『仮面ライダーアギト』
44話 父と姉と… 
2001/12/09 放映

(Story)
   変身して青年と戦う涼だったが、青年のバリアの前にあらゆる攻撃が効かない。
 と、突然青年は胸を押さえて苦しみだした。
    今だ! 逃げろ!
という木野の言葉に、ギルスは変身を解き、木野を連れて逃げだした。
 真澄のマンションに戻った木野は、涼と真島に
   奪われた…アギトの力を
   俺はもう変身することはできない
   戦うな、奴とは…あの男とだけは!

と言い
   あんた、知っているのか、奴を?
という涼の問いに
   前に一度会ったことがある
   だが、奴がなんなのかは分からない
   分かるのは、奴には勝てないということだけだ

と答えた。
 翔一にもそのことを伝えようと立ち去る涼は、別れ際に
   気付いてるか、あんたは俺を助けようとした
   変わったな、あんたも

と言い残していった。

 一方、翔一は真魚に見せられた風谷伸幸の写真に、姉と会った最後の日のことを思い出す。
 1999年3月10日の朝、大学に出掛ける姉を見送ったのが、翔一が生きている雪菜を見た最後だった。
 その日の夕方、雪菜との待ち合わせの場所に向かった翔一は、その近くで瀕死の風谷伸幸を見た。
 伸幸が死んだ後、翔一は、近くにいるはずの姉の身にも何か起きているのではないかと待ち合わせ場所に行ったが誰もおらず、伸幸のいた場所に戻ると既に警官が集まっていたのだった。
 翔一と真魚は、伸幸が雪菜の通っていた日政大学の教授だったことから、伸幸のアルバムを調べる。
 そして、伸幸と雪菜、そして雪菜の恋人だった津上翔一(沢木)が一緒に写っている写真を見た翔一は、かつて一時的に記憶を取り戻したときに沢木に言われた
  例えば君は、彼女が普通の人にはない力、特別な力を持っていたことを知っていたか?
と言っていたこと、北條が『風谷伸幸を殺したのは超能力者かもしれない』と言っていたことを思い出し、北條に会って話を聞くため、真魚と共に警視庁に向かう。
 涼が美杉邸にやってきたときには、もう翔一は出掛けてしまっていた。

 警視庁へやってきた翔一と真魚は、北條から、雪菜の手紙・風谷邸で発見された裏返しのテニスボールとビデオテープを見せられる。
 ビデオテープから増幅録音された「こっちに来て…」という声を聞いた翔一は、「姉さん」とつぶやき、それを聞いた真魚はビデオテープに透視能力を使ってみた。
 真魚の脳裏に、苦しみながらアギトに変身する女の人(雪菜)が映る。
 それを聞いた翔一は部屋を飛び出して行った。
 そして沢木の屋敷で、翔一は沢木に、雪菜がアギトだったことを知っていたのだろうと詰め寄る。
 風谷など知らないととぼける沢木に、翔一は伸幸・雪菜・沢木が一緒に写っている写真を見せる。
 なおも詰め寄る翔一に、沢木は、『雪菜が人を殺すはずがない、自分が殺したんだ』と言うが、翔一は「もう、いいです!」と去っていった。

 そして、翔一が飛び出して行った後の警視庁では、“アギトが伸幸を殺した”という推理が的中した北條が、真魚に
   アギトは必ずしも我々の味方ではないということですよ
   人間にとって、アギトはアンノウン以上の脅威なのかもしれません

と話していた。

 そのころ、涼はウォルクリス・ウルクスに襲われていた。
 変身して応戦するギルスの前に青年が現れ、手の中から光球を発射すると、それはハヤブサ怪人(ウォルクリス・ファルコ)になった。
 2体のアンノウンと互角に戦っていたギルスだったが、青年の攻撃を受けるとギルスレイダーで逃げだした。
 青年は、ウルクスとファルコに「追え」と命じる。

 美杉邸に戻った翔一は、帰宅した教授に『姉が真魚の父を殺したかもしれないのだから、もうこの家に入られない』と話すが、翔一の姉の名前が“沢木雪菜”だと知った教授は、逆に
   伸幸兄さんを死なせたのは、この私なんだ
と言い出した。
 そのとき、涼に追いついたウルクスとファルコを察知した翔一は、美杉邸を飛び出して行く。

 涼は再びギルスに変身し、更にエクシードギルスになってウルクス、ファルコと戦うが、不意打ちの青年からの光線で腹部を貫かれ、アギトの力を奪われてしまった。
 駆け付けた翔一は、青年を見て
   あの人は…!
と驚き、青年は翔一に
   貰いますよ。君のアギトの力を
と言う。
 涼は翔一に逃げるよう言うが、ウルクスの攻撃を受けた翔一は、変身してウルクス、ファルコと戦う。
 パンチでウルクスを倒したアギトは、そのまま青年に向けて紋章キックの体勢に入るが、青年は梵字の力で紋章を消し去りアギトを炎で包んだ。
 
