『仮面ライダーアギト』
第24話 完璧マシン
2001/7/15 放送
(Story)
ハチ怪人メス(アピス・メリトゥス)をGX-05(ガトリングガン)で撃破したG3-Xは、アギトをも攻撃する。
G3-Xの猛攻に戸惑っていたアギトが本気で戦闘態勢に入ろうとしたとき、G3-Xは倒れてしまった。
状況の飲み込めないアギトは、パトカーらしき車の接近に取り敢えず退散する。
やってきた車は、氷川を心配して追ってきた小沢と尾室だった。
小沢がG3-Xの装甲を強制解除すると、氷川はその中で意識を失っており、西東京警察病院に搬送された。
意識を取り戻した氷川は、G3-X装着後何があったのかという小沢の質問に、北條に銃口を向けられた後のことは覚えておらず、なんとなくアンノウンと戦っていたような気がするとだけ答える。
“G3-Xは、北條が向けた銃口にAIが反応して反撃し、それに抵抗した氷川は衝撃で意識が朦朧としてアンノウンと戦っているつもりになり、その意志を受けたAIがアンノウンの出現地点に出動して攻撃した”というのが小沢の推測だった。
その推測を聞いた尾室は
なんだか微妙ですね
一体どっちが主人なんです? 氷川さんとG3-Xと…
とつぶやくのだった。
そんな2人の前を、治療を終えた北條が通りかかった。
北條は
氷川誠は、G3-XではV-1システムに勝てないことを知っていた
そのあせりがあんな行動を取らせたんだ
と、G3-Xの暴走が氷川の意志によるものだと非難するが、小沢は何も言い返せなかった。
警視庁では、G3-X暴走についての会議が行われていた。
その席で北條は、暴走が氷川の責任なら氷川を処分するべきであり、G3-Xに問題があるならV-1システムを採用するべきと主張するが、上層部は、現場の状況等からG3-Xがアンノウンを撃破したのは事実だとして、態度を保留する。
その結果を聞いた尾室は、氷川がアンノウンと戦っているつもりでV-1システムを破壊したのなら、氷川の責任になるのではないかと心配する。
それを聞いた小沢は、高村教授に意見を聞くべく城北大学の研究室に向かう。
高村は、既に警視庁上層部からG3-Xについて意見を求められ、設計図を検討していた。
そして、G3-Xは完璧なシステムであり、小沢の犯したミスは氷川を装着員に選んだことだけだと告げた。
割り切れない思いで氷川を見舞った小沢は、氷川の口からも
小沢さんの設計したシステムに問題があるはずありません
僕の腕が悪いんです
と言われ、思い悩む。
そのころ、屋上でバドミントンしていたOLが天井をすり抜けて1階の床に墜落死するという不可能犯罪が発生していた。
新たなアンノウン:ポタモトリゴン・ククルスの仕業だ。
そして翔一は、毎夜妙な夢を見るようになっていた。
海辺で見知らぬ女性が「こっちに来て」と呼び掛けてくる夢だ。
美杉教授は、その女性が翔一の恋人か妻なのではないかと言う。
また、涼は、前回の変身のダメージに苦しみながら、アギトへの憎しみを新たにしていた。
一方、自分がG3-Xを制御できないと思い知らされた氷川は、小沢が責任を負うつもりだと感じ、小沢が選んだ翔一なら制御できるだろうと考えて、翔一に装着員になるよう頼みに向かった。
翔一は、G3-Xが自分を攻撃してきたものと知って一旦は断るが、傷ついた身体にむち打って頼みに来た氷川への同情から、装着員になることを承知する。
一方小沢は、このままでは氷川が全責任を背負うことになると心配し、上層部に対してG3-Xのシステムに問題があったと報告し、どんな処分でも受ける覚悟を告げた。
その上で、V-1システムの装着員に経験豊富な氷川を推薦するのだった。
その会議の席上、アンノウン出現とG3-X出動の連絡が入った。
氷川が独断で翔一にG3-Xを装着させて出動させたのだ。
氷川の指揮の下、G3-Xとククルスの戦闘が始まった。
(傾向と対策)
G3-X暴走の秘密が明かされた。
やはり氷川は勝手に戦うG3-Xの中でうめいていただけだったらしい。
アギトとの戦闘中に倒れたのは、その時に氷川の意識が途絶えたためで、装着員の戦闘意欲が完全に消失すると稼働できないらしい。
小沢が言うところの「G3-Xはロボットじゃない」というのは、つまり“装着員の意志を感知しないと動かない”ということだろう。
つまり、G3-Xは、装着員の脳波なりを受けて、戦闘意欲を感知して戦闘するシステムを搭載しているらしい。
逆に言えば、G3-Xは装着員の“戦う”という意志さえ感知すれば、後は装着員の能力を問わずその真価を発揮できるのだ。
確かに装着する人間が必要だが、戦闘意欲さえ感じればAIの独壇場になる。
尾室が言った『どっちが主人なんです?』という言葉は、この“装着員の能力は全く問わない”という点を指しているとも言える。
ご丁寧に、オートフィッティングなどという便利な機能まであるから、誰でも装着できる。
尾室が装着してもアンノウンを倒せちゃうのだ。
