『仮面ライダーアギト』
第30話 隠された力
2001/8/26
放送
(Story)
北條は、亜紀に殺されたアギト捕獲作戦メンバーの死因と、2年前の風谷伸幸の死因とが同じ“外傷のない内臓破壊”であったことから、風谷伸幸殺害事件こそがアンノウンによる一連の事件の鍵ではないかと考え始めていた。
そして、その謎を解くことこそ自らの有能さを証明する方法だと。
北條は、伸幸の身辺関係を洗い直すために、伸幸の娘:真魚から話を聞こうと美杉邸を訪れた。
そこには氷川が、先日の高木明逮捕に協力した真魚に礼を言いに来ていた。
そして、伸幸殺害事件の手掛かりを得るため、真魚に伸幸の周辺に超能力者がいなかったかと尋ねる。
北條は
風谷氏の死体の状況から見て、彼は超能力によって殺された可能性があるからです
ある説によりますと、超能力者は知らず知らずのうちにその力を発揮することがあると言います
もしかしたら犯人に殺意はなく、無意識のうちに風谷氏を死に至らしめたのかもしれませんが
と真魚に問い掛ける。
真魚自身が超能力者であることを知っている氷川は
超能力者が犯人なんて、何か証拠があるんですか?
僕としては、あれはアンノウンの仕業だと思っていますが
と助け船を出すが、北條はそれには取り合わず
どうです、何か心当たりはありませんか?
と更に問い掛けた。
真魚は、「超能力者」という単語にビクッとしたものの
私には分かりません
と答えるのだった。
涼の死体を発見した沢木は、久しぶりに謎の青年の元へやってきた。
だが、涼を生き返らせてほしいという沢木の願いは一蹴された。
青年は、「あなたは人間を愛しているはずだ」と言う沢木に
ええ。だからこそ、私は1度彼を助けたことがあります
しかし、同時に私は、人の、人でない部分を憎んでもいる
人は、ただ人でいればいい
とだけ答えた。
自宅に帰ろうとした相良の前に、カニ怪人(クルスタータ・パレオ)が現れた。
念動力でその場を逃れた相良は自宅に戻り、亡き妻と一緒に写っている写真を見ながら思い出に浸るが、そこに突然沢木が現れ
過去を追い求めても何も得ることはできない
と語りかけた。
その声から、沢木が自分の超能力を覚醒させた人物だと知った相良は、沢木の
俺は、お前達を救う者だ
付いてこい
という言葉を信じて沢木に付いていった。
沢木は、相良を死体安置所に連れてくると、涼の死体を出した。
沢木「彼を、お前の力で蘇らせてほしい」
相良「馬鹿なこと言うな!
こいつのせいで俺達の仲間が命を落としてんだぞ!」
沢木「それは違う!
彼はお前の、お前達の未来の姿だ」
相良「…俺達はアギトになるんじゃないのか?」
沢木「そう。彼もまたアギトの一種なのだ」
説得された相良は、治癒能力を涼に使ってみるが、涼は生き返らなかった。
相良に
死んだもん蘇らせるなんて、俺の力じゃ無理だ!
と言われた沢木は、テニスコートの外に玉を拾いに来た真魚の前に現れ、右手をかざした。
真魚の頭に
時の流れが早まった
お前の隠された力が覚醒する
という声が響き、真魚は倒れた。
コートに戻るのが遅かったため、真魚は水原先輩から校庭10周を命じられるが、コートを離れた途端ボールの入った篭が宙を舞い、こぼれたボールで水原先輩は転倒した。
その光景を見た真魚は不安を感じる。
その夜、一家4人で花火大会に出掛けた真魚は、浮かない顔をしていた。
道中、水原達に会った真魚は、水原に「一緒に花火を見よう」という名目で駐車場に連れ込まれた。
実は、水原達は真魚をテニス部から追い出そうとしていたのだ。
突き飛ばされて転んだ真魚が水原達を睨むと、駐車車両のバンパーがはずれて水原に襲い掛かった!
