『仮面ライダー龍騎』
第6話 謎のライダー 
2002/3/10 放映

(Story)
 仮面ライダーと戦いたくない龍騎だったが、シザースの猛攻にストライクベントを使い、ガードベントで守ったシザースは跳ね飛ばされた。
 そして、シザースのミラーワールド滞在時間が切れたことで戦いはひとまず終わった。
 1人残された龍騎は
  こんな戦い、何の意味があんだよ
とつぶやく。

 そのころ、加賀の死体を発見した蓮は、カウンターに残されていた「カンザキユイ」と書かれたメモを見付け、優衣の身に危険が迫っていることを知って花鶏へと急いだ。
 そして、TIN'S COLLECTIONを訪れた真司は、加賀が既に殺されていたことを知る。
 同じころ、花鶏を訪れた須藤刑事は、廃車の中から神崎士郎の免許証が見付かったと言って優衣を車に乗せ、薬をかがせて連れ去った。

 蓮が花鶏に着いたときには既に優衣の姿はなく、慌ててバイクを走らせた蓮は、前方の車のドアから優衣のコートがはみ出しているのに気付いて追跡する。
 ようやく須藤刑事を追い詰めた蓮は、ライダーでない優衣には手を出すなと言うが、須藤刑事は
  神崎士郎の妹でしょう? 抱え込んでおけば何かと有利と思いましてね
  あなたもそうでしょう?

とうそぶく。
 互いにカードデッキを出して戦いの体勢に入ろうとする2人の前に真司が現れ、須藤刑事は「2対1では不利すぎる」と去っていった。
 蓮は真司に
  奴は俺と優衣のことを知っていた!
  お前のせいで俺も優衣も狙われたんだぞ!
  これで分かったろう、最後に生き残れるライダーは1人
  戦わなければ生き残れない
  それでも戦いたくなければ、死ぬのはお前の勝手だ
  だが、俺と優衣を巻き込むな

と言い捨て、優衣を抱き上げて去っていった。
 ことの重大さをようやく知った真司は、返す言葉もなく立ち尽くす。

 加賀の死体が発見されたことで、刑事が前夜に騒ぎを起こした令子の病室を訪ねてきて、令子は自分の被害届が受理されていないことを知らされる。
 刑事達を通じて須藤刑事を病室に呼び出した令子は
  あなたが全ての犯人だとすれば辻褄が合うんです
と問い詰める。
 須藤刑事が令子を睨みながら立ち上がったとき、2人の刑事が病室に飛び込んできたため、病院から逃げ出す。
 そして須藤は、追ってきた刑事達をボルキャンサーに喰わせるが、そこに須藤達を追ってきた真司がやってきた。
 須藤は、加賀と組んで悪事を働いていたが報酬の件で揉めて殺したこと、死体を壁に塗り込んでいたときに士郎が現れてカードデッキを渡されたこと、加賀の死を隠すためとボルキャンサーを強くするために人を襲わせていたことなどを聞かせた。
 そして、須藤の
  今回のことを知る人間も全て始末してしまえばいい
  あなたも、あの女記者も

という言葉を聞いた真司は
  俺はモンスターから人を守るためにライダーになったんだ
  そのためだけに戦うつもりだったし、これからも…
  けど、あんただけは許せないと思う
  戦わなきゃいけないと思う

と言ってカードデッキを取り出した。
 だが
  お前には無理だ
と蓮が現れた。
 蓮は
  そいつが許せないから戦うんじゃない
  仮面ライダーだから戦う
  理由はそれだけでいい

と言い、須藤もまた
  あなたは話が早い
  いいでしょう、1対1で

と戦いを受け、2人はカードデッキを取り出して変身した。
 戦いは終始シザース有利で進んだが、抑え込まれたナイトは、隙を突いてダークバイザーでシザースのベルトを切って脱出し、ファイナルベントに入った。
 だがシザースもファイナルベントで迎え撃ち、ナイトは地に倒れ伏す。
 そのとき、先程ダークバイザーに傷つけられたシザースのベルトが砕け散った。
 その途端、契約から解放されたボルキャンサーはシザースに襲い掛かり、変身も解けた須藤はボルキャンサーに喰われてしまった。
 ボルキャンサーは、そのまま力尽きたナイトをも襲おうとするが、そこに割って入った龍騎がボルキャンサーを倒す。
 ボルキャンサーを吸収しようとするドラグレッダーを制止する龍騎に、ナイトは
  何を躊躇ってるんだ、力は力だ
と言って、ダークウイングにボルキャンサーを吸収させた。
 そして
  カードデッキは全部で13
  倒すべきライダーはあと11人
  お前を入れてな
  俺は必ず生き残る