今回の場合、装着員である氷川には、うっすらとアンノウンと戦っているような意識しかなかった。
ということは、“戦おう”という意志のある人間が装着すると、相手が誰であろうと戦い始める危険性を孕んでいるとも言える。
氷川には、常に“アンノウンを倒さなければ”という気負いがある。
良く言えば使命感があるのだし、責任感が強いとも言えるが、今回の場合、それが裏目に出た。
G3-XのAIは、銃口を向けられたことで過剰反応してV-1と戦い始め、氷川は、その動きに関節を極められた形で意識が朦朧としてしまった。
そしてAIは、氷川の潜在意識にある“アンノウンを倒す”に従う形でアンノウンの出現場所(氷川の無意識下の目的地)に急行し、アンノウンを攻撃し始めた。
そしてメリトゥスを倒した後も、氷川の“アンノウンを倒さなければ”という意志に呼応して、動く者(この場合はアギト)をアンノウンと見なして戦いだしたのだ。
これはつまり、装着員が“戦闘終了”を意識しない限り戦闘を続行するということで、うっかり戦闘中に意識が混濁すると、その場にいる全員を殺すまで戦い続けるということになりかねない。
G3-XのAIが鋭敏すぎるのが問題なのだ。
なまじ使命感の強い人間を起用すると、必要以上に頑張ってしまう。
高村が言った『小沢の犯したミスは、氷川を装着員に選んだこと』というのは、恐らくその点だろう。
要するに、戦闘系の漫画でよくある“半分意識不明の状態から繰り出した起死回生の一撃”みたいな真似をすると、ついでに守るべき対象や味方の警察官まで殺すことになりかねないということだ。
なんてこった、前回鷹羽が予想した“自分を攻撃する恐れのある者=敵”より危険度高いじゃん。
これを超欠陥品と呼ばずしてなんと言おう。
このことを前提にして、今回の小沢の逡巡を見てみよう。
氷川の言葉から、暴走の原因についての推測をした小沢だったが、北條が氷川を非難したことに対して反論していない。
そして、尾室の『どっちが主人なんです?』という言葉にショックを受け、会議で“氷川の責任かG3-Xの欠陥か”の二者択一を迫られる。
尾室から、アンノウンのつもりでV-1を破壊したなら、氷川の責任になりそうだと言われ、更に高村にも『ミスは氷川を装着員にしたことだ』と言われ、周囲の状況が氷川の責任という風に傾いていることを知り、氷川が馬鹿正直に自分のミスだと断言していることから、氷川を庇おうと決心した。
確かに部下を庇おうと自らが責任を負う姿勢は評価しよう。
だが、何か間違っちゃいないかい?
前述のとおり、どう考えても問題があるのはG3-XのAIの方だ。
暴走のそもそもの原因が銃口に対する過剰反応であり、この時点でAIが過敏すぎることが問題点として挙げられる。
次に、装着員の意志を無視して関節を無理矢理曲げ、半ば失神するほどのダメージを与えるという駆動系制御にも問題がある。
その上、オペレーター側から強制停止を掛けることもできず(できるというなら、やらない小沢は馬鹿だ)、意識朦朧とした状態での戦闘意欲にまで反応して戦い続けるというのは、人を守るために戦う強化服としては致命的な欠陥だ。
装着員の命はおろか、付近にいる人間全員を殺しかねないのだ。
小沢は、氷川に責任を負わせないよう確かに努力しているが、中途半端としか言いようがない。
一旦暴走を始めたG3-Xを、果たして氷川が止められるものだろうか。
アギトと肉弾戦ができるほどのG3-Xのパワーに対抗して動きを止めることは人間には不可能だ。
これが分かった時点で、小沢はG3-Xの欠陥に気付かなければならない。
廊下で北條と会ったときに、最初にそのことを謝るべきだろう。
明確に氷川を非難している北條に対し、小沢はまともに謝っていない。
一応「ごめんなさい」とは言っているが、どう見たって心がこもっていない。
今回のケースでは、悪いのはG3-XのAIシステムだ。
確かにいきなり銃口を向けた北條にも非難の余地があるが、銃口を向けられたくらいで暴走するお粗末なAIでは、ほかにも警官が発砲している可能性のある現場では使えない。
例えこれがAIの不備による暴走でなかったとしても、開発者である小沢の責任は回避しようがない。
通常なら、一生頭が上がらなくなるところだ。
北條は嫌みったらしく
まあ、いいでしょう。私は心の広い人間ですから
と言っているが、今回に限っては北條は本当に心が広い。
文句を並べ立てて辞職しろと言ってもおかしくない状況だ。
小沢がまともに謝らなかった事情として、小沢が北條を嫌っているという部分が大きいのは分かるが、故意でなかったとはいえ人1人殺しかけたのだから、真摯な反省があってしかるべきだろう。
少なくとも最初の会議の段階で、まずこの点を自ら指摘するべきだったのだ。
次に、小沢は高村教授のところに相談に行った際
珍しいな。君が人の意見を求めるとは
と皮肉った教授に対して
皮肉を言う時間はおありなんですか?
