『仮面ライダーアギト』
33話 現れた敵 
2001/9/16 放送

(Story)
   アギトを倒したシャチ怪人(ケトス・オルキヌス)に挑みかかったギルスは、走り去ったケトスをギルスレイダーで追った。
 残された真魚と真島の前に再び現れた真澄からは、怪人(水のエル)の姿が浮かび上がり、それを見た真島は恐怖に駆られて逃げ出した。
 真魚はアギトに駆け寄り意識を取り戻させるが、真澄が放った衝撃波で2人とも吹き飛ばされた。
 なんとか真魚を逃がしたアギトだったが、再び真澄に吹き飛ばされ、翔一の姿に戻ってしまった。
 そして翔一は、真澄から浮かび上がったエルの姿を見て、嵐の船上でエルに襲われた記憶が蘇り、恐怖で逃げ出してしまう。
 翔一に逃げられたエルは、再び真澄の体内に戻るのだった。
 そして、真魚が家に帰ると、翔一は先に戻って太一とオセロをしていた。
 真魚は、翔一の様子がおかしいことに気付く。

 一方、ケトスに追いついたギルスは苦戦するが、アンノウン出現の報に駆け付けたG3-Xの援護を受けながらケトスと戦う。
 ケトスは撤退し、ギルスはG3-Xの目の前で涼の姿に戻った。
 G3-Xを解除した氷川は、涼の姿を見て、以前自分を殴った男だと気付いて呼び止めたが、涼は構わず走り去った。
 その涼の目の前に現れた沢木は
   お前を蘇らせた者だ
と名乗って、涼を真澄のマンションへ連れて行った。
 そして、真島を含めた3人がそこに揃った。
 真島は、真澄の体内から出てきた奴(エル)があかつき号を襲ったのだと言う。
 話の見えない涼に、沢木は説明した。
   あかつき号のメンバーは、ある運命を背負うことになった
   お前と同じ運命だ
   彼らはやがて、お前と同じように変身能力を持つことになる
   お前は、ある存在と戦わなければならないのだ
   彼らは、お前と同じような変身能力を持つ者を恐れている
   変身能力を持つ可能性のある者を抹殺しているのだ

 そして沢木は、アギトになるのがあかつき号のメンバーだけだと思っていた真島にも、涼が不完全ながらもアギトと同種の存在として覚醒していることを告げる。
 それは、涼にとっても真島にとっても驚きの事実だった。
 また、G3ルームに戻った氷川も、ギルスが人間の変身だったことに驚くと共に、アギトも人間である可能性を考えていた。

 そのころ北條は、今回同一のアンノウンに殺されたと思われる高島雅英と橘純の間に血縁関係がないことから、“アンノウンは超能力者及びその血縁を狙う”という氷川の説以外にも共通項があるのではないかと考え、それを模索し始めていた。
 そうすることで、風谷伸幸の死の真相にも近づけると考えたのだ。

 そしてエルは、真澄の身体を操って青年を訪ねていた。
 青年は
   その女の中に隠れていたのですか
   探しましたよ
   目覚めたいのですね
   いいでしょう
   あなたが目覚めれば、全ては解決するでしょう
   この世のアギトは全て滅び、人は、私が愛することのできる者だけになる

と言って、真澄の体内から出られないでいるエルに実体を与えた。

 真魚の前に居づらくなって外に出た翔一の前に、再び真澄が現れた。
 真澄の中から現れたエルの姿に怯えた翔一は、戦おうとせずに一目散に逃げ去る。
 エルが体外に出ている間に自我を取り戻した真澄は
   あなたは誰なの!? 私の身体を返して!
と抵抗するが、既に実体を取り戻したエルは
   もう、お前の体に用はない
と言って、真澄の体から分離する。
 その際、真澄は純や高島を殺す自分の姿を見て、2人を殺したのがエルに乗っ取られた自分だったことを知るのだった。
 真澄を殺して分離したエルは、翔一を追うために姿を消した。

 一方、エルの姿に怯え、美杉邸の家庭菜園に戻った翔一は、真魚に胸の内を語る。
 以前、エルを見たような気がすること、戦ったらきっと負けると思うと怖くて戦えないことなど…。
 それを知った真魚は、真澄のマンションを訪ね、涼に翔一を守るよう頼んだ。
 真魚に借りのある涼は、それを引き受け、美杉邸へとやってきた。
 その時、翔一はちょうど美杉邸を出ていこうとするところだった。
 翔一は、自分がいると美杉家の人々を巻き込むと考えたのだ。
 走り去る翔一を追う涼。
 翔一は、突然襲い掛かってきたケトスと変身して戦い、キックで倒したが、その直後にエルが現れた。
 エルに
   アギト、お前は一度死んだはずだ
   この私の手で

