仮面ライダーのアイデンティティとも言える、専用バイク。
最近は、変身前後を問わずに、バイクを所有しないライダーも普通に存在しますが、今でも「バイクに乗らずに、仮面“ライダー”を名乗るのはおかしい!」と考える方も多いようです。
『仮面ライダー龍騎』では、「
ライドシューター」という13ライダー共通のマシンがありましたが、そのバイクらしからぬスタイルに拒否反応を示す方も少なくありませんでした。
反面、次の『仮面ライダーファイズ』では、もはやバイクに分別していいのかどうか分からない二輪重装甲車「
ジェットスライガー」がありましたが、こちらは専用バイクを持たないライダー、デルタに「もっと搭乗させて欲しい」という声があちこちで聞かれました。
また、『仮面ライダー響鬼』でも、
当初は自転車に乗るはずだった響鬼(いや、ヒビキかな?)が、それを予測した視聴者の反感を喰らって、急遽バイクに乗ることに変更になったとか。
やはり、仮面ライダーには、専用のスーパーバイクで軽快かつ颯爽と走り回る姿が望まれているようです。
同時に、劇中にバイクが登場するということは、当然玩具の商品展開にも反映されるということで、そちら方面のファンの注目も集まるわけです。
『仮面ライダーカブト』では、放送前から玩具展開でバイクの発売の情報が流れており、可動フィギュアとのプレイバリューを期待されていました。
結局、バイクは「装着変身」ではなく、新ブランド「C.O.R」のサイズに準じたものになったのですが、それでも玩具ファンの興味が薄れることはありませんでした。
今回は、そのC.O.R仮面ライダーカブトの専用バイク「C.O.R.M DXカブトエクステンダー」を取り上げてみます。
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●バンダイ キャストオフライダーマシン「DXカブトエクステンダー」
価格 3,150円(税込) 発売日 2006年3月31日
- DXカブトエクステンダー本体
- マスクドアーマー一式
- 取扱説明書
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●劇中設定
ワームと戦うために組織された秘密結社、ZECTがマスクドライダーシステムと共に、本来の装着資格者用に開発したマシン。
正式な資格者は、エクステンダーを手にする前にワームに抹殺され、現在はZECTのメンバーでないにもかかわらず、カブトに変身する能力を持つ天道総司が、勝手に使用している。
ライダーシステムと同じく、キャストオフ機能を搭載し、普段の
マスクドモードから、フロントカウルを弾き飛ばしてエクスアンカー(突撃棒)を突き出す
エクスドモードにかわることにより、最高時速を900kmまで伸ばすことが可能。
驚いたことにクロック・アップ機能にも対応しており、10話ではクロック・アップ走行時にエクスアンカーを地面に突き刺すことで、ブレーキ代わりにしていた。
また、エクスアンカーを射出する勢いを利用して、空中からのライダーキックを放つことができる。
公式設定では、エクスアンカー自体でワームを突き刺すことも可能となっているが、現時点(4月10日放送分)では、直接の攻撃能力は披露していない。
なお、ベース車は、HONDAのCB1000RR。
まずは通常形態のマスクドモード。
フルカウルのオンロードバイクがモデルなだけあって、結構ボリュームがあって、重量感もなかなかのものです。
撮影用のマシンはマスクドとエクスは別車両(というより、エクスはCG処理)なので、玩具とは細部の形状が変わってます。
ハンドルがタンク側に固定、エンジン部のモールドがオミットされエクスモード時の形状のまま、前輪シャフトの位置、そしてエクスアンカーを収納する都合上、リアウインカー下部に、実車にはない黒いカウルが追加されてます。
それでも、これらの相違点は、実車のイメージをさほど損なうものになってません。
ボディーの厚みに対して、フロントカウルは低めに設置されてるので、ちょっと押しつぶされたような印象を受けますが、この辺は玩具的な解釈なのかもしれません。
むしろ外見の見栄えを著しく損なっているのは、各所でさんざ話題になってるシート部のフィギュア固定用ジョイントと大きすぎるステップでしょう。
こちらについては、後述します。
リアフェンダーの左のウィンカー部がスイッチになっており、これを押すことでエクスモードが姿を現すわけです。
では、キャスト・オフ!!
