今更「ウルトラマン・ファイティングエボリューション3」1

後藤夕貴

更新日:2007年10月7日

 2007年7月19日、プレイステーション2ソフト「ウルトラマン・ファイティングエボリューション3」のベスト版が発売された。
 その情報が最初に流れた春頃、筆者は速攻でネット予約を入れた。
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 多分、情報ページを見てから30秒以内の即決だったと思う。
 否、筆者だけでなく、ネット上では同様の行動を取ったファンが物凄く多く居た。

 このソフトは、元々は2004年12月発売という既に3年も前の古いタイトルで、ぶっちゃけ今更語るほどの新鮮味はない。
 筆者自身も、当時は完全度外視していたものだ。
 だが、近年になってそれを物凄く後悔するハメに陥った。

 2006年度TV特撮番組「ウルトラマンメビウス」は、ウルトラファンの中で長年?眠り続けていた“昭和ウルトラワールド”の記憶と憧れ・夢を見事に蘇らせてくれた、珠玉の内容だった。
 ライトなファンからコアなマニアまで唸らせる仕掛けがふんだんに盛り込まれており、毎週「ここまでやるか〜!!」と大歓喜させてくれた。
 これですっかり“忘れていた何か”を呼び覚まされた人達の一部(筆者含む)は、これより2年ほど前に存在した「原典にこだわりまくった別ジャンルの作品」があったという現実を知る事になる。
 それが、この「ファイティングエボリューション3(以下FE3または本作と表記)」だったのだ。
 発売後2年も経って、ようやく情報を掴んだファンが慌てて中古品を探ってみたら……既に定価を遥かに超えるプレミアが付いていたという顛末!
 凄いところでは万単位もの値段を付けているところもあり、それだけ根強い人気が“既に”確立していた事を思い知らされたわけだ。
 出遅れた人々、当時なんとなく度外視していたファンは、歯軋りして悔しがった。
 しつこいけど、筆者も含めて。

 で、それがようやくベスト版として、しかも税込2940円という安価で出るというのだから、これほど嬉しい事はない!
 早速購入してみたら…筆者と同じようなパターンを踏襲したらしきファン達によって、3年ぶりに攻略法を巡る話題や内容を巡る議論が展開されまくっていた。
 まるで、つい最近発売された新作であるかの如くに……

 というわけで、今回は出遅れ承知の上で、このFE3について語ってみたい。
 ただし、いつものようなレビューではなく、ウルトラファン視点で面白さをピックアップするという方向性で。

帰ってきたウルトラマン  レッドキング(左)とゴモラただし尻尾なし(右) タイラント

バキシム ウルトラセブン  ゼットン

※画像はすべてイメージです

●FE3のゲームタイプ:

 16人のウルトラマンを含め、全部で40体ものキャラクター(プレイヤー使用不可キャラ含む)が登場する、現状同シリーズ最大規模のボリュームを誇るタイトル。
 前作が16体、前々作が12体、この後に発売された「〜Rebirth」が29体という事を考えても、その凄さがわかる。
 ウルトラマンは、初代から80までの昭和系主役全員、平成系はティガから、完結作品としては当時最新※だったコスモス&ジャスティス(含・レジェンド)まで参戦。
 怪獣・星人・超獣も、各作品から最低一体以上登場しているが、平成系からの出典は全体的に少なめ。
 中にはニセウルトラマン系もおり、エースロボットや妄想ウルトラセブンなどのマニアックなセレクトも行われている。

※2004年当時最新だったのは「ウルトラマンネクサス」だが、こちらは放送が10月からだった上、単独でPS2用ゲームが出ているためあえて除外。


 内容は基本的に「ウルトラマンキャラクターを使った格闘ゲーム」だが、一時期のカプコンやSNKプレイモアのタイトルのように、複雑なレバー操作などは必要なく、プレステパッドのボタンと方向キー一方向入力の組み合わせだけで技が出せるという、簡素なシステム。
 そのため間口はとても広く、格ゲー初心者でも余裕で楽しめるほどだが、ランクを上げるとそれなりに難度の高い入力も求められるようになる上、一部テクニカルなシステムも使う必要が生じるため、格ゲー経験の多いマニアでも楽しめるという、嬉しい作りになっている。
 少しシステムに慣れれば、イージーランクでバトルモードクリアはすぐ出来る。
 事実、筆者の甥(6歳)は、怪獣のみ、それぞれ別なキャラを選んで初プレイ日にいきなり3回ほどバトルモードクリアをしたほどだ。
 
 キャラクターごとに特性や技の違いがあるが、基本操作はどれも同じなので、一度入力に慣れればどのキャラを使ってもある程度対応可能。
 ただし、唯一「ウルトラマンコスモス(ルナモード)」という強烈な例外がある(後述)。

 対戦形式は一般的な格ゲーとは異なり、デフォルトは基本1ラウンド制で、相手のライフゲージをゼロにしても決着にはならない。
 最後は必ず各キャラの必殺技でトドメを刺さなければならないという、アーケード版「ウルトラマン」以来の伝統とも言える条件が付加される。
 ラウンド数は最大3まで設定できるが、これはよくある「三回勝負中二回勝てばOK」ではなく、「その回数勝たなければならない」という意味なので、結構大変。
 3回に設定すると、最悪の場合5回も同じ相手と戦わなければならなくなる可能性もある。

 戦闘時間は基本3分、当然である
 ただし、特定条件下で行われるレオ使用戦では、設定準拠により2分40秒設定にされているという小技が利いている。
 各ウルトラマンは、残り時間30秒以下になるとカラータイマーが点滅し始めるが、本編とは若干異なり「ライフゲージが一定より低下した場合」にも鳴り始めてしまう。
 最初は多少違和感があるが、やり慣れて来ると、カラータイマーの音で「自分がどれほど追い詰められているか」がわかりやすくなり、かえってありがたく感じられるようになる。
 要するに、3分以内に必殺技でトドメを刺せば勝ちなのだ。

