『仮面ライダーアギト』
第50話 今、戦う時
2002/1/20 放映
(Story)
地のエルを追おうとしたアギトに銃を向けて牽制したG3とG3-Xは、地のエルが逃走したことを確認するとマスクを外した。
G3-Xは北條が、G3は尾室がそれぞれ装着しており、北條は変身を解いた翔一に、今後G3ユニットはアンノウン保護に目的を変更されたと告げる。
「我々普通の人間には、アンノウンの存在が必要なのかもしれない」と。
翌日、北條らがアンノウンを保護するためにG3-Xなどで出動していたことを知った小沢は、白河や幹部に食ってかかるが、白河は
アギトはアンノウン以上に危険な存在と言える
我々が今アギトを狩るようなマネはできない
ならばアンノウンに任せればいい
我々も手を汚さずに済む
と言って取り合わず、その場で氷川には香川県警へ、小沢にはG3ユニット用兵器開発部への異動が言い渡された。
そして小沢は、北條に人間はアギトを恐れる者ばかりではないと詰め寄るが、北條は自分がアギトを恐れる以上、大多数の人間はアギトを恐れるはずだと反論する。
小沢は
アギトは人間の可能性そのものよ
アギトを否定するなら、人間にも未来はないわ
と
尾室もまた“アンノウン保護”というこれまでと正反対の方向性で活動することになったG3ユニットに困惑するが、北條はそんな尾室に、自分達がやっていることは正しいのだと諭す。
一方、可奈はアギトへの覚醒を始めていた。
突然の目眩と体の熱さ、周りの物が揺れ動く様に恐怖を感じた可奈は、鏡に写った自分の姿が一瞬異形の者(アギト)に変わったことにショックを受けて早退する。
それを追い掛けた翔一の前に、氷川が別れを告げに現れた。
氷川は、蠍座の人間の突然の自殺がアンノウン絡みの事件かもしれないことを告げ、「これからはアギトとして生きるのが辛い時代になるかもしれません」と言い残して去っていった。
香川県警に戻る氷川の見送りにやってきた小沢は、英雄として扱われてもおかしくない氷川の見送りが自分1人だけなことに憤り
私にとってあなたはいつまでも最高の英雄よ
と別れを告げた。
また、リサは涼の誕生日を祝うため、ケーキを買って涼のアパートへと向かっていた。
口では関わるなと言いながらもそれを心待ちにしていた涼は、リサを迎えに外に出る。
踏切の向こうに互いを見付けた2人だったが、2人の間を電車が通り抜けていく。
リサは、その電車の中にもう1人の自分を見付け、電車が通り過ぎた後、リサは死んでいた。
リサに駆け寄った涼は、たまたま別の人間を殺すために近くに居合わせた地のエルを感知し、地のエルがリサを殺したものと勘違いして襲いかかる。
しかし圧倒的な地のエルの力の前に破れ
構わないぜ…やれ
と地のエルの剣を受けて川に沈んだ。
一方、可奈のアパートを訪れた翔一は、可奈の姿が一瞬アギトに変わるのを見て、可奈がアギトに覚醒し始めていることを知った。
可奈は変わりゆく自分の姿に恐怖し、翔一の隙を見てアパートを飛び出して行った。
追い掛けた翔一は、ビルの屋上から飛び降りようとする可奈を見付けた。
自分の身体の異変にとまどい、もうお終いだという可奈に、翔一は可奈は可奈のままだと説得するが、可奈はビルから落ちてしまう。
なんとか可奈の手を掴んだ翔一だったが、可奈の身体は徐々にずり落ちていく。
翔一の目には、アギトへと代わっていく自分に絶望する可奈の姿が雪菜に被って見えた。
幻の雪菜に向かって
姉さんは間違っていたんだ
アギトだからって自分を追い込んで自殺するなんて
俺はアギトになっても楽しいことがいっぱいあった
アギトになったって、人は人として生きていけるんだ
と言う翔一に、雪菜は
人は、いずれアギトを憎むようになる
アギトを恐れるようになる
アギトはきっと人の手で滅ぼされる
と答える。
翔一の脳裏に氷川の
世の中にはアギトを恐れる人もいるということですよ
いや、むしろその方が多いかもしれない
という言葉が蘇る。
そして、雪菜の
人間に憎まれるのは嫌
だから、離して
との言葉に動揺した翔一の手が可奈の手を取り落としそうになった瞬間、「離すな! お前の手は人を守るための手だ!」という言葉と共に沢木の手が可奈の手を掴んだ。
ようやく助け上げた可奈に、沢木は
以前、君と同じ境遇の女性がいた
その人は死を選び、俺は彼女を救えなかった
だが、所詮人は自分で自分を救わねばならない
君が君でいられるか、君でなくなるか、それを決めるのも自分自身だ
と言い、翔一は
俺、思うんです
可奈さんの料理を食べて幸せになる人がきっといるって
だから、また一緒に料理しましょう
と励ます。
なおも思い悩む可奈だったが、そこに地のエルが現れた。
翔一は沢木に頼んで可奈を逃がし、アギトに変身する。
「変身!」の掛け声に振り向いた可奈は、翔一が自分と同じ異形の者になるのを見た。
アギトは
可奈さん、生きてください
俺も生きます
俺のために、アギトのために、そして人間のために!
