『仮面ライダー龍騎』
第14話 復活の日
2002/5/5 放映
(Story)
ストライクベントでゾルダを吹き飛ばしてしまい、ショックを受けて現実世界に戻ってきた真司は、エレベーターで吾郎を抱きかかえている北岡を見付けた。
「どうしたんだよ! 何があったんだよ!」と叫ぶ北岡の腕の中で、吾郎は息絶え、北岡は吾郎の亡骸を車に乗せる。
「俺がやったんだ」と言う真司に、北岡は
いくら俺がスーパー弁護士でも、あの状況でお前を犯人に仕立て上げるのは無理だ!
けど、お前の気が済まないっていうなら、それなりの方法はあるんじゃないの?
人1人の命だからな
何をしたって吾郎ちゃんは帰ってこないけどな
と言い残して去っていった。
とうとうライダーを殺してしまった真司は、かつて優衣に誓った「誰かを守るためだけに戦うから」という言葉を思い出し
俺が…モンスターじゃないかよ
と思い悩む。
一方、ナイトとライアは決着が付かないまま、それぞれフラフラになって現実世界に戻ってきた。
手塚は、蓮に
お前、このままだと破滅するぞ
と忠告する。
そして、「俺は戦いに勝ち残る」と言う蓮に
無理だな
お前には迷いが見える
本当に誰かを殺せるか?
と畳みかけた。
蓮は、病室で眠り続ける恵里を思い出しながら
俺に迷う資格はない
と言い残して去っていった。
翌日、優衣は真司がドラグレッダーに襲われそうになっているのを見た。
早くドラグレッダーにモンスターを吸収させないと喰われてしまうと言う優衣に、真司は
俺なんて喰われて当然だ
俺…ゾルダを倒した
俺のこの手で
もう絶対戦わない
ライダーなんかやめだ
と言ってどこかへ行ってしまった。
そのころ、北岡によって記者会見から閉め出された令子は、怒りに燃えて記者会見のテレビ中継を眺めていた。
そこに北岡から写真パネルのプレゼントが届く。
令子の怒りは更に燃え上がっていた。
真司がゾルダを殺したことで悩んでいるという連絡を受けた蓮は、真司を探し出し、ドラグレッダーをダークウイングで追い払って真司に話しかける。
蓮は真司の言葉から、北岡が何か策を仕掛けたことを悟った。
そんな中、北岡に令子から食事の誘いが入った。
大喜びで行きつけのレストランへと向かった北岡は、前日同様、エレベーターの中でモンスターの気配に気付き変身しようとする。
そのとき、ちょうど開いたドアの前にいた真司は、北岡がゾルダのカードデッキを持っていることに驚く。
そして、もう1基のエレベーターには、死んだはずの吾郎が乗っていた。
そこに、ダークウイングを引き連れた蓮が姿を現す。
令子が北岡を食事に誘ったのは、蓮の策略に乗ってのことだったのだ。
お互いの策略を罵り合う蓮と北岡だったが、真司はそれには全く目もくれず、吾郎が生きていたことに
あんた、生きてたんだ
よかった…
とすがりついた。
その様子を
まったく、見てらんないね
なんでこんなバカがライダーなわけ?
と言う北岡に、蓮は
確かにこいつはバカだが、俺やお前よりマシな人間かもな
と言い返す。
北岡が去っていった後、ようやく我に返って北岡を殴ろうと思った真司は、モンスターの気配に気付いた。
人を襲おうとしていたデッドリマーを妨害し、ミラーワールドに追い返した真司は、カードデッキを出し、しばし躊躇ったものの変身して追っていった。
デッドリマーの銃撃に苦戦する龍騎だったが、遅れてやってきたナイトが参戦したお陰で形勢を逆転する。
そして、龍騎が押さえつけたデッドリマーを、ナイトがファイナルベントで倒した。
デッドリマーのエネルギーが上昇する中、龍騎はナイトに
悪い、ドラグレッダーに喰われる理由なくなったし
と言って、ドラグレッダーにエネルギーを吸収させた。
そして、ナイトに
蓮、俺決めたからな
絶対ライダー同士の戦いは止める
と言うが、ナイトは
やりたきゃ勝手にやれ
だが、俺は…
と去っていった。
その夜、蓮は再び優衣達と共に食卓を囲んでいた。
一方、車に戻った北岡は、令子に送ったパネルが涙を書き込まれた状態でフロントガラスに貼ってあったのを見て、怒っていた。
そして手塚は、ナイトのマークを書いた紙で何事か占っていた。
風で飛んだ紙は、行灯の炎で燃え上がる…。
(傾向と対策)
えっと…真司の悩みはあれで終わり?