と皮肉で返している。
これは態度が悪いと思うが、どうだろう?
小沢は、コンペ途中のV-1システムを破壊したG3-Xの開発者だ。
事前にアポを取ったのは分かるし、いきなり皮肉られて面白くないのも分かるが、これが迷惑を掛けた挙げ句にものを頼みに来た人間の態度だろうか?
鷹羽が教授の立場だったら、残った9分40秒間、文句を言い続けて終わりにするところだ。
どうも小沢には、常に自分のペースで物事を運ぶ癖がある。
彼女の能力や経歴から考えれば無理からぬことではあるが、ここらで1度痛い目を見た方がいいように思う。
もう1つ、2度目の会議でG3-Xの欠陥を認めて自分についての処分は覚悟している旨発言しているが、その時いけしゃあしゃあとV-1システムの装着員に氷川を推薦している。
あつかましすぎる。
G3-Xが採用されたとして、装着員に氷川でなく北條を指定されたら、自分は納得できるのか?
そもそもV-1システムの実態を把握しているわけでもないくせに、北條以外の人間が使いこなせると信じているのか!?
更に、どうも小沢は“G3-Xは完璧だが、それを言うと氷川の責任になる”という考えから欠陥を認めているようだ。
本気で氷川を庇う気なら、北條が氷川を非難したとき、せめて「氷川は悪くない」くらいのことは言うべきだろう。
つまり小沢は、上に挙げたG3-Xの欠陥をちっとも理解していないということだ。
この辺にも彼女の独善が見え隠れしている。
では、どうして高村教授は、こんなにも問題のあるG3-Xを「完璧なシステムだ」と褒めたのか。
多分、G3-Xの恐ろしいほどの運用しやすさが理由だろう。
前回も書いたとおりV-1システムは、恐らくは北條の戦闘スタイルに合わせてチューニングされている。
射撃の管制についても、北條が使いやすいようなカスタム化がなされているはずなのだ。
つまり、北條以外の人間が装着しようとすると、ソフト・ハード共に大幅な変更が必要になる。
ところがG3-Xは、AIによる効率的駆動やオートフィッティング機能のお陰で誰でも装着できる上に、誰が装着してもほぼ同じ性能を引き出せる。
要は“半分意識を失っても戦意を失わないド根性男”以外なら、誰でも使えるシロモノなのだ。
システム運用面から見た場合、これほど使い勝手のいいものは珍しい。
AIに不備があるとはいえ、それはソフト面を手直しするだけで済むわけだから、弾力的な運用ができるシステムという前提は揺るがない。
教授は、これをもって「完璧なシステム」と言ったのだろう。
さて、小沢を信じ切っている氷川は、自分では制御しきれないことを知って装着員を外そうとした小沢に無理に頼み込んだ挙げ句に失態を演じたことから、今回の件が自分のせいだと感じている。
氷川は、それをG3-Xの問題とされることを心苦しく思って、翔一に装着させて実績を見せることでG3-Xの優秀性を証明しようとしたのだ。
G3-Xは、確かに装着員が翔一でも十分に能力を発揮するだろう。
それなりの戦果も挙げるかもしれない。
だが、上層部の許可どころかG3ユニットの指揮官である小沢にさえ断りなく出動した以上、例え戦果を挙げても、氷川に対して何らかの処罰は免れまい。
ましてや氷川自身、まだV-1システム破壊の件が片づいていないというのに、だ。
さて、今回のエイ怪人(ポタモトリゴン・ククルス)だが、ポタモトリゴンは淡水エイの学名なのだが、ククルスの方は、カッコウの学名以外見付けられなかった。
これまでの経験から言って、学名が2つ続くということは考えにくい。
でも、「ククルス」で調べると、某有名アニメで孤児を育てていた脱走兵くらいしか出てこないんだよな〜。
※ ククルスはラテン語で「頭巾」のことだとの情報を頂きました。
(情報提供:深黄泉さん)
そして翔一の夢に出てくる女性だが、OPクレジットを見るとどうやら「雪菜」という名らしい。
風谷教授のビデオテープに残されていた「こっちに来て」という声の主だろうか?
だとしたら、翔一にどこへ来いと言っているのか?
風谷教授の死と翔一との関係に関わりのある女性のようだ。
「いらっしゃい」ではなく「来て」だから、母親の類ではなさそうだし…。
さて、今回の見所は、翔一の
なんてことするんです
何度も氷川さんのこと助けてあげたのに、いきなり襲い掛かるなんてひどいです
だろう。
アギトがG3-Xと戦ったとき、最初は本気でG3-Xと戦ってはいなかった。
メリトゥスを倒してくれた相手だし、G3に似ていることから、警察関係者だと思ったのだろう。
大してダメージも受けていないようだったから、G3-Xの格闘戦能力はアギトよりは落ちるのだろう。
しかし、自分が襲われたから嫌いになったというのは、なんだか面白い。