『仮面ライダー龍騎』
第24話 王蛇の秘密
2002/7/14 放映


(Story)
 サバイブ化したナイトの攻撃に為す術もなくやられる王蛇だったが、突然襲い掛かってきたレイヨウ型のモンスター:ネガゼールにナイトサバイブが気を取られた隙に逃走に成功、ようやくねぐらに辿り着き、倒れこむ。
 浅倉のねぐらを調べていた令子は咄嗟に隠れるが見付かってしまい、110番しかけるが、浅倉の「俺は何度でも脱獄する」という言葉に諦め、ジャーナリストとして興味があるからと浅倉に質問を始めた。
 浅倉は、呆れたように
  俺に興味を持つ人間ががいるとはな
と言い、そのかわり自分を殴れと言う。
 ずっと誰かに殴られていたから、殴るか殴られるかしていないと落ち着かないのだというのだ。
 真司に連絡が付かない令子は、やむを得ず1人で浅倉の話を聞くことにする。
 浅倉は、“イライラしたから人を襲った”ことが理解できないと言う令子に
  お前も同じだな。もっともらしい理由を付けようとする
  理由を付けて安心したがるんだ。バカな奴らだ
  お前、泥を食ったことがあるか?
  俺は何度も食ったぜ。食い物が手に入らなかったときに
  俺の口の中には、まだ泥の味が残ってる

と言って気を失った。
 令子は、浅倉の心の闇の原因を知るため、浅倉の弁護をしていた北岡を訪ねた。
 浅倉は、13才のころ火事で両親と2才年下の弟を失い、野良犬のように生きていた。
 令子の脳裏に、浅倉の右肩の火傷の跡が浮かぶ。
 だが、浅倉自身も知らないが、弟の暁(あきら)は親戚に引き取られて生きているというのだ。

 そのころ花鶏では、手塚の死に対して3人3様に悲しみを噛みしめていた。
 責任を感じる真司に、「全部お兄ちゃんが始めたことだよ」と呟いた優衣は、「全部あたしのせいかも」と店を飛び出した。
 蓮は、真司に手塚はライダー故に死んだのだから気にするなと慰めるが、真司はそんな蓮を冷たいと感じる。

 優衣は、意を決して旧神崎邸を訪れていた。
 鏡だらけの部屋に入った優衣は、窓に貼られた新聞紙の隙間から覗いていた海の絵を見付けた。

 公園で落ち込んでいる真司の前に「まだ落ち込んでいるのか」と蓮が現れ、真司は蓮を冷血漢となじる。
 そのとき、ネガゼールの気配を感じ、蓮は立ち上がった真司を
  俺が行く
と制して変身し、ナイトサバイブとなって新しいファイナルベント“疾風断”でネガゼールを倒した。
 戻ってきた蓮に、真司は「冷血漢なんて言って悪かった」と詫びる。
  お前には借りがある
  借りは返す。そういうもんだ

という蓮に、真司は蓮が以前と変わり始めたと言い、
  手塚はライダーの運命を変えようとして命を落とした
  でも、それが正解とは思えない
  正直、俺だって死にたくないわけだし
  ライダーの前に、人間そのものが変わればいいんじゃないかって
  ライダーのみんなが変わって、自然と戦いがなくなれば。手塚もきっと喜んでくれるんじゃないか?

と決意を語った。
 そんな真司に蓮は、自分は変わるわけにはいかないし、北岡や浅倉を変えるのも無理だと答える。
 そこに令子から電話で、生きているらしい浅倉の弟に関して確認してほしいと連絡が入った。
 まず浅倉を変えようと意気込む真司に、蓮は無理だと言って口論になるが、そこに再びモンスターの気配が。
 変身してミラーワールドに飛び込んだ龍騎とナイトだったが、モンスター:ギガゼールは、ゾルダのシュートベント“ギガランチャー”で吹き飛んだ。
 そのとき、龍騎達の身体が分解を始める。
 慌てて現実世界に戻ってきた3人の手の中で、モンスターカードが白紙化していく。
 驚愕する3人の前に士郎が現れ
  終わりだ
  ライダー同士の戦いは中止する