 通常の攻撃はパッドの○△□×ボタンで出し、主に  という内訳になっている。

 実際にやってみるとわかるが、これによる入力で通常技や投げを食らわせても、相手のライフゲージはほとんど減らない。
 一般的な格ゲーではそれなりのダメージを期待できる投げでも、一瞬目を疑ってしまうほど威力が低いのだ。
 初プレイ時などは、これではいつ決着が着くのかわかったもんじゃないと不安になってしまうほどだが、よく画面を見ると「ライフゲージの下にある別なゲージも連動して上昇している」事がわかる。
 これは「ふらふらゲージ」という、本作独自のシステムだ(正しくは前作FE2からの継承だが)。
 一見地味なこのゲージ、実はゲーム展開を左右するほど重要なもので、バカに出来ない。
 このゲージは最初はゼロで、攻撃を受けたり特定の条件下にあったりするとどんどん蓄積されていき(減少ではない)、MAXに達すると激しく点滅する。
 このゲージが貯まれば貯まるほど「(ライフゲージの大小に関係なく)そのキャラクターはピンチに陥っている」という意味になる。
 なぜなら、これが蓄積すればするほど、後述する「ふっ飛ばし攻撃」を食らった際、無防備になる時間が長くなってしまうからだ。
 流れとしては、基本攻撃を何度も当てて相手のふらふらゲージを蓄積させ、ある程度以上貯まった時点で○ボタンによる「ふっ飛ばし攻撃」を当て、その後に必殺技を食らわせる…というものになる。
 「ふっ飛ばし攻撃」とは、各キャラの必殺技を発動させるために必要な予備動作のようなもの。
 □△×による攻撃とは違った、激しい音と打撃エフェクトが加わる強打攻撃で、通常これを食らった相手は“ふらふら”になってしまい、移動も含めて何の動作も行えなくなってしまう。
 ふっ飛ばし攻撃を当てた側は、その間に必殺技を命中させられるわけだが、この時“ふらふら”している時間の長さが「ふらふらゲージ」の長さと連動する。
 つまり、相手のふらふらゲージを沢山貯めておけば、それだけ長い時間相手を無防備にしておけるわけで、貯め時間が長い必殺技(後述)を発動させやすくなる。
 また、ふらふらゲージがMAXになるとふっ飛ばし攻撃をガード出来なくなってしまうというペナルティもある。
 このようなシステムになっているため、いくら打撃や投げによるライフゲージ減少が少ないからといって油断はできない。
 中には、ゾフィーのM87光線Aのように、ライフゲージの8割近くを一気に奪ってしまう恐るべき技も存在するので、決しておろそかにはできない。
 このような性質を持つ「ふらふらゲージ」だが、単に必殺技を当てやすくするだけでなく、戦闘演出を盛り上げる効果も発揮しているのは見逃せない。

 本作は、先の通り必殺技でトドメを刺さないと相手を倒せない。
 言い換えれば、必殺技を食らわない限り、たとえライフゲージがゼロでも戦闘は継続できるのだ。
 だから、仮に体力ゼロ状態に追い詰められたとしても、そこから奇跡の大逆転というおいしい展開を生み出せる可能性もある。
 残り時間10秒、カラータイマーも点滅しているギリギリの状態で、自分より遥かに体力の勝っている相手に必殺技をぶちかまして大逆転勝利! した時の高揚感と恍惚感、そしてシンクロ感覚は、とても言葉に出来ない。
 そんな「ウルトラマンならではのピンチ挽回」場面も、しっかり“ゲームの一部として”再現してくれるというのは、実に画期的だ。
 また、ふっ飛ばし→必殺技を受けた後、ふらふらゲージは一旦リセットされるため(例外あり)、ライフゲージが残っていればそこから仕切り直しになる。
 これは、ウルトラマン劇中でよくある「細かいピンチと逆転が連続で展開する」という流れを再現する役割も果たしている。
 だから、たとえ必殺技を食らったとしても諦めるのは早い。
 まだまだ逆転の機会が残されているから、最後の最後まで勝負を投げるわけにはいかなくなる。
 一般的な格ゲーの場合、圧倒的な体力差がある場合は超必殺技や効果的なコンボを当てて一気に大ダメージを与えるくらいしか逆転の機会がないが、本作はこのシステムのおかげで常に逆転のチャンスが均等に与えられている事になる。
 正に「ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って」を行う価値があるわけだ。
 だが、「ピンチのピンチのピンチの連続…そんな時」頼るのはウルトラマンでなく、それを使う自分の技量と運なわけだ。
 勿論、これは怪獣等を使っている時にも同じ事が言える。

 ちなみに、カラータイマーの音はオリジナル準拠のため、全員音が違う。
 勿論、ウルトラセブンはビームランプは点滅のみで鳴らない所も忠実。
 これは映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」でも用いられていたこだわり部分だが、ゲーム中では複数のカラータイマー音が交錯する事になり、ちょっとうるさかったりする時もある(笑)。
 原作ではタイムリミットが近付くとカラータイマー点滅音のペースが早くなる演出があったが、さすがにそこまでは再現されていない。

 肝心の必殺技だが、これはお馴染みのものが数多く取り揃えられている。
 従来の格闘ゲームとは違い、本作の必殺技はふっ飛ばし攻撃を当てた直後でなければ使用する事はできない(補助及び牽制技は例外)。
 また、低威力→高威力の順で必要とされる“ふらふらゲージの長さ”(必殺技のチャージ時間)が大きくなるため、大技を確実に当てるためには、それだけ沢山先に通常攻撃を当てておかなければならない。
 逆に、小技をぺちぺち食らわせて行きたいなら、通常攻撃をそこそこ命中させてとっととふっ飛ばしに移行してしても良い。
 ふっ飛ばし攻撃を当てた後、画面上に○□△×ボタンが表示され、威力の弱い順から必殺技を割り当てたボタンが点灯する。
 この時に光ったボタンを押すと、特定動作のムービーが流れ必殺技が発動するという流れだ。
 中には、貯め時間(ふらふらゲージによる敵拘束時間と同じ意味)が短くてもそれなりの破壊力を発揮する技が出せたりする事がある。
 ちなみに、技発動中のムービーはたまにアングルが変化する事があり、プレイヤーを飽きさせない工夫がされている。

