スーパー戦隊の遺跡発掘 
ボウケンジャーに受け継がれし先人の業(わざ) 第三回

鷹羽飛鳥

更新日:2006年8月6日

●複数ロボの憂鬱(ハザードレベル124)

 前回に引き続き、戦隊ロボ複数化の歴史のお話です。

 2台目ロボが登場するということは、商品展開としては、ロボットの商品がもう1種類発売できるということになります。
 ただし、それがイコール2倍の売上に直結するわけではないのです。
 なお、前回に引き続き、今回も“巨大ロボは全てメカ”という括りで話を進めます。
 
 『フラッシュマン』で2台目ロボが登場するようになって以来、どうやって2台目ロボを登場させるかは非常に頭の痛い問題でした。
 2台目ロボが必要になるということ自体、1台目ロボでは力不足ということになる上、どういう形で2台目を用意するかという開発問題も出てくるからです。
 『フラッシュマン』〜『ライブマン』では、2台目ロボは、演出上は1台目ロボが敗北して使用不能になったために、既に存在していたが戦士達が知らなかったロボを急遽入手るという形を取りました。
 その後、スーパー合体という新たなファクターが加わったため、1台目ロボが戦闘不能になる必要はなくなりましたが、“手っ取り早く必要性をアピールできる”ため、『オーレンジャー』『カーレンジャー』などでも、1号ロボが使用不能になるという展開は踏襲されています。
 なお、『フラッシュマン』では、最終回でも、フラッシュキングが大破した後グレートタイタンに乗り換えて戦闘ということをやっています。
 
 さて、そういう事情もあって、1台目ロボと2台目ロボは、当初は並び立つことはほとんどありませんでした。
 『フラッシュマン』の場合、グレートタイタンが歩けないプロップしか存在していなかったため並び立てなかったという事情もあって、同時に画面に出たのは、フラッシュキングが復活した際、作動不能になったタイタンボーイを抱き上げたくらいのものでした。
 そもそも戦隊ロボは、本来的に合体メカの搭乗員全員で操縦した時に最大の能力を発揮するのが理想です。
 合体するためだけに5人必要というのでは、合体後のメンバーが思いっきり無駄になってしまうからです。
 もちろん、単に戦うだけなら1人で操縦してもいいのですが、1人で操縦しても5人で操縦しても同じ能力しか出せないなら、5人でロボに乗る必要なんてなく、ゴーグルロボみたいに3人乗りにして、ほかを後方支援要員にしてもいいわけです。
 ですから、RVロボのように、ロボの手足をそれぞれのパーツメカの操縦者が操縦しているという設定にしてみたり、ダイレンジャーのように、天宝来来の玉を持つ者が5人乗っていないと出力が足りなくて動かないというような設定を付加していくわけです。
 ただし、ロボを複数登場させる都合から、番組中で自らこれらの設定を否定しているかのような描写をしている作品も多いのは問題ですが。
 何が問題かは、後ほど書くことにして、取り敢えずは歴史を紐解いてみましょう。

 『ライブマン』では、1台目ロボと2台目ロボの操縦者が元々違うという設定のお陰で、スーパー合体前に2台が並び立つことができました。
 しかし、これは正に並んで立っただけで、2台で1体の巨大怪人と戦うことはありませんでした。
 2台がバラバラに戦うより強いからこそスーパー合体するのですから、これは自明の理です。
 