と衝撃波で吹き飛ばされたアギトは、翔一に戻ってしまう。
 戦意を失った翔一の前に涼が立ちふさがり、変身してエルに挑む。

 
 
(傾向と対策)
 今回はボリューム満点で、ストーリーが一気に進んだようだ。
 まずギルスの正体について、氷川も翔一も、真魚も(真魚は前回だったが)知った。
 そして、アギトが翔一であることを涼が知った。
 また、涼はあかつき号の乗客達の秘密も知ったわけだ。
 これによってアギトを憎む涼の誤解も解け、共闘関係やあかつき号連とのパイプもできあがるだろう。
 沢木は翔一には会いたがらないだろうから、直接翔一があかつき号連と会うことは少ないだろうが、真魚と真島は連絡を取り合えそうだし、少しは繋がりができるんじゃないだろうか。
 また、氷川が“ギルス=人間”ということを知ったのは、今後大きく響くだろう。
 何しろ、アンノウンと戦うギルスを見た上で、ギルスが人間だと分かった以上、アンノウンに対抗する人間側の勢力の存在がありうるし、アンノウンの行動理念のヒントにもなりうるからだ。
 バイクのナンバーも見ていないようだから、涼の名前が割れるのは相当先になりそうだが、アギトも人間である可能性が高まったことの意味は大きい。
 少なくとも、今後アギトとG3-Xが一緒に戦うことがあれば、氷川からの何らかのアプローチがあるだろう。
 …って言うか、なきゃおかしいよ。でも、連中馬鹿だからな〜。

 2つ目は、翔一があかつき号に乗っていたのが確実になったことだ。
 あの嵐の船があかつき号でないとは考えられないから、行方不明の1人は翔一で確定だ。
 これによって、あかつき号事件の真相と、沢木の真意が見えてきた。
 あかつき号は、エルに襲われた。
 そこにどういう意図があったのかは分からないが、その結果、あかつき号の乗客達はアギトになる素質を持ってしまった。
 もちろん、元々その素質を持った人間が集まっていたという可能性も含まれる。
 そして、エルは翔一を甲板上で襲い、海に落としている。
 その後、どういうわけかエルは関谷真澄に憑依し、氷川があかつき号を救ったという順番だ。

 ここで、この流れを鷹羽流に解釈してみよう。
 画面上では、翔一は変身していなかったが、恐らくあの槍状の武器で突かれた後、変身してエルと戦ったはずだ。
 というのは、本編最後のセリフからも分かるように、エルは翔一がアギトだと認識しているからだ。
 これは、翔一がアギトになったのを見たからと言うべきだろう。
 そして、エルが実体を失い、真澄に憑依し続ける羽目になっていたことからもこの可能性が高い。
 回想シーンでエルが翔一を追い詰めていたとき、エルは槍を持ち、実体による攻撃を行っていた。
 あの暴風雨がエルの結界で、その中でしか実体化できないというのでなければ、エルはあの時実体を持っていたのだ。
 それが真澄の体内に潜伏したままこれまで過ごしてきたということは、実体化できない理由があるはずだ。
 それが、アギトになった翔一の起死回生の一撃によるダメージのせいだと考えれば、筋が通る。
 その結果、翔一は海に落ちて記憶を失ったものの、エルもまた実体を保てない(或いは結界を維持できない)ほどのダメージを受けてほかの人間を殺すこともできないまま、近くにいた或いは憑依しやすかった真澄に憑依してその場を凌いだのだ。
 そう考えれば、素人の氷川があかつき号を救えた理由も、ほかのメンバーが助かった理由も説明できる。
 そして真澄の体内に入ってしまったエルは、発揮できる能力も限られ、真澄を完全に操れる時間も限られ、真澄が死んだら一緒に死んでしまうくらいの状態だったのではないだろうか。
 そう考えれば、前々回にクルスタータが真澄を狙ったときにケトスが止めたことも、これまでエルが表立って活動していなかったことも、真澄に憑依したまま純や高島を殺しておきながら真澄が離れた場所にいることも説明できる。
 つまり、真澄が自分の中に何かが棲みついていることに気付いて自殺でもすれば、エル自身も死んでしまうから、彼女に気付かれないよう2人を殺した後、わざわざある程度の距離まで離れてから真澄を支配から解放したのだと考えられるのだ。
 だからこそ、ホムンクルス1号の力で実体を得た後は、あっさり真澄を殺して分離したのだろう。

