欲しいものあれこれ7 ウルトラの星計画 |
鷹羽飛鳥 |
更新日:2015年8月14日
8年以上前になりますが、「ウルトラの星計画」というバンダイ製のウルトラマン可動フィギュアの話を書いたことがあります。
「ウルトラの星計画」というのは、バンダイとホビージャパンの提携企画で、20世紀最後を飾る企画として、“ティガのリアルな可動フィギュアを作ろう”という試みでした。
通常、可動フィギュアは関節部がむき出しになるのがネックですが、“可動人形にスーツを着せ、しかも目とカラータイマーを光らせる”というなかなか大胆な計画でした。
考えてみれば、変身サイボーグの昔からそういう商品はありましたし、この当時(2000年)でも、いくつかのガレージキットメーカーからそういった商品は出ていました。
バンダイ自身も、仮面ライダーBLACKで、スパイラルゾーンシリーズという自社開発の可動フィギュアに布製スーツを着せるという商品を作ったことがありました。
ただ、このフィギュアが凄かったのは、専用の可動フィギュアを新設計したことです。
当然、フィギュアの体型は、ティガのスーツアクターをモデルに開発することになりました。
ティガのスーツアクターは2人いて、パワータイプは太めの中村氏、スカイタイプは細身の権藤氏が専属で入り、マルチタイプは回によってどちらかが入っていました。
タイプチェンジによって体型が変化することを強調するためか、パワータイプになる回では権藤氏がマルチを、スカイタイプになる回では中村氏がマルチを演じるというのが基本パターンだったようです。
ちょっと変わったところでは、イーヴィルティガは中村氏が、49話『ウルトラの星』に登場した初代ウルトラマンは権藤氏が演じていました。
ウルトラの星計画では、権藤氏をモデルに可動フィギュアを設計し、スーツの質感も考慮しつつ商品としての耐久性をクリアするという難題に挑戦しました。
完成した商品は、造形的にはもちろん、ギミック的にもかなりのレベルで、目とカラータイマーが光り、しかも付属のスパークレンスを胸に近づけると磁石スイッチでカラータイマーが点滅するというものになりました。
手首が取替式で、握り拳と光線用平手、中途半端に開いた手の3種類が付属し、更にオマケとして同スケールのガッツウイング1号も付属します。
鷹羽は、発売直後に買ってかなり満足しました。
巷では、造形に問題がある、スーツの張力にフィギュアの関節が負けて足がほとんど動かない、頭部が全く動かないなど欠点を挙げる人もいますが、鷹羽的には十分満足のいく商品です。
まあ、カラータイマーの点滅音があれば更に良し…というところでしょうか。
実際、可動フィギュアでウルトラマンなどを出しているメーカーもありますが、これだけのギミックを盛り込めたところはないようです。
その後、当然と言うべきなのか、折角作った可動フィギュアだし、流用して別のヒーローも作ろうという動きになりました。
こうして、「ウルトラの星計画」は、「超装可動」と名を変え、クウガ4フォームとアギトが作られました。
そして、ティガ発売から1年後、ウルトラシリーズの第2弾として、初代ウルトラマンが発売されました。
もちろん中のフィギュアは使い回しです。
考えてみれば、権藤氏はウルトラマンを演じた古谷氏と同じように細身だから『ティガ』でウルトラマンを演じたわけですし、少なくとも『ティガ』登場のウルトラマンとしては本物です。
磁石スイッチはベータカプセル型、オマケはジェットビートルです。
それって結構いいかも…。
とはいえ、1万円を超える商品であり、当時の鷹羽は買えなかったのでした。
発売から1年くらいして、某中古ショップで1万円で売っていたのですが、その時も手は出せず…。
そいつは結局2か月後くらいに売り場から消え、その後は近場ではさっぱり見かけませんでした。
ウルトラの星計画も超装可動シリーズも、結構評判が悪かった(特にクウガやアギトは)らしく、頓挫してしまいました。
それからまた随分経ち、「帰ってきたウルトラの星計画」と銘打ち、ウルトラマンマックスが発売されました。
『ウルトラマンマックス』放送中の2005年発売ですから、約4年ぶりのシリーズ復活となります。
今回は、ホビージャパンと提携はしなかったようです。
磁石スイッチはマックススパーク型、通常の3種類の手の他に後期必殺武器のマックスギャラクシーが付いた右拳が付属します。
マックスギャラクシーが増えた分のバランスか、ダッシュバードは付属しませんでした。