 続く『ターボレンジャー』『ファイブマン』では、スーパー合体ロボが基地に収納される形で合体するようになりました。
 スーパー合体の上を行く要塞ロボの登場です。
 ですが、要塞ロボは、どうしても箱形収納合体になってしまうことと、商品が大型・高額化してしまうことから、バブル崩壊による景気低迷も相まって、次作『ジェットマン』では廃されました。
 とはいえ、どんな形にせよ一度増えたロボの総数を減らすのは辛かったらしく、要塞ロボに代わって戦闘補助ロボ:テトラボーイが登場しています。
 そういうわけで、『ジェットマン』には、ジェットイカロス、ジェットガルーダ、テトラボーイの3台のロボが登場します。
 ちなみに、ガルーダは、かつてバイラムに滅ぼされた裏次元ディメンシアの鳥人戦士達がバイラムに復讐するために持ってきたロボで、彼らの死と共にジェットマンに引き継がれることになったものでした。
 そんな設定ながら、イカロスとガルーダは改造の末スーパー合体できるようになり、ロボ形態としてはグレートイカロス、飛行機形態としてはハイパーハーケンになるという二重のスーパー合体システムを持っていました。
 スターキャリアにファイブロボが乗る、デカバイクにデカレンジャーロボが乗るというような“別形態ロボに1台目ロボが乗る”という形式ならともかく、ロボ形態・別形態ともにスーパー合体する設定を持っているのは、現在までのところこれだけです。
 しかし、さすがに3台目を交えて合体するのは難しかったようで、テトラボーイはそれぞれのロボが使う必殺武器テトラバスターに変形するという形式でした。
 また、先に挙げた操縦者問題は、テトラボーイをAI制御の自律行動型にし、戦闘補助に特化させたことでクリアしました。
 これにより、『ジェットマン』では、2台の人型ロボが同時に戦闘するパターンとして
  ジェットイカロス+ジェットガルーダ
  グレートイカロス+テトラボーイ
  ジェットイカロス+テトラボーイ
  ジェットガルーダ+テトラボーイ

という4種類の組み合わせが可能になっています。
 これは、巨大戦の描写に幅を持たせるという副次的効果を持っていました。

 次作『ジュウレンジャー』で、2台目ロボが組替合体になったことには、恐らくこの影響もあるでしょう。
 大獣神の核となる守護獣ティラノサウルスは、怪獣型のデザインであり、戦隊ロボの1人乗りパーツメカとしては初めて単体で着ぐるみ戦闘が可能でした。
 2話では、巨大怪人を必殺技ティラノソニックで撃破したりもしています。
 これは、巨大ロボの初登場を勿体ぶることができる上に、その後も“合体できない状況下でも巨大戦ができる”という旨味がありました。
 そして、中盤から登場するドラゴンシーザーは、6人目であるドラゴンレンジャーが操ることで操縦者問題をクリアできたのです。
 そのため、
  大獣神+ドラゴンシーザー
  剛龍神+ティラノサウルス(+プテラノドン)
という操縦者付きの2大ロボ共闘が可能になりました。
 毎年のように登場する6人目(増加メンバー)の存在は、メインメンバーと流れの違う武器やアイテムを登場させられるというメリットの他に、“ロボを同時に複数登場させるための操縦者”という要素もあったのです。
 後に『カクレンジャー』や『ゴーゴーファイブ』など、変身する増加メンバーのいない戦隊もありますが、その場合でもニンジャマンやライナーボーイなど、“会話のできる知能を持ったメンバー”が巨大ロボのオモチャとして直接発売される存在であるのは、その流れです。

 さて、組替合体となった『ジュウレンジャー』では、2台の巨大ロボによるスーパー合体は不可能になりましたが、一応、大獣神とドラゴンシーザーが合体して獣帝大獣神になるという形式でスーパー合体が可能で、更に要塞ロボ的意味合いのキングブラキオンとも合体して究極大獣神になりました。
 この流れは、続く『ダイレンジャー』にも受け継がれ、大連王のコアメカである龍星王は、単体で人型ロボに変形して巨大怪人と戦闘でき、序盤はトドメも刺しています。
 また、牙大王のコアメカであるウォンタイガーも単体で人型ロボに変形するため、
  大連王+ウォンタイガー
  牙大王+龍星王
  龍星王+ウォンタイガー

という並び立ちができます。
 こちらは、変形システム上、スーパー合体は不可能でしたが、別形態である天空気殿のスーパー合体的な意味合いで、要塞ロボ的なダイムゲンと7台合体して重甲気殿になりました。

