『仮面ライダーアギト』
第8話 赤い炎の剣
2001/3/18 放送
(Story)
カラス怪人(コルウス・クロッキオ)の攻撃になす術もなくボロ負けしてしまったアギト=翔一は、ダメージのために家まで帰り着くことなく倒れてしまった。
翌日、目を覚ました翔一は、エアプレーンで遊ぶ子供達を見て、“飛んでいる姿を目で追えないわけじゃない”ということに気付く。
家に辿り着いた翔一は、再び真魚の部屋で新聞記事を見ようと、記事が挟んであった本の中を探すが見当たらない。
帰ってきた太一にじゃれられているうちに、翔一は真魚のベッドを壊してしまう。
そこへ帰ってきた真魚は、父を殺したかもしれない翔一が部屋にいることに腹を立て、「出ていって」と怒りを叩き付けた。
一方警視庁では、同一の手口による犯行が、距離と時間差の関係から人間業とは思えないため、アンノウンの仕業と断定。
会議の席上で、北條はG3の装着員を一刻も早く決定するよう幹部に進言した。
会議の後、北條は氷川に
あなたが優秀な刑事であることには変わりはない
別の部署で活躍できることを祈っていますよ
と嫌味を言った。
小沢はその言葉に怒りを露わにするが、尾室は
でも、氷川さん、結構不器用だからな
G3の扱い、北條さんの方が巧かったりして
と漏らす。
仲間である尾室に『不器用』と言われた氷川は、少なからずショックを受けるのだった。
氷川は、外れ馬券のことを美杉教授に相談するため、再び美杉家を訪れるが、玄関前で会った真魚に
うちなんかに来る暇があったら、もっとほかにすることがあるんじゃないですか!?
となじられる。
そして、アポを取ったはずなのにまだ戻っていない教授を待つ間、氷川は翔一のベッド造りを手伝わされることになった。
翔一は、真魚の怒りの原因は、自分がベッドを壊したことだと思い、新しいベッドを作ろうとしていたのだった。
その夜、ようやく帰ってきた教授に、氷川は外れ馬券を見せるが、「ただの偶然」とにべもない返事で、更に「刑事として、ほかに仕事があるでしょう」と言われ、真魚の父が2年前に殺されたこと、その犯人がまだ捕まっていないことを聞かされた。
真魚は、1人になって、父の死ぬ場面を反芻していた。
あの日、出掛ける時に「いいものを買ってきてやる」と言っていた父。
何者かに襲われながら、プレゼントを守るため、自分から少しでも離そうとしている父。
そして、そのプレゼントは、小鳥の入った鳥カゴだった。
あらためて父の愛を噛みしめた真魚が帰宅すると、翔一が部屋でベッドを造っていた。
一心にベッドを造る翔一の姿に、父を殺した残忍な殺人犯とは違うものを感じた真魚は
翔一君にあんなことできるわけないもんね
とわだかまりを解くのだった。
そして、再びコルウスの気配を感じた翔一は、コルウスの犯行を阻止すると共に、徹底的なカウンター戦法で戦い、赤い姿になって剣を構え、向かい来るコルウスを一刀両断にするのだった。
その頃警視庁では、とうとう北條透がG3の装着員に決定していた。
一方、生命エネルギーを失っていた涼の身体は、謎の少年の右手の光を浴びて元に戻ったが、涼は、少年が急成長を遂げる姿を見て再びギルスに変身、角を最大伸長させて青年に襲い掛かった。
それを見た青年は
アギト…いや、ギルスか
珍しいな…
とつぶやくのだった。
(傾向と対策)
今回のメインは、翔一に対する真魚の不信感とその解消なのだが、どうも描写が薄かったようだ。
真魚のキャパシティーでは、父の命日が過ぎたばかりだということ、その死の真相の一部を知ったこと、そこに翔一が関与しているらしいことなどから、イライラしてしまうのは仕方がない。
だが、それを翔一にぶつけるのはともかく、通りすがりの氷川にぶつけるというのは、描き方をちょっと間違えるとかなりやばいことになる。
実際、今回の描き方では、真魚が嫌な女の子に見えかねない。
それでなくても当たりがきつくて自分勝手な印象が強い娘なのに、あんな描き方をされては、『クウガ』の実加のように“何自分勝手なこと言ってんだ、バカ娘”的な受け取られ方をしてしまう。
そうなるに至った経緯というものをちゃんと掘り下げないと、大変なのよ。
父の死を反芻して、自分の中で結論を付けるに当たり、一心にベッドを造る翔一の無邪気さを見たことがどう作用したのかが、あれでは分からない。
取り敢えず、真魚としては今の翔一が父の死に関与していないことについて納得したことで、翔一に対する態度が元に戻ったというわけだ。
で、今更気付いたんだけど、真魚のお父さんって2年前に死んだんだよね?
ってことは、今年が3回忌じゃないの?
