『仮面ライダーアギト』
38話 その正体…
2001/10/21 放映

(Story)
  イグアナ怪人(ステリオ・シニストラ)に逃げられて去っていくアギトを数台のパトカーで追った北條は、一本道で挟み撃ちにし、人間の姿に戻ったアギトを追い詰めた。
 そして北條は、その相手が翔一であることに驚きながらも、アギトの可能性のある人物として任意同行を求め、翔一もそれに応じた。

 そのころ、看護婦まで追い出して手術室に涼と2人だけになった木野は
   悪く思うな
   アギトの力を持つ者は俺だけでいい

と言って涼にメスを近づけるが、突然右腕がいうことをきかなくなった
 木野の
   なぜだ!? なぜ邪魔をする!? 雅人!
という叫びや、木野が落とした手術道具の音などで目を覚ました涼は、なんとか手術室から脱出した。
 逃げていく涼を見た真島は、状況が掴めないながらも涼を追い、真魚は翔一に相談するために戻った。

 一方、氷川と小沢はG3ルームに戻っていた。
 木野に許しを請うために葦原涼を探そうとする氷川に、小沢は
   許すも何も、あなたは何も悪いことはしてないじゃないの
   大体、葦原涼なる人物が邪悪な者だなんて、それも怪しいものだわ

と反対する。
 そこに病院を出た木野からの連絡が入り、小沢は氷川の携帯を取り上げて木野に
   あなた何か勘違いしてるんじゃないの!?
   警察はあなたのために働く組織じゃないのよ

と言うが、電話を切られてしまった。
 小沢は「あんな言い方をしなくても」と文句を言う氷川に
   今までアギトは私たちに何も求めてこなかった
   もしアギトが警察を利用したいのなら、もっと前に接近してきたんじゃないかしら

と答える。
 そして、木野がアギトであることは間違いないと食い下がる氷川に
   もしアギトが1人ではないとしたら
と、木野以外にもアギトがいる可能性を示唆した。

 そのころ、沢木は木野に接触していた。
 沢木は
   アギトの種は、人間という種の中に遙か古代において既に蒔かれていたものだ
   たった1つの目的のために
   人間の可能性を否定する者と戦うためにだ
   アギトの力を正当に使ったとき、初めてお前は自分を救うことができる
   お前はまだアギトの力の使い方を知らない

と語りかけるが、木野は
   この俺の力の使い方は、俺が決める!
と怒りを露わにした。
 そのとき、再び廃工場に戻った涼を看病していた真島にシニストラが迫り、シニストラの出現を察知した木野は、狙われているのが真島と知らないままそこへ向かう。
 また、一般市民からの通報でアンノウンの出現を知ったG3チームも現場に向かった。
 真島を逃がし、シニストラに向かってGX-05を構えたG3-Xの前に木野が現れて変身した。
 アナザーアギトは、「アギト」と駆け寄ったG3-Xをはね除け
   邪魔だ
   奴は、俺が倒す
   俺のこの手で

と、1人でシニストラに戦いを挑んだ。
 その姿に、氷川はようやく木野が自分の知っているアギトではないことを悟り、シニストラを追い払って変身を解いた木野に
   あなたはアギトではない!
   少なくとも僕の知っているアギトではない!

と質問をぶつけるが、木野は
   いずれ私はあなたが知るただ1人のアギトになる
とだけ答えて去っていった。
 氷川は、物陰で様子を見ていた真島が逃げ出すのを見付け、話を聞くため追い掛けた。

 一方、「アギトではないのか」という北條の質問をのらりくらりとかわし続けた翔一だったが、うっかり誘導に引っかかってしまい、正体を明かすことにする。
 だが、翔一自身がどうしてアギトになったのかが分からないため、北條はそれを知るために翔一に逆行催眠を掛けてみることの同意を求めた。
 催眠状態になった翔一は
    自分が調理師学校に通っていたこと
    姉の自殺が信じられず、『あの人』に会うためにあかつき号に乗ったこと
を語ったが、そこでの出来事を聞かれた途端、嵐のあかつき号で水のエルに襲われたことを思い出して叫びだしてしまった。
 翔一からある程度の情報を聞き出した北條は、帰還していた小沢にアギトを捕獲したと自慢するが、逆に小沢から正体が翔一であることを当てられ、翔一と2人きりで面会させるよう要求されてしまう。

 そのころ、氷川はようやく真島を見付けたが、再びシニストラに襲われてしまた。
 氷川からの連絡を受けた小沢は、翔一に氷川を助けてくれるかと問い掛け、翔一が
   はい。慣れてますから
と答えるのを見て
   本物ね
と微笑み、北條を蹴倒して翔一と共に現場に急いだ。

