『仮面ライダーアギト』
最終話 AGITΩ 
2002/1/27 放映

(Story)
 地のエルに苦戦するアギトは、バーニング、そしてシャイニングへと姿を変え、地のエルを追い詰める。
 シャイニングカリバーで手傷を負った地のエルは、聖地に浮かぶ青年の元へ逃げ帰り、新たな命を授けられた。

 アギト出現の報を受けて出動したGトレーラーの前に、白バイとパトカーがやってきて行く手を塞ぐ。
 本部からの緊急命令だと言ってGトレーラーに乗り込んできたのは、香川県警に戻るのを取りやめた氷川と小沢だった。
 銃を突きつけG3ユニットの指揮権を奪おうとする小沢に、北條は
   きっと来ると思っていましたよ
とあっさりGトレーラーを明け渡して去っていった。
 そして、氷川が装着したG3-Xが出動する。

 マシントルネイダーで地のエルを追撃してきたアギトは、聖地へとたどり着く。
 だが、地のエルと風のエルの2体を相手に破れ、変身も解けてしまった。
  塵に帰るときだ
と構える地のエルをGX-05の掃射が吹き飛ばした。
 翔一に駆け寄ったG3-Xは
   また戦いましょう! 一緒に
と声を掛ける。
 宙に浮いたままの青年は、そんなG3-Xを
  無駄なことを
  あなたはただの人間だ
  人間の力では、何もすることはできません
  人間の運命は私の手の中にあります
  人類は全て自らの手で命を絶つことになるでしょう

と嘲笑い、その言葉に
  自殺者達は、お前のせいで!?
と怒りを燃やすG3-X。そこに2体のエルが襲い掛かる。
 同時に2体のアンノウンと戦う羽目になった氷川を心配する尾室だったが、小沢は
  彼を誰だと思ってるの?
  彼は氷川誠よ!
  決して逃げたことのない男よ!

と氷川の底力を信じるのだった。
 2体のエルを相手に互角の戦いを繰り広げるG3-Xに、地のエルは戸惑う。
  お前はアギトではない
  何故これほどの力を…?
  何者だ、お前は!?

という地のエルの言葉に
  ただの人間だ!
と叫んで突っ込んでいくG3-X。
 だが、青年の力で吹き飛ばされてしまった。
 動けない翔一とG3-Xに2体のエルが迫る。
 だが、そこにやってきた涼は、2人に
  しっかりしろ、津上! 氷川!
と声を掛け
  俺は不死身だ!
とエクシードギルスに変身する。
 再び立ち上がった翔一は、青年に
  人間の運命がお前の手の中にあるのなら、俺が奪い返す!
とシャイニングに変身した。
 風のエルと戦うエクシードギルスとG3-Xは、GX-05ランチャーで動きを止めた風のエルにエクシードギルスの両踵落としで倒し、地のエルと戦うアギトは、2つの紋章を空中に描いてのキックで倒した。
 すると、青年が光球となって空高く舞い上がり始める。
 アギトは地に紋章を描いてその光球へとキックを放ち、光球はアギトを飲み込んだまま空へと舞い上がり、青年と翔一の叫びを響かせながら光球は爆発した。
 翔一の身に何か起きたことを察知した真魚が見たものは、空で爆発した何かからあちこちに飛び散る光だった。
 そして、屋敷に戻っていた沢木の前に青年が現れた。
   青年「あなたに与えた命は、残り少なくなりましたね
   沢木「怖くはない
   青年「私は、人間の側からアギトを滅ぼすための使者としてあなたを復活させた
    だが、その必要はなかったようです
    人間はいずれアギトを滅ぼします

   沢木「あなたは人間を作りながら、人間のことを何も知らない   
    人はアギトを受け入れるだろう
    人間の無限の可能性として

   青年「では、見守ってみましょう
    あなたの言葉が正しいかどうか、人間とは何なのか
    もう1度、この目で

   沢木「ああ。きっと俺が…勝つさ
 青年は姿を消し、沢木は満足げな笑みを浮かべてゆっくりと崩れていった。


 1年後。
 アギトを排除する法案はいつの間にか立ち消えとなっていた。
 小沢は警察を辞め、氷川は捜査一課で河野と共に捜査に当たり、尾室は未知なる敵の出現に備えて新編成されたG5ユニットの司令官になっていた。
 ロンドンの大学で教授となっている小沢の元へ、捜査のついでと称して現れた北條は、相変わらずの嫌味の応酬を楽しむ。
 相変わらずひとりぼっちの涼は子犬を拾い、大学受験を控えた真魚と真島は一緒に受験勉強していた。
 そして翔一は、独立してイタリアンレストラン「AGITO」を経営し、元気に頑張っていた。  


