『仮面ライダー龍騎』
第30話 ゾルダの恋人
2002/8/25 放映


(Story)
 この前のストーカー騒ぎの件で北岡に迷惑を掛けたことを詫びに来た真司は、北岡を婚約不履行で訴えたという北岡の元秘書:浅野めぐみの話を聞いて、めぐみに会いに出掛けた。
 めぐみから、まだ貧乏だったころの北岡にプロポーズされた話を聞いた真司は、令子や蓮を巻き込みながら北岡を糾弾する。
 蓮は、真司から巻き上げた金で北岡に祝儀を渡し、令子は義憤に駆られて北岡を告発する記事を書く。
 大久保は、そんな令子に手を焼き、もう1人社員を雇うことを考え始めた。
 
 一方北岡は、めぐみがどういう人間だったのかという吾郎の質問に、めぐみは『どうしようもなくそそっかしい』のだと答える。
 「お茶をくれ」と言えば茶筒を渡し、車の運転中に車内で蝿を見付けては事故を起こしてフロントガラスごと鉄アレイで叩き潰し、料理を運んでいる最中に転んでは料理を頭からかぶった北岡に気付かずに自分の擦り傷の手当をする、というめぐみに、嫌気が差してクビにしたのだった。
 めぐみに会いに行った吾郎は、北岡についての理解度勝負でめぐみに敗北する。
 そして、たまたま通りかかった酔っぱらい5人に絡まれためぐみは、あっという間に叩きのめしてしまう。
 北岡がめぐみを秘書にしていたのは、彼女がとてつもなく強かったからだった。
 だが、酔っぱらいを叩き伏せためぐみは、突然倒れてしまう。
 介抱する吾郎に、めぐみは、自分の命がもう長くなく、北岡に自分を忘れてほしくないから今回の騒動を仕組んだことを打ち明けた。
 吾郎は、めぐみの『1度でいいから北岡とデートしたい』という夢を叶えてやってほしいと北岡に頼む。
 
 めぐみが自分と同じ余命幾ばくもない人間だったことを知って、吾郎の頼みを聞き入れた北岡は、めぐみのところへと向かう。
 そこで北岡は、めぐみがモンスター:シールドボーダーに狙われていることを知った。
 めぐみがひっくり返したラーメンを頭から被ったシールドボーダーがうろたえているうちに逃走した北岡達は、束の間のデートを楽しむ。
 新郎新婦の格好でボートに乗っているとき、北岡は水面に映るワイルドボーダーに気付き、「キスするときはさ、目を閉じるもんだろ」とめぐみに目をつぶらせて変身し、ミラーワールドへと向かった。
 マグナバイザーの通じないシールドボーダーに苦戦するゾルダのピンチに飛び込んできた龍騎は、北岡がめぐみとデート中であることを知って、その場を引き受ける。
 龍騎の好意に甘えて現実世界に戻った北岡は、タコ口になってキスを待っているめぐみの額にキスし、喜んだめぐみは、そのまま倒れ込んでしまう。
 そのころ、めぐみの病状を聞くべく病院を訪れた吾郎は、主治医の口から、めぐみは単なる低血圧だと聞かされる。
 めぐみは、「気を付けないと危ないよ」という主治医の言葉を、早とちりして不治の病だと思いこんだだけで、酔っぱらいを蹴り倒した後にめぐみが倒れたのは、急に激しい運動をしたからだったのだ。
 倒れためぐみに必死に呼び掛けていた北岡が、あっさりと起き上がっためぐみを見て唖然としているところに、吾郎から真相を告げる電話が入った。

 シールドボーダーも龍騎のファイナルベント“ドラゴンライダーキック”に倒れ、一件落着した後、真司、令子、北岡、吾郎の4人は、今回の件を振り返っていた。
 もう2度とめぐみに会いたくないとしみじみ言う北岡だったが、その直後、大久保がめぐみを伴って通りがかった。
 めぐみは、OREジャーナルに入社することになったのだ。
 呆然とする4人。
 そして、編集部では新入社員が入ったことに歯噛みする島田の姿があった。



(傾向と対策)
 もう、突っ込む気力もない。
 これでレギュラーが本当に1人増えるのかと思うと、頭がクラクラする。
 しかも、主人公脇のレギュラーキャラがあんなにかっとんでて大丈夫か?
 鷹羽も低血圧だから分かるのだが、低血圧の人は、静止状態から一気に動くと立ちくらみを起こすことがよくある。
 そして、立ちくらみというのは、脳に血液が行かないことで酸欠になっている状態なので、確かに甘く見ると危ない。
 けど、意識を失うほどってのは、そうそうあることじゃない。
 めぐみ、極端すぎ。いや、脚本に言うべきか?
 
