『仮面ライダーアギト』
23話 資格ある者
2001/7/8 放送  

(Story)
 ハチ怪人オス(アピス・ウェスパ)をストームハルバードで倒したアギトは、続いて襲い掛かったハチ怪人メス(アピス・メリトゥス)と戦う。
 しかし、フレイムセイバーで触覚を1本切り落としただけで逃げられてしまった。
 その後メリトゥスは、元の被害者と血縁関係のない人間ばかりを襲う。
 北條は、警官の目撃証言から、メリトゥスがアギトとの戦いで受けたダメージのために暴走しているのではないかと推測する。
 上層部は、アンノウンの被害を抑えるため、G3-XとV-1システムの完成を急がせるのだった。

 一方、G3-Xのシミュレーションを行った氷川は、精密検査の結果、全身の筋肉が広範囲にわたって断裂を起こしていることが分かった。
 G3-Xに搭載されたAIの求める動きが氷川の動きと一致しないため、そのダメージが氷川の身体に跳ね返ってくるのだ。
 そんなとき、再び現れたメリトゥスを未完成のV-1システムが撃退した。
 北條の独断による出動だったが、一応の成果を挙げたV-1システムに、G3ユニットは色めき立ち、小沢と氷川は、G3-Xの装着員に相応しい人間のスカウトに向かう。
 小沢が選んだ相手は翔一だった。
 尾室の口からそれを知った上層部は、小沢を呼び出す。
 尾室に文句を言おうとした小沢だったが、尾室から『あんなに頑張っている氷川の気持ちも考えてほしい』と言われ、動揺する。
 氷川からも
   どうしても納得できないんです
   G3-Xの装着員が、なぜ津上さんでなければならないのか
   北條さんなら、まだ分かりますが…
   お願いします、もう1度僕にチャンスをください!
と言われ、小沢は氷川の装着でコンペに臨む。

 コンペ当日。
 射撃マヌーバでV-1システムは順調な仕上がりを見せ、G3-Xの番となった。
 だが、交代の際にV-1システムがG3-Xの方に銃口を向けた途端、G3-XはV-1システムを攻撃した。
 V-1システムを破壊し、気絶した北條にとどめを刺そうとしたG3-Xは、アンノウン出現の報を聞いて攻撃の手を止め、勝手に出動する。
 そして、メリトゥスと戦うアギトを発見し、アギトもろともメリトゥスをガトリングガンで攻撃する。
 周囲の被害を考えない猛攻でメリトゥスを撃破したG3-Xは、アギトにさらなる攻撃を開始した!


(傾向と対策)
 超欠陥品G3-X初出動!
 G3-Xのシステムは、ボディを制御するAIシステムによる行動の最適化と、それと合わせて動くことのできる装着員による相乗効果を狙っているものと思われる。
 小沢としては、細かい戦術判断は装着員に任せるつもりでいるようだが、その場合、前提として装着員はAIの行動パターンに乗っ取った上で独自の判断ができるということになる。
 氷川は、カメ怪人(テストゥード・オケアヌス)とのシミュレーションで、AIの行動パターンと一致した行動をとれないために、“自分がやろうと思ったのと違う行動を無理矢理とらされる”という状態になっていた。
 つまり、他人に無理矢理腕を振り回されているのと同じような状態になっていたのだ。
 例えば、腕を自分が曲げようと思った角度と違う角度に曲げられるということが頻繁に起こる状態であり、極論すれば関節技をかけられ続けたようなものだ。
 これでは装着員の身体が持たない。
 これはパワードスーツや強化外骨格システム全てが抱える問題だ。
 つまり、ギャバン等のようなコンピュータによる制御を受けたコンバットスーツシステム共通の“スーツの動きが装着者のそれより速くかつ強い”というジレンマから生じるものなのだ。
 通常は、“装着者の意志を感知して動く”とか、“装着者に合わせてスーツをチューニングする”とかいう形になるのだが、G3-Xの場合、“装着者がスーツの行動パターンに合わせる”という主客転倒の事態になっている。
 はっきり言ってG3-Xは、中に全身可動の人形でも入れておけば勝手に戦ってくれるほどの単独行動力があるのだ。
 戦闘に関しては素人(と氷川や小沢は思っている)である翔一をスカウトしようとするのがそれを端的に表している。
 小沢としては、装着員の行動がAIの求める行動と一致した場合に、人間の細やかな判断力とコンピュータの精密さを併せ持つ存在になるという前提で開発したのだろうが、まず“初めにメカありき”なのだ。
 確かに、アンノウンやアギト・ギルスとの戦力差を埋めるためには、スーツの行動を可能な限り合理化する必要があるが、これでは装着者が可哀想だ。
 加えて、搭載されたAIにはまだまだ問題が多い。