(傾向と対策)
 ゔゔゔ…恐れていたことが…。

 やっぱりと言うか、蠍座の謎は解明されず、人間対アギトの図式もうやむやになり、可奈やほかのアギト化していく人達がどうなったのかも全く触れられずに終わった。

 ホンの数時間で都内の川から海岸まで流されてしまった涼は、どうして戦意を取り戻したのか?
 どうやってバイクの所まで移動したのか?
 Gトレーラーを乗っ取ってアンノウンを殺してしまった氷川がどうして警察機構に残り、しかも警視庁で刑事をやっていられるのか?
 小沢が恋しくなったという北條の冗談は果たして本心だったのか?
 すっかり形の変わってしまった蠍座はその後どうなったのか?
 枯れてしまった菜園はどうなったのか?
 可奈はその後どうなったのか?
 どうして翔一はたった1年で倉本の店と同等の大きさの店を持てるほどになったのか?
 講義開始に30分遅れることは小さなことなのか?
 11月生れの人は、これから何座で占えばいいのか?
 真島は、あんなことで医大に合格できるのか?
 戸籍上死んでいるはずの沢木を乗せて、車を運転していたのは誰だったのか?

 多くの謎が、生み出されたままで終わってしまった。


 このラスト5話で新たに登場した事象・人物で意味があったのは可奈だけだったようだ。
 結局、リサはその死によって涼に孤独感を味わせるためだけの存在であり、ストーリー上全く生かされていないし、蠍座の移動もどういう意味があったのか不明のままだ。
 白河は、結局どういう立場の人間だったのかが不明だし、蠍座の人間の自殺は、青年が人間を滅ぼそうとしていることと結びつかずに終わってしまった。
 一応氷川が「自殺者達は、お前のせいで!?」と言ってはいるが、それに対する返答もないし、自殺者がアギト予備軍でないという保証もないから、あれがアンノウン絡みの殺人だったと考えるにしても、青年が普通の人間を殺そうとしているという根拠にはなり得ない。
 戦闘シーンにしても、スペシャル含めてたった3回しかテレビに出ていないシャイニングカリバーツインモードはあっさり真っ二つだし、G3-Xはシャイニングも敵わなかった2体のエルを相手に互角に戦っちゃうし、青年はあっさり人類滅亡をやめちゃうし、かなり支離滅裂だった。


 ちょっと整理してみよう。
 最初に、これはあくまでそういうこともあり得るというレベルの話であることを断っておく。
 というか、半ば妄想の域まで想像で補わないと内容が全くないのだ、正直な話。
 責任者出てこいって気分だ。
 そういうわけで、以下は鷹羽的補足が大いに混じっているのでよろしく。

 青年は、人間がアギトをどうするかを見守ることに決め、姿を消したわけだ。
 となると、人間を滅ぼしてしまうわけにはいかないから、ドッペルゲンガーで自殺させるのはやめたと考えられる。
 今まで自殺した蠍座の連中が殺され損なのはいいとしても、どうして青年は今更アギトがどうこうという話をするのだろう?
 普通の人間も自分の予想を超えた存在になりつつあることに嫌気が差し、人間を一旦滅ぼして作り直すことにしたんじゃなかったのか?
 これに対する答えとしては、恐らく翔一達に散々邪魔され、(光球の爆発で)今までのお膳立てがパーになったから、どうせだから人間に行くとこまで行かせてみようという気になったということだろう。
 んで、滅ぼすならその後で、ということだろう。
 実は、人類を救ったのは沢木の口八丁だったのかもしれない。
 結局、青年は沢木を大分気に入っていたようだから。