 まぁ、頭からスパゲッティかぶってる北岡とか、ラーメンかぶってオロオロするシールドボーダーとか、こっそり饅頭を胸ポケットに入れる吾郎ちゃんとか、クイズに負けてがっくり膝をつく吾郎ちゃんとかは、ラブリーだった。
 サンダルが頭に当たって崩れ落ちる吾郎ちゃんも、まぁ、あの展開上お約束だから、前に蹴り飛ばしたはずなのに背後の吾郎ちゃんに当たったことについては不問に付そう。
 たこ焼きやゆで卵の指輪も、強引なネタだけど許す。
 「今でも火傷の跡が…」のくだりは、やはり笑うところなんだろう。
 ちゃっかり真司から巻き上げた金で、自分の名前だけでご祝儀にしてしまった蓮もOK。
 また、「(めぐみと北岡、どっちの言葉が本当か)目を見りゃ一発だろ!」と言う真司に「じゃあ見ろ!」と返す北岡も、(その後のキスっぽい構図は狙いすぎだけど)なかなかだ。
 「今デート中だ。うらやましいだろ」「いーなー」もナイス。

 けど、令子はね〜。

 今回、令子は「義憤に駆られて」と言っていたけど、あれは、どっちかというと北岡を意識し始めた矢先に過去の女疑惑が出たことへの嫉妬というスタンスだったように見受けられる。
 ラストシーンでの、北岡と令子のやりとりや、それを見て一喜一憂する真司は、そのための描写のはずだ。
 ならば、“北岡と令子の恋物語”という予想される今後の展開からすれば、かなり重要なパートなんじゃないの?
 それをこんなギャグタッチで攻めていいものだろうか?
 大体、令子と北岡の接近というのは、どうにも急すぎる。
 それとも、そういう意図が全然ないとでもいうのか!?
 ちなみに、令子が書いていた記事は
    護士北岡秀一
      女の敵
  数々の黒い噂で知られる、弁護士の北岡秀一氏が婚約不履行で訴えられたことが判明した。訴えたのは北岡氏の元秘書で北岡氏のその騙しテクニックを我々に語ってくれた。
  彼女が北岡氏と一緒に仕事をしていた、3年間北岡氏は何度も彼女に結婚を申し込んだ。
という内容。
 ね? 自分にコナかけてたのも遊びだったのか!! ってニュアンスがにじみ出てるでしょ?
 これじゃ、大久保も記事にできないっていうわけだよ。

 ちなみに、村木弁護士の言葉からするとまだ訴訟は起こされていないようなので、事情を村木氏に話して騒ぎは終了ってところだろう。
 めぐみが費用としていくら払う羽目になったかは考えたくないが、10万や20万はかかっているはずだ。
 
 さて、内容的にはどうにもギャグタッチで困ったものなのだが、その分龍騎とシールドボーダーの戦闘は結構良かった。
 シールドボーダーに体当たりして、勢い余って自分も転ぶ龍騎や、派手に水飛沫を上げて転びまくるシールドボーダー、ドラゴンライダーキックの前にドラグレッダーが龍騎の周りを回る際、水飛沫を立てている辺りに、拘りが感じられていい。
 その後、キックでシールドごとぶち破ったのも良かった。
 欲を言えば、もっとはっきりシールドを叩き割るシーンが入っていればと思う。

 で、今回は結構水飛沫に拘っている感があるのだが、ここに1つとんでもない間違いがある。
 ってーか、全体的に間違いなのだけど。
 北岡がこっそり変身した際、水飛沫がめぐみの顔の前に飛んでいるが、当然、これはゾルダが水に飛び込んだことによる水飛沫を表現しているものと思われる。
 それで納得している人も多かろう。
 実際、以前浅倉の便器の水で変身疑惑(18話参照)について触れた際、読者の方から、「水飛沫が云々」という意見を頂いている。
 だが、よく考えてほしい。
 この場合、水面は普段ミラーワールドに行く際の鏡に相当するものだ。
 となると、“水飛沫が立つ”ということは、突入面に衝撃を与えているということを意味し、鏡が割れるということにも等しい
 それは由々しき事態だ。
 ついでに言うと、今回北岡は、鏡面体である水面を見ないまま変身している。
 最近、変身をスピーディーに演出するためや合成の手間を省くために、ベルトが装着されるシーンを省略して上半身だけ映していることが多いが、そういうことをしているから、ベルトが装着されるはずもない状態での変身などというつまらないミスを犯すのだ。
 演出上も、ボートから身を乗り出している姿を下からアオリで映した方が面白かったように思う。

 もう1つ問題がある。
 『龍騎』世界において、“鏡越しに見えるモンスター”というのは左右対称の世界にいるモンスターが鏡を介して見えるという状態であり、このとき、ミラーワールドにいるモンスターもまた鏡の前に立っているのだ。
 決して壁の中にめり込んでいるわけではない。
 つまり、今回水面に映ったシールドボーダーは、ボートの上に立ってめぐみを狙っていたことになる。
 水面に飛び込んだゾルダは、ミラーワールドでは、水面から飛び出した後で水に沈み、それから泳いで(もしくは湖底を歩いて)行くことができる。
 帰ってくるときも、一旦船によじ登ってから水面に飛び込み、飛び出したときそのまま船に乗り込むという荒技を使えば大丈夫だが、さすがにシールドボーダーに、接近を気付かれないまま泳いでボートまで近付いてよじ登るなんて芸当を期待するのは酷というものだ。
 設定というものは、よく考えてから演出しなきゃダメだよ。
 例えば、2人きりの教会とかいうネタなら、窓でも小物でも鏡面体はいくらでもあったんだから、わざわざボートにする必要なんてなかったのに。
  
 さて、今回の見所は“北岡の「忘れろったって忘れられるはずないだろう」”かな。
 めぐみの期待しているのとは全然違う響きの言葉なんだけど、見事に噛み合っている。
 こういうことができるのに、どうして整合性ない脚本書くかな〜。

 あれ? 気力ないはずなのに、結構突っ込んじゃったな…。



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