 必殺技は、最大4種類使用可能。
 各キャラクターはデフォルトで1〜3種類の技を持っており、中には特定条件を満たすと必殺技が増えるキャラもいる。
 新マン(筆者注:以下本文内では、帰ってきたウルトラマンは〜ジャックと記述しない)やエースのように、どう考えても4種類以上技を持っているキャラの場合は、「カスタマイズモード」で好きな技4種を割り当てられる。
 これにより、ウルトラブレスレット技を持っていない新マンや、逆にブレスレット技で固めた新マン、またギロチン技しか使えないエースなどのキワモノも作りだせる。
 その気になれば、まったく無意味な必殺技ゼロキャラも作りだせる。
 必殺技のカスタマイズは、1つのキャラにつき最大4つまで登録可能で、後述する「ウルトラモード」を除いたほとんどのバトル開始前に選択できるようになっている。

 必殺技は、種類によって威力がS・A・B・C・D・Eの段階に分けられている。
 例えば、ゾフィーのM87光線はSで、先述のように命中させると大幅にライフゲージを減らせるが、ウルトラマンのウルトラ水流はEで、命中させてもほとんどゲージは減らない(ヘタしたら通常攻撃の方がダメージが大きいほど)。
 また、必殺技は沢山登録するほど一発あたりのダメージ量が減少する
 例えば、ウルトラギロチンを○ボタン一つだけに装備したエースと、他の3つのボタンにも他の必殺技を登録したエースを比較した場合、前者が当てたウルトラギロチンのダメージは後者のそれを大きく上回る。
 なぜそのような仕様になっているかというと、後述する「バリア」防御に関連しているからだ。
 とにかく、一人プレイ前提で、短時間で一気に決着を着けたいなら必殺技をあまり増やさず、逆に二人プレイ対戦をしていたり、またプレイ中の演出効果に凝りたいという人は、必殺技を沢山設定すると良い。
 しかし、怪獣・超獣・星人やニセウルトラマン系は必殺技そのものが少ないため、上記条件が適応されにくい。
 同じ技を複数のボタンに割り当てるのがせいぜいなのだが、これはこれで無駄ではないので、一応カスタマイズする事に意味はある。

●必殺技の過剰演出:

 肝心の必殺技の描写だが、これはため息モノの素晴らしさだ。
 誰もが知っているウルトラマンのスペシウム光線から、ウルトラセブンのエメリウム光線などは当然として、本編中一度しか使用していない新マンのシネラマショットや、エースのウルトラ・サーキュラー・バーチカル・ホリゾンタルギロチンやギロチンショット、スペースQ、タロウのウルトラダイナマイト、レオのレオヌンチャク等、マニアも喜ぶ「魅せる技」がこれでもかと詰め込まれている。
 それだけではなく、ウルトラマンのキャッチリングやウルトラアタック光線のようなマイナー技を入れたり、セブンのエメリウム光線はわざわざ3パターンも加えたり、対ドラゴリー・スフィンクス戦だけで使用したエースブレード(どこからか突然取り出した剣)、対テンペラー星人戦で使用したタロウのネオストリウム光線などを加えたりと、思わずニヤリとさせられるものまである。
 更に、レオはアストラを呼び出してウルトラダブルフラッシャーをかましたり、タロウ最強技コスモミラクル光線まで再現していたりと、まさに至れり尽くせりだ。
 もっとも、レオ対アストラ戦でダブルフラッシャーを使うと、もう一人別なレオやアストラが降臨してしまうのはご愛嬌だが(笑)。
 本来ウルトラ兄弟複数の協力がないと使えない必殺技は、システムの都合上単独でも使用可能になっているが、その代わり入手経緯で特殊な条件を満たさなければならないため、容易には使えないよう工夫されている。

 当然、このウルトラマンにはこれがなきゃ…という基本技も各種装備しているわけだが、その演出効果も見逃せない。
 発射している最中にどんどん光量が増していくセブンのワイドショットの迫力や、劇中とまったく同じ画面構成&真っ赤な背景で決めてくれる新マンのスライスハンド、本編よりも左向きに構える動作スピードが若干遅く、その分ゆとりを感じさせるようになったエースのメタリウム光線など、思わず唸らされる「カッコイイ」演出が盛り込まれている。
 筆者は、初めてスライスハンドでトドメを刺した時、そのあまりの迫力に思わず声が漏れた。
 だってねぇ…ぶった切った瞬間にBGMが止まるんだもんなあ…あれはやりすぎだよ(涙)。

 当然というか、技によってはオリジナルと若干モーションが違っていたり、またエフェクトが異なっていたりするケースもあるが、それは「粗を探せば見つかる」程度のもので、ゲームの演出効果としてはこれ以上を求めるのは贅沢なくらいのレベルだ。
 本来なら、必殺技発動の度にいちいち専用ムービーが流れるなどうっとうしい事この上ない筈なのだが、本作はなぜかそれがまったく気にならない。
 同じ技でも、場面によってはアングルが変わったりする場合があり、これまた嬉しくさせられる。
 充分な迫力と説得力、そしてファンの心理に長年かけて染みこんだ「常識感」があれば、多少長い演出ムービーでもまったく苦にならないという好例だろうか。

 アナログ的な光学合成で演出されていた昭和ウルトラマンの光線技ですら、これだけのレベルなのだ。
 それでは、原作からしてCG合成多用だった平成ウルトラマンの技はどうだろうか?

 これがまた、異常なほどバッチリ決まっているから困ってしまう
 というか、限りなく違和感ゼロ!(主観的にね)

 ティガのゼペリオン光線の構え、最初に真横に広がって凝縮していく光のラインは、しっかり劇中の効果音と併せて走ってくれる。
 当然、ティガ独特の唸り声「ヌ゛ゥゥ〜〜……!! ちゃっ!」もばっちり付いて来る。
 勿論、他のスカイタイプ・パワータイプの各技も同様だし、ダイナ、ガイア、アグル、コスモス等の光線技エフェクトも同様だ。
 アングルによっては、今自分がゲームをやっているという事すら忘れてしまいかねないほど、見事に再現されている。
 効果音、音声も、ティガ同様忠実だ。
 ダイナのストロングタイプは、ガルネイトボンバーを射出する寸前で一旦動作を止め、「シュワッ!」と叫びながら手刀を突き出すモーションまでしっかりやってくれる。
 三度の飯よりストロングタイプが好きな筆者が、これを見て思わず何かを漏らしそうになった事は云うまでもない。
 ミラクルタイプの「レボリウムウェーブ」も、跳ね返し版と単独射出版が別々に存在している丁寧さだ。
 但し、システムの都合上ブラックホールに吸収された敵は、後で真上から落っこちてくるようになっている。