 こうした複数ロボ並び立ちは、『カクレンジャー』では更に進みます。
 1台目ロボ:無敵将軍の合体パーツ:巨大獣将は全て人型ロボで、合体前から巨大怪人との着ぐるみ戦闘が可能でした。
 ただし、合体ロボのパーツであるため、ゴテゴテした動きにくいデザインであることは否めず、そのフォローとして、動きやすい簡略版の巨大ロボ:獣将ファイターが同時進行的に登場、1つの画面に味方の人型巨大ロボが10体並ぶという、トクサツ界では前代未聞の状態になりました。
 そして、この作品では、シリーズ唯一の巨大ロボ完全乗換、つまり2台目に乗り換えた後は二度と1台目ロボに乗らないという展開がありました。
 中盤(第2部)以降、カクレンジャーは無敵将軍に全く乗らず、2台目ロボ:隠大将軍だけに乗るようになったのです。
 レッド用のメカ全て(巨大獣将レッドサルダー、獣将ファイター・バトルサルダー、超忍獣ゴッドサルダー)が揃い踏みしたことが1回だけありますが、この際もレッドはゴッドサルダーに乗っています。
 その後も無敵将軍は登場し続けたのですが、ではどうやって動かしていたかというと、勝手に動いていました
 「無敵将軍参上!」の声と共に、突如現れて参戦するのです。
 この作品では、巨大ロボは忍術の奥義を極めた古代の偉人の変化した姿とされていたため、元々の人格がそのままロボとして動いていたような描写でした。
 さすが忍術の極意、よくもまあ自分の身体を5つに分割できるものです。
 こうして、1台目ロボは無人のまま2台目ロボと共闘するようになりました。
 この作品では、いわゆる6人目に相当するキャラが着ぐるみキャラのニンジャマンであり、そのまま巨大化した挙げ句3台目ロボ:サムライマンに変形することもあって、合体できるメカを全部合体させても人型ロボが総勢8体いるという大所帯でした。
 ちなみに、終盤は、ほぼ毎回のように隠大将軍・無敵将軍、サムライマンの3体が揃って戦っていました。

 続く『オーレンジャー』では、1台目ロボ:オーレンジャーロボと2台目ロボ:レッドパンチャーがスーパー合体してバスターオーレンジャーロボになりましたが、4台目ロボ(番組中のロボとしての4台目。オーレンジャー装備としては3台目):オーブロッカー登場後は、ほとんど出番がなくなってしまいました。
 そのため、要塞ロボである3台目ロボ:キングピラミッダー(6人目であるキングレンジャーの基地)との合体は、オーレンジャーロボ・オーブロッカーどちらでも可能になっています。
 この作品では、その後もオーブロッカー用のAI搭載武器ロボット:タックルボーイや、第3勢力的なガンマジンが登場しており、年間6回にわたって巨大ロボが登場するという大変忙しい展開になっていました。
 登場する巨大ロボ6台のうち2台が、純粋なオーレンジャーの戦力と言えないような作りになっているのは、それだけロボを動かす手駒が足りなかったということでしょう。
 この傾向は次作に受け継がれ、『カーレンジャー』に登場する巨大ロボは、1台目:RVロボ、3台目:VRVロボ、4台目(要塞ロボ?):ビクトレーラーがカーレンジャーの装備で、2台目:サイレンダーは6人目に当たるキャラながら第3勢力でもあるシグナルマンのロボでした。
 当然、VRVロボ登場後は、RVロボの出番は激減します。

 続く『メガレンジャー』では、再び全てのロボがメガレンジャーの装備という形式に戻りましたが、途中でスーパーギャラクシーメガ(1台目と2台目のスーパー合体)が中破した後は3台目:メガボイジャーに乗り換えてしまい、6人目であるメガシルバー操縦の4台目:メガウインガーとの共闘がメインになっていきます。
 この作品以来伝統となった“クリスマス商戦向けのロボ揃い踏みとして、色々理由を作って全ロボットを出動させる”展開は、乗り捨てられた形の1台目ロボをもう1度活躍させてオモチャを売らなければならないという要請が背景にあるのです。

 その後、『ギンガマン』では、2台目:ブルタウラスが第3勢力:黒騎士ブルブラックのもの、3〜5台目:ギガライノス、ギガフェニックス、ギガバイタスが全てサイボーグで完全に独立稼動という形になったため、乗り換え問題は発生しませんでした。

 続く『ゴーゴーファイブ』では、1台目:ビクトリーロボと2台目:グランドライナーについて、通常の巨大サイマ獣にはビクトリーロボ、ゴレムサイマ獣にはグランドライナーで戦うという棲み分けがなされていたものの、3台目:ライナーボーイの登場に伴うマックスビクトリーロボの出現によって区分けが消滅し、遂には4台目:ビクトリーマーズに乗り換えられています。
 ライナーボーイなど、単独行動可能なAIロボであるにもかかわらず、ビクトリーロボのスーパー合体要員だったことが災いして、ビクトリーマーズ登場後はマーズマシンの運搬役に成り下がってしまいました。

