『仮面ライダークウガ』
EPISODE44  危機

(Story)
 45号(ゴ・バベル・ダ:バッファロー種怪人)の死から約1ヶ月が過ぎた。
 科警研が完成させたマーキング弾の使用法と、今後の未確認生命体への対処を検討する会議が捜査本部で開かれ、そこに雄介も招かれる。
 未確認生命体を追うためには、時々目撃されているB-1号(バルバ)、B-9号(ラ・ドルド・グ:コンドル種怪人)、B-11号(ゴ・ガドル・バ:カブトムシ種怪人の人間体)にマーキング弾を打ち込んで、集まる場所を探るしかない。
 そして現在開発中の神経断裂弾を使って、未確認生命体の回復力そのものを破壊すれば、人間の手でも未確認生命体を倒せるという。
 神経断裂弾の開発は、急ピッチで進んでいた。
 
 会議が終わり、榎田は息子冴の授業参観に向かい、雄介は城南大学の考古学研究室に向かった。
 研究室で雄介は、桜子から、やはり古代のクウガは赤・青・緑・紫の4色にしかなれず、碑文にもヒントはなかったと言われた。
 もっと強くなるためにどうしたらいいのか悩む雄介は、ジャンの何気ない
  「じゃあ、それ(30秒しかもたない金の力)をもっと強くできれば」
という言葉から、もう1度電気ショックを受ければ、金の力を持続できるようになるのではないかと考え、関東医大の椿の元へ向かった。
 
 その頃、46号(ゴ・ガドル・バ:カブトムシ種怪人)が西多摩警察署を襲撃し、男性警察官全員を殺すという事件が発生。
 現在、付近の署の警察官が多大な犠牲を出しながらも、最寄りの爆破ポイントである多摩市一ノ宮三丁目の工場跡地に、46号を誘導中との連絡が入った。
 一条は、やむなく榎田に連絡を取って、神経断裂弾を至急輸送するよう手配した。
 授業参観を放り出して、榎田は科警研に急ぐ。
 また、関東医大に向かっていた雄介も連絡を受けて現場に急行。
 殺された警官が落としたらしい拳銃を拾って緑のクウガになって、警官隊に迫るガドルの背後から、緑の弓を発射した。

 
 
(傾向と対策)
 ようやっと“ゴ”最後の1人:ガドルのゲームが開始された。
 番組中の日付は12月17日、つまり放送日と同じ今日だ。
 とうとう実時間に追いついてしまったわけだ。
 ガドルはこの1ヶ月の間、発電所で高圧電流を浴び続けて“新たな力”を手に入れたらしい。
 ということは、バベルのゲームは11月初旬〜中旬だったんだね。
 これなら、前回はバベルの死の直後ではなく、平和な1ヶ月の間の幕間劇にするべきだったんじゃないのかな?
 その方が時間経過が分かり易いし。
 
 さて、発電所の謎の電圧低下のニュースを見たバルバと、やってきたガドルの会話。
  バルバ「新たな力を得たようだな。
      だが、クウガやリントの前に、セミファイナル・ゲームさえ、誰1人として成功させられなかった」
  ガドル「そんなリントだからこそ殺す意味がある。
      セミファイナル・ゲームは当然成功させる。
      新たな力は、元々ファイナル・ゲームのためのものだ」
 と、そこに割り込む新たな声。
  ダグバ「待ってるよ♪」
 この時、ダグバはバルバ達から20mは離れた場所にいる。
 ということは、テレパシーの類によるコミュニケーションなのだろう。
 それにしても、ダグバの声があまりに軽いものだから、ちょっと拍子抜けしてしまった。
 ラスボス(本当にそうかは知らないが)らしからぬキャラクターを目指したことは、役者さんの顔を見るだけでも判ることだけど、本当にギャップを狙っている。
 
 また、この会話での『クウガやリントの前に』というのは、『クウガやリントの妨害の前に敗れ去った』という意味だが、『そんなリントだからこそ殺す意味がある』と言うだけあって、ガドルの目標は、戦うリント、つまり警察官の男だけとなっている。
 そして、「綺麗に死ね」と西多摩警察署に殴り込み、警官数十人(ドルドは少なくとも35人くらい数えていた)を僅か10分で皆殺しにしたガドルは
  ドルド「さすがだな
  ガドル「他愛もない。もっと強いリントの戦士はいないのか」
と、いかにも期待はずれという言い方をしている。
 ちなみに、今回クウガが金の力を使わずに緑の弓を撃ったのは、EPISODE39『強魔』でのゴオマの場合と同じく、ガドルの近くに警察官がいるため、爆発させるほどダメージを与える恐れのある武器は使えないからだ。
 クウガは、通常の武器でちまちまとダメージを重ね、動きが鈍ったところで大技をかますという手法を取るようにしているのだ。
 