鷹羽は、番組としての『ウルトラマンマックス』は、好きと言うほどではないものの、嫌いではありませんでした。
もっとも、好きな話が『第三番惑星の奇蹟』や『私はだあれ?』『怪獣漂流』『燃え尽きろ!地球!!』だったりする辺り、あまり真っ当なファンとは言えないでしょうけど。
あ、正統派の『勇気を胸に』なんかも好きですよ、念のため。
でも、マックスのデザイン(もっと言うと顔)は嫌いだったので、関連商品は買いませんでした。
あのエラの張り具合というか、ほっぺの感じがふてぶてしい感じで、なんか嫌なんですよねぇ。
ともかく。
マックスというキャラ自体にさほど愛着のない鷹羽は、1万3000円近く出してまで欲しいとは思わなかったので、スルーしました。
そして2008年。
ふとしたことから、ウルトラの星計画にウルトラマンのBタイプがラインナップされていたことを知りました。
もはや「聖闘士に一度見た技は通じない」のと同じくらい常識かと思いますが、一応念のために説明しておくと、ウルトラマンの顔は、当初口を動かす予定だったためにラテックス製(Aタイプ)で、結局動かさないことになったため同じ型からFRP(グラスファイバーという説もあり)で作り直したもの(Bタイプ)、新しい型で作り直したもの(Cタイプ)の3種類があります。
Cタイプが一般に知られているウルトラマンの顔で、ゾフィーや新マンもこの顔です。
BタイプはCタイプより口の幅が狭く、Aタイプは材質の関係で皺だらけになっています。
ちなみに、『ウルトラマンメビウス』の劇場版に登場する初代ウルトラマンの顔は、ゾフィーや新マンとの見分けを付けやすくするためという理由から、Aタイプをモチーフにした皺だらけのものになっており、一部で不評を買いました。
また、Bタイプになった際、ウルトラマンのスーツそのものも新調されており、胸板を厚く上腕部を逞しく作り直されましたが、このバージョンだけ爪先が尖っています。
『メビウス』劇場版当時、「見分け付けるためなら、なんでBタイプにしないんだろうねぇ」と後藤氏にこぼしたところ、「Bタイプじゃ見分けつかない人が多いからじゃない?」と言われました。
誰が見ても一目で「しわしわだ〜」と分かるAタイプと違い、Bタイプはマイナーなようです。
そのせいか、マスプロ製品で見られるのは、ほとんどがCタイプとなっています。
さて、ウルトラの星計画の話に戻しましょう。
鷹羽が知っていたラインナップはCタイプだけだったのですが、前述のとおり、マスプロ製品でウルトラマンと言えばCタイプが普通なので、Bタイプが出ているなんて思いもしなかったのです。
鷹羽は、ウルトラマンの顔の中ではBタイプが一番好きなへそ曲がりですから、これは、ちょっと無理してでも欲しいところです。
どうやら、相場は8000円程度らしいです。
Bタイプは、元々何かのイベント限定品らしいのですが、調べていくと、数量は僅かながらCタイプと同時期に通常店頭売りもしていたとのこと。
店頭売り版もイベント限定版も、シリーズとしてはEX扱い、つまり番外品となっています。
イベント限定版と店頭売り版の違いは2つ。
店頭売り版は、通常版と同様、商品の写真が印刷されたパッケージで、オマケがジェットビートル、イベント限定版は黒地に銀文字が印刷されただけのパッケージで、オマケが三角ビートルです。
鷹羽の悪い癖で、情報が入り始めると、欲しかった気持ちが再燃してきます。
困ったことに、「ウルトラの星計画」で調べると、マックスの情報も入ってきます。
そうこうするうちに、マックスが送料込み4500円で手に入ることになってしまいました。
ウルトラマンは、何しろ既に7年前の商品ですから、なかなか見付かりません。
定価の3分の1なら、たとえマックスでも買ってみようかという気持ちが湧いてきます(マックスのファンが聞いたら怒るだろうなぁ)。
仕方がないので、ウルトラマンを欲しい気持ちを誤魔化すため、とりあえずマックスを買ってしまいました。
ところが。
マックスを買った1週間後、ウルトラマンのCタイプを見付けてしまいました。
既に1か月の間Bタイプを探し続けていた鷹羽は、なぜかCタイプを9000円で買っていました。
予定外だし、予算オーバーだし、どうして買ってしまったのか、自分でも分かりません。
マックスを買っていなければ予算的に問題はなかったんですけど…。
きっと大宇宙の意思がはたらいたのでしょう、そうに決まってます。
え? 仕事のストレス? どっかで聞いた言葉ですねぇ…それっておいしいですか?
