『仮面ライダーアギト』
42話 あかつき号 

(Story)
 真魚は、北條が持っていた手紙をもう1度見るために警視庁を訪ねた。
 北條は、真魚が以前アンノウンに襲われていることから、真魚が超能力を持っていることに気付いており、快く手紙を見せる。
 その手紙は、女性(雪菜)が何かに取り憑かれたように書いたもので、遙か昔、光と闇が戦っていたときのことが書かれていた。
 闇の青年の痛撃を受けた光の青年は、自分の力を闇の青年が作り出した人間という種の中に蒔き、いずれその力を覚醒させた人間が闇の青年のものでなくなることを狙っていたのだ。

 そのころ、ギルス・アナザーアギト・G3-Xがエルと戦っている脇で、吹っ飛ばされて意識を失った翔一が記憶を取り戻し始めていた。
 姉雪菜の遺品の整理中に、雪菜が津上翔一なる人物に宛てて書いた手紙を見付けた翔一は、姉の死の手掛かりを求めて津上翔一に会うべく、四国行きのフェリーあかつき号に乗った。
 そして、そこで乗船名簿にない青年が死んでいるのが発見され、翔一の耳には
   私は君を助けるためにここに来ました
という言葉が響いた。
 死体騒ぎが収まった後、翔一がそこで知り合った木野に姉の手紙を見せているとき、突然天候が崩れた。
 突然の暴風雨で船室に戻った翔一達の前に、死んでいたはずの白い服の青年が光に包まれて現れ、翔一に
   もうすぐ君の命を狙う者がやってきます
   その前に、私の最後の力で、あなたの中の私の力を覚醒させます
と言って、まばゆい光になって翔一の中に消えていった。
 その直後、突然降ってきた光球の中から怪物(水のエル)が現れ
   人でない者は滅ばねばならぬ
と翔一に襲い掛かった。
 そのとき、甲板上に放り出された翔一の腹部にベルトが現れ、足元に輝く紋章を両足から吸収した翔一の姿がアギトに変わった。
 そのままエルと戦う翔一だったが、エルの凄まじい力に翻弄され、殴り飛ばされて海に落下してしまった。
 事の次第を見つめていた木野達に、エルは
   お前達もまた悪しき光を浴びた
   あの男同様、やがて人ではなくなる
   だが、それまでは生きられるだろう
   覚醒の前兆が訪れるまでは
   ただし、このことは誰にも言ってはならない。決して
   忘れるな。お前達の時間は長くはない
   お前達に未来はないのだ
と言い残して消え、関谷真澄の体内に潜んだ。

 記憶と意識を取り戻した翔一は、ギルスら3人を倒そうとするエルの前に現れ
   誰も人の未来を奪うことはできない!
とバーニングフォームに変身した。
 
 
(傾向と対策)
 一気に謎の3分の1くらいが解けてしまった。
 ちょっと整理してみると、あかつき号事件の概要はこういうことのようだ。

 翔一を狙って水のエルが現れることを察知した白い青年は、翔一を守るために時空を超えて現れ、自分の残っている力を振り絞って翔一のアギトの力を覚醒させて消滅した。
 翔一は目覚めたアギトの力でエルと戦うが、吹っ飛ばされて海に落下し、そのショックで記憶を失い、海岸に打ち上げられているのを発見された。
 エルは、残った乗客達も青年の光を僅かに受けているためにやがてアギトの力に目覚めることを知っていたが、今のところ目覚め始めていないために殺すわけにもいかず、彼らを脅して姿を消し、真澄の中に潜む。
 乗客達はエルの言葉に恐怖し、自分の中に目覚めるであろう力に怯え、同時に目覚めたときに襲ってくるだろうエルに怯えて、それぞれが連絡を取り合うようになっていく。

 どうもこの時点では、翔一の中にアギトの力は全く目覚めていなかったように見える。
 ではなぜ翔一が狙われたかだが、恐らく雪菜がアギトになったからではないだろうか。
 基本的にアンノウンの標的は、力に目覚めた者とその近親者だ。
 雪菜の弟である翔一は、目覚める可能性が高かったから、殺しに来たのではないだろうか。
 雪菜の手紙が狙われたというパターンも考えられないでもないが、あの時点で手紙を持っていたのは木野だし、青年は翔一が木野に手紙を見せる前から翔一を助けに来たと言っていた。
 少なくとも手紙が目的なら木野も殺さなければならないのにそうしなかったのは、狙いが手紙ではなく、翔一自身だったからということになる。
 そして、エルが大したダメージも受けていないのに真澄の中に潜んでいたのは、あかつき号のメンバーが力に目覚め次第殺すためだったのではないだろうか。
 そして、氷川があかつき号に乗り込んできたときにはエルが姿を消していたため、間もなく暴風雨が止んでしまったというオチのような気がする。

