『仮面ライダー龍騎』
第23話 変わる運命
2002/7/7 放映
(Story)
ガルドサンダーに1人挑み、ファイナルベント“ハイドベノン”で撃破したライア。
今回に限ってムキになって戦った手塚に理由を問い質した真司は、手塚がライダーになった事情を教えられた。
手塚の親友だった斉藤雄一は、あるコンテストに入賞してピアニストとしての人生を踏み出した矢先に傷害事件に巻き込まれ、右手を痛めてしまった。
そんな雄一の前に神崎士郎が現れてカードデッキを渡すが、雄一は人を傷つけることをよしとせず、モンスターと契約しないでいるうちにガルドサンダーに食われてしまったのだという。
手塚は
俺には、あいつがライダーにならなければ破滅する運命にあるのは見えていた
なのに運命を変えることはできなかった
多分、雄一にも分かってたろう
それでも戦いを拒絶したんだ
それを臆病だと言う奴もいるかもしれないが、俺は、あいつは誰よりも強いし正しかったと信じてる
と言い、自分がライダーになった目的を
あいつの信じた正義を無駄にしないためだ
それと、変えられなかった運命を変えるために
と言った。
そんな手塚に、真司は、
今はただ戦いを止めるのがいいのか、まだ分からない
と答える。
その頃、真司に連絡が取れなかった令子は、浅倉の情報を集めるために再び浅倉の故郷三ツ浦市に出発していた。
一方、浅倉は、吾郎を人質に北岡を呼びだしたものの、誰も姿を見せないことに苛立っていた。
吾郎は
だから言ったんだ
俺を人質にしても、先生は動かない
と言い放つ。
イライラが溜まった浅倉が暴れている隙に、吾郎は手錠を針金で外して逃げ出した。
その頃ミラーワールドでは、ナイトとゾルダが戦っていた。
ナイトは、トリックベントでシュートベント“ギガランチャー”の砲撃をかいくぐり、ゾルダの懐に潜り込んで戦う。
決着が付かないまま時間切れで戻ってきた2人だったが、北岡は
俺は自分が一番可愛いんだ
他人のための犠牲は美しくない
と、吾郎救出に行かないことを宣言し、蓮に「最低だな」と言われる。
蓮が帰った後、どうにもイライラして吾郎救出に向かおうとする北岡の前に、無事脱出して買い物までしてきた吾郎がいた。
その夜、手塚は花鶏を出ていった。
真司に「優衣から目を離すな」と言い残し、蓮にSURVIVEのカードを渡して。
士郎が手塚にSURVIVEのカードを渡したのは、雄一の右手を傷つけた犯人浅倉と戦わせることで、ライダー同士の戦いを拒否する手塚を引き込もうという魂胆だったのだ。
そして、士郎は浅倉の前に現れ、ライアと戦うよう仕向けていた。
翌日、浅倉の溜まり場だった場所にやってきた令子は、そこに生活感があることや浅倉の上着が置いてあることに気付いた。
そして、そのころ浅倉は、ライアと戦うために街に出ていた。
謎を解く鍵が優衣にあると考え始めた手塚の前に士郎が現れ、雄一はライダーにならなかったことを後悔しながら死んだと告げる。
そして
お前もそうなる
と告げて消えた士郎に代わって浅倉が姿を見せた。
来いよ
お前が戦わないなら、ここで俺が何するか、自分でも分からないぜ
と脅しをかける浅倉に、手塚は戦うことを承知する。
だが、士郎の言葉に動揺するライアは、王蛇の攻撃に手も足も出ない。
追い打ちをかけようとする王蛇のベノサーベルを飛び込んだ龍騎のドラグシールドが受け止めた。
王蛇と戦う龍騎。
しかし、メタルゲラスの体当たりを受けた龍騎は、王蛇に押されまくる。
ファイナルベント“ベノクラッシュ”を放つ王蛇だが、食らったのは龍騎を押しのけたライアだった。
ライアに駆け寄ろうとする龍騎を更に攻撃する王蛇の前に、ナイトが立ちはだかる。
龍騎に手塚を救出させたナイトがSURVIVEのカードをかざすとダークバイザーが変形し、そこにカードを装填したナイトは、新たな姿:ナイトサバイブに変身した。
現実世界に戻った真司は、ぐったりとしている手塚を
お前は運命を変えるんだろ?
運命に決められたとおりに死ぬのかよ!?
