『仮面ライダーアギト』
第49話 絶滅の足音
2002/1/13 放映
(Story)
バーニングフォームになったアギトも風のエルには敵わずに一方的とも言える敗北を喫した。
だが、風のエルは今回もアギト・ギルスにトドメを刺そうとはせずに立ち去った。
意識を取り戻した翔一は、可奈のアパートに向かい、可奈と共にレストランでスープを作る。
スープが完成間近の所に姿を見せた倉本は、それを一口飲んで、可奈のクビをひとまず撤回した。
だが、戦闘でのダメージを圧して可奈に付き合っていた翔一は、礼を言う可奈の前で倒れてしまう。
また、同様に意識を取り戻してリサと共に走り始めた涼も、戦闘のダメージで倒れてしまう。
そのころ国立武蔵天文台では、α星であるアンタレスに続いてγ星、Δ星なども動き始めた蠍座が十字架型に変形を始めていることに騒然となっていた。
ある青年が、もう1人の自分に操られるように、自分で自分の首を絞めて死んだ。
翌朝その現場で、氷川は河野に“謎の自殺者の何人かが「もう1人の自分を見た」と周囲の人間に漏らしていたこと”を告げ、ドッペルゲンガーを見たことが自殺の原因になっているのではないかと語った。
そこに小沢から、氷川にも会議に出席してほしいという内容の電話が入った。
会議の席上、北條は、アンノウンが全滅したかもしれない今、アギトが人類に対する脅威としてはびこりかねない危険について語る。
氷川や小沢は、アギトが人類に敵対するとは思えないと反論するが、北條は
アギトがアンノウンと戦ってきたのは、自分達の仲間を守るためだったのではないですか
アギトが危険分子なら、或いはアンノウンはそれを排除してくれるありがたい存在だと言えるかもしれない
と、むしろアンノウンが人類の味方とも言える発言をする。
反発する小沢に、同席していた白河尚純は『アギト・アンノウン問題から我が国を守るため、会議では冷静な意見交換を』と制する。
その日の昼ころ、風邪気味という口実でレストランを休んだ翔一のアパートに、昼休み中の可奈が賄い物(レストラン従業員が余った材料で作る自分達用の食事)を持って見舞いに訪れた。
翔一は、可奈の父が不可能犯罪で殺されたという話を聞いて顔を曇らせるのだった。
また、涼は自分のベッドで目を覚ました。
医者は呼ぶなという涼の言葉に、リサが運んでくれたのだ。
リサの料理を「不味い」と言いながら全部平らげた涼に、リサは『明日も来る』と言って帰っていった。
そしてそのころ、青年は、新たに出現した地のエルに
最後の時が近付いています
人間は私が滅ぼします
まず蠍座の者から
アギトの種を持つ者は、あなたにお願いします
と告げた。
その命を受けた地のエルは、早速アギトの素養を持つ者を襲い始める。
新たなアンノウン出現により、アンノウンが絶滅していなかったことを知った警視庁側だったが、白河は、北條に
やはりG3ユニットは存続させておきましょう
ただし、今度はアンノウンを守るためにね
と語るのだった。
その夜翔一は、昼の弁当のお礼に可奈をアパートまで送った。
その帰り、地のエルの出現を感知して駆け付けた翔一は、立ち去る地のエルを追おうと変身するが、何者かの威嚇射撃に妨害される。
アギトの前に現れたのは、GM-01を構えたG3とGX-05を構えたG3-Xだった…。
(傾向と対策)
2人とも無事に約束の場所には行けたようだ。
そうじゃなきゃ人間不信になっちゃうよねぇ。
いや〜、良かった良かった。

ってわけにもいかないので続き。
今回は、翔一と可奈、涼とリサの関わり合いを深めると共に、最終2話への伏線作りに勤しんだようだ。
ここに来て
新キャラ白河尚純の登場
