どこに しまえば いいでしょう?

後藤夕貴

更新日:2007年3月25日

 「復活・プレミアについて」等でも以前触れましたが、近年のコレクターの認識はかなり大きく変わってきています。
 同じ商品を複数買いし、保管用・観賞用としたり、さらにそこに遊戯用を加えたり。
 或いは、いつかプレミアが付く事を期待して保管していたり。

 その購入スタイルは様々で、人によって色々と異なる認識があるとは思いますが。

 こうなってくると心配なのが「収納場所」。

 コレクターの皆さん、収納場所、しっかり確保した上で集めてますか? 買ってますか?
 新しい物を買う瞬間、コレクション置き場の様子が脳裏に浮かんだりしませんかー?
 または、購入した直後に収納場所が限界だった事を思い出し、青ざめた経験はありませんかー?
 少しでも収納場所を確保しようと奮起して、断腸の思いで処分を敢行したのに、なぜか全然様子が変わっていなくて呆然とさせられたなんて体験はありませんかー?

 筆者は全部思い当たりますよー(号泣)。

 というわけで、今回のお題は「コレクションの収納」についてです。
 思い当たる者同士、傷を舐め合って明日を生きましょう。

 同じ商品の複数買いをする理由については、とりあえず触れないでおきましょう。
 今更ここで述べる必要はないと思いますし。
 色々な意味で(笑)。
 ただ、目的意識はともかく「複数買いの結果、所有商品数自体はさほどでもないのに収納場所が圧迫される」という事態が発生しやすくなりますね。
 例えばですが、超合金魂ガンバスターなんか三個も買ってしまったら、それだけで「箱の上に赤ん坊を余裕で寝かせられる」スペースが占拠されます。
 当サイトでレビューしている完成品フィギュア」などは、中身の大きさに対して保護用内蔵ブリスターが大型化する傾向があり、10個も持っているとそれだけですごい事になります。

 玩具だけではありません。
 例えば、DVD普及により安価で手に入れやすくなったLDソフトなんか。
 ちょっと放送スパンの長いTV作品の全話LDボックスなんかを調子に乗って集めてしまい、しかも保管用に複数買いなんかしてしまうと、収納場所どころか生活圏すら圧迫されてしまいます。
 筆者の知り合いに、LDボックスの上で生活する事が出来ると豪語する人が居ました。
 これは、その気になれば部屋の床をすべてLDボックスで埋め尽くす事が出来るという意味です。
 しかも、広い面じゃなくて上面部分で、というのだから凄いものです。
 ビンテージ系AV機器や楽器類、骨董品や書籍、その他様々なコレクションアイテムが存在しますが、手広く集めているといつかは必ずどこかでため息を漏らしてしまう事になります。
 映像ソフト媒体がLDからDVDになり、かなり場所を取らなくなった筈なのに、それでも山がいくつも出来ているという人もおられるのではないでしょうか。
 そういえば、ソフトそのものは随分とコンパクトなのに、パッケージが比率的に異様にデカい「エロゲー」なんてのもありましたね。
 昔、どこかで「積みエロゲーの壁が部屋を分断している画像」を見た事がありますが、あれには色々な意味でビビらされました。
 ええ、一番ビビったのは最下層で歪みはじめているパッケージの様子だったのですが(笑)。

 好きなものは好きなんだから、しょうがないわけで。
 何かを集めていると、どうしてもそんな感じになってしまいます。
 コレクション趣味のない人には理解不能な状況ですが、そんな人でも意外に「自覚のないコレクション」をしていたりする事も多々あるわけで。
 まー、服を色々買いあさるとか、化粧品を次々に変えるってのも、いわばコレクション感覚の延長ですから。
 人として生まれてきた以上、大なり小なりどこかで関わってしまう概念なのかもしれませぬ。

 以前、知人に「集めた玩具で柱を作っている人」がおりました。
 既に押入や収納家具への納まりが利かなくなってしまい、縦積みした結果天井まで届いてしまったわけですね。
 その柱が何本も屹立して、ただでさえ広くない六畳間を占拠していきます。
 あげく、ごく普通の六畳間に大人四人が立って入るとそれで限界という狭さになってしまいました。
 言うまでもなく、その四人は入ったら最後身動きが取れません。
 押入の中の布団は柱に阻まれてもはや取り出す事は出来ず、放置状態です。
 柱として積まれた以上、何かあっても途中の物が抜き出せません。
 途端に崩壊するからです。
 もはや人間が生活できるような場ではなくなったその部屋の主は、やがて奮い立ち、プレハブ小屋を購入してその中にコレクションを片付けました。
 かなり大きなプレハブだったようで、やがて部屋は「大の大人四人が麻雀をしつつ、さらに別の一人がゆとりで座れる」くらい広くなりました。

