『仮面ライダーアギト』
37話 暗闇の戦士
2001 10/14 放映

(Story)
   突如として襲い掛かってきた木野からバイクで逃げる真島と涼だったが、アナザーアギトに変身してダークホッパーで追い掛ける木野に追いつかれてしまった。
 倉庫に追い詰められた涼は
   あんた、人間を守るために戦うんじゃなかったのか!?
と叫ぶが、アナザーアギトは
   そのとおり
   だが、アギトは俺1人でいい
   俺は、俺の手で人間を守る
   俺のこの手で
と言いながら更に迫る。
 涼は真島を逃がしつつギルスに変身して対抗するが、アナザーアギトには歯が立たない。
 必殺の踵落としも防がれ、逆に紋章キックを胸に受けてしまった。
 一方、北條と一緒に木野のアパートで張り込みをしていた氷川に、「アギトと思われる者が交戦中」との通報があった旨連絡が入り、氷川と北條は、それぞれ自分の車で現場に向かった。
 そして、到着した氷川が見たものは、吹き飛ばされてきたギルスが人間の姿になってバイクで逃げていく姿と、アギトらしき影が人間に戻る瞬間だった。
 氷川は、その男があかつき号の乗客木野薫であることを思い出す。
 そして北條もまた、アギトらしき者が人間に戻るのを見た。

 木野がアギトだと信じ込んだ氷川は、これまで救われたことへの礼を述べる。
 どうしてアギトになれるようになったのかという氷川の問いに、木野は
   この世に神の意志というものがあるのなら、私はそれによってアギトになった
   そして、神の意志があるならば、邪悪なる者の意志も存在する

と答える。
 そのとき木野に手術の要請が入り、木野は病院に病院に向かおうとする。
   人の命を脅かすのはアンノウンだけではありませんよ
   病気や事故と闘うのも私の使命なんです

とこともなげに言う木野に、氷川は
   お会いできて良かった
と感激した。

 G3ルームに戻った氷川は、悩んだ末小沢にアギトが人間だったことを伝えた。
 木野を『高潔で純粋』と評する氷川に対し、小沢は
   胡散臭いわね
   もし誰かが純粋に見えるなら、その人間は自分の影の部分を隠そうとしている可能性が高い

と猜疑的だった。
 そして、小沢は木野に会ってみることにしたが、氷川が木野と待ち合わせした時間に木野は現れず、代わりに氷川の携帯が鳴った。
 木野は、2人で会う約束だったのに氷川が第三者(小沢)を連れてきたことをなじり、その埋め合わせとして、今朝自分と戦っていた「葦原涼」という人物を捜すよう依頼した。

 北條は、アギトが人間の姿では十分に力を発揮できないだろうと考え、人間時に捕獲する『アギト捕獲作戦』を計画していた。
 そして、ちょうど発生したアンノウンによる事件の被害者の親族を尾行しつつアギトの出現を待つ。
 戦闘終了後のアギトを追跡し、変身を解いたところで捕獲しようという作戦だった。

 一方、真島は重傷を負った涼を治してもらおうと真魚を訪ねてきた。
 だが、真魚の治癒能力は以前涼を生き返らせたときに失われており、結局涼を病院に運ぶことになった。
 だが、心臓・肺に著しい損傷を受けている涼の手術は困難を極め、病院は木野に手術を依頼していた。
 木野は、1人で涼の手術をすると宣言し、看護婦まで全員手術室の外に追い出した。
 そして
   アギトは俺だけでいい
とつぶやきながらメスを握る。

 そして、イグアナ怪人(ステリオ・デクステラ)出現を察知した翔一は現場へと向かった。
 グランドフォームで現れたアギトは、デクステラと戦い、もう1体現れたイグアナ怪人(ステリオ・シニストラ)も加えて2対1で戦う。
 苦戦するアギトはバーニングフォームに変身し、更にシャイニングフォームになってデクステラを倒した。
 そして北條は、逃げたシニストラを追うのを諦めて帰るアギトをパトカー数台を動員して追い、変身を解いたアギトを追い詰めた。
 北條は、アギトの正体が木野ではなく翔一だったことに驚きつつも翔一を追い詰める。