3回忌の法要をすっかり忘れてる義弟ってのは、かなりひどくないかい?
今回で分かったことだが、どうやら真魚には過去透視の能力もあるようで、何らかの媒体によって、その媒体と直接関係ない部分も見ることができるらしい。
前回鷹羽が書いた“第三者的にものを見る”ということだ。
伸幸が、何者かに襲われながら鳥かごを引き離すべく蹴っていること、その鳥カゴに張ってあるカードの文字など、少なくとも翔一はよく見ていないはずの部分をアップで見たり、鳥カゴから飛び出した小鳥を目で追うなど、擬似的にその場にいるように振る舞えるようだ。
だから、前回、鏡に写った翔一の横顔を見ることができたのだね。
あれは翔一本人には絶対見ることのできないもん。
もう1つ気付いたことだけど、氷川は何について捜査しているのかを教授や真魚には教えていない。
考えてみれば当たり前で、民間人に捜査中の事件の内容を詳しく教えられるわけはないし、アンノウンのことが公式に発表されているかどうかすら怪しい現状では、教授達にそのことを話さないのは、むしろ当然のことだ。
そしてそのことが、アンノウンに襲われる可能性のある超能力者:真魚が本論に絡まない原因だ。
シナリオ側としては、わざとこのすれ違い状態を生み出しているのだろう。
氷川がアンノウンなる怪物の捜査に当たっていること、アンノウンが超能力者とその血族を狙っていることを真魚や翔一が知れば、当然氷川を情報源にできるようになるわけだし、真魚自身は、父の死の真相に一歩近付く可能性があるのだから。
場合によっては、警察がこっそり真魚を囮に使うべく、護衛を付けるかもしれない。
もう暫くはこのネタを引っ張りそうね。
さて、ホムンクルス1号君が言った「アギト…いや、ギルスか。珍しいな…」とは、どういう意味だろう?
アギトやギルスは、何者かの手で誕生するのではなく、時々自然発生する存在なのだろうか。
そもそも、今頃こんなことを言うってことは、彼は涼の正体をはっきりとは知らずに助けたということだ。
一体何が目的なのか…?
前回、必殺のキックをかわされて負けたアギトは、その反省から、今回は徹底的な待ち戦法をとった。
コルウスが襲い掛かってくるのを見定めてから、カウンター気味にキックを入れ、体勢を崩したところで連続攻撃に入る。
最終的には、向こうが突っ込んでくるのに合わせてフレイムセイバーで一刀両断にしているわけで、キックと違って待ちかまえていることのできる攻撃方法として、剣を使えるフレイムフォームを選択したのは正しい。
ストームハルバードでは、一撃で大ダメージを与えることは難しそうだし、キックではタイミング合わせが難しいからだ。
だが、この戦法には重大な欠点があって、向こうが逃げちゃうと、それ以上何もできなかったりする。
こちらから攻撃を仕掛けないが故の有利なのだ。
待ちアギトと呼ぼう。
良く言えば後の先というやつだけど、対人の格ゲーなら、後で相手からリアルファイトを申し込まれそうな戦法だね。
今回の“小沢語録”。
「焼き肉でも食べに行こっか」
北條の嫌味や、尾室の意見によるチーム内の不協和音に対し、小沢は『飯でも食って機嫌直そう』と提案している。
当然、誘った&上司である小沢の奢りだ。
これって、課長クラスのおじさんが部下を誘う時のセリフだよね。
『一杯飲みに行こう』でないのは、子供番組だからではなく、いつ事件が起きて呼出が来るか分からないから、行動力を鈍らせる原因になる飲酒はできないせいだろう。
あ、あと、昼だったからというのもアリかも。
さて、今回の見所は、氷川君受難の物語だろう。
北條からは
別の部署で活躍できることを祈っていますよ
と嫌味を言われ、尾室にも
でも、氷川さん、結構不器用だからな
G3の扱い、北條さんの方が巧かったりして
と言われる。
美杉家に行けば行ったで、真魚から
氷川さんってちゃんと刑事の仕事しているんですか!?
と言われ、アポを取ったはずの教授は留守で、ベッド造りを手伝わされ、鋸を壊して(これは氷川が悪いんだけど)、翔一にまで
うわ、不器用なんですねぇ
とバカにされ、挙げ句の果てには
こっちのまで壊されちゃ大変ですから
まで言われるし…。
『不器用』と言われたことでムキになって(尾室に言われたのが余程悔しかったらしい)、何の根拠もなしに
僕の方が巧いはずです
とか言ってもう1本折っちゃうし、教授にも自説を真っ向から否定され
こんなことからは手を引いた方がいい
刑事として、ほかに仕事があるでしょう
とか言われて。
この上、来週は、晴れてG3の装着員になった北條に勝ち誇られちゃうんだから、可哀想♪
氷川君の受難は続く♪
PS でも氷川君、1話の頃に比べるとすっごく巧くなった。
先が楽しみだ。