真魚がハッとした途端、バンパーは地に落ち、真魚がやったらしいことを悟った水原達はその場を逃げ出す。
残された真魚は、自分が無意識に水原を攻撃したことに愕然としていた。
一方、車から花火見物をしていた相良は、再びクルスタータに襲われた。
それを察知した翔一は駆け出し、目撃者からの情報でGトレーラーも出動した。
クルスタータの前に立ちふさがるアギトとG3-Xだが、その強さに苦戦する。
そして真魚は、北條の
もしかしたら犯人に殺意はなく、無意識のうちに風谷氏を死に至らしめたのかもしれませんが
という言葉を思い出して、“父を殺したのは自分自身かもしれない”と恐怖していた。
(傾向と対策)
今回、真魚は大変な立場になっているのだが、鷹羽は真魚に同情できないでいる。
テニス部の先輩達が真魚を追い出そうとするのは、ある程度仕方ないとも思えるからだ。
今回、花火大会の日付が
平成13年8月24日(金)
と出ていたため、番組中時間が29話の段階でも8月に入ってしまっているらしいことが分かる。
つまり、真魚は夏休みに入ってから入部した変わり種なのだ。
真魚は17才のはずだから、多分2年生だろう。
1年で新入部員として入った人間が、基礎体力作りやら球拾いに精出している間はいなくて美味しい時期に入ってくる部員というのは、結構嫌われる。
しかも実力は皆無ときている。
これでは嫌われない方がどうかしている。
そんなのにいちいち怒っている真魚の方が悪いような気がするんだよな〜。
第一、真魚の性格は体育会系向きではないようだし、部活の選択誤ったんじゃない?
ついでにもう1つ言うと、北條の言葉でいきなり不安を感じすぎだよ。
亜紀が超能力者だったことは知らなかったにしても、世の中に超能力者が自分1人ってわけでもなかろうし、透視や予知の類の力では殺せそうにはないし、あの時点では自分に念動力があることなど知りもしなかったんだから。
右手をかざして「お前の隠された力が覚醒する」などと言ってた男に何かされたとか思わないんだろうか。
さて沢木は、まずホムンクルス1号の力で涼を生き返らせてもらおうと思って断られ、次に治癒能力を持つ相良を頼り、それでも駄目で真魚の潜在能力を覚醒させたわけだが、どうして真澄や木野の力を目覚めさせようとしなかったのだろうか。
真魚には死者を復活させるほどの治癒能力もしくは再生能力があるということなのだろうか。
沢木に、他人の潜在能力を読み取れる力があるとすれば、あかつき号メンバーでなく真魚に白羽の矢を立てたことに納得ができる。
相良の家に勝手に入り込めるくらいあかつき号乗客に詳しい沢木が、真澄のマンションや木野の住処を知らないということもないだろうから、そう考える方が自然かもしれない。
ところでホムンクルス1号は、沢木に
君は、人間の中の持ってはならない力を覚醒させた。
だが、それによって生まれたのは悲劇だけだ
と言い、沢木の
今のところは
という答えに対して
君はまだ分からないのですか
人間は皆同じです
また同じことが繰り返される
と言い切っている。
つまり、『涼を生き返らせたところで、結局多くの悲しみを生み出して終わりだ』と言っているわけだ。
そして
しかし、同時に私は、人の、人でない部分を憎んでもいる
人は、ただ人でいればいい
と言っていることから、人間が特殊な能力に目覚めることを嫌っていることも分かる。
もちろん、それが原因で沢木と袂を分かっているわけなのだが、1号がアンノウンと繋がりのある存在だとすれば、アンノウンが超能力者を襲う理由もそれでなんとなく分かるというものだろう。
それと、今回分かったこととして“あかつき号乗客達は、やがてアギトになる”ということが分かった。
彼らの目に“アギト”という存在がどのように写っているのかは分からないが、そこに不安を感じる亜紀や真澄がいる反面、相良のように受け入れてしまっている者もいるということは、アギトになるのが忌まわしいこととは限らないと認識されているのではないかと感じる。
沢木が亜紀や相良にしたことが“時間を進める”、つまり能力の開花を早めるというレベルのことでしかない以上、あかつき号乗客連は、放っておいてもやがて超能力に目覚め、更に進んでアギトになるわけだ。
そして、ギルスもまたアギトの一種ということは、『アギトになる』=あの姿になることではないということでもある。
このことはまた、雪菜が最初のアギトだったという説を裏付ける材料にもなりうる。
超能力の開花が進んでやがてアギトになるということは、今回の真魚のように強くなっていく能力を制御しきれない人間が自分の超能力に引きずられうることも示唆しており、雪菜がそのことに絶望して自殺したという可能性も強まるというものだ。
未だ1号以外ギルスと呼んだことのない涼の変身した姿は、どういう経緯で現れたのか。
沢木と真魚、あかつき号乗客連の今後の関わり方はどうなるのか?
