『仮面ライダーアギト』
34話 呼び遭う魂
2001/9/23 放送

(Story)
 エルの攻撃で変身の解けてしまった翔一を庇いエルと戦うギルスだったが、まるで歯が立たない。
 勝ち目がなさそうだと判断したギルスは、翔一を連れて一旦逃げることにした。
 ひとまず逃げ切り変身を解いた涼は、翔一に
   なぜだ…なぜ、亜紀を殺した!?
と詰め寄るが、翔一の
   亜紀さんを殺したのはアンノウンです!
   俺は助けようとしたけど、できなくて…

という言葉に誤解は解けた。
 翔一に人殺しなどできるわけがないと思っている僚にとって、翔一が変身するアギトが亜紀を殺したとは考えられないことだったからだ。
 涼は、意識を失った翔一を自分のアパートに連れ帰って介抱する。
 意識を取り戻した翔一は、自分と同じように変身能力を持つ者の存在を知って涼に親近感を覚えるのだった。
 翔一は、心配して様子を見に来た真魚に、自分の側にいては危ないと言う。
 突然苦しみだした翔一を心配しつつも、真魚には何もできなかった。

 一方、木野のアパートを訪ねた真島は、アパートの中が争ったかのように荒れているのを見て、木野もアンノウンに襲われたのではないかと心配する。
 帰る途中の真島に襲い掛かるカマキリ怪人(プロフェタ・クルエントゥス)の気配を感じた翔一だったが、身体がいうことをきかず動けない。
 涼は、そんな翔一の代わりに飛び出して行った。
 プロフェタと戦うギルスの前に、再びエルが割って入り
   お前もアギトと同じもの…存在してはならないものだ
と言って吹き飛ばした。
 アパートに残された翔一を氷川が訪ねてきた。
 氷川もまた、真魚に翔一がアンノウンに狙われているから護衛して欲しいと言われてきたのだった。
 氷川は、危険だと言う翔一に対し
   僕は警察官です
   人の命を守るのが仕事です

と答え、アンノウンと戦う理由を
   命を守るのに理由なんかいりません
   当然のことです

と答えた。

 木野のアパートに逃げ戻って途方に暮れる真島を、再びプロフェタが襲う。
 一般市民からの通報を受けた小沢は氷川を呼び出し、G3-Xが出動する。
 GM-01の攻撃を受けたプロフェタは撤退し、真島を救ったG3-Xの前に、今度はエルが現れた。
 GX-05の斉射を受けたエルは
   人間もこれほどの力を持ったか
と言いながらも、瞬く間に傷を再生させ、G3-Xを弾き飛ばす。
 だが、G3-Xを踏みつけ槍を構えたエルは
   お前はアギトではない
   アギトになるべき人間でもない

と、攻撃をやめて去っていった。

 エルにやられてようやくアパートに戻った涼は
   俺達、これからどうやって生きていけばいいんですか
   今までずっとアンノウンと戦ってきたけど、なんか自信なくしちゃって

と言う翔一に
   お前の気持ちは分かる
   俺も普通の人間でいたかった
   でも、俺は自分を憐れんだりしない
   俺が今の俺である意味を見付けたい
   いや、俺が俺である意味を必ず見付けなければならないんだ

と答えた。

 翌朝、翔一のために弁当を作る真魚の前に涼がやってきた。
 翔一に頼まれて、家庭菜園の手入れの仕方を書いたメモを届けに来たのだ。
 涼は、翔一の友達が訪ねてきたことを喜ぶ美杉教授を見て
   贅沢だな、津上は
   奴は幸せだ、俺なんかよりずっと
   こんなに暖かい場所がある、心配してくれる人がいる

とつぶやく。
 そして、美杉邸から戻る途中の涼は、プロフェタと遭遇していた。
 そのため、弁当を完成させた真魚の方が涼を追い抜いて先にアパートに到着する。
 アパートの外で翔一を警護していた氷川は、アンノウン出現の連絡を受けて出動するが、翔一は、涼がプロフェタと戦い始めたことを察知したものの、エルへの恐怖で動けない。
 真魚はアンノウン出現を知らぬまま、翔一に
   翔一君、人の居場所を守るために戦ってきたのに、どうして自分のためには戦えないの!?
   人のためにはあんなに勇敢だったじゃない
   なら、自分のためにも勇気を出しなよ
   最初から怖がってちゃ、勝てるものも勝てないって!
   自分のためにも戦いなよ、翔一君!
   よく分からないけど、それが人を守ることにもなるんじゃない!?