TVでは無数に分離して飛散するフロントカウルですが、玩具では左右二分割のみ。
とはいえ、フィギュアのC.O.R同様、パーツは結構な勢いで飛んでいきます。
同時に、ガソリンタンク下部に収納されたエクスアンカーが、二段スライドで飛び出します。
内蔵されたスプリングがスイッチで反応する、という単純な仕組みながら、瞬間的にまったく違うフォルムに変わるのはお見事。
最後にフロントタイヤを手動で左右に開き、フロント部の車高を下げれば、エクスモード完成です。
変形後は事実上3輪になるので、転がし走行も可能。
ライダーモード時ではどうしても傾いてしまうため、ステップが床を傷める恐れもありますが、エクスモードはそんな心配はありません。
後輪のホイールがダイキャスト製なので、走行はかなり安定してます。
C.O.Rカブトの時よりも、手動で行う行為が多いのが残念ですが、それでもスイッチ発動の変形ギミックはなかなかに楽しませてくれます。
これ単体でも、十分遊べる玩具にはなっています。
ただし。この「DXカブトエクステンダー」に求められているのは、単体でのプレイバリューだけではないのです。
そう、玩具ファンの最大の興味の焦点は、「果たしてこれに、可動フィギュアをきちんと載せられるのか?」という部分です。
先にも書いた通り、発売前の先行情報で「同規格のフィギュアはC.O.Rの方」という事は、耳の早い方々には既に知れ渡っていました。
ところが、その後の情報で「C.O.Rは脇が開かず膝は非二重関節で、可動範囲にかなりの制限がある」事が明るみになり、ファンの期待は一気に不安へと変わっていきます。
オンロード車にふさわしい前傾姿勢で搭乗させようとしたら、足は正座、とまではいかなくとも、かなり曲げる必要があるからです。
ああ、せめて、装着変身の規格で商品化してくれれば…
いや、「もしかしたら、規格はともかく、実際には装着も搭乗可能ではないか?」
「これまでの商品も、実際の商品とのミスマッチはあったじゃないか! 案外、上手い具合に装着変身にマッチするかも… 」
とまあ、こういう“万に一つの奇跡”に期待する方も決して少なくなかったのです。
が、そんな淡い期待は、商品の画像が出回った瞬間にもろくも崩れ去りました。
なんと、その画像にはシート部にフィギュア固定用の巨大なジョイントパーツが、そして両サイドにはこれまた巨大な受け皿タイプのステップがデン、と写っていたのです。
…いや、あの。
もしかしてこれって、「このバイクにはふぃぎゃーはまともには乗せられないよ」っていう断固たる意思表示ですか?
この、明らかに外観を損なうパーツの存在のおかげで、購入意欲を大幅に衰退させられた方も多かったようです。
…とまあ、発売前から不満タラタラだったバイクとフィギュアの絡みなのですが、実際の比率はいかがなものか?
「DXカブトエクステンダー」には、C.O.Rカブトはマスクド&ライダーの両フォーム状態で搭乗させることができます。
が…、画像を見ていただければ分かりますが、どちらのフォームで乗せても、バイクがどうにも小さく感じられます。
特に、マスクモード+マスクドフォームのライディング姿は、まるで丸太にしがみついた熊みたいな感じ。
細身なライダーフォームの方は、それほどミスマッチ感はありませんが、エクスモードは劇中では(CG処理のため) かなり大きく見えるので、違和感ありありです。
しかも、わざわざついてる固定ジョイントは、フィギュアのヒップ部のネジ穴に接続するようになってるのですが、径がまったく合わず、保持力は殆どありません。
「こんなジョイントが本当に必要だったのか?」
保持力がない接続パーツなど外観を損なうだけですし、さらにこれさえなければ、ぱっと見、装着変身ならサイズ的にほぼ合致しそうです。
そんな疑問を感じた方々の多くは、当然のごとく自力でこの問題を解消すべく、一つの結論を見出します。
そう、要らないものは、取っ払っちまえ!! と。
このジョイント自体は取り外し式ではないのですが、エクステンダー本体のネジを外してバラす事で、除去することが出来ます。
(但し、本体を分割する際に中のスプリングが飛んで紛失したり、ネジ山をなめる恐れがありますので、玩具の分解に慣れていない方には、お勧めしません)
ついでに、ステップも内側からネジ止めされていますので、これさえ外せば取っ払うことが出来ます。
ステップがないとバイク単体での自立は出来なくなりますが、その場合は必要に応じて両面テープで補強すれば、ステップは着脱可能になります。
これなら、装着変身を乗せることも可能です。
実際には、装着フィギュアよりもエクステンダーの比率の方が大きめなので、ジャストサイズ、とは行きません。
特にバイクの横幅がかなり厚い割に、フィギュアが細身なため、ライダーフォームでは貧弱な印象を受けます。
ただ、なまじバイクが大きい分、搭乗の際はいかにもオンロードバイクらしい前傾姿勢を取ることが出来ます。
さらに、下半身は太股がタンクの窪み(ニーグリップ部分)にきちんと当てられるし、つま先がギアのモールドの部分(つまり、本来のステップが存在するであろう場所)に設置できるおかげで、ライディングポーズはC.O.Rよりも様になっています。
当然、エクスモードとの絡みは、断然装着サイズの方がしっくりきます。
「バイクがビッグサイズなのは、それはそれで迫力があるし、小さいよりは断然いい!」と割り切る方には、DXエクステンダー&装着変身の組み合わせはかなりツボ、なようです。
本部長的には、C.O.R&DXエクステンダーのミスマッチも、マスクドモードに限って言えば、玩具的な味があって嫌いじゃないんですけどね。
さて、ここで一つの疑問がわいてきます。
「この役に立たない固定用ジョイントは、一体何のためについているのか?」
前のコラムにも書いたとおり、C.O.Rの可動範囲では、前傾姿勢を必要とされるエクステンダーに搭乗させようとすると、どうしてもシートとヒップの間に隙間が出来てしまいます。
本部長は最初、「これは固定パーツを装って、実はシートの高さを調整するために付けられたのではないか?」と思っていました。
が、その後、「ある方」から面白い意見を頂いたので、こちらで取り上げてみます。
その、「ある方」というのが誰なのかは大体見当つくと思いますが。
以下は、裏付けのないあくまで「憶測」だという事を最初にお断りしておきます。
このジョイント、実はフィギュアの腰を浮かせて、バイク搭乗時にキャスト・オフを発動できるために仕込まれてるのではないでしょうか?