 あかつき号の面々がどうやって自分達がアギトになることを知ったのかは分からないが、恐らくエルに襲われた際に何らかの形で知らされたのだろう。
 そして、アギトになれるのは自分達だけだと思った。
 やがてアギトになる可能性を秘めた自分達は、エル達に襲われる危険がある、しかもいつになったらアギトになれるか分からない、という状態で過ごしてきたことは相当な恐怖だろう。
 そう考えてみると、彼らの行動に表れた不安さは理解できるし、涼というあかつき号に乗っていなかった変身能力者の存在は希望になりうる。
 榊亜紀がギルスのことを最初「いえ、彼は利用できないと思います」と言い、涼の変身の経緯を知って「あなたのことを知れば、ほかの仲間も…」と、涼の存在が仲間に希望を与えるだろうと評価を変えたのは、“あかつき号に乗っていない人でも戦う力を持っている可能性がある”ことを知ったが故の希望だったのではないだろうか。
 なによりも彼女自身にとっての希望だったのでは? 涼の死(と思ったこと)によって行動がねじ曲がってしまったが。
 そして、雪菜という最初のアギトを見ていた沢木は、最初からそのことを知っており、戦う力を終結させたかったのではないだろうか。
 それが沢木の行動理念なのではないかと思うが、ただ、それだと彼にとってのホムンクルス1号の存在意義が分からないんだよな〜。

 それと、もう1つ大きかったのは、北條があかつき号に辿り着きそうなことだ。
 実はケトスは1人も殺していないので、警察側では純や高島を殺したのがケトスだという見解で動いているものと思われるが、いずれにしても同一のアンノウンに殺されたはずの2人の間には、血縁関係はない。
 1つの血縁を潰した後アンノウンがどういう行動を取るかについては、実のところ実例がないために分かっていないのだが、もし先に殺された純に血縁者がいた場合、どうしてその人は狙われなかったのかという疑問が生じる。
 そして、彼ら2人に共通することは、“あかつき号というフェリーボートに乗って以来、様子がおかしかった”ということだ。
 北條なら、そこから“あかつき号で何かあった”ことや、行方不明の人物の名前と住所、そして容貌を知ることはたやすかろう。
 つまり、翔一の過去に最も近いところにいるのは北條なのだ。
 そして、過去の被害者の中にもあかつき号関連の人間が混じっていることが分かるだろうし、そのうちの1人:三浦智子を殺した男が入院中ということに辿り着く可能性もある。
 なんと、北條がキーパーソンになってしまった

 ところで、実際にはエルは真澄の行く先々でしか殺せなかったわけだから、純に血縁がいてもそれを殺すことはできなかったわけだが、もしかするとあかつき号に乗っていた人達は、後天的な超能力者である可能性もあるんだよね。
 例のオーパーツにせよ別の要因にせよ、何らかの理由で潜在能力を目覚めさせてしまい、本来目覚めるはずのない超能力に目覚めたという可能性はあるわけだ。
 翔一の場合、姉が超能力者だったから、素質があった可能性は高いけど。

 ところで、翔一の不甲斐なさはどうしたもんでしょ?
 実に見事な逃げっぷりだったね〜。
 いや、まぁ、うっすらとした記憶の中に蘇る恐怖となれば、分からないでもないんだけど、ケトスとはいつもどおり平然と戦っておいて、エルを見ると戦意が萎えちゃうってのは、単に苦手意識とも言えるわけでちょっと情けない。
 目の前でギルス=涼がエルと戦う姿を見ることで、どう立ち直るのか楽しみだ。
 なんか、次回からパワーアップするみたいだし。

 それにしても、真澄も入れるホムンクルスの部屋って、どうなってるんでしょ?
 彼は一応精神病院にいるはずなんだけど、どうやって入った? やっぱ瞬間移動か?
 それとも警備の連中はザルなのか!?

 さて、今回の見所は“置いて行かれた美杉教授”だろう。
 前回、氷川の車で翔一・真魚と共に真澄のマンション前に来ていたはずの教授だけど、真魚と翔一は出て行っちゃうわ、氷川は出動しちゃうわで、置いてけぼりになってしまった。
 いつの間にか大学に戻ってたようだけど、どうなってるの?
 そういや、美杉教授が頼んだ本もどうなっただろう。

 もう1つは、北條のパソコン画面にしか出なかった高島のフルネームかな。
 今回はOPテロップにすら名前出なかったし。

 それにしても、ホムンクルス以外誰も涼のことをギルスとは呼ばないのね。




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