 ふっ飛ばし攻撃を使用しなくても使える遠距離「“光”撃」(アロー光線のような細かい光線技)や、特定の入力で発動する準必殺技にも、当然妥協はない。
 光撃は必ずしも光線技とは限らず、中には飛び道具を撃ってくるものや、火や冷気を吹いたりする者も居るが、そのいずれもなかなか馬鹿に出来ない威力を持っていて、活用の価値は高い。
 意外にふらふらゲージを貯めやすい性質があるというのも見逃せない点だし、キャラによっては「ここでそれを使うか!」といった物まで魅せてくれるからたまらない。
 また、単なる光弾攻撃のみでなく、エースのフラッシュハンドや80のスパークボディのような、特殊効果を身にまとわせるタイプのものもある。
 アグルなどは、腕をバシュッと振るってアグルブレードを出現させるのだが、これがまたえらくかっこ良い。
 怪獣でも、ゴモラ等のように「吠える」ことで攻撃力を高めるという性能を持つ者が居る。
 しかし、これらの技はいちいち原作通りのモーションを取ってからでないと使用できないため、種類によっては大きな隙が生まれてしまう。
 その問題を補いながら使う必要が出てくるため、プレイヤーにもそれなりの「使いどころの選択」が求められる。

 特定入力必殺技もすごい。
 例えば、×で掴んだ後そのままにしておくと発動するタロウの「スワローキック」は秀逸だ。
 ウルトラマンメビウス本編でも見せてくれた、あの特徴的な準備動作・空中回転(しかも、いちいち一回転ごとにカットを切り替えてくれる!)を丁寧に、しかもあの効果音付きで再現している。
 タロウを使う場合、まず最初はこの技を決めたくなるというものだ。
 新マンのジャンプ△キックが、しっかり流星キックになっている点も見逃せない。
 レオもきりもみキックを持っていたりと、期待にはしっかり応えてくれている。

 こんな風に楽しくて仕方のない技入力だが、その中で唯一異彩を放っているのがウルトラマンコスモスだ。
 コスモスの初期状態・ルナモードは、なんと一切攻撃する事が出来ないようになっている。
 原作同様、敵を力で圧倒しない性質に設定されているためだが、それではどうすればいいのか?
 なんと、ルナモードのみ○△□×ボタンの用途が他キャラと異なっていて、「敵の攻撃を受ける瞬間、同じボタンを押す事で“受け流す”」仕様になっている。
 例えば、敵の□攻撃が命中する瞬間に□ボタンを押すと、ルナモードは素早く身を翻して脇に逸らす(さばく)のだ。
 入力が成功すれば、パンチだろうがキックだろうが投げだろうが、スライディングだろうが体当たりだろうが、なんでもかんでもスカしてしまう。
 感覚的には、昔懐かしい「当て身投げ」成功時に近い快感がある。
 当然、これは大変に難易度の高い操作と読み能力、反射神経が求められる。
 このようにひたすら攻撃をさばき続けていると、なぜか敵のふらふらゲージが増加していく。
 これがMAXになるまでさばき続けていくと、最後にルナモードが一度だけ攻撃(主に掌底突き)をオートで叩き込み、敵がふらふらになる。
 これでようやく、ルナモードの必殺技使用モードになるわけだ。
 使う技は、“ウルトラのカタルシスウェーブ”こと「フルムーンレクト」。
 これが命中した時点で、ライフゲージの残量に関係なく無条件でコスモスの勝利が決定する。
 当然この技もバリアなどで避ける事が出来るわけだが、せっかく必要以上に苦労して出した技を止められてしまった時のコスモスプレイヤーの心理ダメージは、かなり大きい(笑)。
 必ずゲージMAXになるまでさばかないと発動しないってのもあるからねぇ。
 更に、ロボット系怪獣(エースロボット含む)には通用しないという難点もある。
 初心者にとって果てしなくハードルが高い操作だが、パターンが読めてくると意外に使い道が見えて来たりする。
 ただ、プレイ時間が無駄に伸びる危険もあるので、ストレスなくプレイしたい場合は、とっととエクリプスモードやフューチャーモードにチェンジしてしまうと良い。
 モードが変われば、コスモスも他のウルトラマン同様の戦闘が可能になるので。

 このように、ウルトラマンの必殺技については語りたくても語り切れないほど素晴らしい演出が成されている。 

 さて、では怪獣系はどうか?
 これは、演出過剰(もちろん良い意味で)のウルトラマン系とは違い、実に手堅い処理をしている。
 所謂「怪獣プロレス」系の戦闘が好きな人が喜ぶようなものが中心と言えば伝わるだろうか?
 本作の怪獣達の動きは、はっきり言って原作無視のものも多く、バルタン星人のドロップキックやツインテールの前方回転のような着ぐるみでは絶対不可能だったダイナミックな動きが魅力だ。
 これを原作無視とするか、ゲーム演出とするかで評価が分かれそうな気がするが、それでも一応本編準拠の動作や技を多く持っていたりするので、なかなかあなどれない。
 頭突き突進や尻尾による殴打を多用するゴモラや、サーベルを前方に突き出す独特の動作を行うマグマ星人、何の防御姿勢も取らず直立姿勢でぶっ倒れるキングジョー(そして同じ姿勢ですぐ立ち上がる!)、とても楽しそうに動き回るガンQなどは、思わず微笑ましく思えるくらい「らしさ」が込められている。

 本作から、各必殺技は「バリア」で防御する事が可能になった。
 これは、必殺技使用側が入力をしている最中、ふらふら状態になっている側が特定のタイミングで○△□×ボタンのいずれかを押す事で、必殺技を弾いたりダメージを軽減させたり出来る。
 これは、先で述べたルナモードのさばき方と若干似たニュアンスを感じさせるシステムだが、実際にやってみるとなかなかシビアで、確実にこなすには相当な慣れが必要になるだろう。
 入力に成功すると、ウルトラマン系はそれぞれのスタイルのバリアを発生させて技を弾き飛ばす(キャラによっては吸収する)ムービーが流れる。
 しかし、中には掴みや打撃系の必殺技もあり、これらはバリア等では弾けない。
 その場合は、一応必殺技が炸裂するムービーが最後まで流れるものの、ライフゲージの減少が極端に低下するようになっている。