実は、ジョイントを外した状態で、C.O.Rカブトを搭乗させると、シートとヒップの隙間は少なくなり、上半身も若干前傾姿勢になるのです。
それをあえて、ジョイントを付けることで上半身を起こしてるのは、バイクに乗せたままの状態でもカブトゼクター部(スイッチ)を押しやすくするため、また飛散する前面パーツがバイクに干渉しないようにするためと考えればなんとなく納得できるのです。
そう考えれば、エクステンダーのフロントカウルが妙に低いのもうなずけます。
実際には上半身を起こしても、カブトのフロントアーマーに指が干渉しないようにスイッチを入れるのはコツが必要です。
それでも、ジョイントを外して搭乗させた状態と比べれば、キャスト・オフは格段に行いやすくなります。
もちろん、現時点で「カブトがバイクの上でキャスト・オフ」なんてシーンは出てきてませんし、今後もこのような演出がなされるとは断言できません。
しかし、玩具の遊び方は、必ずしも劇中シーンに沿ったものだけとも限らないのです。
特に、本来の購買ターゲットであるお子様方は、与えられたギミックで可能な限りの遊び方を模索する事でしょう。
そんな子供たちが、「カブトフィギュアをバイクに乗せたままキャスト・オフ」や「バイクとライダーの同時キャスト・オフ(こちらは、さらにコツが必要)」なんて遊び方を思いついてもさほど不思議ではありません。
何しろ、開発スタッフの口から「ディスプレイフィギュアである前に、玩具である」という発言がされているくらいですから、プレイバリューのためなら、外見を犠牲にするようなギミックを付けることも厭わなかったのではないでしょうか?
この処置が必ずしもGJだった、とは言いがたいですが、少なくともこの余計なパーツが、何の意味もなくついているとはちょっと考えにくいんです。
ステップがトレイタイプになってるのは、安定性重視かな?
C.O.Rの足の裏は偏平足だから、バータイプのステップだと引っ掛かりがないでしょうし。
「DXカブトエクステンダー」は、それ単体でも遊び甲斐があり、また若干の改造が必要とはいえ、2タイプのフィギュアと絡ませられるという、意外なプレイバリューを持った商品です。
その反面、ビジュアル面には問題が目立ち、余計なパーツの存在や、本来の適合フィギュアとのミスマッチ等の欠点も抱えています。
近年の変形マシン玩具の殆どが、ディスプレイモデルとしてもある程度の水準に達していることを考えると、いくらプレイバリューが高くとも、総合的な評価は厳しくせざるを得ません。
ともかく、長所、短所含め、かなり個性的な玩具であるのは、間違いないでしょう。
また、同時発売されたもう一台のマシン、「C.O.R.M DXマシンゼクトロン」も、やはりエクステンダー同様、ビジュアル面での問題を抱えている上、劇中設定同様、キャスト・オフ機能は持ち合わせていません。
「それじゃ“C.O.”R.Mじゃないやん!!」というツッコミをよそに、“バックパック開閉でミサイル発射”“前輪の回転に連動してフロントカウル下のキバが可動”と、プレイバリューも大幅にダウン。
…その前にこのギミック、TV朝日の公式HPにも発表されていないんですけど。
いずれにせよ、現時点では本部長は購入する気になれません。
今後気になる点は、キャスト・オフ機能が、肝心の本編でどのくらい効果的に使われるか、でしょうね。
なんせ、カブト自身がとても強いライダーとして描写されてますから、現時点ではマシンを使った攻撃が必要となるような場面は、そう何度も出てきそうにありません。
金銭的に苦しい時期に無理して購入した本部長としては、今後、思いっきり魂燃やしてくれて、なおかつ玩具で再現可能なシーンの登場を切に望んでいます。
せめて、アギトの“マシントルネイダースライダーモード”よりは活躍させて欲しいものです。
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