 さて、今回のテーマは、“大切な何かのために他のものを犠牲にする人々”だ。
 自分の仕事に対する誇りと責任のために息子の相手をしてやれない榎田、雄介のために昼夜を忘れて碑文の研究をする桜子、夢を掴むためにレッスンの回数を増やしてポレポレの手伝いを減らす奈々、という具合に、みんな何かを求めて優先順位の低いものを削っていく。
 一番見ていて痛いのは、そのために放り出されてしまった冴だ。
 他のパターンは、他人に対してさほど影響のあることではないが、小学生が親から相手をして貰えないというのは、相当問題がある。
 さりとて仕事を放り出して子供にかまけるというのも、責任のある役職に就いている大人としてはどうかと思える。
 例えば共働きの家庭で、片親は出張中、もう片親も外せない大事な仕事がある日に、子供が熱を出して病院に連れて行かなければならないとする。
 仕事を取るか子供を取るか。
 これは、社会人なら誰もが遭遇しかねない問題だ。
 榎田の場合、お婆ちゃんがいるからそっちに逃げてるんだけど、本当なら正しい答なんかない、難しい問題だ。
 この痛みが判るように子供を育てるって、とっても難しいだろう。
 冴の、ジャンから貰ったペーパークラフトの本(当然榎田が持って帰ったんだろう)を大事に抱えている姿が、いじましかった。
 
 もう1人の痛い人、雄介について見てみよう。
 雄介の場合は、金の力の持続時間を延長する方策として、“もう1度電気ショックを受ける”という方法を模索し始めた。
 『そんなの無茶だよ』と止める桜子やジャンに対する雄介の言葉
   それしかないなら、やるしかないし
   (無理)したいんだよね。やっぱみんなの笑顔見たいもん
   俺はただ、俺ができるだけの無理をしてる、それだけだよ
   ジャンだって、桜子さんだって、ね?
には、やはり自分の身体にむち打ってでも強くならなければならないという、“戦う力を得た者”の自負というものが見えている。
 ちょうど『ウルトラマンティガ』28話『うたかたの…』で、ダイゴが「だからか! 守りたいものがあるから戦うのか!」と戦う意味を見出し、第50話『もっと高く! Take Me Higher』で
  ウルトラマンは、たった1人で地球を守り続けなくちゃいけない義務でもあるわけ!?
と問うレナに
  俺は人間だから、俺がやれることをやりたいだけだよ
と答えたように、雄介も自分が守りたいもの(みんなの笑顔)のために(表面上は平然と)命を賭けているのだ。
 やっぱりこの辺り、雄介はヒーローの鏡だと思う。
 
 さて今回の見所だが、なんと言ってもこれ! 雄介の名刺!
 会議室で、松倉本部長にまで名刺を渡してしまう雄介。
 とうとうこんな公式の会議にまで呼ばれるようになってしまった。
 会議の席次で、雄介が杉田・一条・桜井に次いで4番目の席に座っている辺りから、雄介の重要度が判る。
 榎田が雄介の次に位置していたってことは、部外者中No.1の扱いを受けているってことだ。
 その雄介の名刺には、『2000の技を持つ男』の文字が印刷されている。
 EPISODE25『自分』で、霧島拓に渡したのと同じ物だろう。
 そして、ジャンの机の中から出てきた雄介の名刺には、『1900の技を持つ男』の『1900』を×(ばってん)で消して、『1964』の文字が書き足してある。
 同様に、桜子の名刺ホルダーの中からは、『1800の技を持つ男』の『1800』を=(2本線)で消して、『1934』の文字が。
 雄介は、技の数から、誰にあげたものかまで判るらしい。
 大体いつ頃いくつだったということを覚えているんだね。
 時期によって、文字の消し方が違うのも面白い。
 恐らく雄介がジャンに会ったのは、研究室に入った桜子の所に遊びに来るようになった後だろうから、1年5ヶ月前ってところか。
 2000番目の技である『変身』が今年2月頭だから、1年足らずの間に35の技を覚えた計算になる。
 ホントにようやるなぁ。
 雄介の名刺は、桜子の名刺ホルダーの最初の方にあったから、桜子が名刺を貰うようになった直後辺りに渡した物なんだろう。
 それだけ古い付き合いってわけだ。
 それで、その雄介と桜子の会話で
  桜子「いいけど、椿さん『うん』て言うかな?」
  雄介「じゃあ、言ったらOKだよね」
というのがあったけど、これってオモチャをねだる子供とお母さんの
  母親「お父さんが『買ってやる』って言ったらね」
  子供「じゃあ、お父さんが言えば買ってくれるんだね」
という会話と同じようなノリだった。
 そうか、そういう付き合いなのか。
 
 んで、やっぱり目撃されてたのね! ドルド君。
 あんな怪しい格好で歩き回ってるんだから、どう考えたってマークされてそうなもんだったけど、やっぱりね。
 B-6号(メ・ガリマ・バ:カマキリ種怪人)以降空白だったB群だけど、ドルドがB-9号、ガドルがB-11号ってことは、ゴ・ベミウ・ギ(ウミヘビ種怪人)がB-7号、ゴ・バダー・バ(バッタ種怪人その2)がB-8号、そんでB-10号がゴ・ザザル・バ(サソリ種怪人)ってわけか。
 そういえば3人とも、人間体を警察官に目撃されてたもんね。
 
 おやっさんが見てた山の写真は、きっと雄介が撮ってきたんだろう。
 また雄介が冒険に行くようにならないかなぁ、と物思いに耽ってたんだろうなぁ。
 
PS おやっさんのナレーションが3週目に入ったけど、やっぱ最後は桜子になるのかな? それとも一条?
 
PS2 やっぱり出てこなかった電ショック。
   今回の次回予告にいた怪人は、ドルドの怪人体だと思うけど、果たして次回登場するのでしょうか?



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