『仮面ライダーアギト』
第20話 或る目覚め
2001/6/10 放送
(Story)
数日前の戦いでボロボロになった涼は、翔一(榊亜紀)のアパートに到着するなり倒れてしまった。
涼は、亜紀の
もしかしたら生きていけるかもしれない、一緒に
という言葉に希望を抱いて亜紀のアパートにやってきたのだ。
翔一は、悶え苦しむ涼を取り敢えずベッドに運んで看病する。
そして、G3ルームでは、小沢ら3人が、司の自首について話し合っていた。
司が花村殺害の犯人として自首したことで、司が提出していたG3ユニット改革案は白紙に戻ったのだが、氷川は司がアンノウンの仕業に見せかけて殺人を犯したことについて信じられない思いだった。
そんな氷川に小沢は
ある意味でアンノウンよりも人間の方が怖いのかもしれない
裏があって表があって、更にまた裏がある…そんな生き物は人間だけでしょうね
と言うのだった。
その頃、謎の青年が入院している病院では、沢木と青年の会話が新たな段階に入っていた。
青年「君は、人間について知りたいと言い、そして、多くの人間の内面を旅しました
次に、何を望みますか?」
沢木「その前に聞かせてくれ
あなたはなぜ俺を選んだ?」
青年「私が選んだわけではありません
君が自らの手で私の使徒たる資格を得たのです
この世に出現した最初のアギトを殺したことによって」
沢木「頼みがある
あなたのその権威の一部を俺にくれ
あなたが愛する人間が本来持ってはいけない力
その力を解放する権威を俺にくれ」
青年「そんな力を得てどうするつもりですか?
私の敵になるつもりですか?
それでもいいでしょう
全ての望みを叶えなさい」
そして、青年が沢木に右手をかざすと、沢木の右手にも青年と同じ梵字が表れていた。
青年は更に続ける。
青年「これで君は二度と津上翔一に戻ることはできなくなりました」
沢木「そんな名前はとっくの昔に捨てている」
沢木はそう言い残して病室を出ていき、背中で見送る青年の目からは、なぜか涙が溢れていた。
翔一は、涼の様子を見るために、真魚と太一に店番をさせてアパートに戻った。
相変わらず苦しげな涼の耳に、「立て」「襲え」という声が響く。
背後から忍び寄る涼の気配に気付かないまま、翔一はアパートの鍵を掛けずに店に戻った。
一方、あるマンションの一室では、榊亜紀の依頼で関谷真澄が警視庁のコンピュータから『アギト捕獲作戦に関する報告書』を盗み出していた。
榊亜紀の能力(ちから)の覚醒を聞きつけて訪れた相良克彦の目の前で、報告書資料は関谷の手から舞い上がり、亜紀の手の上で再びまとまった。
それを見た相良は
俺達があかつき号であの事件に遭遇して9か月…
いつかこうなると分かっていたが、アギトに接触して覚醒の時が早まったか
とつぶやいた。
そして、報告書を手にエレベータで1階に向かう亜紀の前に沢木が現れ、亜紀に梵字からの光を浴びせる。
倒れ伏した亜紀に、沢木は
お前はまだ赤ん坊だ
だが、俺がお前の時を早めた
お前の能力は更に力強く覚醒する
その能力をどう使うかはお前の自由だ
と言い残して立ち去った。
亜紀は、その能力をもってアギト捕獲作戦のメンバーだった機動隊員を殺していく。
そうとは知らない氷川は、アンノウンの仕業らしい事件発生の報を受けて現場に到着し、河野から、2年前の風谷伸幸殺しと同じ手口であることを知らされた。
そして、被害者が捕獲作戦のメンバーだったことを知って北條に連絡を取るが、そのころ北條もまた亜紀に襲われていた。
鉄板で身体を縛られて気を失い、絶体絶命の北條の危機に、なんと青い身体に白マフラーのヒョウ怪人(パンテラス・キュアネウス)が現れ、亜紀に迫る。
そして、テナントオーナーから花村ベーカリー即時立ち退きを要求され、しょげながら真魚・太一と歩いていた翔一は、キュアネウスの出現を察知して駆け出す。
亜紀は、その能力でキュアネウスをねじ伏せ、翔一の到着もあってその場を脱出した。
そして、フレイムフォームでキュアネウスを倒したアギトに、赤い身体と黒マフラーのヒョウ怪人(パンテラス・ルベオー)と女のヒョウ怪人(パンテラス・マギストラ)の2体が襲い掛かる。
そのころ、突然走り出した翔一の身を案じてアパートに駆け付けた真魚に、「立て」「襲え」という声に導かれた涼が迫る…!
