『仮面ライダーアギト』
32  ギルス復活
2001/9/9 放送

(Story)

 相良の死、そしてそれに伴いしおれた花が咲き始めたことに驚く真魚の前に現れた沢木は
   悲しみはこれからも続く
   それを終わらせるには、お前の力が必要だ

と言い、涼の死体のところに真魚を連れていった。
 そして
   この者もアギトと同じ力を持つ者だ
   この世には、アギトなる者が必要なのだ

と言って、真魚の力で涼を生き返らせるよう命じた。
 真魚は、涼の顔の上に手をかざし、力を振り絞るが、涼が僅かに目を開いたところで力尽き、倒れてしまった。
 そして、真魚はいつの間にか沢木の消えた部屋を出て、探し続けていた翔一と出会う。
 真魚は、もう少し好きなようにさせてほしいと伝言を伝え、真澄のマンションに戻るのだった。
 だが、真魚の口から相良の死を告げられた真澄は、真魚や真島のような子供と一緒にいても身を守ってはもらえないからと、荷物をまとめて出ていってしまった。
 真島は、そんな真澄を見て
   心配することないよ、どうせあかつき号の仲間のところに行ったんだから
   なにしろ誰かに頼っていないと生きていけない人なんだ
   馬鹿だよなぁ、どこへ行っても同じなのに

と放っておくのだった。
 そして、仲間は全て超能力者なのかと尋ねる真魚に
   そういう人もいるし、まだ力が目覚めてない人もいる
と答えているとき、真魚の手が突然皺だらけになってしまった。

 翌朝、涼の身体は沢木の屋敷に移され、徐々に生命力を回復していた。
 そして沢木は、涼に
   あのまま死の眠りについていた方がお前は幸せだったろう
   許してくれ

と語りかけるのだった。

 そして、翔一から真魚の伝言を聞いた美杉親子と氷川は、翔一と共に真澄のマンションにやってきて真魚を説得しようとするが、変わり果てた手を見られたくない真魚は居留守を使った。

 一方、木野宅に逃げ込もうとした真澄は、木野が留守だったため、橘純の家にやってきた。
 そして、事情を聞いた純は、仲間を集めるために連絡を取ろうとするが、戻ってこないのを不審に思った真澄が探してみると、純は電話を持ったまま死んでいた。
 恐怖に駆られた真澄は、翌朝、やはり仲間の高島を訪れるが、彼も既に殺されていた。

 そのころ、真魚の両手は完治していた。
 そして真魚は、再び真澄のマンションを訪ねた翔一達と共に遊園地に行き、観覧車に翔一と2人で乗って、今の気持ちを整理する。
 “誰もが自分の居場所を探している”…そんな真魚の結論に、翔一は、裸の時部の見付けたんだから、そこから始めればいいと答え、真魚は美杉家に戻ることになった。
 家に戻ることを告げに真澄のマンションに戻った真魚は、真島と帰っていた真澄から、またあかつき号の仲間が殺されていたことを告げられた。
 そして、突然苦しみだした真澄は、起き上がると、人相の変わった顔で
   人でない者は、滅べばいい
と言って襲い掛かってきた。
 そして、逃げ出した真島と真魚の前にシャチ怪人(ケトス・オルキヌス)が現れた。
 ケトスに行く手をふさがれた形の2人の背後から迫った真澄は、ケトスに
   やれ!
と命じる。

 そのころ、涼は、おぼろげなイメージで真魚の顔と眩しい光を感じ
   光…
   なんだ、この暖かい光は…?

と目覚め始めていた。

 逃げまどう真島と真魚のピンチに、ケトスの出現を察知した翔一が駆け付け、アギトに変身してケトスと戦う。
 その間に逃げた2人だったが、アギトを倒したケトスが再び迫る。
 そのとき、脇から現れた涼がギルスに変身してケトスに襲い掛かった。

 
 
(傾向と対策)

 ギルス復活!
 真魚の限界レベルの再生パワーを与えられて復活してしまった。
 どうやらあの冷蔵状態でも身体機能の一部が生きていたようで、そこを足がかりに復活させたようだ。
 ここから想像されることは、真魚の能力は完全に死滅したものを再生するほどの力はないかもしれないということだ。
 確かに真魚が咲かせた花は、まだ根が生きていたはずだし、そういうことなら、沢木がまず相良を生き返らせて試そうとしなかったことが説明できる。
 涼のどの部分が生きていたのかは知らないが、ギルスの生命力によって一種の仮死状態になっていたという可能性はある。
 逆に、そうでもなければ真夏に1週間近く川に浮いていて魚の餌にもならず、腐敗もしていないことの説明が付かない。
 そして、力を消耗しきった真魚の手は、ギルスに変身した後の涼の手のように、干からびていた。
 1日で回復したのは、真魚のポテンシャルのせいかもしれない。
 これは、真魚の超能力も涼の変身能力も同じ次元の問題だということになる。
 そして、決して干からびたりしない翔一の力がギルスと同種である以上、翔一自身のポテンシャルが高い、もしくは能力の使用効率が高いということになるだろうか。
 それにしても、沢木が涼に語りかけた
   あのまま死の眠りについていた方がお前は幸せだったろう
   許してくれ