 ですが。
 部屋の中からコレクションがなくなったわけではありませんでした。
 限界までプレハブに詰め込んでなお、一般人が見たら圧倒されるだけのコレクションが部屋に残存したわけです。
 つまり、部屋の中からすべてのコレクションを撤退させるなら、さらにもう一つ別なプレハブを用意しなければならなかったわけです。
 この話は、今からもう十年以上前の話です。
 今ではどうなっているものか…大変に興味深いものがあります。

 その知人とはまた別な知り合いで。
 この規模のコレクションを、よりによって実家ではなく賃貸アパートで所有していた猛者がおりました。
 この人、具体数はわかりませんが先の例に挙げた知人には決して負けていないと豪語するほどで、2LDKの半分以上がコレクションで埋まっていました。

 ちょっと想像してみてください。
 二部屋あるのに、一部屋しか生活に使えない状況。
 もう一部屋は、上から下までほとんど隙間なくコレクションで埋まっているのです。
 部屋の境の襖を開けると、すぐに見えてくる玩具の外箱の壁。
 襖と外箱の隙間、せいぜい数センチですよ?
 尋ねたところ、この部屋は元々コレクション保管用にするつもりだったため、はじめから家具は一切入れてなかったそうです。
 しかも、生活に使用している部屋の方が狭い!
 本来寝室や個室として用いられるべきだったそのコレクション部屋は、もはや見る事すら不可能となった押入の中すらも満たしてしまい、一部は天井裏にまで収納していたといいます。
 それでもまだ収納箇所が足りず、ついには生活圏すら冒し始める始末。
 ついに生活圏の半分近くを占拠された(よく生きてたなあ)その人は、引越しを考え始めました。
 当然独身だったわけですが、ローンを組んでかなり大きな(部屋数のある)建売住宅購入を検討し始めてしまいました。
 それだけ多くのコレクションを持っている人なだけあって、確かにそれが叶えられるくらいの収入はあったようですが。
 「自分が買ったものは絶対に手放さない」という信念のため、その人は本来必要とされる以上の資金を費やし、旅立って行きました。
 後に伺ったところ、引越し代は軽く三件分以上に上ったそうです。
 それでも知人に手伝ってもらって、出来る限り安く済ませたというんですから、恐ろしい話。

 この人とも、もう十年来逢っていませんが、どうなっているでしょう。
 ひょっとしたら、二軒目の家を購入してるかもしれませんね。
 …いや、もし引越し先に限界が生じたらそれも考えるって、結構真顔で言ってたものですから…

 かと思うと、逆に悲劇に見舞われた人も居ます。
 その方は書籍コレクターだったのですが、古書のために数十万・数百万単位でお金を使う事もいとわず、しかしてご本人曰く決して裕福ではないため、ご家族にかなりの負担をかけてしまっていたそうです。
 で、その方も溢れるコレクションを収納するためプレハブを買ったわけですが、悲劇はその後思わぬ形で訪れました。

 なんと、大雨のせいで近所の川が決壊
 その影響で大水にあてられた自宅は水びだし。
 そして大切なコレクションは、なんとプレハブごと流されてしまうという結末に!

 普通は考えられないほどの不幸です。
 この時の被害は、プレハブの中身だけで約500万円近かったと言いますから、相当なものです。
 もちろん、その方はその後も懲りずに古書コレクションを続けています。
 不幸にめげない根性を称えるとともに、その飽くなき執念に、色々な意味で感服させられます。
 こういう被害を防ぐためにはレンタル倉庫などを利用すべきなんでしょうが、この頃はまだそういうものがなかった時代だそうで。
 色々と大変なものです。