 そして、それぞれがあかつき号に乗っていたのが偶然だったことが明らかになった。
 高島雅英があかつき号の船長で、木野薫真島浩二相良克彦葦原和雄が単独旅行、榊亜紀が実家への帰省、三浦智子篠原佐恵子が(同僚同士の)2人旅、関谷真澄橘純が友人同士の2人旅というところのようだ。
 要するに翔一が浴びた光の余波を受けた者達が、アギトの力に目覚めることを約束されたため、エルに『覚醒しそうになったら殺す』みたいな宣言されて恐怖に怯えていたというわけだ。
 目の前で変身して戦って負けちゃった奴(翔一)がいるんだから、覚醒さえすればOKともいかないし。
 そのため、自分達で連絡を取り合って安全を確保しようとしていたわけだね。
 口止めされているから、他人には言えないし、言ってもどうせ信じてもらえないし。
 とにかく、少なくとも高島船長は翔一の本名を知っていた(乗船名簿があるから)ということになるが、ほかの連中が知っていたかどうかは分からない。
 全員行きずりだし、翔一が自己紹介しているシーンも、ほかの連中が翔一を呼んでいるシーンもないことから、名前を知らないままだった可能性があるのだ。
 また、木野は雪菜の手紙を持ってきてしまったが、あれとて誰に宛てたものかを聞いて受け取ったわけではない。
 「雪菜」としか書いていないし、「姉さんが書いたもの」としか聞いていないから、単に
   津上雪菜から弟の津上翔一に宛てたもので、翔一は読めなくて困っている
という可能性もあるからだ。
 船長に聞けば名前は一発だが、あの事件の後でそこまでする精神的余裕のある人はいなかっただろうし、意外とそういうのに気付かない人達のような気もするし…。
 そうなると、智子が翔一を呼びだした際、多分木野に
   本人は津上翔一と名乗っていますが、本名かどうか分かりません
   明日本人に会って確かめてから連絡します
と連絡していたことが納得できる。
 また、智子の友人佐恵子が
  湖周辺には、聖なる戦部(いくさべ:戦士)に守られた超古代文明が存在し、その文明の人々は、悪霊の襲撃から自分達を守ってくれる戦士への感謝の印として湖に沈めた戦士の像を見付け出したい
と語り、発見した土器にアギトの紋章を書き込んでいたのも、悪霊(エル)から自分達を守ってくれる紋章の戦士を見付けようとしていたからだろう。
 佐恵子が翔一に頼ろうとしなかったのは、既に精神がやられていたせいか、それとも翔一に記憶がなかったせいなのか。
 木野の言葉から店を持つという決意をしたばかりで希望に溢れていたのに、エルから「お前達の時間は長くない」と言われてしまったことで、一番ショックが大きかったのは彼女だっただろうから、それも納得のいく答えだ。
 そして、亜紀が涼に
   嘘。あなたもアレを見たんじゃないの?
と言っている「アレ」は、白い青年のことを言っているのだろう。
 涼も青年の力を受けて変身するようになったと思ったのだ。
 そして、涼がなぜか変身できるようになったことを知った後、
   もしかしたら生きていけるかもしれない、一緒に
   立って。みんなに紹介するわ
   あかつき号に乗っていた人達よ
   あなたに会えばみんなも…
と言っているのは、アギトになるのが自分達だけではない、つまり自分達が孤独な存在ではないことを知ったからなのだろう。
 これまでの会話などは、大部分伏線として機能しているようだ。
 そして、彼らは新聞報道などで『アギト』という単語を知ったのだろう。
 よく市民から『アギトらしきものがアンノウンと交戦中』という通報が入ることからして、アギトの名称と外見は、かなり知れ渡っているものと思って間違いない。

 次に、光と闇の対決だが、どうやら彼らは所謂“神”というレベルの存在らしい。
 真魚が読み取って語った内容は
  2つの力が戦っています
  とても強い力…光と闇の力
  光は闇を憎み、闇は光を憎んでいます
  ずっとずっと昔のことです
  私たちが生きているこの世界ではないと思います

であり、その一応地球らしいその世界で、の攻撃で大ダメージを受けたは、自らの身体から光を発して世界中に降らせた。
   闇「貴様ぁ、何をした!?
   光「もう遅い。お前の子供である人間達に私の力を分け与えた
   いつか、遙か未来、人間達の中で私の力が覚醒する
   そのとき、人はお前のものではなくなるだろう