はたまた水原先輩に化け物として認識されそうな真魚は、これから高校生活を送れるのか?
次回に期待しよう。
んで、今回冒頭で焼き肉食ってた3人組だが、小沢の目には氷川しか写っていないらしく、尾室が箸をのばしている先の焼き肉を氷川にやっている。
あれは尾室が自分のために焼いていたものらしく、かなり悲しそうナメをしていた。
焼肉店では
1 他人の食べる分まで焼く人
2 自分の食べる分だけ焼く人
3 他人の焼いた分まで食べる人
に別れることが多いが、小沢は1番、氷川は3番、尾室は2番らしい。
2番のタイプは、人が焼いている肉は焦げても放っておき、自分の焼いている肉を取られると怒ることが多い(鷹羽もこのタイプ)。
尾室は、最初小沢に取られ(氷川が食って)、次に氷川に取られて、しかも両方とも上司(オマケに小沢の奢りっぽい)であるため、文句を言うに言えず泣きながら出ていったようだ。
とうとうセリフも貰えず、表情で演技をするところまできてしまった尾室に明日はあるのか!?
ところで北條は、どうして風谷伸幸殺害事件の犯人を榊亜紀だと考えなかったのだろう。
視聴者は、亜紀の超能力がつい最近開花したことを知っているが、警察側では、そもそも亜紀が超能力者だったという証言を得ることすらできまい。
亜紀の家族・過去の友人関係を当たったところで、そんなことを知っている奴はいるまい。…と言うより、本人だって知らなかったはずだ。
死因が同じなのだから、まずやるべきことは風谷伸幸と榊亜紀との関係を調べることのはず。
とすると、北條は既に亜紀の身辺関係を調べ終わっていると見た方がいいのかもしれない。
そして接点を掴めなかったため、“亜紀と同種の超能力者ならば”と考えたのだろう。
これで風谷教授と雪菜の関係まで行けるのか、それともラスト間際まで内緒にして引っ張るのか、或いは雪菜は風谷教授と関係がないということで決着するのか、いずれにしても進展の可能性が出てきた。
あとは、北條が鉄板巻きの後遺症で亜紀の過去に触れたくないなどということにならなければ大丈夫だ。
手巻き寿司を見て気分が悪くなるほどの後遺症だったようだが…大丈夫だよね?
そして、今回登場のカニ怪人(クルスタータ・パレオ)だが、クルスタータはズワイガニの学名、パレオは「青い」という意味のラテン語だ。
さて、今回の見所は“階段でシンクロしている小沢と北條”だろう。
お互い相手を避けようとして塞ぎあっているという周波数ピッタンコな2人。
普通ならムッとするところを、今回北條は、「所詮この人達は歩なんだから」と自分に言い聞かせてニヤリと余裕の笑みを浮かべている。
「G3-XだのV-1システムだの、そんなことはもうどうでもいい」と開き直った彼にとって、階段で行く手をふさがれた程度のことで歩ごとき相手に怒るのは、大物のすることではないということのようだ。
何しろ彼は、“殺されかけた”ことすら水に流した大物なんだから。
もう1つ、相良の家に勝手に入り込んで偉そうなことを言ったり、スーツ姿で高校のテニスコート脇まで出掛けていく沢木の面の皮も相当なもんだ。