考えが浅いというか、頭が悪いというか…。
今回は、北岡の策略で済んだけど、今後、もし誰かライダーが攻撃してきた場合、どうするの?
結局、攻撃しない限り事態は変わらないわけで、何も解決になっていない。
ライダーを倒すということの実感を知ったことで、戦いたくないという決意が強くなったのは分かるんだけど、まだ決意だけなんだよね。
今回もしゾルダが参戦して龍騎やナイトを攻撃してきたらどうするつもりだったのか。
モンスターと戦う限り、ほかのライダーとの接近遭遇は避けられないわけだから、まずそれを考えないと。
彼らはそれぞれ自分なりの理由を持って戦いに臨んでいるのだから、壮観胆には戦いは止まらない。
最後のライダーの特典“願いが叶う”を全員に与えられない限り、どう頑張っても誰かの願いを断たねばならないことになる。
北岡の命が残り少ないこと、蓮が恋人を復活させるために戦うことを認識した上で、それでもどちらかに諦めさせることができるのか。
或いは、特典を全員に与える道を探すのだろうか?
結局のところ、真司は壁を超えたわけではなく、“人を殺すと後味が悪い”ことを実感しただけなんだよね。
北岡の猿芝居も相当なものだが、真司の性格をある程度把握した上でのものだと考えれば、結構妥当な線だろう。
「いくら俺がスーパー弁護士でも…」のくだりは、普通なら北岡の性格からして絶対言わない台詞だろうが、真司に“俺はライダーやミラーワールドなんか知らない”とアピールするためにわざわざ強調しているのだ。
そして、そこまで言っておいて、「お前の気が済まないっていうなら、それなりの方法はあるんじゃないの? 人1人の命だからな。何をしたって吾郎ちゃんは帰ってこないけどな」などと暗に“お前がやったんだ、責任取れ”ということを言う。
ここまでは完璧な悪役だったね。
で、詰めが甘かったのは、真司がそれでさっさとドラグレッダーに喰われてしまわなかったこと、つまり、優衣や蓮がドラグレッダーから真司を助けることが計算に入っていなかったせいだ。
これは、ゾルダが吾郎だと真司が思っていたことで「思ったより馴れ合っていない」と思ったせいだろう。
計算高い北岡の性格が裏目に出たわけだ。
さて、今回は“中途半端な覚悟で戦う男”蓮が非常にいい味を出していた。
シザース:須藤の最期に顔を背けていたことからも分かるように、蓮はやはり人を殺すことに対して後ろめたさを持っている。
恵里を救えなかった償いのために何をしてでもという決意はあるのだが、いざ実行に移すとなると、躊躇があるようだ。
だからこそ、真司がゾルダを倒したと聞いたときに、手塚の「本当に誰かを殺せるつもりか?」という言葉が頭をよぎったのだ。
蓮は当初、真司がゾルダを殺したという点については特段疑っていなかった。
それは、武器を振るえば殺すつもりがなくても殺しうるということを知っているからだろう。
結局、真司が「北岡さんが泣いてた」と言ったことから計略に気付いたわけだが、龍騎とドラグレッダーの攻撃力を知っている蓮は、場合によっては龍騎がゾルダを殺す可能性はあると思っているわけだ。
そして、北岡を罠に掛けて真司の心を救った蓮は、真司が北岡に騙されたことより吾郎が生きていたことを喜ぶ姿を見て、『バカだが、自分や北岡よりマシな人間』だと再確認したわけだ。
この場合、「マシな人間」というのは、「いい奴」と同義だろう。
戦うことを決意しながら殺すことに躊躇いを感じる蓮にとっては、他人を守るためだけに戦い、ライダーと戦わないことを決意している真司は、ある意味眩しい存在なのだ。
ところで、北岡をはめた罠だが、多分こういうことだろう。
令子に頼んで北岡をおびき出し、真司には北岡に謝れるよう呼び出したと言い、2人が出くわすように時間を設定する。
そしてダークウイングを呼び出して、北岡にモンスターの気配を察知させる。
あのビルは前回デッドリマーが出現したビルだから、北岡はデッドリマーが現れたものと思って変身しようとする、と。
どうやって令子に協力させたのか、非常に興味深い。
興味深いと言えば、島田が北岡の顔を覚えていたことも今後の伏線になるんだろうな。
令子と北岡の絡みが今後の流れにどう影響していくのか楽しみだ。
さて、今回の見所は“エレベーターのドアに挟まって死ぬ吾郎ちゃん”だろう。
確か『太陽にほえろ』で誰かが殉職するシーンだったはずだけど、やっぱ狙ってるよね。