『仮面ライダーアギト』
第36話 4人目の男
2001/10/07 放映
(Story)
ピラニア怪人(ピスキス・セラトゥス)との戦いで変身の解けた涼と真島の前に現れた木野は、変身してセラトゥスと戦い、足下にアギト同様の紋章を浮かび上がらせてキックを放ち、セラトゥスを撃破した。
真澄のマンションに戻った木野は、真島と涼に
アギトになるまで、私には私の試練があった
肉体がアギトであることに適応するまで、一定の苦痛が伴うんだ
と、これまで連絡が取れなかったのは、アギトになるための苦痛に襲われていたためだと説明し、涼を敵と思っていたことについて詫びた。
そして、どうしてアギトになったのか、あかつき号で何があったのかと尋ねる涼に、それは言えない約束になっているとだけ答え、これから何をするかの方が大切だと語った。
そこに木野宛てに吉澤病院から手術の依頼が舞い込む。
2つ返事で病院に向かおうとする木野は
木野さんはもうアギトなんだ
そんなことする必要ないんじゃない?
と言う真島に
私を必要としている人がいる
私はその人達のために戦いたい
それはドクターとしてもアギトとしても同じことだ
と言い、更に舞い込んだ手術をも引き受け、患者を吉澤病院に運ぶよう指示して出掛けた。
そんな木野の姿を見た涼は
戦ってみるか、俺も、彼と一緒に
と言い、真島も
(アギトになったら)俺も一緒に戦う、木野さんと一緒に
と決意するのだった。
吉澤病院では、2つの大手術を同時に行おうとする木野へ不安を訴える医師達に向かって
この患者を救えるのは、世界で私だけだ
と言い、ならば手助けをと食い下がる医師らを「足手まといだ」と追い出して手術を強行した。
氷川は、北條にあかつき号事件について聞かれたことが気になって調べた結果、アンノウンの被害者にあかつき号の乗客達が含まれていることを知り、そのことを調べてみたいと小沢に報告する。
そのころ涼は、飛行するカラス怪人(コルウス・カノッスス)を発見し、追跡していた。
そして、美杉邸でトマトのケーキを完成させたばかりの翔一・吉澤病院から戻る途中の木野もカノッススの気配を察知し、それぞれ急行する。
間一髪で狙われていた女性を助けた涼はギルスに変身し、到着して変身したアギトと共にカノッススと戦う。
戦いの末ギルスの踵落としが決まり、カノッススは爆死した。
そして変身を解いた涼は、翔一に
この間お前に言ったよな、俺が俺である意味を見付けたいって
やってみるよ
俺は片っ端から奴らをぶっつぶす
俺の手で人を助けるのも悪くない
と決意を語る。
だが、その様子を物陰から見つめていた木野は
人を助ける…人を助けるだと!?
と怒りの表情を見せ、翔一の顔を見て
あいつ…! あの男は…
と驚くのだった。
翔一が帰る途中、突然バイクのエンジンが止まってしまい、自転車で追い掛けてきた真魚が追いついた。
そこへやってきた木野は、バイクを修理してやるが、木野の翔一を見る目を見た真魚は恐怖を感じて後ずさり、自転車ごと転んでしまう。
助け起こした木野の手が真魚に触れたとき、真魚の脳裏に雪山で遭難する木野の姿が垣間見えた。
木野が立ち去った後、親切な人だと喜ぶ翔一に、真魚は怯えた様子で
違うよ。あの人、優しい人なんかじゃない
あの人、嫌い
と言う。その身体は恐怖のためか冷え切っていた。
その夜、木野のアパートで張り込んでいる氷川のところに、やはり張り込みに来た北條が現れた。
北條は、アンノウンは人間に近い生き物であり、なんらかの理由で人間を恐れているのだと考えていた。
氷川が“アンノウンはアギトになる人間を恐れているのではないか”という小沢の仮説を教えると、北條は
小沢澄子の言うとおりなら、アンノウンはますます人間に近い生物ということになる
アギトのような存在が増えたら、我々にとっても脅威になる
違いますか?
と言った。
そのころ真澄のマンションで眠る木野は、遭難の後、死んだ雅人の右腕を自分の右腕として移植する手術を受けたときの夢を見てうなされていた。
そして翌朝、服を着たままシャワーを浴びていた真島が
俺、変なんだ、身体中が熱くって
でも、俺、頑張るよ
これってアギトになるための痛みだと思うんだ
と言った途端、木野は
アギトはこの世に俺だけでいい
お前の力では、雅人を救うことはできない
と真島に襲い掛かった。
なんとか逃げ出した真島の目の前に、涼がやってきた。
涼を見た木野は
お前も邪魔者の1人だ
俺以外のアギトは存在する必要はない
俺はもっともっと強くならなければならない
雅人を救うために
お前を倒し、最強のアギトとなる!