(傾向と対策)
あかつき号関連の謎が動き始めた。
アンノウンに襲われたせいか、アギトと接触したせいかは知らないが、亜紀には超能力(今のところ念動力か?)が目覚めたのだ。
現在亜紀がいるのは、涼の父の手帳に名前が載っていた関谷真澄のマンションのようだ。
また、このマンションを同じあかつき号の乗客だった相良克彦が訪ねているところを見ると、やはりあかつき号ネットワークとも言うべき組織が存在しているのは間違いないだろう。
3連の鍵に加えてチェーンロックまで掛けているという関谷の用心ぶりが、何かに怯えている彼女らの状況を表している。
もっとも、警視庁のコンピュータをハックするなどという非合法手段を使っている人間なら、用心して当然かもしれない。
でも、相良が来た後って全く鍵をかけ直してないんだよな〜。
そのほか、今回の新情報から推測される重大なことがいくつかある。
まず、沢木はあかつき号ネットワークと直接関係なさそうだということだ。
沢木と亜紀の様子からは、ネットワークの上下関係というものが感じられない。
もちろん、沢木がネットワークの黒幕である可能性は否定しきれないが、少なくとも沢木の側ではネットワークの存在は知っていたが、亜紀は沢木を知らないと言っていいだろう。
次に、真魚の父・伸幸を殺したのは、アンノウンではなく超能力を持った人間であるらしいことだ。
亜紀の能力で殺された機動隊員は、伸幸と同様、外傷がないまま内臓を破壊されているらしい。
つまり同様の能力者なら、伸幸を殺せるということだ。
そして、沢木がかつて『津上翔一』という名であり、この世に出現した最初のアギトを殺したことによって青年の使徒たる資格を得たこと。
鷹羽は、この“最初のアギト”が伸幸ではないかと思う。
翔一が、その場に居合わせたことでアギトの能力を継いだという考え方もできる。
アギトが人間程度に殺されるのかという疑問も残るが、伸幸が潜在的変身能力者だったとすれば十分殺せるし、亜紀の短時間の攻撃でキュアネウスは数秒間動けないほどのダメージを受けたのだから、変身の暇を与えずに一気に攻め立てればやはり倒せるはずだ。
そして、沢木は何らかの手段を使って『津上翔一』という名前を抹消してしまったのかもしれない。
記憶喪失で『津上翔一様』という封筒を持った人間が発見されたら、当然全国の津上翔一氏の家族に問い合わせが行くことになるだろうからだ。
もちろん、問い合わせがきたけどすっとぼけていたという可能性もあるが。
また、アンノウンの目的が超能力者抹殺にあるらしいこともはっきりした。
あかつき号の乗客が襲われるのも超能力を目覚めさせる可能性が高いからだと考えられる。
そして、アギトと接触することで、あかつき号の乗客達の覚醒が早まるのだとすれば、青年が翔一と接触した三浦智子を殺した理由も納得できる。
怪人が殺す対象が“既に超能力に目覚め始めた人間及びその血族(よく似た遺伝子を持つ者)”であり、それ以外の人間は邪魔しない限り殺してはいけない(保護しなければならない)と仮定すると、ヒドロゾアの「人が人を殺してはいけない」も説明がつくし、三雲咲子を殺したアングィス・フェミネウスが少年に処刑されたことも納得できる。
そして、あかつき号の乗客が今現在は超能力者でないことからすると、怪人に殺させるわけにはいかないが翔一との接触を避けねばならないという必然から、青年が殺さざるを得なくなるのだ。
今のところ、怪人の行動原理としてこれが正解と思われるが…。
そして、今回新たに発生した謎もある。
1つ目は
涼の耳に響く「立て」「襲え」という声は誰のものか?
また、本当に涼に向けられたものなのか?
というものだ。
もしかしたら、パンテラス達に向けられた、或いはマギストラがほかの2体に向けて発したテレパシーの類を涼が傍受してしまっているということもあり得る。
この場合、「立て」というのは「出現せよ」という意味になるだろう。
ま、涼自身に向けられているとは思うけどね。
2つ目は
青年はどういうつもりで梵字(の能力の一部)を沢木に分け与えたのか?
沢木が去っていくときの涙は何を意味するのか?
「私の敵になるつもりですか? それでもいいでしょう」とはどういうことなのか?
だ。
人間の超能力を目覚めさせないことがホムンクルス1号の目的だとすると、超能力を目覚めさせるという沢木の行動目的は明らかに敵対行為だ。
しかも沢木はホムンクルスの使徒だという。
ならば、どうして部下とも言える相手の敵対行為を許すのか?