と言って地のエルに戦いを挑む。
(傾向と対策)
え? 来週最終回なの?
もう1か月くらいあるんじゃないの?
終われるの、これで!?
とりあえず、翔一・涼・氷川の3人に関する限りはきっちりと結末が付きそうな予感があるので良しとするべきなんだろうか。
次回は、香川に帰ったはずの氷川も、川に沈んだ涼も登場するようだし、それなりの盛り上がりを見せてくれそうな気がする…んだけど、蠍座の変形やら自殺やら白河の正体やらって、きっとまともに解決しないんだろーなー。
さて今回のメインは、もう1人の雪菜である可奈の苦悩だ。
突然訳の分からない状況に追い込まれてしまった可奈は、予備知識がないために自分の変化に対処できないまま死を選ぼうとする。
アギトが何であるかは公表されていないわけだから、可奈のとまどいは当然と言える。
翔一に向かって可奈が言った
なんであたしが…あんな…あんな…
という言葉の後には、「化け物に」という言葉が続くはずだ。
さすがに主役と同じ姿を化け物呼ばわりするのを避けたのだろうが、普通の人間があんな顔になったら怖いよねぇ、そりゃ。
そして、“アギト”という存在に対する翔一のスタンスは、今回ようやく完成したと言える。
翔一は雪菜の最期を知らず、雪菜の苦悩も知らなかったわけだから、可奈に被って見えた雪菜はある意味翔一の暗黒面の噴出だったのかもしれない。
順番的には逆になってしまったが、氷川に言われた
世の中にはアギトを恐れる人もいるということですよ
いや、むしろその方が多いかもしれない
という言葉から、普通の人間がアギトを忌み嫌うかもしれないことに思い至った翔一がそれ故に躊躇してしまったのかもしれない。
だが、やはり翔一はアギトになっても力に溺れず、自分であり続けた人間だった。
“自分にできることがある”という素朴な充実感をもって生きることができる人間。
アギトになったって、人は人として生きていけるんだ
という言葉は、“アギトであることを飲み込んだ”人間だから言えることなのだ。
逆に言えば、“アギトであることに飲み込まれてしまう”人間は、北條が危惧するとおり「人間にとって時期尚早な」存在だということだろう。
この点においては、小沢の言う「人間の可能性」とやらはあまり当てにはなるまい。
何しろ、身近にも木野薫というアギトの力に振り回された人間がいるのだから。
彼は、普通の人間には危害を加えていないが、少なくともアギトが安全な人種であるとは言えないことを実証している。
アギト同士のいざこざに普通の人間が巻き込まれたら大変だ。
そして、危ないところで可奈を救った沢木の手は、雪菜を救えなかった自分の弱さをようやく克服したということであり、“人は自分で自分を救わねばならない”という自身の言葉を体現したものと言える。
ここにもまた、過去を吹っ切った人間がいる。
ところで、リサの死因って何だろう?
自殺で口から血を流していたってことは、舌でも噛み切ったのか?
普通舌を噛み切った場合、切れた舌による窒息死になるわけだけど、脳が酸素欠乏によって致命的なダメージを受けるのは血流停止が3〜4分経った場合だ。
いくら東京でも、電車が通り過ぎるまでに3分も掛かるってことはないだろうから、うまくすればリサは蘇生できた可能性が高い。
となると、なまじ地のエルを感知してしまったために、涼は蘇生措置を取らずに突っ走ってしまったということになり、救える者も救わなかったお馬鹿さんとい
うことにも…。
勘違いで狂暴なギルスに襲われちゃった、地のエルさん(仮名)が気の毒だ。
つーか、砂にされて死んだ人がいるのに、リサの死に方とのギャップを感じる余裕もないくらい怒りまくってる涼がナイス。
さて、今回の見所は“アギトの会の正会員になれた氷川”だろうか。
「この際、正会員にしちゃいます」ってのが翔一らしいって言うか…。
でも、翔一、今日ほとんど仕事してないだろ。
それにしても、最高のカップルとか言うだけで1万円置いてってもらえる占い屋なんてうらやましい。