 シミュレーションや今回のマヌーバでは、G3-Xのモニター画面に『INITIATIVE:A.I.(AI優位)』と表示されている。
 つまり、装着者の判断よりAIの判断を優先して活動するということだ。
 そして、北條のV-1が銃口を向けたときは『FIND:ENEMY(敵発見)』と表示してから攻撃に移っている。
 つまり、北條が冗談で向けた銃口を、自分に対する攻撃行動と早合点して攻撃を仕掛けたのだ。
 しかも、北條が気を失い、明らかに攻撃力を失っているのに、とどめを刺そうとしている。
 アンノウン出現の連絡を聞きつけるなりそっちへ向かったために北條は助かったが、下手をすると、小沢のせいで北條は殺されていた。
 この場合、氷川がG3-Xの中で何をしているかというと
   1 気絶している
   2 「北條に負けたくない」という気持ちから、極度の興奮状態で暴走している
   3 勝手に動くスーツに痛めつけられてうめいている
のどれかだろう。
 2の場合は、「小沢が北條を殺した」とは言い切れなくなるが、それでも小沢の責任も十分大きい。
 ただ、「北條に負けたくない」という暴走だと、アギトへの攻撃が説明できないので、鷹羽としては3を推したい。
 とすると、アンノウン出現の報を聞いてそっちに向かったのは、氷川の意志(アンノウンと戦う)とAIの判断が一致したからだと思われ、下手をするとAIが音声認識までやってのけるということかもしれない。
 いずれにしても、今のG3-Xは危険すぎる。
 どれくらい危険かというと、アンノウンを狙った警官の流れ弾がG3-Xに命中した場合、警官を攻撃目標にしかねないくらい危ないのだ。
 いずれにしても、唯我独尊的な小沢の設計らしい失敗と言えよう。
 小沢は、強さを求めるあまり、スーツに合わせることのできる装着員を要求してしまったのだ。
 尾室や北條の言葉でそのことを思い知らされた小沢が、今後どういった改良を加えるか楽しみだ。

 一方、小沢が翔一をスカウトしようとしたのは、翔一が常にリラックスしていてG3-Xの動きに逆らわないからだという。
 これをアギトの戦いに当てはめると、翔一はアギトに変身したことで身に付ける戦闘能力に逆らわないことで戦闘テクニックを発揮しているとも考えられる。
 つまり、アギトの動きが翔一のそれと一致しないことに対する説明になるかもしれないということだ。
 『アギト』という番組の描写からすると、伏線ということもあり得ると思うので覚えておこう。