ともかく、Cタイプは買ってしまいました。
ジェットビートルがダブるのは面白くないので、Bタイプはイベント限定版を探さなければ…。
ここまで読んだ人なら予想できるでしょう。
そうです、Cタイプを買った10日後、Bタイプイベント限定版を見付けてしまったのです。
ほとんど新品、しかも7500円!
Cタイプの9000円はなんだったんだと思うくらいです。
よくよく調べてみると、どうやらCタイプの方が相場が高いようです。
やっぱり大抵の人はCタイプの方が好きなんでしょうか?
どういうわけか、ウルトラの星計画が4種類とも集まってしまいました。
で、全部いじってみると、意外なことに、一番出来がいいと思えるのは、最初に発売されたティガでした。
可動域が最も広いのも、ポーズの自由度が高いのも、ティガなのです。
必殺光線のポーズが一番決まるのは、ティガです。
ティガのゼペリオン光線は、立てた右手の肘の下に左手を添えるポーズ、マックスのマクシウムカノンは立てた左手の肘の前に右手を添えるポーズです。
スペシウム光線のポーズは…知らない人はいませんよね。
それぞれ自分の必殺光線のポーズを取らせてみると…
ティガは楽々できます。
マックスは、添える右手が結構厳しいですが一応固定できます。
Bタイプは何とか固定できますが、かなりギリギリです。
Cタイプでは、スペシウム光線のポーズで固定するのは不可能に近いです。
この原因は、スーツの張力です。
当然というか、ゴムに近い質感のスーツのため、伸縮性に乏しいのです。
そんなものを着せているので、スーツに引っ張られてポーズが崩れてしまうわけですね。
スーツさえなければ、ウルトラの星計画のフィギュアは、それくらいの可動はちゃんとします。
ただ、スペシウム光線のポーズは、ゼペリオン光線やマクシウムカノンに比べて、よりスーツの影響を受けてしまうのです。
ポーズの難易度が高いと言ってもいいでしょう。
ちょっと自分でやってみると分かりますが、ゼペリオン光線とスペシウム光線では、左手の位置も右手の位置も違います。
試しに、ゼペリオン光線のポーズをとって、右手を動かさずにスペシウム光線のポーズをとってみてください。
すごくやりにくいのが分かりますね。
次に、スペシウム光線のポーズをとって、右手を動かさずにゼペリオン光線のポーズをとってみましょう。
左手が随分楽な位置になっていることが分かります。
これは、スペシウム光線は左手を右手にクロスさせなければならないせいです。
クロスするということは、左手首の位置を高く、かつ右側(体の外側)までもっていかなくてはなりません。
両手を体の内側に寄せなければならないわけですが、それが難しいのです。
ただ、そうすると当然スーツの背中部分が引っ張られて伸び、胸部分は押し潰されることになります。
すると、元に戻ろうとする力=張力が働いてしまうのです。
フィギュアの関節保持力よりもスーツの張力の方が勝っているため、左手も右手も外側にずれ、ポーズを取り続けられないというわけです。
もちろん、手で持ってポーズをとらせるなら、きちんとできます。
ただ、手を放した途端に崩れるだけです。
では、どうしてBタイプだとスペシウム光線のポーズがとれるのか?
