『仮面ライダー龍騎』
第28話 タイムベント
2002/8/11 放映


(Story)
 突如現れたオーディンは、王蛇のスイングベント“エビルウイップ”を姿を消してかわし
  まだ私と戦うときではない
  お前達は、今のまま戦い合えばいい

と言いながら、ライダー達を翻弄していく。
 そして
  だが、少し修正が必要になった
と言って、龍騎の背後に現れて殴り飛ばし、タイムベントのカードを装填する。
 旧神崎邸では、士郎が、優衣と揉み合って倒れた花瓶と、その水に濡れてにじみ、敗れてしまった1枚の絵を愕然として見つめていた。
 
 真司が意識を取り戻すと、そこは花鶏の中だった。
 1階に降りてきた真司は、自分のことを知らないかのような反応をする優衣や蓮、そしてブランクに戻っているカードデッキに戸惑う。
 優衣の口から「神崎士郎って知ってる?」と問われた真司は、士郎のことを忘れてしまっていた。
 その後も、真司は
  そうだよ、この後、俺はそのモンスターと契約してライダーになるんだ
  モンスター? モンスターってなんだっけ?

と記憶を失っていく。
 そのまま時は過ぎ、TIN'S COLLECTIONの加賀友之を訪ねた夜、真司の脳裏に「修正が必要になった」というオーディンの言葉が蘇った。
 記憶を僅かに取り戻した真司は
  何やってんだ、俺
  同じこと繰り返してたのか?
  何の意味があるんだよ
  何の修正だよ
  …それって、変えられるかもしれないってことか? これから起こることを
と、手塚達が死んでいく運命を変えられるかもしれないと気付く。
 そして、加賀を装った須藤の電話を受けた真司は、須藤がこれからすることを蓮に教えようと電話をかけるが、その途中、再び記憶を失ってしまい、シザース:須藤はボルキャンサーに食われてしまった。
 
 そして、島田誘拐事件の容疑者として逮捕された真司は、面会に来た大久保との会話から、再び記憶を取り戻す。
 そして
  まただ…また俺、同じことを繰り返してる…
  変えようと思ったはずなのに…それを覚えていられない

と愕然とする真司の前に士郎が現れ
  それでいい
  お前はそのまま前と同じ道を行け
  お前の記憶は一時的なものだ
  明日にも完全に消えるだろう
  ライダー達の戦いは変わらない

と言う。
 何のための修正かと尋ねる真士に、士郎は
  お前のためではない
  それだけは確かだ

と言い残して消えた。
 真司は、浅倉が王蛇にならなければ、ガイ:芝浦とライア:手塚を救えるかもしれないと、面会に来た北岡に、浅倉がライダーになって脱獄することを教えるが、北岡はそれを無視して何も手を打たず、やはり芝浦と手塚は死んでしまった。
 手塚の亡骸を抱いて
  まただ…どうして…どうして変えられないんだよ!
と悲しむ真司。
 
 再び時は過ぎ去った。
 オーディンは
  まだ私と戦うときではない
  お前達は、今のまま戦い合えばいい
  修正は終わった

と言って、龍騎の背後に現れる。
 そのとき、オーディンに龍騎のストライクベント“ドラグクロー”が命中した。
 オーディンの
  ほお…なぜ私の現れる場所が分かった?
  記憶が消えなかったのか?

という言葉に、龍騎は
  さあね
  お前を1発殴りたかった

と答える。
 真司は、オーディンに一矢報いるために、目に付きそうなあらゆる場所に「金色の羽はとにかく後ろをなぐれ!!」と書きまくっていたのだ。
 オーディンは、大したダメージを受けた様子もなく
  殴ったうちに入らないがな
と龍騎を殴り飛ばした。
 龍騎の
  結局、全部同じことを繰り返したってわけか
  一体何のために!?

という言葉に、オーディンは
  知る必要はない
  お前達の戦いは何も変わらない

と答える。
 だが、龍騎は
  いや、1つだけ変わった
  重さが、消えていったライダー達の重さが2倍になった
  これ以上は増やさない
  人を守るためにライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!