 
 
(傾向と対策)
 アギトの正体バレる!
 北條は、戦闘後のアギトを尾行するという“どうして今までやらなかったの!?”的なアプローチによって、翔一がアギトであることを確認した。
 木野でなかったことに大分驚いていたが、今後「では木野は?」という疑問にぶち当たるのだろうか。
 ま、とりあえず、これでスペシャルとパラレルワールドであることが確定したわけだ。

 そして、逆光だったとはいえギルスと戦っていたアナザーアギトをアギトと勘違いしてしまった観察力の足りない氷川は、どこまで突っ走るのか!?
 しょっちゅう姿の変わるアギトと見間違えるのはまだいいとして、バイクがトルネイダーと全然違うのにも気付かなかったのか?
 次回予告ではアナザーアギトに殴られてたけど、あれが木野だと気付いてくれるだろうか。
 そうでないと、『アギトと同じ力を持ちながら、邪悪な意志によって動いている』と言われたギルスを敵視するようになってしまう。
 もともとG3を壊された縁でもあるし、結構シャレにならない。

 また、氷川と小沢、氷川と北條の間に微妙な変化が表れ始めた。
 少し前から、北條は氷川本人には嫌味1つ言っていない。
 北條は元々小沢が気に入らなかったのであって、氷川本人には特に含むところはないのだろう。
 そのせいか、小沢のいないところでは、氷川に対してかなり友好的な態度をとっている。
 今回の冒頭で、氷川の車の中で話しつつ張り込んでいたのもそうだし、現場に向かう氷川に「頑張ってください」と声を掛けているのもそうだ。
 その逆に、氷川が小沢に刃向かうようになっている。
 ことアギトの正体絡みになると、興奮して小沢に食ってかかる。
 そういう自分なりの価値観を持って他人の意見を鵜呑みにしないことは、人間的な成長と言えるのだが、小沢が
   あなた、最近結構逆らうじゃない
と言っていることから、もし小沢の“自分を嫌う奴は敵”という性格がフルに発揮されれば、今後氷川と小沢の関係に亀裂が入る可能性もある。
 新OPに見られる階級証を叩き返す氷川や、小沢に銃を向ける氷川G3-Xなどの出発点になるのだろうか。

 どうやら氷川は、世のため人のためにボランティアで戦っているアギトという存在を非常に美化しているようで、そこに何かの目的があるとかいう発想はないらしい。
 実際、翔一は何の下心もなく世のため人のためにやっているわけなのだが、小沢から“純粋だと思えるのは翔一と氷川だけ”と言われると、「僕と津上翔一が同じだと言うんですか!?」と反発してみたりする。
 氷川にとって、翔一は純粋ではなく脳天気と映っているのだろう。
 “純粋”“単純・馬鹿”と紙一重であることを自覚していないとみえる。
 そのことを木野も感づいているようで、氷川が木野を(翔一の)アギトと勘違いしていることを知って、それを利用しようとしている。
 木野が待ち合わせ場所に来なかったのは、第三者が加わることで、氷川を騙し通せなくなることを恐れたのではないだろうか。
 小沢なら、きっと痛いところを突いて、木野があのアギトではないことを説明してしまうだろう。
 木野にすれば、氷川が連れてきている女が何者かは分からなくとも、少なくともそういった指摘を受ける可能性を考えれば、やはり危険は犯したくないだろう。
 しかも、これで氷川に“2人で会うという約束を破った”という負い目を感じさせることで、涼を見付けさせることができるかもしれないのだから。
 氷川の口調から、木野が自分達をどこかで見ていると見抜き、外を見に行く小沢や、それを見越して喋りながらさっさと離れていった木野というクレバーさも見応えがあった。