それは、スーツのボリュームのせいです。
既に一般常識かもしれませんが、ウルトラマンのABC3タイプのスーツは、体型、特に胸と上腕のボリュームが違います。
一見して分かるとおり、Cタイプは胸板が厚く、肩から上腕のボリュームがもの凄いことになっています。
これがネックなのです。
商品でも、胸と上腕には当然ボリュームを持たせていますが、この厚みが張力を強化してしまうため、ポーズの固定がしづらいのです。
ティガが動かしやすいのは、上腕部に何も邪魔がないからでしょう。
このほか、ティガ、Cタイプ、Bタイプに共通する欠点として、
1 肩の部分に縫い目がある
2 手首を取り替えにくい
3 カラータイマーの赤の点滅が角度によっては見づらい
4 スーツの色が剥げやすい
といったものがありました。
1の縫い目は、胴体部と腕部のスーツを縫い合わせるために必要なものでした。
一体成形のスーツでもない限り必要悪なのですが、やはりウルトラマンの肩にでっかい縫い目があるのは許せない人が多かったようです。
2は、手首の構造の問題です。
取り替える手首は中が空洞で、フィギュアの方の棒に差し込むような形式なのですが、手首の上下動の関節があるため、差し込もうとすると棒の方が曲がって逃げてしまい、はめにくいのです。
3は、ランプの位置の問題です。
当然の事ながら、青と赤では光る部分が違います。
青がよく見えるようにセットされているので、ちょっとずれた位置にある赤は、若干見えにくいのです。
4は、ゴムっぽい材質を銀色に塗っている都合上、脇の下や肘など動きの負荷が大きいところの色が剥げやすいのです。
さて、「帰ってきたウルトラの星計画」などと銘打っているだけあって、マックスは過去の商品の欠点をカバーするための改良が施されています。
まず、スーツの張力対策として、関節保持力を高めるためにクリック関節(関節を動かすとカチカチと音を立てて何段階かで止まる関節)にしました。
そして、スーツのアーマー部の切り返しを利用することで、肩の縫い目を見えにくくしました。
よく見ると縫い目がありますが、ちょっと見では分かりません。
更に、カラータイマー(マックスではパワータイマー)の光がどの角度からもよく見えるよう、タイマー表面を梨地加工した上、フィギュア胸部に乱反射用の半透明板を付けました。
これで、半透明板で拡散された光がパワータイマー内側をあらゆる角度から照らすことになり、これまでの“赤の点滅が角度によっては見えにくい”という欠点を克服しました。
また、役立たずだった手首の関節上下動を廃して手首の差し替えをやりやすくしました。
更に、成形色を赤にしたこと、材質を変更したことなどから、色落ちの心配もほぼなくなりました。
ああ、それなのになんということでしょう、マックスはこれまでで最低のデキなのです。
まず、関節保持力が弱くなってしまいました。
これは、主に胸と上腕のレリーフ状の模様が原因です。
レリーフ状に成形されたスーツは、強化された関節保持力を更に上回る張力を生んでしまったのです。
おかげで、マックスの腕は前方にも横方向にも水平までしか上がりません。
ですから、マクシウムカノンを撃つ前の左手を高く掲げるポーズがとれません。
固定が出来ないどころか、手で動かしてさえ上に上がらないのです。
また、手を真っ直ぐ前に伸ばすこともできません。
半透明板のでっぱりが邪魔で、若干外側寄りに広がってしまうのです。
結局、新たな工夫は手首と色落ち防止以外は褒められたものではなく、定価の3分の1で手に入ったのも納得でした。
あと、個人的には、華奢過ぎて顔のデキも悪いかな、と。
なんというか、身体はスマート過ぎるし、顔も前述の独特のほっぺの感じがなくて、マックスっぽくない感じです。
前の3つに比べると、ちょっと安っぽい可動人形という感じがするんですよね。
ただ、光り方については、間違いなくレベルアップしています。
まぁ、なんだかんだ言っても、目とカラータイマーが光って関節が可動して、しかも関節が外から見えないウルトラマンフィギュアというのは、やはり貴重です。
ガレージキットやRAHシリーズなどに比べれば、確かに“完璧な造形”とは言えないかもしれません。
でも、逆に言えば、ガレージキットなどで、関節が動いてカラータイマーが光って点滅までするというギミックを持っているものはありません。
そう考えると、何を求めるかによって、このシリーズの価値は変わるのかもしれません。
要するに、いじってなんぼである、と。
せっかくだから、ほかにも出してくれないかな〜。