 このように、溢れるコレクションが生活を変えてしまったり、大きく動いたのにさほど大きな変化が起こらなかったという人は結構いるようです。

 生活を万全に維持するためには「捨てる」覚悟も必要です。

 一度買ったものを捨てる・処分するなんて考えられない! という人も居るとは思いますが、例えば雑誌なんかは本来読み捨ててナンボのものなわけで、何年分も貯めておくメリットはほとんどありません。
 積み重ねによる劣化、読み返しの利かなくなる状況、時には室内の臭いまで変えます。
 中にはいずれ価値が出るだろうと考えて保存しているなんてのもあるかもしれませんが、元本職の業者から言わせていただくと、収録内容に長期的人気を維持している作品がなく、かつマニアックなトピックもなく、まして購入時点で保存のための処置を施していなければ、何の価値もありません。
 何年保存したって無駄です。
 まして、各雑誌の黄金期は既に何十年も前に終わっています
 比較的新参の雑誌「週刊少年ジャンプ」にしても、プレミアが付くような黄金期は70年代後半辺りで終了しています。
 マガジンやサンデーなんか、むしろそれより前くらい。
 80年代以降は、ほとんど需要がありません(まったくではないですが)。
 しかして、仮に需要があったところでよほどおいしい内容でない限り、美品でも大した値段は付きません。
 というより、ここ二十五・六年程度の作品では、どんなメジャー作品でも期待できるだけの価値はないんですよね。
 単行本で気軽に読めちゃうから。
 つまりは、そういうわけです。

 それでも持ち続けていたいという人はまったく構わないとは思いますが、もし、生活を改善したいと考えたなら思い切って処分するのも良い手ですね。
 以前、溜め込んだ雑誌でアパートの床が抜け、下の階に落下して大被害を出したという人が現実に居ましたからね〜。
 気をつけたいものです。

 長い間見ていない映像ソフトや、最近全然利用していないアイテムなんかも、一気に整理すると意外にすっきりするものです。
 よほど強い思い入れのある物まで処分する必要はありませんが、あれもこれも…と欲を出さず、同好の士に譲ったりオークションに出品したりすると、捨てるよりも有効活用できた気分になっていいかもしれません。
 もちろん、それを行うまでにはかなりの思い切りが必要でしょう。
 ただ、もし結婚生活を始めるとか、どこかに引っ越して集団共同生活を行う場合は、選択肢がなくなるわけですから考慮に加える必要はあるかと。
 何でもかんでも手広く買ってしまう人にとって、生活を大事にしたいなら「捨てられない・捨てる意義が見出せない」は論外となります。
 もちろん、集める事にすべてをかけて生活の利便性を捨てたという人にとってはその限りではありませんが。

 ちなみに、捨てる捨てないは別として、定期的にコレクションの状態チェックを行うべきかもしれません。
 過去何度か書いてきましたが、最近の玩具アイテムは長期保管が難しい素材を大量に用いているため(特にPVC関連)、十年もしないうちに激しく劣化する場合があります。
 またLDやDVDソフトなども、未開封でも案外ダメージが及んでいるケースがあります。
 以前、未開封品として持っていた薄ケース入りの音楽CDのデータ面に、びっしりとカビが生えていたという事故を経験しました。
 表面のフィルムにはまったく損傷がなく、専用のCDラックに収納していたのにこの状態。
 製品段階で微かに付いていたかすり傷ですら温床にして繁茂する「LDのカビ」なんて恐ろしいものもあるわけで。
 また、カビでなくてもLD自体と包装ジャケット(フィルム状のアレ)が癒着していたなんて怖いケースも見た事があります。
 せっかく苦労して保存していたものなのに、未開封保存していたがために劣化してしまったなんていったら悲惨ですよね。
 まして、今流行のPVC完成品フィギュアなどは可塑剤の気化による劣化が常に考えられるため、未開封は危険なのでは、という見解もあるくらい。
 なかなかに難しいものです。
 レンタル倉庫やプレハブにコレクションを保存しているという人は、気軽に状態確認が出来ない分さらに大変かもしれません。

 何はともあれ、コレクションを長い間取っておくならそれなりの覚悟と知識を、生活を両立させたいなら「割り切り」を、という事でしょうか。

 ちなみに筆者は、ある程度以上手付かずだった品物の場合は結構気軽に売却したり、人に譲ったりしています。
 当然思い入れの強いアイテムがある場合は保管しますが、それも定期的に状態を確認します。
 それでも許容量が一杯になってきた場合は、数百キロ離れた場所にある「秘密の倉庫」に輸送して保管します。
 なので、一応生活との両立はギリギリ保てている状態ですね。

 …ええ、ギリギリですから…頻繁に「両立が成り立たなくなる」わけですが(笑)。

 えっ、何百キロも離れた秘密の倉庫って何かって?
 ふふふ、それは教えられませんな。
 筆者の秘密中の秘密なのですから。
 遠く離れていても、個人単位でしっかり管理できる状況です。
 ただ、品物が急に必要になった時に難儀してしまうというデメリットはありますけどね。
 皆さんも、そんな秘密の倉庫を持っていると、とっても気楽に過ごせるかもしれませんよ。
 うふふ、うらやましいでしょー♪

 …ちょっと母ちゃん、そこは開けちゃダメだって!
 崩れてきたらどうすんの!!

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