と諭す。
 その言葉に、涼の「俺が俺である意味を見付けたい」という言葉を思い出した翔一は戦意を取り戻し、猛烈な勢いで真魚の弁当を食べ始めた。

 一方、駆け付けたG3-Xは、プロフェタと戦うギルスに協力するが、エルも現れたために苦戦する。
 ギルス・G3-Xが地に伏し意識を失ったとき、翔一が駆け付け変身する。
 いつもと違うポーズで変身した翔一は、いつもと違う姿(バーニングフォーム)に変わり、パンチ一発でプロフェタを葬り去った。
 
 
(傾向と対策)
 遂に登場、燃えるマグマのファイヤー…じゃなくて、バーニングフォーム
 真魚の言葉に戦意を取り戻した翔一は、一皮むけてしまったらしい。
 どういう経緯か知らないが、変身ポーズ自体違っていたし、最初からベルトも違っていたわけだから、“より強い姿に変身する”ということを翔一が自覚していたと見ていいだろう。
 身体のあちこちを破って漏れ出るほどの炎のエネルギーを体内に宿し、その吹き上がるエネルギーを拳に載せて殴っていたようだ。
 パワーアップの理由は、これまでどおりさっぱり分からないが、少なくともいかにも強そうな演出には拍手を送りたい。
 確かにあれは強そうに見える。
 炎のエネルギーがボディを吹き飛ばす程に高まったとき、更なるパワーアップモードたるシャイニングフォームになるのだろうという感じがする。
 前回の鷹羽の予想が正しければ、エルから何らかのリアクションが期待できると思うのだが…。

 今回は、翔一達3人の“戦う理由”にスポットが当てられた。
 涼の言う『俺が俺である意味』というのは、自分に備わってしまった変身能力の意味ということだろう。
 つまり、前回沢木が言っていた「それ(変身能力を身に付けた理由)は、お前自身が見付けなければならない」というセリフを受けてのものだ。
 氷川の戦う理由は、“人の命を守るのが警察官の仕事だから”ということになっている。
 勿論嘘を言っているわけではないのだが、そういう単純なものでもあるまい。
 なぜなら、氷川はその直後に「命を守るのに理由なんかいりません。当然のことです」と言っているからだ。
 これは矛盾しているようだが、ちょっと角度を変えて見てみれば矛盾でも何でもない。
 氷川は“人の命を守りたいから警察官になった”のだ。
 つまり、氷川の戦う理由は“人の命、社会の平穏を守りたい”という正義感だ。
 だからこそ、単身あかつき号に乗り込んで乗客を救おうという無茶な行動をしたりもしている。
 対して翔一は、これまで“アンノウンの出現を感知でき、それと戦う力(襲われている人を救う力)を持っている”から戦ってきた。
 『みんなの居場所を守る』というのは、翔一にとって居場所を奪おうとする者を排除するという形で行われてきており、実のところ、自分にその力があるからやってきただけに過ぎない。
 “何となくそうしなければならない気がする”のを、そういう形で自分なりに消化してきたのだろう。
 だが、エルの出現によって“自分にアンノウンを倒す力がある”という前提が崩れてしまった。
 明らかに勝てない敵を相手に、他人のために戦うことの恐怖に怯えたのだ。
 真魚と涼の言葉から、“自分の力の存在意義を認める(自分の居場所を守る)ための戦い”という新しい意味を見付けたのではないだろうか。
 そして、それがすなわち“みんなの居場所を守る”ことに繋がるということにも気付いた。
 だが、突然のパワーアップは、そういった精神的なものからなのだろうか?
 エルの攻撃を受けるたびに変身が解けたのは、翔一の戦意が失われていたからだろう。
 その後、苦痛に苛まれ、身体が自由に動かなかったこともそういったことが原因と思われる。
 全く歯の立たない相手に、“もっと強い力を”と望んでいた結果がパワーアップという形で表れたような気もする。
 戦意が復活したことで、ゆっくりと進行していた体内の変化が加速されたように思えるのだ。
 真魚の弁当を食べるときに身体が素直に動いたのは
   戦意の復活→腹が減っては戦ができぬ
という単純な連想が
   強い力が欲しい←→戦いたくない
という自己矛盾によるパワーアップの進行阻害を消し去ったからだと思う。
 そうでもないと、弁当食べるシーンに『DEEP BREATH』が流れたことの説明ができないし。
 当分、あの曲聞くたびに弁当をかっこむ翔一を思い出すんだろうな〜。