 一足先にシニストラの前に現れたアナザーアギトは、襲われているのが真島だと知ると
   見付けたぞ
   今度は逃がさん
   お前も、葦原涼もな

と言って、シニストラには目もくれずに襲い掛かろうとする。
 氷川と真島は、シニストラとアナザーアギトが戦っている隙に涼を連れて逃げようとする。
 シニストラを殴り飛ばしたアナザーアギトは真島達を追おうとするが、そこに翔一と小沢が到着。
 翔一はアギトに変身して、アナザーアギトに立ち向かっていった。
 
 
(傾向と対策)
 アギト捕獲成功!
 といっても、「捕獲」という言い方は北條が自分の手柄を大仰に表現しているだけで、別段荒っぽい手段は使われていない。
 翔一が警視庁についてきたのは任意同行という翔一の自由意志による形になっているし、逆行催眠にしても、北條は翔一に同意を求めている。
 強圧的な態度でもないし、無理を言っているわけでもない。
 また翔一としても、アギトであることを隠す必然性は元々ないわけだから、一旦認めてしまった後はさばさばしたものだ。
 考えてみれば、翔一としては騒がれたくないから敢えて言おうとしなかっただけの話で、特段そのことが知れると自分のみが危ないとか思っていたわけでもない。
 どちらかというと、内緒にしておくこと自体がゲーム感覚だったのかもしれない。
 ともかく、翔一があかつき号に乗っていたことが北條に知れたわけだが、これを元にあかつき号の乗客名簿と照らし合わせれば、翔一が行方不明になった1名であることが分かるはずだ。
 そうすれば、翔一の名前が持っていた封筒の宛名から付けられたということなどから、会いに行こうとした相手があかつき号の目的地に住んでいる津上翔一だったという答えに到達することができるだろう。
 翔一の名前の由来については、三浦智子殺害容疑で逮捕されたときの調書に書かれているから、北條が知るのはたやすいはずだ。
 そして、津上翔一(本物)の研究室のある大学に行けば東京での津上(本物)の住所が分かるし、ついでに翔一の写真でも持っていけば、最近翔一が来ていることまで分かって、捜査は大きく進展するはずだ。
 北條は、小沢が言うとおり細かく動いてこういう部分に食い付いてくれそうなキャラだから、大いに期待できる。
 翔一の身柄については、トンビに油揚げをさらわれた格好になった北條だが、逆行催眠の性質上、あかつき号云々の情報は北條と催眠を掛けた医者しか知らないわけで、北條は真実に一番近いところにいると言える。
 それにしても、「G3ユニットとして正式に面会を求める」という切り札をいきなり使ってしまう小沢は大した奴だ。
 アンノウン絡みの事件については、G3ユニットが優先捜査権を持っているはずだ。
 そのG3ユニットの指揮官である小沢から“アンノウン事件に関して重要な位置を占めるアギト”への面会を求められれば、捜査一課所属の北條としては断ることはできまい。
 ましてや任意同行だから、翔一が「帰りたい」と言えば、北條は引き留める方法がない。
 なにも小沢が北條を蹴らなくても、翔一は帰れるのだ。
 場合によっては、以後のアギトの身柄についてG3ユニットが管理することにもなりかねないわけだから、北條にとって、翔一があかつき号に乗っていたという情報を掴んだことを巧く使わなければ踏んだり蹴ったりなのだ。

 そして、警察に対して何も求めてこなかった“純粋な人物”であるアギト=翔一とG3ユニットの共闘態勢がようやくできあがりそうだ。
 もっとも、氷川のショックは計り知れないが。
 その氷川だが、アナザーアギトに向かって「アギト」と呼び掛けていつものように一緒に戦おうとしていたから、アナザーアギトの外見がいつものアギトと違うことは分かった上で、あれが“いつも助けてくれるアギト”と信じていたようだ。
 ということは、アギトは1人という思い込みから、紋章を足下に描いてのキックを見て「あれはアギトに違いない」と早合点してしまったものと思われる。
 どうせしょっちゅう姿の変わるアギトだから、新しい形態だと思ったのかもしれない。
 そうなれば、バイクがいつもと違っても、新しいバイクくらいに思っても仕方ないとも言える。
 何しろ思い込みが激しいから。