 ところで、涼は、アナザーアギトのキックを受けて重傷を負っている。
 MRIか何か分からないが、とにかく涼の内部図解(笑)を見る限り、砕けた肋骨が左の肺を突き破り、心臓にも食い込むほどの傷だ。
 涼の治癒能力が常人より多少高かったとして、麻酔が効いているあの状態からどうやって脱出するのか?
 木野の右手が動かなくなったくらいでは、普通に考えて助からない。
 左手でメスを持って心臓を貫くくらいのことは簡単だ。
 真魚の予知能力か、それともほかの理由なのか、いずれにせよ他の因子が加わらなければ涼は助からない。
 どうやって助かるのか、非常に楽しみだ。

 さて、せっかく本編初登場なのに、涼のピンチ&アギト捕獲作戦のためにすっかり影が薄くなってしまったシャイニングフォームだが、シャイニングカリバーを右手で順手、左手で逆手に持っているのは結構面白い。
 残光を残しながらのアクションをまた見せてほしいものだ。
 今回も太陽の光を浴びて変身していたが、もしかしたら光を浴びることで変身が可能になるのかもしれない。
 つまり内的な力だけでなく、もう1つ別の力:光を加えないと変身できない、とか。
 とすると劇場版での変身は、真魚の祈りの力(心の光)が加わっての奇蹟ということだったのかな?
 で、能力的に縦方向のパワーアップ、つまりスピードダウンとかタイムリミットなどの弱点を伴わないパワーアップであるバーニングフォームが加わって、今後のグランドフォームはどうなるのかと思ったら、そうか、トルネイダーに乗るときに変身すればいいのか。
 確かに、あのごついバーニングではトルネイダーには乗りにくいね。
 今後グランドは、出てくるときと帰るときだけのフォームになるのかもしれない。

 そういえば真魚の治癒能力は、涼を生き返らせたことで涸れてしまったようだ。
 超能力が一部だけ失われるという話は聞かないから、一時的なものでまたいずれ自然に復活するのかもしれないが、これで翔一に弁当を作ったとき、指に絆創膏を貼っていた理由が分かった。
 あんな分かり易いところに傷があれば、治せるものなら治しちゃうだろう。
 恋の駆け引きをするなら『こんなに頑張ったよ』とアピールするのもありだが、あの状況で真魚がそんなことをするとも思えないし。

 それから、翔一の突然の『俺にもしものことがあっても、こいつらの面倒だけはみてほしいんだ』発言は何だったのか。
 ああいう後ろ向きなことは言わないタイプだったんだけど、何か思うところがあるんだろうか。
 これもまたOPでの別れのシーンの第一歩なのか?

 今回登場のイグアナ怪人だが、右手に甲冑を付けているのがステリオ・デクステラ、左手に甲冑を付けているのがステリオ・シニストラと思われる。
 ステリオは、イグアナではなくトカゲの一種であるステリオアガマの学名で、ちょっと複雑な経緯でトカゲ座の名前の由来となっているらしい。
 イグアナの学名じゃないのに、どうしてトカゲ怪人では駄目なんだろう?
 デクステラはラテン語で右手という意味だが、シニストラは分からなかった。
 普通に考えると左手になるはずなのに、左手で調べると別の単語が出てくるんだよね〜。

 さて、今回の見所は“真島が持っていた美杉家までの地図”だろう。
 住所がちゃんと書いてあるし、綺麗に書いてあったことからすると、あの状態の涼が書いたとは思えないし、涼が地図を持っていた可能性は低い。
 また、ほかのあかつき号メンバーが書いたものとも思えないから、多分真魚が家出中に渡していたのだろう。
 それをちゃんと持っていた真島は、凄い奴かもしれない。
 何しろ、着衣のままシャワーを浴びていた状態から着の身着のままで逃げ出してきたのに、地図が濡れていない状態で持っていられたということは、財布か何かに入れておいて、逃げだすときに真っ先に持ち出したということになる。
 真魚が自宅の地図を渡したとして、せいぜい「何かあったら訪ねて来て」くらいの意味で渡した物だろう。
 そんな物をきっちり持っていたなんて、やっぱり人の家に居候し慣れている奴は用意周到なのかもしれない。
 いつでも寝床を確保するために、知人の家は残らず抑えてあるのかも。

PS 涼のレントゲン写真撮影日は10/14。
   またいつの間にか時間が飛んでしまった…。


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