 こういった“途中で出番が大幅に削られる”という弊害を意識してか、『タイムレンジャー』では、5機のタイムジェットが合体して2種類のロボ(α、β)と1種類の戦闘機(γ)になるという新機軸を生み、“巨大ロボは非常時に未来から送られる救援システムである”という番組中の設定もあいまって乗り換えを行いませんでした。
 タイムロボα・βどちらともスーパー合体するタイムシャドウや、6人目タイムファイヤーが操る巨大ロボ:ブイレックスロボが登場した後も、タイムロボの出番はなくなっていません。

 そして、続く『ガオレンジャー』では、ロボ玩具の売り方自体を一変させました。
 それが百獣合体・百獣武装システムです。
 これは、簡単に言うと、ロボのボディを上半身(腹部から上)・下半身(腹部から下)・右腕・左腕と分け、それらを別売のパーツと取り替えることでバリエーションを増やす方式です。
 武器としてしか合体しないガオエレファントや、上半身と下半身が分離しないガオハンターなどの例外的なパーツ分けもありますが、おおよそ五体バラバラ入替方式と思えばいいでしょう。
 これらのパーツを、5人が装備する獣皇剣等にパーツメカ(パワーアニマル)に対応する宝珠をセットすることで選択するわけです。
 一応、1台目:ガオキングはガオレンジャー5人に変身アイテムGフォンを与えたパワーアニマル5体の合体ですが、ほかにも多くのパワーアニマルが登場し、ガオレンジャー達はそれらパワーアニマルを宝珠を使って呼び出すなどするのです。
 コクピットを持たないガオゴッドや、ガオライオンの謎の巨大化に伴う奇蹟の合体:ガオケンタウロス以外のロボは、コクピットであるソウルバードを収納するコアメカが換わることで別のロボという扱いになり、名称が変わります。
 そして、ガオキングの右腕をガオジュラフに換装すると「ガオキングスピアー」になるなど、ロボの基本形は、それぞれパーツ換装することでロボ名+武装名に変わります。
 そして、ガオキングの上半身をガオゴリラに交換して頭部だったガオイーグルを腹部に下ろし、両手をガオベアー・ガオポーラーに交換することで、ガオマッスルという2台目ロボになります。
 この時点で既に共通しているのはガオバイソンとガオイーグルだけですが、更に下半身をガオライノス&ガオマジロに交換することでガオマッスルストライカーとなり、共通するパーツが全くなくなってしまうのです。
 一応、ソウルバードは2つあるので、設定的には後述する問題が発生するものの、ガオキングとガオマッスルストライカー(orガオイカロス)は並び立つことができるわけです。
 ソウルバードの数などの設定を度外視するなら、テレビ登場ロボは、ガオキングスピアー&ナックル、ガオマッスルストライカークロスホーン、ガオハンター、ガオゴッド、ガオケンタウロスという形で、全て並び立たせることができます。
 え? ガオライオンが2体いる? いやまあ、あくまで玩具上可能という話ですから…。
 
 この百獣武装システムは、ガオキングの超合金を持っている人が単品売りのパワーアニマルを買い足しているうちに自然と2台目ロボが揃うという方式であり、しかも単品パーツはガオマッスル、ガオハンター、ガオイカロスとも合体できるため、どのロボ玩具を持っていても、どこかのパーツが画面で活躍していることになり、持っているロボがテレビに登場しないというこれまでの欠点をクリアしました。
 更に、劇場版オンリーロボ:ガオナイトは、パーツ構成上、実質的に劇場版にしか登場しないパワーアニマルがガオコングだけであるため、ガオキングとガオエレファントを持っている人なら、2,000円で新しいロボが揃うというおいしさがありました。
 しかも、スポンサーであるバンダイにとって、ガオコング自体、かなりの部分にガオゴリラの金型流用ができるというオマケ付きで。
 以後伝統になる劇場版専用(初登場)装備は、こういう事情で生まれたのです。
 バンダイがこれに気をよくしたのか、その後、パーツの換装によるロボの別形態は定番化していきます。