と告げた。

 そして、浅倉のねぐらでは、令子の電話を聞いた浅倉が令子を問い詰めていた。


(傾向と対策)
 いきなりの急展開。
 浅倉の右肩に火傷の跡なんてあったっけ〜? という疑問はさておき、元弁護人北岡の「俺も教えてやる義理はないしね」発言はちょっと問題かも。
 裁判の場合、情状証人として家族が登場するのが一般的で、要するに「この子はホントは悪い子ぢゃないんです」といったことをやるわけだが、辣腕弁護士の北岡にとっては“生き別れの兄弟”というおいしいポイントなわけで、普通なら暁に声を掛けるだろうし、浅倉本人からも幼き日の弟との思い出などを聞き出そうとするだろう。
 浅倉が金蔓になりそうになかったから放置したとしか思えない。
 もちろん、私選弁護人(※)との契約関係では、報酬に応じた弁護内容になるのもやむを得ないので、これが背信行為かというとそうとも言い切れないわけだが。
※ 自分で独自に雇った弁護士で、手付け金や必要経費、成功報酬などかなり高額になる。これに対して、裁判所から紹介されて依頼するのを国選弁護人と言い、報酬も安価で、場合によっては全額国費から支払われる。北岡は私選弁護人だった。

 どうして浅倉威だけ親戚に引き取られず、泥を食って野良犬のように生きてきたくせに高校に入学(中退しているが)したかは謎だ。
 それにしても、火事で家族を失って云々といった悲劇的な過去は、情状酌量の種として裁判で真っ先に主張されそうな気がするのだけど、浅倉関係の資料を一通り集めたはずの令子が火事のことを知らなかったのだから、何も言わなかったってことだろうか?
 北岡ったら、やっぱり金にならないから手を抜いたんじゃ…。
 ちなみに「ずっと殴られてきたから、殴るか殴られるかしていないと落ち着かない」という浅倉の性癖は、心理学的にはままあることらしい。
 虐待されてきた児童には、暴力でしか他者とコミュニケーションが取れないという人格障害が発生することがある。
 人格障害と言っても別段社会生活が送れない程の異常ではないらしいが、とにかくそういった幼・少年時代を送ると、他人と自分との距離を測る手段が暴力になってしまうのだそうだ。
 痛みを介してしか自分の居場所を感じられないという性格からすると、和気藹々とした職場環境の中で自分の居場所を見失い、そのストレスから暴力事件を起こしてしまうことも十分考えられるので、浅倉の『イライラしたから殴った』という一見異常な行動も納得できる。

 …あれ? でもそうすると、弁護人が目指すべきは人格障害を理由にした酌量減刑であって、そういった事情を令子が知らなかったってことは(以下略)。
 もしかして、手塚や芝浦の死も北岡のせいでは? あ、ライダー同士は潰しあうんだからいいのか。

 さあ、颯爽と登場したナイトサバイブだが、王蛇を相手に圧倒的な破壊力を見せつけた。
 メタルホーンを装着前に破壊し、新登場のネガゼールをあっさり倒したそのパワーアップぶりは凄まじく、言っちゃなんだがこれまでのナイトとは別人のような強さだ。
 戦ってほしいだけで、こんなゲームバランスを壊しそうなアイテムをあげちゃうんだから士郎も困ったもんだ。
 ナイトが現実世界に戻ってくるときにはいつもの形状だから、自分の意志で元に戻れるんだろう。
 それにしても、ダークウィング改めダークレイダーの変形したバイクは、きっとファイナルベント限定のモードなんだろうなぁ。
 轢き逃げアタック専門のバイクなんて初めて見た。

 さて、「もう何も考えたくない!」なんて無責任なことを言い残した割には、ちゃんとやることやってる優衣だけど、窓に封じ込めるように貼られた海の絵は何を意味するのか?
 そして、その発見と共にライダーの戦いを中止するなどと宣言してくれた士郎の真意は?
 やっぱ優衣の精神世界がミラーワールドを生んだっていう『手天童子』ネタかね?
 
 さて、今回の見所は“浅倉が気絶している脇でわざわざ真司に連絡する令子”だろう。
 神奈川から東京は、確かに近いだろうけど、浅倉の生い立ちを聞くためにわざわざ北岡の事務所まで出掛けていくくせに、電話かけるときに外に出ないってのは何?
 いくら何度かけても出ないからって、手を抜かないように。

 

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