と励ます。
だが、手塚は
違う…あのとき占った次に消えるライダーは、本当はお前だった
しかし、運命は変わる…
と答える。
何かを察知して駆け付けてきた優衣の姿を見た手塚は、鏡の中の優衣を指さして何か告げようとするが、もう言葉にはならなかった。
2人が救急車を呼ぶ中、手塚は
雄一…お前は後悔なんかしてない
今なら分かる
お前は俺の運命を変えてたんだ
それがもっと大きな運命を変えるかもしれない
俺の占いが…やっと外れる…
と満足しながら死んでいった…。
(傾向と対策)
ナイトのパワーアップ編というより、ライアの退場編といった感の強い今回、ストーリーの方もそういう形でまとめてみた。
志半ばでの手塚の最期だが、死体が残っただけめっけもんというところだろうか。
ホンの小さな変化だが、自分の力で、死ぬはずだった真司を救えた。
実は、ナイトが死ぬはずのところを龍騎が救ったということが以前にもあったのだけど、『自分の力』でってところが重要なんだろう、きっと。
でも斉藤雄一のことについては、もっと以前から事情を明かした上で展開したほうが良かったような気がする。
今回いきなり話が出てきても、唐突すぎて話が流れていかない。
21話『優衣の過去』で、手塚が浅倉に「斉藤雄一を知っているか」と聞いた段階で、手塚は浅倉が雄一の手をダメにした男だと分かっているわけで、本来なら、それでも浅倉と戦おうとしない手塚の苦悩を描くべきだったのだ。
親友の仇であると承知の上で、なおかつそれが神崎士郎の挑発だと見抜いて敢えて戦わないという部分をもっと前面に押し出すべきだったと思う。
だからこその満足した最期なのだ。
ライダー同士の戦いを止めるという最終目的は果たされていない。
それどころか、今や真司も戦いを止めようとはしていない状況だ。
そんな中で、運命の歯車を少し狂わせたという満足か、やがて更なる変化をもたらすと信じての満足なのだ。
本当は、「優衣から目を離すな」の真意を告げてから死にたいところを果たせなかったわけだから、満足している場合ではない。
しかし、手塚にとってはやはり雄一の方が真司達より大切なのだし、雄一のことがあったからこそライダー同士の戦いを止めようと思ったのだから、あれはあれで正解なのだろう。
戦わない者を強制的に排除してでも戦い続けさせようとする士郎の本意は何なのか、手塚が遺した“優衣から目を離すな”とはどういう意味か、そして、優衣はどうして手塚の異変や居場所を知ることができたのか、今後に繋がる謎は多い。
それにしても、本人の努力や周囲の目的と全く関係なく、棚ぼたでパワーアップするヒーローも珍しい。
戦わないという立場の手塚が自分で使わないのはともかく、真司でなく蓮に渡したのは、やはり次に死ぬと予測されている真司よりも蓮に渡した方がいいという判断なのだろう。
それにしても、カードを装填する前にバイザーが変わってしまったのはちょっと…。
よく見ると、装填する前からカードの羽マークの周りが渦巻いていたけれど、装填前から力を発揮するカードというのもあるらしい。
これでナイトのカードデッキは純粋にカードが1枚増えたわけで、これでデッキに入っているカードの総枚数が全員同じじゃないということが確定したわけだ。
まぁ、ナイトの見せ場としては、今回はパワーアップよりもゾルダとの死闘の方だろう。
トリックベントや遮蔽物を利して接近することで、武器の間合いの不利を巧くカバーして戦っている。
どちらかというと、ナイトには今後も力押しじゃない方向でパワーアップしてもらいたいところなのだが。
吾郎を見捨てるような発言をした北岡に「最低だな」と言い捨てた蓮は、やはりどこか吹っ切れたのだろう。
多分、帰る最中に吾郎が戻ってくるのを見ていなければ、蓮1人でも救出に向かっていたはずだ。
で、強がっていた北岡も、結局吾郎ちゃんを助けに行こうとしてしまった。
そこにタイミング良く吾郎ちゃんが買い物を終えて帰ってくるのも見事。
まるで何事もなかったかのような顔をして帰ってくるあたりが、この2人の関係を表しているのだろう。
それにしても、針金1本で手錠を外して、浅倉が気付かないうちに脱出しちゃうってどういう技術?
ところで、無事脱皮も終えて夏バージョンになった浅倉だけど、脱ぎ捨てた革ジャンを残しておくことで、令子が浅倉の生存を確信するという展開は見事。
後は、令子がどうやって浅倉の逃亡生活にアプローチしていくかというところだろう。
真司に連絡が取れずに令子1人になったって展開は説得力あるけど、真司の携帯が鳴らなかったという点についてのフォローも欲しかった。
さて、今回の見所は“カップ麺などを食べて生活している浅倉”だろう。
結局神奈川のアジトから東京に毎回遠征に来ている浅倉だが、食生活はいかにもコンビニあたりで買ってきたカップ麺系統(今回はペヤングソース焼きそばか?)のようだが、果たして生活資金はどうしているのだろう?
いくら自分の死を演出したとはいえ、さすがに恐喝やら強盗やらやったら生きてるのがバレちゃうだろうし、かといって万引きの常習ってわけにもいくまい。
それに、地元じゃ顔が知られているだろうから、うっかり買い物にも行けまい。
それとも、やっぱり都会じゃ、誰もそんなこと気にしないのかな?
案外、ベノスネイカーに盗ませてきてたりして♪