 『ハリケンジャー』では、1台目ロボ旋風神と2台目ロボ轟雷神、3台目ロボ天空神の操縦者をそれぞれハリケンジャー、ゴウライジャー、シュリケンジャーと分けることで、最後まで乗り換えを行わせませんでした。
 その上で、それぞれが合体して轟雷旋風神、天空旋風神、天空轟雷神、天雷旋風神になるというパラレルな合体パターンを持たせています。
 このうち天空旋風神は、旋風神の右腕であるハリケンドルフィンを天空神に換装するという合体方式になっています。
 ただし、『ハリケンジャー』での商品展開の要は、ロボが射出するカラクリボールから出現する各種アイテムの方で、轟雷旋風神と天雷旋風神になる際には、それぞれ風雷丸、トライコンドルといったプラスアイテム(合体用補助パーツ)が必要になっていました。

 次の『アバレンジャー』では、腕を他のパーツメカと換装する爆竜コンバインが再び商品展開の中核になります。
 玩具的な目玉は、1台目ロボ:アバレンオーにモーターとギアを仕込むことにより、換装した腕のギミックを稼動させるというものでした。
 これによって、バキケロナグルスによるパンチ機構や、パラサロッキルの鋏の開閉アクションを再現できることになり、自分で動かさなくても武器部分が動くというのがウリになっていたわけです。
 更に劇場版登場のバクレンオー(アバレンオーの金型流用ロボ)がアバレンオーの左腕を奪って右腕に換装して両手ドリルを行ったりといった自由度の高さもあります。
 また、第3勢力ロボ:キラーオーとスーパー合体することでキラーアバレンオーになるなど、作劇的にも幅を広げました。
 ほかにも、2台目(味方側)ロボ:マックスオージャに換装用の爆竜を全て合体させて別バージョン合体:マックスリュウオーになったり、マックスオージャの武器となる蘭フォゴールドやスピノゴールドらをキラーアバレンオーに合体させることでオオアバレンオーにするなど、“2体の巨大ロボのパーツ相互交換による別バージョン合体”という新たな合体パターンも生んでいます。

 ただし、ここでは“操縦者問題”が再浮上しました。

 本来マックスオージャに変形合体するスティラコギャリーはアバレマックス専用メカです。
 ところが、一方で、アバレマックスはアバレッドの強化変身であり、アバレマックスがマックスオージャに乗ってしまうとアバレンオーの操縦者が2人に減ってしまうのです。
 ここでレッドの代わりに、ロボに合体するメカを持たないブラックがアバレンオーに乗ればいいものを、なんとブラックの方がマックスオージャに乗ってしまいました
 この辺には、アバレンオーにはやはりメインの3人を乗せたいというスタッフの考えがあったのかもしれませんが、設定無視も甚だしく、当時ファンから相当叩かれました。

 『デカレンジャー』では、1台目ロボ:デカレンジャーロボの電飾ギミックの関係で換装合体はなく、2台目ロボ:デカバイクロボとのスーパー合体方式に戻り、ついでにデカベースロボとして要塞ロボも復活しました。
 また、5人がパワーアップ形態スワットモードに二段変身するようになったことに伴い、デカレンジャーロボからの乗換ロボとなったデカウイングロボは、スワットモード専用という触れ込みで差別化を図っています。
 もっとも、こちらも作劇上の都合でデカウイングロボをスワットモードを持たない6人目デカブレイクが操縦したりして問題になりました。

 『マジレンジャー』では、『ジュウレンジャー』や『ダイレンジャー』の流れを受け継ぎ、敵方ロボとして登場したウルカイザーのコアメカ:ウルザードをマジキングのコアメカ:マジフェニックスに交換することで、味方ロボ:ファイヤーカイザーにできるという展開をしています。
 商品展開的には、登場する全てのロボの胸部パーツがそれぞれ交換できるという形になっていましたが、さすがにテレビ本編ではそれは行われませんでした。

 今年の『ボウケンジャー』では、1台目ロボ:ダイボウケンはオーソドックスな5台のメカの合体ですが、轟轟武装という腕の換装合体システムを2年ぶりに復活させました。
 しかし、画面的な変化を付けやすく、商品展開にも繋げやすいこの換装合体方式には、実は大きな欠点が3つあります。

