『仮面ライダーアギト』
25話 激突再び! 
2001/7/22 放送

(Story)
 氷川の独断によって出動した翔一G3-Xは、エイ怪人(ポタモトリゴン・ククルス)を相手に一方的とも言える勝利を収める。
 氷川は、暴走もせずにアンノウンを撃破した翔一の「やりましたよ、氷川さん!」という声を複雑な思いで聞いていた。

 何の訓練も受けていない民間人がアンノウンを撃破したことで、G3-Xの優秀さは証明された。
 だが、無許可で民間人にG3-Xを装着させた氷川は、上層部から責任を問われることになる。
 互いに自分の責任である旨主張し、庇い合う氷川と小沢。
 そんな中北條は、G3-Xの性能を確かめるためには自分が装着してみるしかないと発言する。
 実は、高村教授がV-1プロジェクトを放棄したいと言い出したため、G3-Xを採用するしかなくなっていたのだ。
 そして北條は、小沢が目を付けていた“津上翔一”に興味を持つのだった。

 太一のために宴会芸の手品を披露しようとしている翔一の前に、氷川がやってきた。
 G3-Xを装着したときのことを訪ねられた翔一は、「簡単ですよ、あんなの。猿でもできます」と平然と答える。
 ショックを受ける氷川の前で、翔一は手品を披露するが、氷川にはタネが分からなかった。
 そこに北條がやってきた。
 津上翔一に会うために。
 翔一は、北條にも手品を披露するが、北條はたちどころにタネを見破ってみせる。

 結局、氷川は刑事一課に転属となり、北條が暫定的にG3-X装着員となった。
 津上翔一にできることなら自分にもできると言い放つ北條に、小沢は翔一を見て何も感じられなかった北條には無理だと突き放す。
 小沢は、V-1プロジェクトを再開するよう高村教授に頼みに行くが、逆に教授から、なぜG3-Xに手を加えないのかと言われてしまった。
   小沢「手を加える? G3-Xは完璧です」
  高村「それが欠点なんだよ!
       G3-XのAI機能に協調するためには、大げさに言えば装着員は無我の境地にいなければならない。
       しかし、そんな人間はまずいない。
       どうやら君は、G3-XのAIレベルを落とすことを考えも付かなかったようだな。
       君は完璧なものを作り、それに満足してしまった。
       しかし、G3-Xは人間のためのものだ。
       君は、人間のことを考えるのを忘れている」

 教授は、G3-XのAI機能を制御するチップを小沢に渡した。
 「それをどう使うかは君の自由だ」と言って。
 小沢は悩んだ末、G3-Xに制御チップを組み込むのだった。

 翌日、北條はG3-Xを使いこなす秘訣を聞き出すため、再び翔一を訪ねた。
 そこで新しい手品を披露された北條は、ムキになってタネを考える。
 そんな時、新たなアンノウン(ポタモトリゴン・カッシス)が現れた。
 翔一はすぐに駆け出すが、北條はタネを考えるのに夢中で、太一が携帯電話を切ってしまったことにも気付かなかった。
 北條に連絡がつかないことから、小沢は氷川を呼び出して装着させる。
 そして氷川G3-Xは、アギトを投げ飛ばして逃走しようとするカッシスに追いつき、見事な手腕でこれを撃破した。

 一方、変身のダメージも癒えてアギトを探し始めた涼は、現場に急行するG3-Xを見付け、後を付けてアギトを発見する。
 激しい戦いの末、アギトを水の中に蹴落としたギルスは満足して去る。
 意識を失い、水中に沈み行く翔一の脳裏に、夢で見た女性が再び語りかける。
 はっきりと見えたその姿に、翔一は「姉さん」と呼び掛けていた。
 意識を取り戻し、岸に這い上がった翔一は、ようやく全てを思い出した!

 そのころ美杉邸では、北條がようやく手品のタネを見抜いていた。


(傾向と対策)
 遂にG3-Xが完成した。
 やはり、AIシステムが問題だったようだ。
 特筆すべきは、高村教授の男気だろう。
 G3-Xの設計を見て「完璧なシステムだ」と言っていた教授は、欠点がAIシステムの独善にあることを見抜き、AIを制御するチップの開発に勤しんでいたらしい。
 “能力はV-1システムより上”と見抜いて、G3-Xを完全なものとすることに力を注いだところが素晴らしい。
 自分の手柄に拘らずに、こっそりチップを渡したところも大人だ。
 ところで、教授の言葉を借りるなら“無我の境地”でないとG3-XのAIと協調できないらしい。
 この辺は鷹羽の予想が外れてしまった。
 もの凄く相手を選ぶ機械だったのね。
 前回教授が言っていた「完璧なシステム」というのは、“全部勝手にやっちゃうシステム”という意味合いであり、半ば皮肉だったようだ。