人間を守るための装備G3シリーズ
アンノウンの存在意義
(分かっちゃいたけど)蠍座だったリサ
アギト予備軍である可奈
など、ラストバトルへの準備が唐突にできあがりつつある。
白河は、その発言内容から警察庁の人間と言うより内閣辺りから派遣されたオブザーバーという感が強い。
G3ユニットの存否を左右するだけの発言力を持っていることは間違いないようで、“人間のための国家”を守るために、“人間でない生物”アギトを滅ぼすことを容認しているようだ。
北條の
アギトがアンノウンと戦ってきたのは、自分達の仲間を守るためだったのではないですか
アギトが危険分子なら、或いはアンノウンはそれを排除してくれるありがたい存在だと言えるかもしれない
という言葉がことの本質を表している。
これは“アギト”の本質が見え隠れし始めたころから言われているアギトの戦いの根本的な問題が顕在化したものと言っていいだろう。
アンノウンは邪魔をしない限り普通の人間には危害を加えない。
つまり、アギトが守ってきたのはアギト予備軍とそれを守ろうとする人だけであって、普通の人間を守るために戦ったのは、ハチ怪人メス(アピス・メリトゥス)のときだけしかないのだ。
しかも、メリトゥスが普通の人間を襲ったのは、アギトが触覚を切り落としたからであって、言い方を変えれば種を蒔いたのもアギトだ。
勿論、翔一は相手が誰だから守ろうとかいう意識は全くないわけだが、客観的には、アンノウンはアギト予備軍の敵ではあっても“人間の敵”ではない。
そしてアギトが“一見人間のように見える人間以上の力を持った生物”と考えれば、アギトが人間にとっての脅威であるという北條の言い分は全く正しい。
アギト全てがそうだとは言わないが、アギトの素質を持つ者が力に溺れる可能性は十分に考えられ、警察力によって制御することは難しい。
簡単に言えば、アギトの力を得た者が銀行強盗を働いたとして、あのパワーとスピード、機動力(バイクを変化できる)を抑えて逮捕することができるかという問題だ。
しかも、雪菜の例(能力を制御しきれずに風谷教授を殺してしまったらしい)や亜紀の例(力に溺れて警官を殺害)を考えれば、それまでの本人の性格からは予想できない行動をとることもあり得る。
野放しにしておけば、アギトの集団によるクーデターすらあり得る。
ところが、覚醒する前にはアギトになる人間であるかどうかは判別できない。
この考えを押し進めると、アギト予備軍を感知し、そいつらだけを殺してくれるアンノウンは、むしろ人間の味方と言える。
実際、ついこの前まではそのとおりだった。
現在はアンノウンの頭目たる青年が人類殲滅を企てているが、それは未だ人間の知るところではない。
普通の人間にとってはアンノウンよりアギトの方が脅威だということは、アギトを一種の異生物と位置づけて排除する理由になる。
故に異生物から人間を守るために組織されたG3ユニットが対アギト攻撃力に転化されるのは自明の理だろう。
そして、演出的な面から言えば、地のエルがこの期に及んでアギト予備軍を狙っているのも、“アンノウンはアギト予備軍を襲う”という警視庁側の印象を保持させ続けるためなのだ。
警察側の認識では、あくまでアンノウンは“アギト予備軍と邪魔する者”を殺す存在のままであり、白河の言葉は、日本政府を守る立場の発言なのだ。
これは、青年が当初沢木に期待していた“人間の側からアギトを滅ぼす”という役割に相当する。
本来なら、沢木がこれをするべき立場だったんだろう。
勿論、警察内部からというわけではないのだが。
どうでもいいが、白河の立場がはっきりと描かれていないのって何かの伏線だろうか?