 1つは、個別売りとセット売りが店頭に混在するため関連商品が複雑になりすぎることです。
 換装合体を初めてウリにした『ガオレンジャー』では、この傾向が特に顕著でした。
 なにしろ、5人が乗る主なメカ3体:ガオキング、ガオマッスル、ガオイカロスはそれぞれセット売りされているのに、マッスルとイカロスの構成パーツメカはガオキングさえ持っていれば、後は単体売りのパワーアニマルを揃えることでも完成してしまいます。
 一方で、ガオキングを構成する5つのパワーアニマルは単体売りされていません。
 かといって、ガオマッスルのセットを先に買った人がガオキングのセットを買えば、ガオバイソンがダブってしまいます。
 「じゃあ、ガオマッスルの方はストライカーでセット売りすれば良かった」とはならないのが困ったところで、ガオキング、ガオマッスル、ガオイカロスをそれぞれセットで集めれば、結局足パーツが1種類はダブることになってしまうわけです。
 同じように、単体売りのガオジュラフを持っている人がガオイカロスのセットを買えば、ガオジュラフがダブります。
 このように、下手に単体売りパワーアニマルを1個持っていると後でセット売りを買った時にダブるとか、逆に単体売りで揃えようとしたらパーツが2体揃わないなどの問題が発生したのです。
 ロボを全部集めようとした場合、一番いいのは、ガオキングとガオハンター、ガオゴッドだけセット売りで買って、あとはちまちまと単体売りで集めていくということなのでしょうが、これは番組が終了し、商品展開が分かっている現在だから言えることで、当時それを先読みして実行するということは不可能に近いことだったようです。
 ましてや、子供のためにオモチャを買う一般の父母・祖父母にそれを要求するのは無茶というもので、売り場は大混乱したとか。
 この辺りは小売店からかなりの苦情が出たとのことで、バンダイも懲りたのか、以降の作品では単体売りとセット売りのパーツ同士が重複するようなことは極力避けるようになったようです。
 『マジレンジャー』で、劇場版初登場ロボ:セイントカイザーの商品にマジフェニックスのリペイントバージョン:セイントマジフェニックスが同梱されていたのは、この過不足問題を防ぐためでしょう。
 また、『ボウケンジャー』でも、腕に換装するメカはNo.6〜9に限ることで、セット売りと単体売りを合わせて買っても問題ないようにしています。
 問題が出るのは、No.6〜10を単体で買って、なおかつアルティメットダイボウケンのセットを買う強者くらいのものです。

 2つ目の欠点は、下手に換装すると、合体パーツの数が合わなくなってしまうことです。
 『ガオレンジャー』の場合、獣皇剣に宝珠をはめるという操縦システムだったため、一度に操ることのできるパワーアニマルは5体と一応決まっていました。
 百獣武装する際には、基本的に換装するパーツの宝珠を入れ替える(ガオシャークの宝珠をガオジュラフの宝珠と入れ替えることで換装する)などしています。
 ところが、ガオマッスルストライカーでは、ガオバイソンがガオライノス&ガオマジロと入れ替わり、合体するパーツが獣皇剣の数より多い6つになってしまうため、数合わせとしてガオイーグルが外されました。
 商品的には、“いーじゃん、6体合体で”と思っていたかのような構造になっているので、この辺はなりきりとのリンクが枷になったのかなぁ、という印象があります。
 ただ、こんなところに拘りを見せる一方で、ガオキングソード&シールドやガオナイトでは平気で6体合体をしているわけで、設定の不徹底が感じられます。
 
 また、『ハリケンジャー』では、天空旋風神に合体する際にはハリケンドルフィンが余りパーツとなっていますが、旋風神の操縦は各メカのコクピットから行うため、ドルフィンのコクピットにいるハリケンブルーはロボの中から排除されている格好です。
 つまり、操縦者ごと換装合体なのです。
 実際、46話『おせちと三巨人』において、天空旋風神で戦闘中、ブルー:野乃七海がこっそり基地に戻って御前様の様子を窺うシーンがありますが、1人いなくなっても誰も気付かない(いてもいなくても戦力上変化がない)、というよりそもそも操縦者として必要とされていないのはあんまりではないでしょうか。
 ブルーが何らかの理由で戦えないとかいうならともかく、レッド、ブルー、イエローが操縦するノーマルの旋風神よりもシュリケンジャーが加わった3体合体の方が強いというのは、あからさますぎて悲しいじゃありませんか。
 確かに、シュリケンジャーは単独戦闘能力が6人中最強ということになっているようですが…。
 