 ところで、木野はどうなったんだろう?
 部屋の中は荒れていたけれど、外側は壊れていなかった。
 プロフェタの入り方からも分かるように、アンノウンは静かに中に入るということはあまりしない。
 ということは、木野自身が部屋を荒らして外に飛び出したと考える方が自然だと思う。
 元々今のアパートに引っ越す前からテニスボールを裏返しにするような超能力を持っていたらしい木野のことだから、あかつき号メンバーの中で最初にアギトへの変身能力を身に付けたとしてもおかしくない。
 そして、涼が初めて変身したときにそうだったように、変身の際に周囲にパワーをまき散らす可能性もある。
 次回予告に登場するライダーもどきの正体は、木野が変身したアギトなのではないだろうか。
 翔一のアギト同様に、角がありベルトらしきものもついている。
 あのクリーチャーとは別にコルウスらしき怪人も登場しているから、新しい怪人という線もないだろう。
 サングラスの男が木野かな?
 北條もあかつき号に辿り着きそうな雰囲気だったし、来週も楽しみだ。
 でも、そうすると10/1の特番は、番外編になるのか?

 で、今回登場のカマキリ怪人プロフェタ・クルエントゥスだが、プロフェタはスペイン語で予言者、クルエントゥスはラテン語で血に飢えたという意味だ。
 初めて生物の学名でないネーミングだが、カマキリを意味するmantisという単語は、ギリシャ語で予言者という意味であり、それにかけたものらしい。
 素直に学名を使えばいいような気がするが、何か問題があるのか、それとも鷹羽が見付けられなかっただけで、プロフェタという学名を持つカマキリもいるのか?
 そして、G3-Xにトドメを刺さなかったエルの言葉から、やはりアギトになる可能性のある者以外は基本的に殺さないことになっているらしい。
 その一方で、自分の身体に傷を付けるほどの攻撃力を持った人間に驚いているという描写もあり、今後どう対応していくのか楽しみだ。

 さて、今回の見所は“朝早くから涼のアパートの外にいた氷川”だろう。
 氷川は何をしていたのだろうか?
 外で警護していたのだとすれば、多分エルとの戦いから戻った後、涼のバイクが外にあることから、『友達が戻ってきた』と思って遠慮したのだろう。
 不器用なりに気を使っているということになる。
 でも、それだと、涼が美杉邸に出掛けたときに顔は見てなかったのかな?
 涼はヘルメットをバイクに付けているようだから、部屋を出るときからメットをしているということもあるまい。
 涼の顔を見れば、何か一言あるはず。
 となれば、涼が出掛けたときには、氷川はまだいなかったことになる。
 エルにやられた後の始末に手間取って来るのが遅かったということなのか?
 だったら、部屋に入ってもいいはず。
 もしかして、真魚のアッシーをしてきただけ、とか?

PS 鷹羽は、イチゴはそのまま食べる方が好きです。



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