と叫ぶ。
 オーディンは、再び王蛇の攻撃をかわして
  私と戦うのは、最後の1人だ
  続けろ、戦いをやめるな

と言い残して消えた。
 
 そして、旧神崎邸では、倒れていない花瓶を前にした士郎が、敗れていない“兄妹が手を繋いでいる絵”を拾い上げ
  優衣、良かったな
  お前は俺が守る

と呟いていた。


(傾向と対策)
 今回は、有り体に言えば単なるインターバル&総集編なのだが、単なる総集編になっていないところが非常に良かった。
 恐らく真司だけでなくほかの3人も、ライダーになった当初からの時間を繰り返していたのだろうが、なんとか歴史を変えようと必死になっていたのは真司だけだったというわけだ。
 これは、真司がほかの3人と違い、“死んでいったライダー達を助けたい”という気持ちを持っていたからだろう。
 真司から、浅倉がライダーになるのを阻止するよう頼まれた北岡は
  無理だよね
  望みを叶えるには13人必要なんだから
  少し手こずるだろうけど、仕方ないでしょ

と、真司を騙して何の手も打たずにいた。
 これは、ほかの3人には“ライダーが減るのは構わない”という暗黙の共通認識があるからで、彼らが必要なのは、最後に生き残る自分という最終目的だけだからだろう。
 だから数日で記憶を失ってしまったのだ。
 そして、強い意志で記憶を時折回復していた真司も、いざというときに記憶を失うという現実には太刀打ちできず、手塚までも再び死なせてしまった。
 そこで、真司はオーディンに一矢報いるべく、思い出せるうちにメモを書き、忘れない努力を続けた。
 これは後で思い出すためにメモしていたというより、メモし続けることで深く印象づけて忘れないという受験勉強でよくやる反復練習効果を狙ったものだろう。
 人間、印象の強いことは忘れにくいものだ。
 2度も救えなかった手塚の最期に対する強烈な印象から、オーディンへの怒りを燃やし続けた。
 つまり、「とにかく後ろをなぐれ!!」という言葉の裏側にある事情をも含めて覚え続けるための努力だ。
 その結果、こっそりストライクベントを装填して攻撃するという、“どうしてオーディンに見付からずにドラグクローを召還できたの?”的な行動を取ることができた。
 今回の出来事で、真司は“ライダーを守るためにライダーとして戦う”という新たな方向性を見出したわけだ。
 恐らくは、これ以上ライダーを死なせないために。
 
 さて、天時星時間返しタイムベントでライダーの戦いをやり直したオーディンだが、この目的は、結局は破れた絵の修復(というか、破れなかったことにする)ことにある。
 ちなみにあの絵は、前回優衣がひっぺがした“ギガゼール達がいた姿見”の新聞紙の下に貼ってあったものだ。
 階段の窓の新聞紙の下に海の絵がこっそりあったように、姿見の前の新聞紙の下にも兄妹の絵が隠されていた。
 つまり士郎は、優衣との揉み合いで花瓶が倒れたことでにじみ破れてしまった絵を修復するためだけに時間を戻してやり直したのだ。
 初めから揉み合いになることが分かっていれば、花瓶を倒さないように気を付けることができるというわけだ。
 この辺り、描写的に士郎とオーディンの登場が同時かどうかをわざとぼかしているので、ジャンクション(ハリケンジャー終了後に挿入されているアレ)のことを考えなければ、今のところ士郎とオーディンが同一人物であるか否かははっきりしていない。
 ただ、士郎とオーディンが同じ目的で動いているのは確かだし、士郎がオーディンのカードデッキを持っているのも確かなので、両者は同一人物または分身的な存在と言っていいだろう。

 ところで、優衣が真実に気付かないように歴史を変えることもできるだろうに、敢えて絵だけを救ったのはなぜか?
 体感時間上は半年以上にも及ぶ手間の掛かることをしてまで、どうして絵を守ろうとしたのか?
 どうしてそれが「お前は俺が守る」に繋がるのかといったことが、今後の謎といえる。
 鷹羽は、全てを変えるとまた予測不能の自体を引き起こす可能性があるから、最低限の変更で済ませたのだと思っている。
 今回の件で、優衣は士郎を追い続けるのをやめた。
 だから、その状態は維持したかったのだろう。
 これ以上優衣を巻き込まないために。
 やはり、あの絵は優衣の内面の何かを支える重要なアイテムなのだろう。
 当然、次回は、前回の「高見士郎よね。1年前、アメリカで亡くなった…」というセリフに驚いた優衣から始まるわけだから、忘れないようにしよう。


 さて、今回の見所はファミレスで変身する真司だろう。
 真司の回想のガイの最期では、浅倉、北岡、蓮、芝浦、手塚、真司の順に変身している。

 だが、ちょっと思い出してみてほしい。

 あれは19話『ライダー集結』の一場面なのだが、実際のところ真司はあのとき救急車で運ばれていった後であり、次回予告にあった変身シーンもなく、突然龍騎の姿で戦闘に乱入していた。
 また、当時ファミレスの中は浅倉を捜索する警察官でごった返しており、真司が中に入ることなどできるわけもない。
 実際、蓮、芝浦、手塚の3人はファミレスの外で変身していたのだし。
 ということは…?



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