と言って倒れた。
 なんだか、『超人バロム1』コプードルゲの戦いのようだが、少し意味合いが違う。
 が何を争っていたのかは分からないが、要するに負けた光=白い青年は、闇=黒い青年の作り出した人間という種に自分の力を分け与えて別の生物になるよう仕向けたということのようだ。
 争いの原因そのものには、多分人間は関係ないんだろう。
 これって、人がシチューを作ろうと野菜を煮込んでいるところに勝手にカレールウを放り込んで「こんなものシチューじゃないぜ!」と言ってるのと同レベルなのでは?
 言っちゃなんだが、負けた腹いせという気がする。
 他人の作ったものに勝手に手を加えただけのことでしかなく、それがいいことだという理由付けが見当たらない。
 そうなると、ホムンクルス1号のやってることは“溶けかけたカレールウを取り出してシチューに戻そうとしている”状態と言えるから、ちっとも悪くないじゃん。
 実際、アンノウンは邪魔をしない限り普通の人間には決して危害を加えないのだ。
 例外的にヘビ怪人メス(アングィス・フェミネウス)が三雲咲子を殺したが、その直後に黒い少年に自殺させられている。
 また、触覚を切られたハチ怪人メス(アピス・メリトゥス)も無差別殺戮をしているが、あれもまた感覚が狂わされているせいだ。
 ま、自分の意志と関係なくアギトの力に目覚めてしまい、その結果殺されてしまうというのは可哀想だけど、それってアンノウンのせいじゃないじゃない。
 全部が悪い!
 …いいのか、それで?

 一般的には、光と闇の対決というのはが悪側になるが、今回の場合、そうとは言い切れない。
 が人間を作った神だとすれば、そのあるべき姿を守ろうとしているだけだし、下手すりゃの方が悪魔と言えるかもしれない。
 或いは両者とも種類の違う神ということもありうる。
 神と悪魔の対決でなく、異種の神同士の対決となると、決着の付け方が非常に難しい。
 どっちが正しいのかは、誰にも決められないような気がする。
 ちゃんとオチ付くんだろうねぇ?
 そして、あの手紙を書いたときの雪菜は、どういう状態だったんだろう?
 何者かの憑依状態だったのか、超能力の一種での過去見なのか?
 これも、そのうち触れてくれるかな?
 あと、白い青年の方は、右手の紋章は何だったんだろう?
 画面には映ってなかったようだけど、やっぱアギトと同じ紋章なのかな?


 結局、沢木なり白い青年なりの力でアギトの力に目覚める者が多いということは、アギトになる力自体はほとんど全ての人間が持っているが、その因子がいつ目覚めるかは個体差が激しく、一生目覚めない者もいるということなのだろう。
 氷川なんかがいい例だ。
 そして、真島から涼にその力を移せたように、本人の同意などの何らかの条件を満たせば、他人にその因子を移すこともできるようだ。
 もしかしたら涼の父・和雄は、重傷を負った息子に自分の中のアギトの力を何らかの形で譲り渡したのかもしれない。
 それで涼がギルスになったのかも。
 アギトの一種でありながら、明らかに異質な存在であるギルスは、もしかしたら他人のアギトの力を継承した人間なのかもしれない。
 ともかく、これであかつき号で何が起きたかと、翔一がどうしてアギトになったか、そしてアギトの力たる白い少年の意味が明かされたわけで、後はアンノウンがどういった存在であるのかと、殺害対象選定の基準、黒い青年がオーパーツの中から出てきた理由、風谷伸幸と雪菜の死亡の原因が分かれば、ほとんどの謎が解けるだろう。
 納得できるかどうかはともかく、きっちり謎は解いてくれると思うけど…。

 で、登場2回目のエクシードギルスは、早くも負けてしまった。
 必勝パターンの触手で抑えての攻撃も、触手自体を引きちぎられては仕方がない。
 ま、相手が悪かったということなのか。
 G3-Xが完全にやられ役なのはしょうがないとしても、アナザーまでいいとこなしだもんな〜。
 ま、この前エクシードにやられた傷が完治してないってのもあるかもしれんけど。
 で、翔一は、もしかすると戦闘意欲が高まってないとバーニングになれないのかもしれない。
 『スーパーロボット対戦』シリーズでいうところの“気力120以上で使用可能”とか、格ゲーでよくあるゲージ方式とか。
 溜まった状態からなら、いきなりでもバーニングになれるけど、溜めるまでが大変とか、ね。

 さて、今回の見所は“元々アレな真澄”だろう。
 軽薄だとかいやらしいとか、すぐに降ろしてとか、結構自意識過剰かつ自分勝手系らしい。
 一緒にいる純がさも慣れているように振る舞っていたから、かなり前からのことで、そこに目をつぶればいい子、というタイプだったのではなかろうか。
 決してひどい目にあった後用心深くなったとか、エルが取り憑いてるせいで変な人になったとかじゃなかったのね。
 あと、北條が真魚の力を「秘密は守ります」と言ったものの、すぐに「ご存じでしょうが、津上さんがアギトであることも知っています」と続けてしまうところにやばさを感じた。
 アンノウンに襲われた経歴があるから、真魚が超能力者である可能性を見抜いたのは偉いが、あの調子では、美杉教授辺りにも「ご存じでしょうが…」とうっかりバラしてしまいそうだ。
 真魚が超能力者であると知っているのは、確か氷川と涼、真島、沢木だけだったはず…。


←BACK
→NEXT