 この辺の余剰パーツ問題は、『アバレンジャー』では若干解消されます。
 アバレンオーの右腕を換装すると、爆竜トリケラトプスは外れてしまいますが、コクピットはトリケラトプスの内部ではないので、“操縦者ごといなくなる”ということはありません。
 また、腕の換装用メカ達は、マックスオージャと合体してマックスリュウオーになることで、全部揃えれば更なる合体が可能という付加価値を生み出しました。
 今作『ボウケンジャー』でも、ダイボウケンが轟轟武装する際には、外した両腕(ゴーゴードーザーとゴーゴーマリンダイバー)が脚部裏側に装着されることで、余剰パーツにならないようにしています。
 この辺は、合体したビークルのエンジン全ての出力合計がロボの出力となるという設定のお陰で、“くっついているだけ”にならないようにしているのが工夫と言えるでしょう。
 また、10機のゴーゴービークルが全て合体するアルティメットダイボウケンという超スーパー合体が存在するため、前記の設定が単なる言い訳になっていないのは見事です。
 
 ただし、パーツ換装システムが内包する3つ目の欠点は、今作でも解決されていません。
 それは、基本形態が弱く見える&活躍できないことです。
 最初にこのシステムを取り入れたガオキングには、フィンブレードという剣が装備されていました。
 普通なら、何はともあれこの剣を使用した必殺技を持たせるところでしょうが、ガオキングの必殺技は、天地轟鳴(スーパー)アニマルハートというエネルギー砲でした。
 そればかりか、ソード&シールドやスピアーなどの百獣合体が次々登場したため、基本形態のまま敵を倒したことは数えるほどしかありません。
 ダイボウケンも、轟轟剣アドベンチャードライブという必殺技を持ちながら、ゴーゴードリルの登場が4話と早かったこともあって、ノーマルのままでは活躍できませんでした。
 換装した姿で活躍しなければ単体売りパーツメカは売れないわけですから、基本形のダイボウケンで歯が立たない敵が出るのは当然です。
 それ自体は、“No.6(ドリル)以降のゴーゴービークルはエンジンの出力が上がっている”と説明されているので問題ないのですが、せめて基本形でもう少し頑張ってほしかったところで、新型ビークルの登場が早過ぎたと言わざるを得ません。
 これには、ロボとなりきり玩具の連携上、変身アイテムであるアクセルラーの商品に「ショベル、パワーオン!」などの音声が入っているというネタバレの都合から、早い展開でメカをどんどん出していかなければならなかったという事情もあるのでしょう。
 
 あちらを立てればこちらが立たず、といった具合で、どこかを修正すると別の部分に歪みが出るというのは世の習いなのでしょうか。
 『ボウケンジャー』の場合、11話でスーパーダイボウケンが登場した都合で、ドリル以下4つのビークルによる轟轟武装は瞬く間に役立たずになってしまいました。
 まぁ、轟轟武装は、サイレンビルダーとの2台ロボ共闘の絡みで復活したようですが。
 その分、サイレンビルダーは、登場からわずか3週目にして轟轟武装に頼らざるを得ない展開になってしまったわけですが、そうしないと玩具のプレイバリュー的な問題も生じるわけですから、もうどうしようもありません。
 ダイボウケンとサイレンビルダーによるドリル〜ジェットとのパラレルな合体パターンを活かすとなると、アルティメットダイボウケンの出番が削られることになるわけですから、本当にあちらを立てればこちらが立たずといった状況です。
 最強ロボがアルティメットダイボウケンであるという事実は当分変わらないようですから、破綻しないように上手く使い分けていってほしいものです。
 どうせまた新型ロボに乗り換えるのでしょうから、せめてその日までは…。

 → NEXT COLUM

→「気分屋な記聞」トップページへ