だとしたら来週辺り説明が欲しいところだけど。
次に、涼の守るべき“普通の象徴”であるリサは、青年がターゲットにしている蠍座の人間だ。
どうして蠍座の人間から殺しているのかはともかく、涼はリサを守れなければ、“再び守るべき者を守れなかった”敗北者になる。
今回、青年のターゲットが蠍座の人間という非常にユニークな選択になっているのは、“蠍座だからスコーピオン”という分かりやすいネーミングによって、視聴者に“リサは狙われる存在だ”ということをアピールするためだけなのだろうと思うと、ちょっと悲しい。
涼の誕生日は『超全集』によれば7月16日とのことだが、これが突然1月21日になったのも、リサが誕生日(蠍座だから狙われると視聴者が思う)を言う理由が欲しかっただけだろう。
もっとも以前にも書いたとおり、あの本は嘘設定も載っているので、涼の誕生日が7月16日だというのは、編集者の思い込み(=超全集の方が間違い)という可能性も否定できない。
よく知らない人のために一応書いておくが、『仮面ライダーアギト』という番組は、たとえ市販されている雑誌等の媒体に載っていた情報であっても信じられないという恐ろしい番組なのだ。
超全集には、既に「あかつき号の乗員乗客は合計9名」と書いてあったという前科がある。
この数字には船長であった高島がカウントされておらず、間違いだったということが証明されているので、『超全集に載っている青年月日と違う!』という反論は、「超全集の記載は初期設定で、その後設定は変更されており、超全集の編集者は確認しないままいい加減な情報を書いたのだ」と言われてしまえば、悪いのは嘘を書いた超全集ということになり、反論は不可能なのだ。
存在意義がちょっと面白いのが、可奈だ。
彼女は、本人の意思と無関係にアギト化する人間の代表であり、アギトの宿命もアンノウンの目的も知らない民間人の代表とも言える。
どうやら可奈の父親はアンノウンに殺されたらしい。
つまり、可奈自身もアギト予備軍なのだ。
そして可奈は覚醒を始めている。
今回、可奈が倉本に叱責された後、おたまが揺れていたのは、念動力に目覚めつつあるからだろう。
本人に自覚も制御能力もないまま覚醒していく超能力は、やがてふとしたことで倉本を襲いかねない。
要するに「あんにゃろ、ぶん殴っちゃろか」と思うと、ナベがそいつに向かって飛んでいくくらい危ない力ということだ。
次回予告でのビルから落ちそうな可奈とそれを支える翔一は、明らかに雪菜と沢木へのアンチテーゼだ。
可奈が力を自覚したときどうなるか、翔一が支え守れるかどうかがキモになるだろう。
可奈がアンノウンという言葉を出さなかったことについては
警察に口止めされている
アンノウンの存在自体を知らない
のどちらかと思われるが、可奈が既に店を2軒変わっていることから比較的初期の被害者のはずなので、警察に口止めされていると思うことにしよう。
知らないっぽいけどそんなはずはないもんね。
可奈のあおりを食って、影が薄くなってしまったのが真魚だ。
既に翔一にとって目の前にいて守らなければならない存在として可奈が設定されてしまった以上、今後どう絡むのか非常に難しい。
自分の超能力に自覚があり、制御でき、しかもアンノウンがアギトを襲うことまで知っている真魚では、可奈の代わりは勤まらないのだ。
果たして菜園の手入れだけで終わってしまうのか?
いや、鷹羽としてはそれでも一向に構わないんだけど。可奈の方が好きだし。
さて、誰もが思っているであろう疑問“どうして翔一が可奈に「津上さん」と呼ばれるのか?”について。
当然のことながら、倉本は翔一の本名が「沢木哲也」だと知っている。
というより、説明しない限り「津上翔一」と名乗っていたことを知らない。
では、なぜMarsで知り合った可奈が翔一を「津上さん」と呼び、アパートの表札にも「津上」と出ているのか。
もちろん一番大きい理由は、演出上の“主人公の名前が途中で変わると分かりにくい”というものに決まっているが、それを説明する方法はあるのだろうか。
可能性としては、天涯孤独な翔一がアパートを借りるに当たって美杉教授を保証人にして「津上翔一」名義で借りたというパターンがありうる。
そうなると、名義の関係上表札は「津上」にしておかなければならない。
そして、倉本に事情を説明して仮名の「津上翔一」で通しているか、表札だけ「津上」にして後は本名でやっているかどっちかだ。
鷹羽は後者だと思う。
どうせ倉本は普段は「お前」とか「おい」としか呼ばないだろうし、下手すると本当にほかの連中に紹介もしない。
もしかすると「哲也」と呼んでいるかもしれない。
そうなると、表札を見た可奈が「津上哲也」という名前だと思って「津上さん」と呼ぶこともあり得る。
なんだか自分で書いてて嘘臭いが、そうとでも考えない限り説明付かない。
素直に「沢木さん」にしてても良さそうなもんだけどなぁ。
さて、今回の見所は“星が21個もある蠍座”だろうか。
確か蠍座の星は15個だったはずだけど…。