 
(傾向と対策)
 あっとびっくり! ラビットで風谷教授と口論していたのは美杉教授でした。
 ブラフかな〜、とか深読みしていたのが情けなくなるくらいのあっけなさ。
 そんなことも突き止められないなんて、河野は2年間何をやってたんだ〜!
 2人の口論は
   美杉「で、その話に科学的な根拠はあるんですか?
   風谷「科学じゃないんだよ、形而上の問題なんだ!
   美杉「だったら尚更私の専門じゃないですか
   風谷「だったらもう少し理解しようとしたらどうなんだ!
   美杉「まったく理解できませんね!
というものだ。
 ここで話題になっている「その話」というのは、雪菜の超能力、なかんずく変身のことと思われる。
 風谷教授が神話関係に共通する事項を研究していく過程で、白い青年によるアギトの種の放散らしきことに気付き、雪菜の超能力がそれに関係あるのではないかということで、美杉教授の専門の心理学的な方向からの雪菜へのアプローチを頼んでいたのではなかろうか。
 そして、超能力に懐疑的な美杉教授はそれを信じないで断った。
 美杉教授は、自分が断ったことで風谷教授が意固地になって被験者に無茶な実験を受けさせ、それが元で被験者に殺されたと考えているのではないだろうか。
 まして、被験者はその後行方不明になっているようだ。
 つまり、美杉教授が沢木雪菜という名前を知っていたということは
  伸幸兄さんを死なせたのは、この私なんだ
というセリフは“自分が雪菜の実験の協力を断ったから伸幸は無茶をやって殺された、だから伸幸が死んだのは自分の責任だ”くらいの意味合いではないかと思う。
 そうなると、美杉教授にとっての第一容疑者は当然雪菜ということになる。
 だが、美杉教授にしてみれば、雪菜もまた伸幸の犠牲者だから、同情もある。
 ラビットでどんな口論があったかを警察に話せば、警察は雪菜を容疑者とするだろうから、美杉教授は自分がラビットに行ったこと自体警察には話さなかった。
 こう考えれば、河野がラビットでの口論相手を特定できないでいることの説明が付く。
 そして、あの記念マグカップを大事に持っていたのが、自分の罪の意識からだったということで納得できるのだ。
 この辺りの事情は、恐らく来週で明らかにされるだろう。

 次に、涼が木野に言った「変わったな、あんたも」という言葉だが、木野が涼を助けようとしたのはどうしてだろう。
  1 アギトの力を失って元の性格に戻った
  2 エクシードギルスに破れて最強のアギトになるという妄執を捨てた
  3 翔一があかつき号事件のことを思い出したので連帯感が生まれた
  4 一緒にエルと戦った相手なのでわだかまりがなくなった

という可能性があるが、シナリオとしてはどれのつもりなんだろう?
 鷹羽的には2なのだけど、これが1だったりすると、“だったらやっぱりアギトの力はいらない”という危険な答えになってしまうのだ。
 木野の出番って、まだあるかな? あったら説明も期待できそうだけど…。

 さて、木野に続いて涼もアギトの力を奪われてしまった。
 白少年が黒青年に奪われると、エクシードギルスからいきなり涼に戻ってしまったが、これはどういうことだろう?
 ギルスになる力も含めてアギトの力を全部奪われたということなのか、真島から貰ったアギトの力(エクシード化する力)を奪われただけなのか?
 場合によっては、ギルスになる力自体は残っているということもあるわけだが…。
 そもそもギルスになっていたのがどういう力だったのかは,未だ語られていないのだから、それをはっきりさせるいいチャンスだ。

 そして、木野にしても翔一にしても、あかつき号で見た白青年と黒青年が同一人物だと思っているようだ。
 まぁ、見た目は服の色しか違わないのだから当然だろう。
 とすると、アギトの力を与えた者がアギトの力を奪えるのは当然で、何らかの理由でアギトの力を回収して回っていると考えることもできる。
 勿論、真実は違うわけだが、黒青年を見たことがあったのは涼だけだし、涼は白青年を見ていないのだから、そういう誤解は当然のことだ。
 これにもシナリオの狙いが何かあるのかもしれない。

 更に、北條は“アギトが複数存在し、それが人間を殺すことがあるとなれば、アンノウン以上の脅威になりうる”と考え始めている。
 考えてみれば、アンノウンは基本的に超能力者、つまり“アギトになりかけている者”を殺しているのだから、人間にとって脅威となる者を殺しているだけとも言える。
 実際、黒青年のやっていることはある意味そのとおりだ。
 これは、以前に書いた“アギトの戦いは人間のためではなくアギトのためのものでしかない”という価値観の根本的な崩壊に繋がる。
 つまり、アギトの戦いの意味が“アギトにだって生きる権利がある”というレベルのものでしかないという危険性だ。
 青年は、アギトである木野・涼を殺そうとはしていない。
 つまり、実害は全くない
 そうなると、次回予告での翔一の「アギトの力なんていらない!」は至極もっとも意見ということになる。
 アギト化が、人間が人間でなくなる現象であるならば、黒青年のやっていることは人助け以外のなにものでもないことになる。
 じゃあ、アギトの存在意義って何?
 アンノウンの邪魔をした警官が無駄に死んでるだけじゃない。
 これは白青年の罪だったりするわけだが、果たして彼にはちゃんとした目的があったのだろうか?

 そして、「風谷など知らない」などと嘘をついた挙げ句、「風谷教授は俺が殺った。俺を信じてくれ!」と言い出して翔一に呆れられてしまった沢木は、何を考えているのだろう。
 どうして雪菜のことを隠すのか。
 理由があるのか、単に秘密主義者なだけか…。

 さて、今回登場のハヤブサ怪人(ウォルクリス・ファルコ)だが、ウォルクリスはラテン語で鳥類、ファルコはハヤブサの学名だ。
 黒青年の手の中に現れた光球から出現したということは、これまで登場したアンノウンの中にも青年の身体から生み出された者がいたのかもしれない。

 さて、今回の見所は北條の「それは秘密です」だろう。
 そりゃあ言えないわなぁ。
 木野の家に忍び込んで家捜しした挙げ句かっぱらってきたなんて…。



←BACK
→NEXT