 ここで、先に述べた必殺技の割り当てによるダメージの減少条件が関係してくる。

 ○△□×ボタンに必殺技を割り当てる際、4つすべてに技を適応させると一つあたりのダメージが減少してしまうのは、バリア使用側にとって「技が読みづらくなる」ためだ。
 逆に、ボタン一つだけに割り当てると破壊力が増す代わりに、バリア使用側に読まれやすくなる。
 このように、条件の有利・不利のバランスが取られているわけだ。
 もっとも、対CPU戦の場合バリアの使用・成功率は難易度に左右されるため、実はプレイヤーがわざとボタン割り当てを増やすメリットはなかったりする。
 早期決着を望むなら、むしろ割り当てを減らして一発辺りの破壊力を高める方がいいのかもしれない。
 尚、ふっ飛ばし攻撃を食らってふらふらしている最中、4つのボタンを連打しているとふらふらゲージの減少を早められ、より早く復帰できるようになる。
 これはボタン一つを連打するより、同時に複数のボタンを叩いた方が効果が高いが、引き続き求められるバリア防御入力の際にこの連打が仇となり、タイミングを逃してバリア入力に失敗してしまう事が起こりやすい。
 実際、プレイヤーの感覚としては成功を確信した(読み通りボタンをきっちり押した)つもりでも、実際には防御失敗だったというケースも多々起こりうる。

●異常なまでにこだわった再現性:

 FE3をプレイしてまず驚かされるのは、3Dで再現されたキャラクターに、ほとんど違和感がない点。
 全16人のウルトラマンも、全21体の怪獣・星人(ニセウルトラ系含む)も、驚くほどしっかり作られている。
 PS2のポリゴン・テクスチャ再現性は良く知っているつもりだったので、筆者は「膝を曲げると裏側に不自然な段差が生じる」「身体を捻るとどこかにブロックノイズ風のズレ(テクスチャずれ)が発生する」だろうと高をくくっていた。
 ところが、本作ではそれがほとんどない!
 否、まったくないわけではないのだが、通常のTV画面で見る分にはほとんど気にならない。
 ウルトラマンのように、全身スーツの少しぬめっとした質感も途切れる事なくしっかり再現されていて、その上ばっちり動きまくる。
 更に、戦闘舞台の効果によって陰影が入ると、まるで実写であるかのようなリアリティが生まれ、不気味なほど「本物っぽく」見えてしまう。
 ウルトラマンなど、マスク部分(FRP製)とスーツ部分の質感の差まできっちり再現しているのだから恐れ入る。
 あげくに、動きが大きくなるためシワが寄りやすい部分(脚の付け根など)の再現もしっかり行っているのだから困ったものだ。
 アクション動作を優先するため、映像をわざと劣化させるという方式も(意識できる範囲では)ほとんどなく、信じられないほどの美麗さを誇る。
 当然、怪獣・星人も同様で、特にバルタン星人などは、アップ時限定とはいえ目が回転している(セミ人間の着ぐるみを基に改修した際、あらたに増設されたギミック。形状はウルトラマンのカラータイマーと同じ)というこだわりよう。
 ゴモラやレッドキングのようなデコボコの皮膚表現もばっちりで、単なるテクスチャ貼り付けになっていないのは凄い。
 グローカービショップも細かい所までちゃんと描きこまれていて、メカ怪獣らしさをしっかりアピールしている。
 
 表面的な部分だけではない。
 本作では、平成ウルトラマン各種のタイプチェンジも当然組み込まれているが、それによる体型変化もきっちり再現している。
 特にダイナのストロングタイプは判りやすく、マルチタイプやミラクルタイプと比較すると、上半身の筋肉の質感差が明確化する。
 更に、タイプチェンジによる「構え」もきっちり変化し、ティガ三形態の手の形もそれぞれ異なっている。
 ウルトラマンジャスティスは、そのデザインの都合上スタンダードモードとクラッシャーモードの区別がやや付きづらいが、本作では構えがはっきりと変化するため、意識していれば「モードチェンジに成功した(後述)」事が把握できるようになっている。

 各ウルトラマンの音声もほぼ忠実に再現されており、臨場感を煽る。
 たださすがに完全ではなく、音声そのものは本物だが使いどころが本来と違う(怪獣にやられて苦しんでいる時の声が気合を入れた声にされている)タロウや、音声バリエーションがなぜか極端に少ない80、レオとまったく同じ声のアストラ、妙にドスの効きまくったコスモスなど、若干違和感を覚えるものもある。
 また、バルタン星人はあの特徴的な笑い声(マタンゴから流用されたアレ)からバリエーションを捏造しているため、攻撃を受ける度に「フォッ?!(フォッフォッフォッ…という笑い声の部分抜き)」と叫ぶという、原作ではなかったリアクションが生まれてしまった。
 尚、原作では音声がなかったエースキラーは、このゲームのためにわざわざ付け加えたそうなので、これは意味合いが異なる。
 ただ、これらの音声の違いも「まぁゲームの音声なんだし」と割り切れば、決して悪いものではない。
 「若干違和感はあるにはあるが、ないより遥かにマシ」なのだ。
 尚、特定条件で出現するウルトラマンレジェンドは一切音声がないため、逆にものすごく違和感を覚えさせる存在になってしまっている。

●「やりすぎ」極まりない演出効果:

 ゲーム画面を見てみると、細かい所にも神経が行き届いており、更に感心させられてしまう。
 否、むしろ神経が行き届き過ぎていて、圧倒されて困ってしまうと言うべきか。

 例えば、戦闘開始前に各ウルトラマンの変身バンクが挿入されるが、これは3Dで一から作りなおされたもので、決して原作からの流用ムービーではない。
 にも関わらず、変身時の効果音、光学効果、BGMまできっちりやってくれる上に、80のようにややあおり気味で上半身を映し、そのままカメラを引いて構えに持っていく流れまでわざわざ再現してくれている。
 アグルなどは、あの少し寂しげなBGMでズームアップした後、片膝着いて座った状態で登場する。
 怪獣や星人等は、さすがにそういうバンクはないので既にスタンバイしているムービーが用意されているが、いずれも程よく「戦闘の直前」というイメージを良く作り上げている。

