『仮面ライダー龍騎』
第18話 脱獄ライダー
2002/6/2 放映


(Story)
 北岡は、関東拘置所で依頼主である浅倉威に懲役10年との判決結果を伝える。
 「無罪にできる弁護士じゃなかったのか」と抗議する浅倉に
  ここまで減刑させるのだって、相当強引な手使ったんだよ
  大体さぁ、動機が「イライラした」から?
  通用しないよ、そんなの

と答えた。
 そして、浅倉の
  今もイラついてる
  無罪にできない役立たずにな

という言葉に腹を立てた北岡は、控訴するなら別の弁護士に依頼するよう言い残して接見室を出ていった。
 拘置所を出る直前、北岡は一瞬モンスターの気配を感じるが、気配はすぐに消えてしまい、気のせいだったと思い直して芝浦の留置されている警察へと向かった。

 そして、無事釈放された芝浦の荷物の中にカードデッキがあったことから、芝浦がライダーだと知り、戦いを挑もうとする。
 今日は気分じゃないと制した芝浦は、「面白くなってきたじゃん」と笑うのだった。

 一方、仲村から貰った資料に載っていた小川恵里の病院を訪ねた優衣は、恵里が意識不明であることを知り、兄の実験が何だったのかの手掛かりを失っていた。
 そして真司は、手塚に言われた『ライダーを倒せないと分かっていても、蓮は自分に戦いをやめることを許さないかもしれない』という言葉から、蓮の戦う理由が分かれば止められるかもしれないと考えていた。

 北岡が帰った後、神崎士郎が拘置所に姿を現し、浅倉の独房へと入った。
 そして、浅倉に
  今のままでは、お前は負け犬でしかない
  その憎しみで這い上がれ、この底から
  最後に勝ち残ったとき、誰もお前を蔑むことはできないだろう

と言ってカードデッキを手渡した。
 ライダーになった浅倉は拘置所を脱走し、北岡の事務所へと向かった。

 令子から浅倉脱獄の一報を受けた大久保は、その旨の速報を流すと共に、真司を浅倉の目撃情報に関する取材に向かわせる。
 警察では、浅倉が北岡を襲う可能性を考慮して、北岡に注意を促していた。
 そして、北岡が取材に訪れた令子を招き入れようとした瞬間、浅倉がロッドで北岡に襲い掛かる。
 だが、そのロッドは吾郎に受け止められ、浅倉は逃走した。
 令子から連絡を受けた大久保は、浅倉発見の速報と、付近住民に注意を促すコメントを流す。
 真司もまた、令子の連絡で浅倉の逃走方向を目指した。
 初めてジャーナリストらしい仕事をしている実感に燃える真司だったが、移動中にゲルニュートの気配を感じ、やむを得ずゲルニュートのいるファミレスに入って変身する。
 ちょうどそのファミレスの向かいに逃げてきた浅倉は、モンスターの気配を感じて驚く。
 そこで待ちかまえていた芝浦は、浅倉に北岡がライダーであることを教え、初戦の相手を北岡にするようそそのかす。
 そして、龍騎の姿を見て変身しようとした浅倉は、警察に包囲されてしまった。
 少女を人質にファミレスに立てこもる浅倉。
 そこへ、ガイの手助けもあってゲルニュートを倒した龍騎=真司が戻ってきた。
 目の前の意外な事態に驚く真司。
 そして、芝浦は、機動隊員がファミレスを取り囲む様子を見ながら
  あいつ、最高じゃん
とほくそ笑むのだった



(傾向と対策)
 やはり、ライダーは現実世界でもその力を振るえるようだ。
 人間離れした力で障害を打ち破るという(拘置所側にとって)予想外の方法で正面から脱獄してしまったわけだが、今回の話ではいくつか新しい情報が入った。
 まず、神崎士郎は現実世界に存在できるが、幽鬼体のように普通の人間から見えず障壁も用をなさないこと、次に、ライダーになるときに詳しい説明はしてもらえないらしいことだ。
 画面に出た限りでは、浅倉が説明して貰ったのは、ライダー同士の戦いが『勝ち残り、望みを叶えるための戦い』であることくらいだ。
 勿論、カードデッキの使い方などはある程度教えてもらっただろうし、契約の仕方も教わっただろうが、モンスターがどういう存在であるかなどは聞いていないようだ。
 芝浦の言葉からも、ライダーになって日が浅いと、モンスターのことなどよく分からなくても当然といったニュアンスが窺える。
 でも浅倉の場合、脱獄できるってだけで十分メリットがあるからいいけど、北岡の望みが叶うという保証ってどこにあるの?

