら!
と強気を崩さない。
 
 翌朝、真司の身を案じて病院にやってきた蓮に、真司は実加が浅倉を心の支えにしていることを語り
  誰だって誰かに必要とされているんだと思う
  死んでいい奴なんていないんだ

と、浅倉を見殺しにできないことを話す。

 そのころ、花を摘んで浅倉に渡そうとした実加は、ベノスネイカーに弾き飛ばされ、実加は浅倉に花を渡して倒れてしまった。
 直後、バズスティンガーが現れ、浅倉は花を放り捨てて変身し、ミラーワールドへと赴く。
 同じく変身した蓮もミラーワールドへと向かい、バズスティンガーと王蛇の戦いに参加し、さらにゾルダも参戦する。
 ナイトとゾルダは、王蛇のモンスターにエネルギーを渡さないために戦っていた。
 そして、王蛇がファイナルベント“ベノクラッシュ”のカードを装填したため、再び集まって回転を始めたバズスティンガー達に、ナイトのファイナルベント“飛翔斬”、ゾルダのシュートベント“ギガランチャー”も同時に命中し、バズスティンガー達は全滅した。
 そして、浮き上がった3つのエネルギーを狙って出現したベノスネイカー達をダークウイング、マグナギガが牽制する中、ドラグレッダーがダークウイングを追い払う。
 その隙にエネルギーを吸収するベノスネイカー達。
 呆れたゾルダが去り、ナイトがため息を洩らす中、龍騎は王蛇に
  お前、フェリーの中でずっと女の子と一緒だったよな
と話しかけるが、王蛇は
  ああ、囮に使ってたあれか…
  それが?

と聞き返す。
 二の句が継げない龍騎を後目に、王蛇は去っていった。
 
 現実世界に戻り、去っていく浅倉を見つめながら、真司は
  実加ちゃんには、浅倉が必要だったんだ
と蓮に話すが、蓮は
  だが、浅倉は誰も必要としていない
と返す。
 失意のうちに編集部に戻ろうとする真司の前にめぐみが現れ
  見たの。あなたがガラスから出てくるところ…
と告げる。
 めぐみは、真司がミラーワールドから戻るところを目撃していたのだ。


(傾向と対策)
 物語は、遂に核心に触れ始めた。
 暁に続いて、ポトラッツ教授まで一瞬の隙に消えたという事実から、令子は何を感じるのか。
 士郎がアクレー大学で行った理論物理学の実験とは?
 実験で死亡したという話と、清明院大学での実験、突然の失踪という話は繋がってくれるのか?
 次回が楽しみだ。
 そして、よりにもよってあのめぐみにミラーワールドからの帰還を目撃された真司はどうするのか?
 でも、今回に限って真司の姿でガラスから出てくるってのが、緊張感を削ぐんだよな〜。
 で、めぐみと島田の犬猿の仲に辟易した大久保は、2人の間に衝立を置いたらしい。
 ちっとも解決になってないような気もするが、今後もずっとああなんだろうか?
 
 さて今回は、みんながちょっとずつバカなことをして浅倉を助けてしまったというお話だった。
 まず、前回の戦いを見ていない北岡はともかく、蓮がバズスティンガーと戦う意味はない。
 蓮としては、自分がバズスティンガーの1体でも倒してエネルギーを吸収し、王蛇の契約モンスターのどれかにエネルギーが行き渡らないようにすることを狙ったのだろうが、そんな面倒をする必要はない。
 バズスティンガーが王蛇のベノクラッシュさえ跳ね返すというのを見ている以上、蓮が狙うべきことは、王蛇がモンスターに逃げられてしまうという展開のはず。
 ナイトは参戦せず、黙って見ていればいい。
 よしんば王蛇が自力でバズスティンガー3体を倒したとしても、エネルギーを吸収しようとした瞬間に1個でも横取りすればいい。
 蓮の得意技のはずだ。
 ダークウイングでベノスネイカー達を牽制するのではなく、1個横取りすれば簡単だったのだ。
 