 ただ少しだけ残念なのが、ほとんどのウルトラマンが「バンク→轟音と砂煙を上げて着地」というパターンをやっている事だ。
 ご存知の通り、この登場パターンはウルトラマンダイナの途中から導入された演出効果で、ティガ以前のウルトラマンにはなかったものだ。
 鷹羽氏も「異端の後継者? ウルトラマンメビウス」で詳しく書いているが、ここまで拘っていたのにこれだけ原作と大きく違うのは、個人的に悲しかった。
 もっとも80などはこのパターン登場じゃないし、昭和ウルトラマンも原作で飛びながら登場したりキックをかましながら現れたりしていたから、決して悪いとは言わないが。
 
 ちなみに、ウルトラマンの変身バンクでは胸にカラータイマーが付いている。
 仕方ないとはいえ、これを見ると思わずほくそ笑んでしまう筆者は変なのだろうか。

 本作は、基本的に一対一の格闘バトル形式だが、キャラクター表現関連以外でも面白い演出が盛り込まれている。
 例えば、ゲーム展開によって変化するBGM。
 はじめは主に対戦相手に関連するBGMが流れているが(例:タロウならウルトラマンTのOP、レオならウルトラマンレオ初代OP)、こちらが優勢になる(相手との体力差が大きくなる)と、途中でBGMが変化し、使用キャラクター関連の曲に切り替わるのだ。
 しかも、その曲のセレクトが半端じゃない。
 例えば、エースで優勢になると流れるのは主題歌ではなく、劇中でエース優勢時に流れていた、あのBGM(後に水木一郎が「ぼくらのウルトラマンA」というタイトルで歌っていたアレ)が流れるのだ!
 それだけではなく、新マンも優勢になると主題歌ではなくあのメインテーマが流れてくれる。
 ウルトラセブンの優勢曲も、よく聴くと単なる主題歌のメロオケではなく、原作で使われていた主題歌のアレンジバージョンが流れるのだ(イントロが全然違うからすぐわかる)。
 それでいて、主題歌のメロオケは別途ちゃんと収録されているのだから、本当に芸が細かい。

 筆者は、この辺の予備知識なしでプレイしていたため、曲が変わった時は脳汁たれ流し状態になってしまい、思わず鷹羽飛鳥氏に携帯メールで報告しまくってしまったほどだった。
 尚、新マンもエースも主題歌のメロオケは別途収録されている上、ピンチ時のテーマや有名なワンダバまで収録されている。
 だからこれは、単に「ウルトラマンには専用曲は一つだけ」と定めて適当にセレクトしたわけではないのだ。
 とはいえ、さすがにすべてのウルトラマンが優勢戦闘専用BGMを持っているわけではなく、ウルトラマン、タロウ、レオ、80、コスモスはそのまま主題歌のメロオケが流れるようになっている(もっともそのほとんどは、原作でも主題歌のメロオケが優勢曲として用いられていたから問題はないのだが)。
 それでも、プレイ中に曲が変化すると嫌が上にも盛り上がり、熱中度が爆発的にはね上がってしまう。
 特に、大好きだったウルトラマンが耳に馴染んだBGMで大活躍(しかも、自分の操作で)するというシチュエーションは、文章ではとても伝え切れないほどの絶大なカタルシスを叩きつける。
 また、流れる曲もかなり工夫して再現されている。
 各BGMは当然オリジナルとは違う音源なのだが、なるべく違和感がないような音を選んで作られているため、フィット感が段違いだ。
 特に、イントロ部分の再現性は神懸り的で、大技をヒットさせた直後に「TAKE ME HIGHER」や「ウルトラマンレオ」のイントロが流れてくると、もはや自分がやっているのがゲームだという事すら忘れそうになってしまう。
 80やコスモスは、変身バンクの効果音、変身直後のファンファーレへと綺麗に繋がるため再現度は半端でなく、当時リアルタイムで洗礼を受けた子供達(笑)は、間違いなく色々なものを漏らしてしまうだろう。

 一方、捻りを効かせているものもあり、例えばアストラのBGMはウルトラマンレオの後期OP「戦え!ウルトラマンレオ」が使われている。
 そして、ゾフィーは……意外というか直球というか、なんとあの映画「ウルトラマンZOFFY」の主題歌が流れるのだ!
 その他、ガイアやアグル、ジャスティスなどは劇中のBGMがテーマ曲として用いられている。
 だが、ガイアの主題歌と80後期OPは、なぜか収録されていない。

 さて、では怪獣達はどうか?
 こちらも当然BGMが変わるのだが、主に「ウルトラマンAのピンチ時BGM」を中心に、その怪獣・星人が登場した作品のピンチ曲が流れるようになっている。
 ただ、このピンチ曲のバリエーションはあまり種類がない。
 昭和系怪獣は、先の通りエースのBGMがよくかかるが(たとえA以前に登場した怪獣であっても)、平成系はティガやダイナ、ガイアのピンチ(または戦闘局面突入時)BGMが使用される。

 対戦相手として登場した際は、他に「科学特捜隊のテーマ」「それいけウルトラマン」「ウルトラマンのピンチ時BGM」「新マンのワンダバ」等が用いられるが、その怪獣達が登場した作品の主題歌が流れるケースも多い。
 グドンやツインテール登場時に流れるワンダバは、まるで彼らの専用BGM然としており、思わずニヤリとさせられてしまう。
 タイラントやマグマ星人は、それぞれの作品のBGMを背負ってくるが、この辺若干の違和感が拭えない。
 平成系怪獣は、一応そういったパターンはないようだ。

 優勢になるとBGMが変わるという事は、当然その逆もある。
 怪獣・星人との戦いでこちらがピンチになると、当然それなりの不穏な曲に切り替わり、ウルトラマン同士だと相手の優勢曲になる。
 残念ながら、システム上一旦曲が切り替わると再度変更させる事はできないため、ゲーム展開によっては必ずしも爽快感を味わえるとは限らない(ピンチBGMをバックに勝利するとか)が、これは仕方ないだろう。

 むしろ避けたいのは、優勢BGMに切り替わった直後にふっ飛ばし攻撃を食らったり、倒されてしまったりする事だ。
 主題歌の一番盛り上がる辺りで画面に「LOSE」と表示された時の情けなさは、口で表現できるレベルではない。