“最初のアギト”抹殺という成果は、敵対行為を許すほど素晴らしい手柄なのだろうか。
さて、話を今回のエピソードに戻そう。
沢木の手によって能力が更に覚醒した後の亜紀は、ホムンクルス1号のように黒ずくめになり、超能力を使うときに金色に輝くなど、共通点を感じる。
やはりホムンクルス1号と超能力を解放された人間には何か共通点があると言うことだろうか。
そして彼女の目的は、当初はギルスを殺した(と彼女は思っていた)捕獲作戦メンバーへの復讐だったと思われるが、報告書(作ってあったのね)を読めば、ギルスを取り逃がしたことは分かるはず。
それでも、涼を探すより捕獲作戦メンバー殺害を優先した彼女の目的はなんだろう。
1 車をロックして出られなくした上で内蔵を破壊
2 金網で縛り上げて逃げられなくして内蔵を破壊
3 車を暴走させてダメージを与え、鉄板で締め上げてから殺そうとして邪魔が入った
という殺し方にはかなりのねちっこさが感じられるが、反面亜紀の表情は殺す相手を見下しているようにしか見えない。
能力に目覚めたことがよほど嬉しいのか?
一言もしゃべらなかったのも謎だが、人間を見下すようになって口をきくのも嫌というほどなのだろうか。
で、首謀者の北條を念入りに痛めつけていたようだから次はG3の氷川かな…と思ったけど、なんだ、亜紀はG3がギルスをいじめるところは見てないんだった。
次に戦闘シーンについて。
今回のアギトの戦闘は、やはり添え物的な面が強いが、それでもなかなか見応えがあった。
変身シーンも結構気合い入ってたし、自分から攻めていっている。
途中の早回しアクションは変だったけど、キュアネウスを飛び越して背中を向けつつフレイムセイバーを構える姿は格好良かった。
また、キュアネウスに突き刺した途端に燃え始めるセイバーというのもナイス。
ちょっと合成が不自然だったけど、それくらいは許そう。
ワリを食ったのがキュアネウスで、亜紀にはいいようにあしらわれるわ、セイバーの射程圏内を飛び越えて自滅するわで、いいとこなし。
後に2体も控えているからあっさり済まされてしまったんだね。
で、キュアネウスを倒して一息ついたところからのマギストラとルベオーの猛攻がもっといい。
コンビネーションも完璧で、アギトがよく耐えていると言いたいくらいの猛攻だ。
当然すぐに決着が付くわけはないが、この後どうやって水入りになるのか、実に楽しみだ。
ちなみに、ルベオーは赤、マギストラは主という意味だが、キュアネウスは不明。
「青」に該当する色だと思うのだが、まだ見付からないので、次回への宿題ということで。
さて、やはりというか、花村ベーカリーを追われることになった翔一。
そりゃそうだ。
契約者が死んだ以上、相続人でもない人間に場所を貸し続ける必要はないのだから。
でも、逆に言えば、売上をチョロまかして逃げても見付からないということにも…。
やったね、翔一。
しばらくは生活費に困らないぞ。
で、要望により復活の“小沢語録”だが、今回は
一瞬でも同情した私がバカだったわ!
にしよう。
心ならずも司を自首させた北條がさぞ凹んでいるだろうと同情して昼食(焼き肉!)に誘った小沢に対し、北條は
心外だなあ
もしかして司龍二の一件で私に同情しているんですか?
あの男は昔から目の上の瘤だった
まったく、せいせいしてますよ
と返し、更に
昼間から焼き肉ですか…
しばらくは私に近付かないよう願いますよ
あの匂いが嫌いなんです
と憎まれ口を叩いて去っていった。
それに怒った小沢が上記の言葉を吐くのだが、小沢の色眼鏡が言わせた言葉だと思う。
北條は、司の件では本当に凹んでいた。
ただプライドが高いため、それを他人に悟られるのが嫌なだけだ。
小沢に誘われたときの表情を見れば分かることなのだが、北條に対して常日頃から偏見を持っている(偏見とも言い切れないが)小沢には、それが見抜けなかったのだ。
まぁ、彼女も若いしね。
さて今回の見所は、“亜紀と間違えて翔一の腕を握った涼”だろう。
亜紀の言った「もしかしたら生きていけるかもしれない、一緒に」という言葉から、自分を受け入れてくれる人を見付けた喜びで一杯の涼は、亜紀のアパートにいるのは亜紀に違いないということもあって、つい腕を掴んでしまったわけだ。
その後の「なんでお前がここに?」というのがちょっとマヌケかもしれない。