 さて今回の話は、一部問題点もあったが面白かった。
 浅倉がライダーであることを知らないまま周囲が動く様子がはっきりと描かれていて、地に足が着いているのだ。
 浅倉が北岡を逆恨みして襲う可能性を考慮して注意を促し、警護しようとする警察の対応、浅倉の人となりを聞くために北岡を訪ねる令子、洋服店を襲って服を奪い、タウンページで北岡の事務所の場所を調べる浅倉、入手した情報を直ちに速報として送信し、浅倉が逃げた先にいるかもしれない読者に警告する大久保など、実に現実的だ。
 実際、あのファミレスにいた客の中には購読者がいたようで、(間に合わなかったにせよ)速報は十分に効果を発揮していると言える。
 ちなみに、速報の内容は
      速報
    脱獄事件発生!!
  ○本日正午頃、関東拘置
  所より浅倉威(25)が脱獄
  をしました。浅倉は先日
  …

となっている。

 芝浦の行動は、ライダーである北岡の情報収集かたがた事務所を覗きに行ったところで北岡を恨むものの存在を知り、それが脱獄囚だと知って利用しようとしたところ、ライダーだったことから、北岡を潰すのに利用しようとしているのだろう。
 今回龍騎を助けたのは、浅倉を使って事態を混乱させ、ライダー同士の戦いをより面白くするためだと思われる。
 今のところ、浅倉がライダーだと知っているのは芝浦1人だけなので、次回どういう風になるか楽しみだ。

 なお、問題点としては
  1 浅倉がどういう罪を犯して懲役10年なのか分からない
  2 それだけの被告人なのに、どうして裁判所で判決を聞かされていないのか
  3 芝浦が釈放されたのはどうして
  4 なんであの少女はわざわざファミレスから出てきたのか

の3点だ。
 1については、『10年に減刑するのも大変だった』という話になっているから、殺人とか傷害致死あたりだろう。
 確かに『イライラしたから殴って殺しちゃいました』では通るまい。
 ちなみに、傷害致死と殺人の違いは「犯人に殺す気があったかどうか」ということだ。

 2については、恐らく納得できる説明は不可能だろう。
 何らかの事情で被告人が裁判所に行けない場合などに、弁護士がいれば判決できるという規定があったと思うが、浅倉にその事情があるとは思えないからだ。
 暴れそうだからってのは、理由にならないと思うなぁ…。

 3は、芝浦が逮捕されてからゲルニュートが現れるまでが数日あったと考えるしかない。
 前回も書いたとおり、送検されるまでは釈放は不可能だからだ。
 送検された後なら、被害者と交渉して示談するなどして、罰金で済ませるか不起訴になるようにしたのだろう。
 少なくとも、OREジャーナル乗っ取りの件では無罪はあり得ないから。

 4は…好意的に解釈すれば、何だか怖くなって逃げ出したってとこだろうけど、ちょっと御都合主義を感じる。

 さて、ようやく蓮を止めるためには戦っている理由が問題だということに気付いた真司だが、今回はなかなかおいしいキャラだった。
 スクープよりもモンスター退治を優先し、助けてくれたガイに一応頭を下げ、帰ってみれば浅倉が立て籠もっている。
 次回うまく立ち回れば、一躍ヒーローだ。

 次に、手掛かりを失った優衣だが、彼女は蓮のペアリングのことを知らないんだろうか?
 勘が良ければ、記憶を失った蓮が実験室に現れたことなどを考え合わせることで、蓮と恵里の関係に気付くチャンスはあるのだが。
 ま、あの叔母さんと一部同じ血が流れている優衣には無理かもしれない。

 しかし、浅倉が“今イラ付いている相手しか目に入らない奴”で良かったね。
 芝浦のあの口のきき方では、ターゲット変更もあり得ると思うんだけど。
 「最近、ルール守んない奴がいてさ」なんて言っていて、自分も戦うのを2連続拒否してるじゃん。
 芝浦は、初戦の相手を北岡にするようそそのかしているけど、当の浅倉は龍騎に興味を示している。
 もし芝浦の言葉が癪に障れば、浅倉はすぐに芝浦に襲い掛かるだろう。
 その場合、現実世界でライダーの力を振るうことに躊躇いのない浅倉相手に、芝浦は為す術もなく変身せざるを得なくなる。
 運が良かったから助かったけど、芝浦の頭って、その程度なのよね。
 
 さて、今回の見所は“便器の水で変身した浅倉”だろう。
 独房には、外して武器になるもの、自殺の道具になるものは置いていない。
 あの独房に鏡がなかったのも、それが理由だ。
 多分、洗面台にも、水を溜めるための栓は付いていないだろう。
 となると、便器の水面以外に反射物はないはず。
 浅倉は仮面ライダー便器に決定…か?



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