●大いなる試練「ウルトラモード」:

 本作はただキャラクター同士を戦わせるだけではなく、「ウルトラモード」という原作準拠のイベント(ミッション)をクリアしていくモードがある。
 これは隠しを含めて全部で20種類あり、それぞれに“条件”が設定されており、プレイヤーがそれをどれだけ満たせたかによってS、A、B、C、Dのランクが付加される。
 このランクは隠しフィーチャー解放の条件になっていたりするため、手が抜けない。
 まして、80を登場させるためには20のうち18のミッションでA以上を取らなければならないのだから(20中2つは80出現後のミッション)。

 ミッションは、ウルトラマン各作品から平均一点ずつピックアップされたエピソードが基になっていて、ウルトラマンならゼットン打倒、セブンならキングジョー打倒という感じの内容になっているが、中にはオリジナルのものもある。
 ランク条件は、そのミッション内で「どれだけ原作展開に忠実に活躍したか」や「どれだけ優勢に展開出来たか(ライフゲージとタイムがどれだけ残ったか)」というものがほとんどで、単純に操作が巧ければ良いというわけではない。
 また、このミッション内で登場する敵はバトルモード等で出てくる時とは違い、特殊な性能を与えられている。
 キングジョーなどはものすごく硬くなりセブンの攻撃がほとんど通じなかったり、タイラントはめちゃくちゃ攻撃力と防御力が上昇している。
 勿論、特定条件を満たせばちゃんとまともに戦えるわけだが、中にはそんな敵をもし倒せれば無条件でSが獲得できるという物がある。
 そういう内容のものは、大概において「原作展開の流れを乱す」事を求められるのが面白い。
 例えば、ゾフィーから順にエースまで兄弟を倒し、タロウと対戦したタイラントを、ゾフィーだけで倒してしまえとか。
 本来テスト用に過ぎないエースロボットで、エースキラーを倒してしまえとか。
 マグマ星人がレオと戦う前に、セブンで倒してしまえとか。
 ジャスティス最初の降臨の時点で、コスモス・ルナモードのみで勝てとか。
 勿論無理にやる必要はないわけだが、これらを試してみようとすると、また違った楽しみが味わえる。

 ウルトラモードの各ミッション開始時には、そのウルトラマン作品のサブタイトル画面が再現され、ムービーによるイントロダクションが流れる。
 その後、条件提示が行われ本戦スタート。
 特定時間内に条件を満たしていく。
 中には一つのミッションで複数の戦闘を行ったり、通常にはないミニゲーム風のプレイを強要される場面があったり、バトルモードなどでは絶対再現できない「光線の撃ち合い」などの演出がある。
 更に、ウルトラモード専用怪獣もおり、なんと円盤生物シルバーブルーメや、ティガのラスボス・ガタノゾーア、ガイアのゾーリム、そしてコスモスVSジャスティスのスペースリセッター・ギガエンドラ等が用意されているのも素晴らしい。
 専用と言っても一応というレベルで、この一部はタッグモードにも登場してくれる。

 ミッションの内容はいずれもそれなりに難易度が高く、購入当初は戸惑うものが多いが、何回かやり直していればコツが掴めるものがほとんどで、決して高難度ばかりではない。
 しかし、当然ながら難しいものもいくつか散見され、特にそのミッション独自の操作を要するもの(「決着の日」の対ゾーリム戦など)はかなり厳しい。
 また、プレイヤーの技量に関係ない、ほとんど運任せで展開が左右してしまうものがあったり、また特定の操作とその有効性を把握していないと巧く攻略できないものがあったりと、「攻略法なしで一体どこまで対応できるのか」と疑問を感じるものもある。
 変り種としては、「怪獣標本」のように滅多に出現しないレア怪獣を捕獲し、後にプレイヤーとして使用可能にするミッションがあったりする。

 その中でも注目すべきは、恐らく一番沢山繰り返す事になるだろうミッション「世界10拠点同時侵略指令」だろう。

 これは、世界各国10箇所にバラバラに出現した怪獣・超獣・星人を出来るだけ早く打倒し、敵が拠点を破壊しないうちに黒幕を倒すという、判りやすいミッションだ。
 ランク条件のほとんどはラストバトルのみでチェックされるため、途中の戦闘はあまり気を揉む必要がない上、実は慣れると簡単にSが取れてしまう程度の難易度しかない。
 しかし、怪獣達が配置されている箇所の被害状況の確認を怠り、一箇所でも壊滅させてしまうとゲームオーバーという過酷さも含まれているので、それなりに気が抜けない。
 攻略順番の計算や、怪獣達の性能をある程度把握していなければならないという、他とは少し性質の異なるやりがいのあるミッションだと言える。
 80出現条件を満たすためには、ニセ系とレジェンドを除くすべてのウルトラマンでこれをクリアする必要がある。
 また、このミッションクリアによって新しい必殺技を得るウルトラマンも多い。

 尚、すべてのミッションをSランクにしても、特に何の特典も得られない。

●やりこみ度を高めるゲームシステムや「隠し要素」

 本作の売りがもし「忠実な原作再現」だけだったら、こんなにも話題になる事はなかっただろう。
 このゲームの凄いところは、所謂やりこみ要素部分をも練り込んだ点にある。

 やりこみ要素とは、例えば「バイオハザードを二時間以内でクリアするとロケットランチャーが使用可能になる」などの“特典取得のために通常より厳しいプレイ内容を要する”事で、近年のゲームタイトルには大なり小なり盛り込まれているものだ。
 また、その多くが「より強い武器・装備を入手する」とか「使用できるキャラを増やす」といったものだが、本作はその両方を備えている。

 本作初プレイ時、すぐに使えるキャラクターと必殺技は意外に少なく、また遊べるモード数も足りないため正直あまり張り合いが感じられない。
 だが、一度プレイするとすぐにフラグが立つ物があり、また「好きな人がそれなりに拘ってプレイするとすぐ使えるようになる」キャラクターが登場したりと、隠しフィーチャーが解放される条件が巧みかつ容易になっている。
 例えば、マン→タロウの順番にバトルモードをクリアするとゾフィーが使えるようになったり、新マンのバトルモードでトドメを必ずスペシウム光線で刺すようにして勝ち抜くと、「ウルトラハリケーン」が使えるようになったり。
 かと思うと、理屈そのものは単純だがその行程が思い切り長い80や、大変複雑で面倒な手順を踏まないと入手できない「スペースQ」などのようなものもある。