 次に、警察(政府)側のアギトに対する対応についてだが、青年が姿を消した以上、新たなアンノウンは出現していないはずだ。
 となると、覚醒前のアギトを判別することはできないし、排除すると言っても大義名分が必要になる。
 “人間より優れた新人類であるアギト”を公式に認めない限り、法的にアギトを排除するだけの理由はないのだ。
 また、アギトがどういった存在であるかが一般に知らされていないことは、可奈の反応を見ればはっきりしている。
 つまり、アギトが人間の中から発生する新人類であることは、警視庁幹部及び政府の一部だけのトップシークレットである可能性が高いし、実際公表すればパニックを起こしかねないことも分かりきっている。
 そういったことを考え合わせると、アギトの存在は公表しないままで放置するのが一番ということになる。
 そして、覚醒して暴れるアギトが存在すれば、新たな怪人の出現として排除すればいい。
 恐らくG5ユニットはそのために結成されたのだろう。
 小沢が抜けた後とはいえ、(劇場版と同一である保証はないが)G4を踏まえて更なる次世代機として完成したG5は、最低でもG3-Xを凌駕する能力を持っているはずだ。
 それなのにG5ユニットは、30人ほどの隊員によって編成されている。
 半分がバックアップ要員だとしても、15人のG5が同時に活動できることになる。
 アンノウンが滅んだ(出現しなくなった)というのに、あれほどの規模で編成するからには、かなり大規模な戦闘が近々行われることを想定しているものと思われる。
 その想定されている敵は、覚醒したアギト達なのではないのか。 
 少なくとも力に溺れたアギトなら、人間に害をなす敵として殺しても体裁を整えられるだろう。
 そう考えると、小沢が警察を辞め、氷川が警視庁捜査一課にいることがある程度説明できる。

 最後の戦いの後、G3-X強奪・アンノウン殺害の責任問題に発展した小沢と氷川は、小沢が『警視庁ではアギト予備軍を見殺しにするため、敢えてアンノウンを守ろうとしていた』ことをネタに裏取引をして事なきを得た。
 具体的には、アギトに関する一切口外無用と小沢の辞職、氷川がG3ユニットから離脱することを条件に、氷川の責任は不問に付した。
 この氷川の安全が重要で、そうでなければ小沢が取引に応じるとは思えない。
 また幹部側としても、親アギト派である小沢は氷川を対アギトの一線から退かせるのは必須条件だ。
 結果、氷川は捜査一課に転属となり、G3-Xの英雄でありながら、G5ユニットについては不参加という形になる。
 たった1年しか経っていないのだから、アンノウンを数多く撃破した氷川がG5ユニットに参入するのは当然だ。
 なのに参加していないのは、そういう経緯があるからだろう。
 勿論、人の口に戸は立てられないし、アギトに関する情報は口コミで伝わっていくだろう。
 そうなれば、政府レベルでどうこうしなくても、アギトが社会的に排除されていく可能性は十分にある。
 そういう形なら、政府高官・警察幹部の腹は痛まないままアギトを排除できるし、それに力で対抗しようとするアギトがいれば、G5が相手をすればいい。
 政治的な思惑から言えば、手を汚さずにアギトの危険性を十分にアピールできるいい手だ。
 問題が多発して世論が動いてから、法的な規制を考えればいい。
 そういう問題が起きれば、の話だが。
 氷川は、そんなに人間は馬鹿じゃないと思っているらしいし。

 ここで穿った見方をすれば、翔一のレストラン「AGITO」はそういったアギトになりかけて絶望しそうな人達への希望になりうる。
 翔一は、以前からアギトの会を作りたいなどと言っていたわけだが、可奈を救ったように、ほかのアギトをも救うためにこんなに目立つ名前の店にしたと考えれば、1年間アギトとして戦い、姉をアギトのせいで死なせた翔一の生きる道としては素晴らしい方向性だ。
 一応、翔一はそういうことを直感レベルで考える人間だから、そこに一縷の望みを掛けたい。
 厨房の奥に可奈がいれば、この説に説得力が生まれたのに…。
 どうでもいいけど、『翔一スペシャル』って…。
 まだ津上翔一を名乗ってるわけ!?
 EDテロップでも津上翔一のまんまだったし、沢木も沢木哲也のままだったし…。

 そうそう、今回は、EDテロップにしたかったからOP無しなわけね。


 さて、今回の見所は“シャイニングカリバーより強いGK-06”だ。
 シャイニングカリバーを真っ二つにするほどの地のエルの剣をも受け止めてしまうGK-06の頑丈さ。
 実はG3-Xの最強装備かも。

 ついでに言うと、G3-Xのカメラは左顎に付いているのに、G3-X自身が映ってしまっているというのは致命的な演出ミスだった。



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