という言葉は何を意味するのか?
 亜紀が翔一に言った『記憶を取り戻せば地獄を見ることになる』と通じるものがあるのだろうか。
 相良は、涼がアギトの一種だと知って生き返らせようとした。
 亜紀は、涼を見れば、仲間に希望が生まれるだろうと言った。
 真島は、「あの人の力でも、まだ奴らには対抗できなかったのか」と言っている。
 これらから考えると、あかつき号乗客連は、超能力に目覚め、その力を強めながら、降りかかるアンノウンの脅威から我が身を守りつつ、何らかの使命を果たそうとしているように感じられる。
 亜紀の言った“希望”とは、“アンノウンから身を守れるだけの力”だったとも考えられるのだ。

 次に、真澄の変化について考えてみよう。
 OPテロップから、真澄には“水のエル”が憑依もしくは遠隔支配しているらしいことが分かる。
 とりあえずここでは「憑依」という表現で書くことにしておこう。
 ケトスに「やれ!」と命令していることから、少なくともケトスと同等以上の存在であることは間違いなかろう。
 4階から階段を駆け下りた真魚達より早く外に出ていたことから、運動能力を素体より高めるくらいの力はありそうだが、真島にはじかれて逃げられているのだから、少なくとも憑依している間はさほどの能力を発揮できないようだ。
 前回、ケトスが、真澄を襲おうとしたクルスタータに待ったをかけたのは、もしかしたら真澄を憑依対象にすることが決まっていたからなのかもしれない。
 真澄の行く先々で、ケトスに純や高島を殺させたのも、何か関係があるのだろうか。
 一応、鷹羽は2人を殺したのは水のエルではなくケトスだと思っている。
 少なくとも、純を殺したのが水のエルだったということはあるまい。
 何しろ真澄は、純が死んだ後で純のところへ行っているからだ。
 怪人が見付けられるのが、超能力に目覚めている人間と、その遺伝子と共通する遺伝子を持つ者だけと仮定すれば、純や高島の居場所を知ることができなかった可能性はある。
 だが、真澄に憑依できるくらいなら、真澄の知識を読み取って行動するくらい簡単だろうし、敢えて真澄に恐怖を感じさせて移動させるほどの意味はないと思うのだ。
 逆に、真澄に取り憑いた水のエルが純を殺したと仮定すると、わざわざ殺してからソファーに戻ったか、何らかの能力で遠隔殺人をしたかのどちらかだ。
 遠隔殺人ができるくらいなら、真島や真魚を取り逃がすはずはないし、ケトスに追い掛けさせる必要もないからだ。
 超能力に目覚めていない者は怪人に襲わせるわけにはいかない(鷹羽の自説)としても、真魚が戻ってくる前に真島を殺すことはできる。
 そう考えると、ケトスが純と高島を殺したと考えざるを得ない。
 すると、水のエルは何のために真澄に憑依しているのだろうか。

 そして、全然いいとこなかったアギトはどうなるのか?
 パワーアップの準備かな?
 今のままじゃ勝てないっていう…。
 でも、来週あたり、あっさりと怪人倒したりしたらやだよな〜。

 さて、“5万円のガラス細工”真魚は、今回「あかつき号の仲間」という話を聞き、沢木と知り合い、涼の顔と変身を見たわけだ。
 真魚は、既に自分の超能力のことを知っている氷川には、隠し事をする必要がないわけだから、知っていることを全部話すだろう。
 また、涼にとって、女神とも言うべき存在になっている可能性も高い。
 真魚の頭と精神状態から、情報の半分くらいしか理解していなかったとしても、氷川や涼の今後の動向に影響を与えるだけの存在になったと言えるだろう。
 結局真魚は、家出の直接原因だった“超能力の暴走”の真実を知り、誰もが自分の居場所を求めていることを知ったために家に帰ることになったわけだが、今後どうするのだろうか。
 キーパーソンとしての重要度はこれまで以上に上がったけれど、今後、ちゃんとやるんだろうね?

 美杉教授が意外にも思い込みの激しい人だったりとか、コメディタッチの部分もあったが、今回は非常にストーリーが進展するシリアスな話だったので、かなり浮いていた。

 さて、今回の見所は“小沢にもあった少女時代”だろう。
 小沢は、女子高生の心理を訪ねた氷川との会話で
   小沢「些細なことで落ち込んだり、どうでもいいことで有頂天になったり…
      私にも覚えがあるわ」
   氷川「小沢さんに、ですか?」
   小沢「当たり前でしょ!」
   氷川「はぁ…、それはそうでしょうが…」
と、小沢信者であるはずの氷川にまで鉄の女扱いされている。
 いや、ま、確かに小沢の純真な時代って想像できないよね。



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