 80の出現条件は
・隠しミッション「世界10拠点同時侵略指令」を、全てのウルトラマン(ニセ系とレジェンド除く)でクリア
・ニセ系を除くウルトラマン全員でバトルモードクリア
 をすべてこなさなければならないという、とんでもなく難儀な行程だ。

 これは、隠しキャラクターのウルトラマンを全部登場させる条件を満たした上、更にそれを使って、一回のプレイにつき5回以上強要されるバトルを勝ち抜くという過酷なものだ。
 単純計算だと、ウルトラモード及びバトルモードすべてをカウントした場合、14人のウルトラマンを使って合計188戦やらなければならない事になる※。
 また、80の後に「妄想ウルトラセブン」というもう一つの隠しキャラが居る為、全員集合を狙うプレイヤーには更に過酷な条件が付加される。

※ウルトラモードをすべて一発でランクA以上のクリア、バトルモードをすべて適正順かつノーコンティニューでクリア出来た場合の仮定計算なので、実際はこの数を大幅に上回る事になる。
 尚、同じミッション内でも一旦決着が着きゲーム画面が切り替わる場合は1カウントとしている(例:世界10拠点同時侵略指令は1ミッション中7回戦闘としてカウント)。


 これだけ聞くと、とてもやってられない感じだし、まして登場する80は大変クセが強く決して強力なキャラとは言えないため、人によっては無理に出さなくても…と思ってしまうかもしれない。
 しかし、よく考えると80出現条件は「それぞれのキャラクターで徹底的に遊び尽くさないと」出てこない仕様だと気付かされる。
 要するにこれは、80というご褒美を釣り餌とした「ゲームをもっと堪能してくれよ」的な目的意識があるのだ。
 同様に、しちめんどくさいプロセスを幾重も踏まなければならない全隠し技取得の道のりも、同じコンセプトなのだろう。
 「すべての敵にタイムアップで勝つ」などという、簡単なようで実はかなり難しい条件を満たさないと入手できない上、カスのような威力しかない「ウルトラ水流(ウルトラマン)」も、「スペースQ(マン〜エース・ゾフィーまでの全必殺技取得が条件)」取得のためには絶対に必要な行程の一つなのだ。
 しかし、それを目指してプレイしていると、必然的に各種必殺技をプレイに生かしていく事にもなり、「使えるようになったけど死蔵したまま」の必殺技が減少する結果につながりやすい。
 こう考えると、単なる難しい条件を満たすだけの浅いゲームシステムではなく、「味わい尽くさせる事と新しい楽しみを生み出す事」を両立させようとした、大変練り込まれたものだという事がわかる。
 筆者が知る限りだと、ミッションクリア系のシステムが組み込まれているタイトルとしては、本作の内容は(必要な手間はともかく)かなり簡単な方だ。
 勿論それでも何度かやり直しさせられるケースは多々あるわけだが、少なくとも「1つのミッションクリアに何日もかかってしまう」というほどではない。

●壮大な「ウルトラマンゴッコ遊び」:

 本作は、80関連の隠しフィーチャーを解放してしまうと、旨味が減ってしまうような錯覚にも捉われがちだが、ある意味ここからが本番だという考え方も出来る。
 ウルトラモード全Sランククリアを狙うなどの、更なる過酷な挑戦に挑むのもアレだが、せっかく手駒が揃うのだから、ここは好きなウルトラマンで好きな場面を演出して楽しむのも良いだろう。

 本作には、プレイヤー2に対してCPU1で戦う「タッグモード」や、バトルモードなどの戦闘の様子を記録して第三者視点で視聴できる「リプレイモード」などがあり、また「VSモード」では対戦相手をCPUにする事で通常ではありえない対戦組み合わせ(例えば新マン対新マンとか、対ジャスティスとか)も行える。
 またタッグモードは、コスモスとジャスティスのタッグ専用の必殺技が用意されていたり、ここでしか登場しない敵が居たりする。
 プレイヤーが必ず二人必要という条件が付いてしまうが、ティガのガタノゾーアを二人のウルトラマンでボコる構図は、なかなか楽しい。
 残念ながら怪獣同士やウルトラマン&怪獣という組み合わせは出来ないが、協力して連続で必殺技を叩き込む迫力は絶品だ。
 ゲームランクを上げれば、決して「集団リンチプレイ」にはならないところも良い?!

 「リプレイモード」は、より濃いプレイヤーが最終目的と定めているものと言っても過言ではない。
 なにせゲームのプレイ状況がそのまま残せるわけだから、当然ながら面白い演出を加えたり、原作のような戦闘を再現したりと、色々な可能性が含まれている。
 中には複数のリプレイを記録した後、DVDレコーダーなどであらためて録画・編集して、壮大なバトルストーリーを作り上げる人がいたりする。
 ここはプレイヤーのセンスも求められるところで、究極の自己満足…つまりは最高の喜びを作りだせるという事になる。
 当然ながら理想通りの展開に持っていけず、何度もやり直すハメに陥ることもしばしばだ。
 だが、それでもプレイを続けてしまうようになってしまうのだ(笑)。
 リプレイモードは、視点やアングルをある程度変化させる事が可能で、本来接戦構図のバトルシーンを遠景で眺める事もできる。
 バトルモードなどで、たまたま熱く内容の濃い戦闘が出来たら、それを保存しておくという簡単な楽しみ方も良いだろう。
 筆者は、ダイナ対ジャスティスの戦闘で偶然にも「二体同時モードチェンジ(中断なし)」「各自の必殺技が次々に防がれる」「ライフゲージの減りが双方ほぼ一緒」「単純な攻撃パターンがほぼない」「最後はライフゲージ残量判定でダイナ勝ち(ただしほとんど同じだった)」という、異常に内容の熱いバトルを繰り広げ、これを保存している。
 特に保存するつもりはなかったのだが、あまりに面白い(ドローでもまったく悔いを感じない)内容だったので、突発的に残す事にしたのだ。
 こういう偶然性に期待するのも、なかなかに楽しい。

 …長くなるので、続きはまた次回(笑)。

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