と言って、涼にも襲い掛かろうとする。
涼は真島をバイクに乗せて逃げたが、それを追う木野は、アギトに変身した!
(傾向と対策)
木野は、どうやらお山の大将タイプらしい。
恐ろしく高いプライドと、弟を救えなかったトラウマが彼の人格を歪めているのだろうか。
能力のない者には優しいが、それは相手を見下しているからだ。
病院で医師達を足手まとい呼ばわりし、「この患者を救えるのは世界で私だけだ」と断言してはばからないほどの傲岸さが、「俺以外のアギトは存在する必要はない」と言わせているのだ。
これは、どうやら弟(息子じゃなかった)の命を救えなかった自分の無力さと、弟を救うことを諦めた医者の無能さに向けた憎悪のせいとみえる。
力のない者が中途半端な力を振るうことに対する嫌悪と自分自身の力の追求がねじ曲がり、自分が最強のアギトになることで弟を救おうという妙な目的意識の源になっているような気がする。
これもまた人間が力を持ったことによって変に曲がった姿なのだろうか。
力を身に付け、自分を失わないでいられたのは、翔一、涼、真魚、相良の4人。
いずれも力を振るうことに高揚感を感じないタイプだ。
いち早く力の使い道を見出していた翔一、真魚は父に言い含められていたために力を見せつけるということにブレーキがかかるし、涼は力のせいで全てを失ったために嫌悪感すら持っていたわけだし、相良は妻との別れがあった分、アギトとなることへの使命感が強かった。
そして、力に引きずられて自分を見失うという意味では、翔一すらアギトの力をコントロールしきれなかったことがある。
21話『暴走する力』で涼の頭に響いた「襲え!」という声も、自分の内なる声だったとしたら、涼にもその可能性はあるとも考えられる。
前回、真島がアギトになったら今まで自分を馬鹿にした奴らに仕返ししたいというようなことを言ったが、やはり力を持った人間なら一度は駆られる誘惑だろう。
心弱き者が力を持つことの危険性…それが、ホムンクルス1号が言う「人は、ただ人のままでいい」ということなのだろう。
それにしても、専用マシンまで持っているんだから、長生きしてくれるのかな?
シャイニングフォームの最初の犠牲者が彼でないことを祈ろう。
で、翔一を見たときの木野の反応は何だろう?
翔一の存在については、三浦智子や榊亜紀からの報告を受けて知っていたはずだ。
記憶をなくして「津上翔一」と名乗ってて、アギトに変身するという報告を受けているはずなのに「あの男は…」などと言うからには、何かあるはずなんだが…。
さて、レギュラー枠の方でも登場のシャイニングだが、どうなるんだろう?
まだバーニングになったばかりで、ピンチらしいピンチにもなっていないのだが、そこからどういう経緯でシャイニングになるのか?
興味は尽きない。
木野の姿勢を見て人を助けるために戦ってみようと思った涼は、木野の暗黒面を見て何を感じるだろう。
自分で選んだ道だから、特に何も思わないのかもしれない。
異形の自分の力が役に立つということを自覚した以上、もはや悩む必要はないのだから。
ところで、3日も木野のアパートを張っている北條は、真島の存在には気付いているんだろうか。
氷川も、あかつき号の乗客を調べようとして、すぐに木野のアパートへやってきている。
真島は多分家出人扱いになっているだろうから追えないとしても、少なくとも氷川は、真澄のマンションの位置を知っている。
真澄は既に死んでいるわけだが、住所はすぐに調べられるはずだ。
真澄の住所を訪ねてみれば、一気に話が進むのだが…。
ま、翔一に関しては、行方不明の人だから敢えて調べないんだろうけど。
それと面白かったのは、アギトが人間の変身であるらしいということについての北條の感想だ。
「アギトのような存在が増えれば、我々にとっても脅威になる」というのは、人類亜種としてのアギトのことを言うのだろう。
アギトが新たな人類として現れれば、旧人類たる自分達にとって脅威だということだ。
次回予告で翔一に銃を向けていた北條は、どういう経緯で翔一の正体を知るのだろう。
話の展開上辻褄が合わなくなるから、スペシャルとリンクさせるわけにもいくまい。
それにスペシャルの時は、アギトの能力を調べるために翔一を拘束しようとしている感じだったが、今回は人類の脅威として相手をするつもりのようだ。
またややこしい話になってきたなぁ。
さて、今回の見所は“超有名なモグリ医者:木野薫”だろう。
ホントに医師免許なかったのね…。
どうしてそういう人に手術任せるかなぁ。