 次に、今回非常に可愛かった北條について。
 小沢が『G3-Xの装着員に』と指名した(氷川以上に買っている)津上翔一がどんな人物か知りたくなった北條は、小沢の
   身長2メートル、体重150キロ、岩をも砕く肉体とコンピュータの頭脳を持った男
という言葉を真に受けて、『ええっ!?』という顔をしている。
 更に、翔一を見て『騙された…』という顔をしているのもナイス。
 パッと見て自分より優れた点はなさそうだと踏んで帰ったものの、小沢から『彼を見て何も感じなかったなら無理』と言われてしまったため、教授のところに中立な意見を聞きに行ったものの、そこでも『無我の境地にいなきゃ無理』というようなことを言われ、そこら辺の秘訣を知るべく再び翔一に会いに行っている。
 この辺は、なかなか謙虚だと思う。
 しかし、手品にムキになって携帯の呼出音に気付かなかったのはまずかった。
 今回の氷川を出動させた小沢に対し、反論することができない。
 “緊急時に駆け付けられず、連絡も取れなかった”ということになれば、十分装着員を降ろされる理由になってしまう。
 勝手に切っちゃう太一も太一だが、気付かなかった北條の方が悪い。

 さて、とうとう自分ではG3-Xの欠陥に気付かなかった小沢だが、今回も結構かましてくれた。
 まず、北條に向かっての
   あなたはV-1システムの装着員でしょう
だが、ついこの前自分でV-1システムの装着員に氷川を推薦した人間とは思えない言いぐさだ。
 まぁ、あっという間に完治しちゃったからことの重大さを理解していないのだろうが、北條を殺しかけたっていう負い目は持っててほしい。
 次に、高村教授に向かって言った
   あれは悪いシステムではありません
という言葉。
 全然褒め言葉になってないことに気付いてほしい。
 この辺は、ホントに小沢の悪い癖なんだよね。
 無意識に相手を見下してしまう。

 ただそんな小沢が、教授の
   G3-Xは人間のためのものだ
   君は、人間のことを考えるのを忘れている
という言葉が正鵠を射ていることに気付き、北條のためにG3-Xに制御チップを組み込んだことは高く評価したい。
 小沢的には“北條のため”という意識は特になかっただろうが、あの時点で氷川が装着員に返り咲くことは難しかった。
 少なくとも北條が1回暴走した後で組み込んだ方が氷川に有利ではあったはず。
 北條があんなことしてなければ、カッシス撃破は北條の実績としてカウントされていたのだ。
 それを、特に策謀を巡らせるようなことをせず、自分のミスを素直に認めるという形で制御チップを組み込んだのは、とても素晴らしい態度だ。
 そう、欠陥があったら直せばいいのだ。
 自力で気付かなかったのは残念だが、他人の指摘を素直に受けたのは非常に良かった。

 さて、“無我の境地”に達している男:翔一だが、G3-Xでいる間もアギトでいるとき同様、「ハッ!」という掛け声くらいしか発していなかった。
 アギトになっているときも、同じような状態なのだとしたら、やはり無我の境地ということになる。
 アギトとして戦えるというのは、やはり“アギトの能力”が求めるとおりに身体が動くからということなのだろう。
 2話でのアギトの暴走を乗り越えたことで身に付けたのだろうか?

 で、その翔一に「猿でもできる」と言われて「僕は猿以下ってことですか?」と言っていた氷川は、自分には分からなかった手品のタネを北條が見抜けるかどうか興味があったようだ。
 何も自分のグラスを空にしてまで試さなくてもよさそうなもんだが。
 鷹羽は、氷川も挑戦してコップを叩き割るんじゃないかと心配してしまった。

 さて、氷川が装着したG3-Xは、翔一が装着したときと同じような戦い方をしている。
 これは氷川の翔一に対する対抗意識なのか、それとも制御レベルを下げたにせよAIが指示したものなのだろうか。
 翔一はGM-01をロストした後、ガードアクセラーを引き抜いて戦っているが、氷川はGM-01を右脚に戻し、接近戦に移るべくアクセラーを抜いている。
 これは偶然か演出の意図か、それとも氷川の意志だろうか?

 そして、アギトを水中に叩き込んだ後、トドメを刺さずに立ち去ったギルス。
 沈む姿を見て、もう死んだと思ったのだろうか。
 復讐を果たしてしまうと、次にするべきことがないのだが、これからどうするつもりだろう?
 手帳の住所は渡り歩いた後だと思うのだが。
 いや、順番どおりだとすると、既に死んでいる三浦智子が残っているか。
 ピンピンしているアギトを見たときの驚きようが楽しみだ。

 そのショックで記憶を取り戻した翔一。
 雪菜は翔一の姉らしいが、そもそも翔一の本名はなんなんだろう?
 そして、亜紀が言っていた「記憶を取り戻せば、地獄を見ることになる」とは一体?

 さて、G3-Xの咬ませ犬で終わってしまったエイ怪人(ポタモトリゴン・カッシス)だが、カッシスはラテン語で鉄兜の意味らしい。
 ククルスも相当あっさりやられたけど、カッシスなど、1人も殺さないうちに死んでしまった。
 すっかり人間にも殺せる存在になってしまった怪人達だが、今後どうなっていくのだろう?

 さて、今回の見所は“この暑いのに、背広を着たままラーメンを食べる氷川と河野”だろう。
 いや、背広で外歩くのは仕方ないと思う。
 世間では、そうやって暑苦しい格好をして歩いているサラリーマンをよく見かける。
 特に、誰かを訪ねる場合など、背広を着て行かなきゃならない場面があるのは確かだ。
 でも、何も屋台のラーメン食べるときまで着てなくても…。
 せめて脱ぐとかできないの?

PS 手品のタネは、“切ったのは紐の端っこで、ハンカチで隠したまま外しちゃう”ってことでいいのかな?


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