 北岡は、バズスティンガーの強さを知らないわけだから、参戦しても仕方ないと思うが、彼の場合、エネルギーを吸収しようとする契約モンスターの1体でも、エンドオブワールドで吹き飛ばせばいい。
 ジェノサイダーを出せなくなるだけでも、王蛇の攻撃力は激減する。
 マグナギガまで呼んでおいて、ただ見ているだけというのは、あまりにも芸がない。
 そもそも、今回の戦略的な目的は、ベノスネイカー達にエネルギーを吸収させないことのはず。
 だったら、バズスティンガーを逃がす方向で動くのが、最も効果的な戦い方だ。
 バズスティンガーが逃げた後で、自分達もミラーワールドから出てしまえば、ライダー同士の戦いに持ち込まれる心配もない。
 特に遠距離攻撃のできるゾルダには、それが簡単にできるのだ。
 「ったく…せっかくのチャンスを」などと言う資格は、北岡にはない。
 
 そして、今回のWVP(ワースト・バリアブル・プレイヤー)真司だが、浅倉を助けようが見殺しにしようが、根本的に何も変わらないということが分かっていない。
 実加が浅倉を心の支えにしているということは、極端な話、実加が生きている限り浅倉を側に置いておかなければならないということを意味する。
 ベッドに寝ていることすら出来ないくらいに“浅倉依存症”になってしまった実加が立ち直るまで浅倉を側に置くということは、浅倉が生きているということを警察が認知してしまった以上は、絶対に不可能だ。
 となれば、いずれにしても浅倉は早晩実加の前から姿を消すわけで、真司がすべきことは、自分が実加の心の支えになるとか、実加を立ち直らせるとかいう方向性を取るべきだったはずだ。
 まぁ、三者三様のバカさ加減ということで、納得できる行動だったことが救いだ。
 でも、北岡くらいもうちょっと頭良くてもいいだろうになぁ。
 
 ところで、浅倉がモンスター達に人間を襲わせない理由について、蓮は「メタルゲラス達が契約違反になるのを望んでいるから」かもしれないと言っていたが、どう考えてもそれはおかしい。
 なぜなら、本来の契約モンスターであるベノスネイカーも飢えているからだ。
 メタルゲラス達が人間を食うことを拒否するだけなら蓮の言うとおりかもしれないが、ベノスネイカーが拒否する理由はない。
 現に暁を食わせたこともあるし、人間を襲わせることに浅倉が躊躇するとも思いにくい。
 ならば、なぜ浅倉はああもモンスターを食わせることに拘ったのか。
 鷹羽は、浅倉なりの意地だったのだと思う。
 たまたま餌をやるのを忘れていたら、ちょうど3体組のモンスターを見付け、餌にちょうどいいと思って戦ったのに逃げられてしまった。
 浅倉としては、それが癪に障ったのだろう。
 だから、自分の命を張って狩りというゲームを楽しんだ。
 モンスターの修正を利用し、実加を囮として、バズスティンガーらの出現を待ち続ける様は、釣り人か狩人を思い起こさせる。
 前回、龍騎やナイトが参戦するのを邪魔していたのも、自力で倒したかったからだ。
 モンスターが現れるのが先が、俺が食われるかなどと不敵に構えていたのも、自分の命を張って遊んでいたのだろう。
 浅倉のような人間の行動としては、納得できるものだと思う。
 
 さて、真司に向かって「先日はお世話になりました」と言っていた看護婦さんだが、彼女が言う「お世話」とは、姿を消した実加を無事保護したことだろう。
 彼女自身は、自分がビーに狙われたことに気付いていないのだから、避難するよう言われたこと自体はさほど「お世話」ではないだろうし、再び起きた失踪事件の中、実加を探し出して保護してくれたということは、やはり嬉しいことだろうからだ。
 その上、真司が病院に来てから、(実は浅倉の姿を見付けたからだが)実加の精神状態が安定しているときたもんだ。
 「いいカウンセラーになれますよ」と言いたくもなるだろう。
 実は、今回この看護婦が一番納得できる行動を取っていた気がする。
 
 で、きっちり令子の行動を嗅ぎつけてポトラッツ教授をガルドサンダーに襲わせた士郎だが、令子を野放しにしているのはどうしてだろう?
 両方パックンチョしてしまえば楽なのに。
 ところで、ポトラッツ教授がいたのって日本のホテルのようだけど、あの人何しに来てたんだろう。
  
 さて、今回の見所は“「ガイと手塚のモンスター」という蓮のセリフ”だろう。
 「ガイとライア」ではなく、「芝浦と手塚」でもない。
 蓮にとって、手塚は知り合い(味方)だが、芝浦ははっきり敵だった。
 本名を知らなかったわけではないだろうが、蓮にとってあくまで芝浦は倒すべきライダーの1人に過ぎない。
 そういう部分が無意識に出た言葉として、実に納得できるものだった。

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