 さて画面上では分かりにくいが、ラストの戦闘では、それぞれのキャラが違う思惑で動いているものと思われる。
 まず氷川だが、氷川はアナザーアギトがシニストラと戦っているうちに涼と真島を安全なところに逃がして、小沢がGトレーラーで駆け付けてくれるのを待つつもりだ。
 氷川にとって、木野はいつものアギトではないにせよ、アンノウンと戦う存在だという認識のはずだからだ。
 木野が涼を狙っているにせよ、アンノウンと戦うのを優先すると思っているだろう。
 そして真島は、木野がアンノウンと戦っている隙に涼を連れて逃げようとしている。
 涼も大体似たようなものだろう。
 木野はシニストラにトドメを刺そうともせずに、まず涼と真島を狙っている。
 木野にとって、シニストラなどいつでも倒せる相手であり、今は自分がこの世に1人のアギトであるための邪魔者を一掃する方が優先なのだろう。
 そこにもう1つの標的である翔一が現れたから、取り敢えず戦うつもり担っているはずだ。
 翔一と小沢は、“アンノウン出現”の連絡を受けてやってきた先にいたアナザーアギトをアンノウンだと思って戦おうとしている。
 2人ともアナザーアギトを見たのは初めてだから、これは当然と言える。
 そして恐らくアナザーアギトもアギトと戦う体勢に入るだろうから、この勘違いは正されることなく続く。
 もしかしたら、小沢はGトレーラーの尾室にも出動命令を出しているかもしれない。
 自分は翔一=アギトと共に現場に赴いて変身の決定的瞬間を見て、足の遅いGトレーラーには後から駆け付けてもらおうという考えもアリだ。

 さてもう一方では、沢木の口からアギトの本質というものについて僅かに語られた。
 沢木は、初対面の木野に対し
   かつてアギトを葬った者、これからアギトを救う者、神を…裏切った者だ
と自己紹介している。
 『かつてアギトを葬った』というのは、“この世に出現した最初のアギト”を殺したという、以前ホムンクルス1号との間で交わした内容だ。
 『神を裏切った』と言うとき、わずかに躊躇しているから、沢木としても1号と袂を分かったことは心苦しいのだろう。
 また、木野に語った
   アギトの種は、人間という種の中に遙か古代において既に蒔かれていたものだ
   たった1つの目的のために
   人間の可能性を否定する者と戦うためにだ

という言葉からは、人間の遺伝子には最初からアギトになるための因子が眠っているということが窺える。
 これが沢木独自の考えなのか、そのとおりなのかは分からないが、沢木は、人間として潜在的に持っている力を解放された存在がアギトだと解釈しているようだ。
 そして
   アギトの力を正当に使ったとき、初めてお前は自分を救うことができる
   お前はまだアギトの力の使い方を知らない

と言っているのは、“力の正当な使い方”が存在することを疑っていないからだ。
 次回予告では、ホムンクルス1号の子供の姿が映っていたから、昔話が見られるかもしれない。
 それとも2号の登場かな?

 さて、前回木野をアギトと信じ込んで男を下げまくった氷川だが、今回アナザーアギトが自分をはね除ける(殴ったとも言う)など、いつものアギトの行動パターンと違うことから、肌で違いを感じたようだ。
 まぁ、頭で理解するより感覚で理解した辺りが氷川らしいと言えるかもしれない。
 そして、G3-Xとシニストラとの戦いは、なかなか面白かった。
 久々に登場のGS-03、初使用のGK-06など見せ場も多かった。
 GM-01を連射しながら到着し、GS-03を装備したために、GM-01を右脚に装着するのが精一杯でアクセラーを引き抜いて装着する暇がなかったため、GS-03をロストした後は、GK-06を使っている。
 こういうとき、固定武装があるのは役に立つ。
 それと、右太股に装着されたGM-01を左手で外して撃つというかなり柔軟な動きもしている。
 本来なら、G3-Xを装着してそんなことができるはずはないのだが、まぁちょっと違う持ち方をすればできることではあるから、大目に見よう。
 その後、GX-05を手にしたところで木野が間に入ったため、攻撃を中止しているわけだ。

 そういえば、手術の途中で目覚めた上に歩いて逃げられる涼は、どんな麻酔を掛けられていたのだろう?
 心臓や肺の手術って、局部麻酔では済まないような気がするのだが。
 涼の回復力の関係で、麻酔の効きが悪かったのかな?
 その後、木野が患者に逃げられた経緯をどう説明したかも想像しにくいけど…。

 さて、今回の見所は“左足が伸びる小沢”だろう。
 北條の腹をを膝蹴りしていたが、両者の身長差から言って、股間を蹴り上げるならともかく、あの膝の角度で腹を蹴ることなど不可能だ。
 ジャンプした様子はないから、軸足の左足が瞬間的に20cmくらい伸びたとしか思えない。
 G3-Xの左手といい、怪物君な身体の持ち主が多いなぁ。


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