と言うのだった。
  
 そして、花鶏に戻ってきた蓮は、真司に、優衣にはシザースのことを黙っているように言い、優衣にまで不愉快な思いをさせたくない真司はそれを承諾した。


 その夜、シマウマ型のモンスターと戦う緑色のライダー(ゾルダ)の姿があった。     



(傾向と対策)
 思いっきり予想どおり、というか、次回予告で丸分かりというか、須藤刑事がシザースだった。
 意外だったのは、加賀を殺して壁に塗り込めている最中にライダーにスカウトされたという点だろうか。
 このときも神崎士郎は鏡の中にいるかのように見える演出だったが、この辺はおいおい明かされていくだろう。
 それにしても、行方不明者を山ほど出せば加賀の行方不明も紛れるだとか、加賀と組んでのやばい仕事(証拠品の横流しとか捜査情報の漏洩とかの類だろう)とか、被害届を書かせた上での揉み消しだとか、非常にリアルな犯罪が描かれていた。
 特に、ボルキャンサーによる被害者を多数出すことによる加賀の失踪隠しについては、倫理的にはともかく非常に有効なやり方だ。
 人間を欲するモンスターに人間を与えて強くするのは手っ取り早いわけで、これをしないだけでも蓮がそれなりに真っ直ぐな生き方をしていることの表れと言え、だからこそ優衣と組んでいられるのだ。

 今回のことで、この大量失踪事件の調査が一応終わりになるかもしれない。
 というのは、恐らく週刊情報サイトであろうOREジャーナルにとって、このネタだけ追ってはいられないという事情があるからだ。
 須藤という刑事が加賀と組んで何かしていたことは、多分調べればかなり掴めるだろう。
 そして、須藤自身と須藤を追った刑事2人が行方不明になったことで、須藤が殺して逃げたと考える土壌ができた。
 令子は当然納得していないはずだから、失踪事件全体の調査は今後もゆっくりすることになるとしても、加賀と須藤のネタで一応はかなりセンセーショナルな記事になるから、一旦棚上げにできる。
 導入部としての一連の事件はこれで終わらせて、後々蒸し返すというのが一番綺麗なやり方のようにも思える。

 さて、今回蓮は非常に面白いキャラだった。
 優衣に「(須藤と)戦うつもり?」と聞かれて「いや…」と言葉を濁していたり、須藤に「あなたもそうでしょう?」と言われてムッとしていたり、「お前には無理だ」と真司を止めてシザースとの戦いを引き受けたり、「優衣には(シザースのことは)黙ってろ」と口止めしたりと、なかなか微妙な行動を見せている。
 蓮が優衣と組んでいるのは、優衣に利用価値があるのはもちろんだが、それだけではないはずだ。
 兄を捜し求める優衣を放っておけないというのも大きな理由だろう。
 だから、「優衣には黙ってろ」というのは、優衣にライダーを殺したことを知られたくないという想いと、優衣に兄のことで思い悩んでほしくないという想い、それに優衣と決別するわけにはいかないという事情がないまぜになっているのだと思う。
 いずれにしても、蓮は悪人とも善人とも言い切れない中途半端な、よく言えば揺れ動いているキャラだと言える。
 今後、真司と知り合ったことでどう影響しあうか楽しみだ。

 一方真司は、自分の不用意な行動から優衣を危険な目に遭わせたことで、ライダー同士のドロドロした宿命を思い知った。
 そしてシザースと戦う決心をしたが、シザースが死んだ後のボルキャンサーでさえ、ドラグレッダーに喰わせるのを躊躇うくらい煮え切らない状態だ。
 次に敵対するライダーが登場したとき、真司はどう対処するのか?

 さて、前回『士郎は倒せとは言ったが殺せとはいっていない』と書いたが、どうやら仮面ライダー同士の戦いの場合、「倒す」=「殺す」ということにならざるを得ないようだ。
 今回の蓮と須藤のチェイスや刑事から逃げる須藤をみれば分かるとおり、“現実世界でライダーに変身して戦う”という発想はないようだ。
 龍騎の世界では、変身するということは即ミラーワールドへ突入するということなのだ。
 互いにデッキを出し、変身してミラーワールドで戦うというのがライダー同士が戦うときのやり方なのだろう。
 そして戦いの勝敗は、相手のモンスターを殺すか、ライダーを殺すか、デッキを奪うか破壊することでしか決しない。
 また、ミラーワールドでは、変身が解けたりデッキが破壊されることは、死を意味する。
 仮面ライダーの状態でないと現実世界には戻れないだろうし、モンスターとの契約の証であるデッキを破壊されれば、当のモンスターに喰われてしまうからだ。
 前回蓮が狙われたような交通事故では、ライダーを倒したことにはならないだろう。
 敗れたライダーは、相手の好意で現実世界に押し戻されなければ、ほぼ確実に死んでしまうのだ。
 
 さて、今回の見所は“鍵をかけずに須藤について行こうとした優衣”だろう。
 盗まれる物がないとはいえ不用心すぎるよ。
 それに須藤が花鶏に入ったとき「いらっしゃいませ」とか言ってたけど、叔母さんが帰ってくるまで休業中じゃなかったの?

 あと、蓮ってば、湾岸から花鶏までバイクでお姫様抱っこしながら優衣を連れ帰ったんだろうか?


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