 ここで、北條と小沢の嫌味合戦を見直してみよう。
   北條「V-1プロジェクトのリーダーは、あなたの恩師の高村教授だ
       あなたの手の内は全て知っている」
   小沢「私は高村教授の全てを知っている
       でも、彼は私のごく一部しか知らないわ」
   北條「相変わらずハッタリだけは天才的だ
       ま、すぐに答えは出ますよ
       V-1システムは私が装着します
       私に相応しいシステムなら、今度こそ私の本当の力を発揮できるでしょう
   小沢「面白いおとぎ話ね」
   北條「あなたの与太話よりはマシでしょう」
となっている。
 『高村は小沢(の手の内)のごく一部しか知らない』というのは本当だろう。
 G3による実戦データ自体は、上層部から北條を通じて高村に渡っているにしても、やはり開発者自身が実戦を目の当たりにしているのといないのとでは得られるデータの質が違う。
 また、専門家による開発チームの1人である高村教授と、1人で何でもこなす総合開発者である小沢のスタンスの違いもあって、全体像が見える小沢の方が有利だ。
 この意味では小沢の強がりはハッタリとばかりは言えない。
 だが一方で、北條の言う『私に相応しいシステムなら、本当の力を発揮できる』という言葉も嘘とは言えない。
 G3の設計思想は、“中距離から近接戦闘までこなす万能型”であり、射撃を主体とした戦闘を得意とする北條には使い勝手が悪そうだ。
 事実、射撃に関する限り、北條は1発も外したことがない。
 ならば、北條の戦闘スタイルに合わせて作られたV-1システムならば、G3を装着したときよりも能力を発揮できる。
 北條は、自分に合わせたシステムを考えたことで、皮肉にもG3-Xに足りない“初めに装着者ありき”という設計思想を持っていたのだ。
 今回は、仲間(ここのところ、北條が嫌味を言うのは小沢相手に限られているようだ)である氷川からの攻撃に驚いたために遅れを取ったが、面と向かっての戦闘なら、V-1システムはG3-Xと同等の力を持っているのではないだろうか。

 さて、今回のメリトゥスの暴走から、アンノウンについていくつかのことが分かった。
 まず、斬られた触覚が消滅してしまったことから、怪人は死体が残らない可能性が高い。
 爆発した後の破片は、触覚と同様に消滅してしまうのではないだろうか。
 となると、あれだけ倒された怪人達から何も分かっていないことが納得できる。
 研究のしようもないだろう。
 アギトがストームフォームからフレイムフォームになった途端に消滅したストームハルバードと共通点があるかもしれない。
 次に、怪人が狙う相手は“元々知っている”のではなく、“その時々に感じている”のだということ。
 触覚で何を感知しているのかは分からないが、感覚が狂ったことで関係ない人間を殺しまくっていることから、そう考えられる。
 感覚器官を失ったことで発狂しただけという可能性もあるが、そこにいた人間を全員殺してはいないことや昆虫の習性などと合わせて考えると、やはり相手を見分けられなくなっているだけだろう。
 メリトゥスは、唇の脇にも広がる横割れの顎など、見所の多い造形だったが、あっけない最後だった。
 弾切れと見て突っ込んでいったのはいいが、まさか予備弾倉があったとは…。
 自分から撃たれに行っちゃったね。

 で、以前掲示板で問題になった翔一の無免許運転疑惑だが、結局翔一は免許を持っていることで解決した。
 鷹羽はやり方を調べきれなかったのだが、やはり記憶喪失者に仮の戸籍を与えることはできるらしい。
 翔一の生年月日は、警察の供述調書によると、推定という但し書き付きで
   昭和55年4月1日
ということになっていた。
 仮の本籍は美杉家の住所になっているようで
   雑司ヶ谷4−21−4(6?)
となっている。

 こんなのが今更分かったのも、氷川の翔一に対する意地のお陰だ。
 小沢に「無駄な力が入っている」と言われていた氷川は、翔一の「無駄な力」という言葉に反応して、ムキになって豆腐を持ち上げる。
 木綿豆腐ではできても絹ごし豆腐では無理だと言われると、わざわざ買いに行って、なおかつ失敗して負け惜しみまで言っている。
 更にここぞとばかりに無免許疑惑を持ち出して翔一を貶めるなど、翔一の前でしか見られないガキっぽさ大爆発だった。
 小沢も止めないでやらせとけばいいのに…。

 今回の“小沢語録”は
   ビールはないの?
だろう。
 人の家に来て、ビールを要求しないように。
 しかも勤務中でしょうが。
 翔一も、「うち、お酒飲む人いないんで」じゃない!

 さて、今回の見所は、G3-Xの装着者に立候補する尾室だろう。
 掲示板で最終兵器呼ばわりされていた尾室だが、まさか自分でも勘違いするほどとは…。
 今夜の掲示板が楽しみだ。


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