DVDレコーダーで泣いた日
後藤夕貴
更新日:2006年4月20日
 前回、鷹羽飛鳥氏が書いたコラム同様、筆者・後 藤夕貴の所でも、DVDレコーダーにとんでもない問題が発生した事がある。
 これは、後のユーザーのために記す、血と涙の記録である。

 このページを読む人達よ。
 我々の犠牲を無駄にするな!

 2004年7月に、筆者は東芝のRD-X4という機種を購入した。
 これは、当時の東芝のフラッグシップモデルで、250GBの大容量HDDに加え、充実した編集機能を搭載し、初心者からマニアまで満足させる性能を持つ、素晴らしいものだった。
 その後、さらに高性能な新機種が発売されたが、それでもこの機体の編集機能はまだまだ使えるもので、同等の性能を持つ他メーカー製品は、いまだにほとんどないらしい(あくまで筆者が聞いた限 りの情報では、だが)。
 ちなみにRD-X4は、特定の方法でさらに性能向上を図る事が出来、RD-X4EXという別物にする事が可能だ。
 …が、色々な諸問題があり、筆者はEX化をあえて行っていない。
 というわけで、以降はすべて「ノーマルのRD-X4使用時に発生した事態」としてとらえていただきたい。

 2005年10月某日・土曜の朝。
 時間は午前7時二十数分頃。
 いつもなら、「ウルトラマンマックス」の予約録画準備のため、DVDレコーダーの起動音が聞こえてくる…筈だった。

 だが、聞こえてきたのは、なぜかエラー音。

 RD-X4は、DVD再生モードとHDD再生モードがあるが、普通に番組を録画する場合、モードをHDDにしたままで電源を落としておかなくてはならない。
 もし、DVD再生モードのままで電源が切られていて、その上でHDDへの録画がスタートしようとすると、エラーが表示される(この場合でも、録画はちゃんと実行されて問題にはならない)。
 筆者は、てっきりそのパターンだと思い、二度寝に入ろうとした。

 が、よくよく考えると。
 夕べ録画内容の編集をしていた時点で、DVD再生モードにはしていなかった筈。
 つまり、録画開始時にエラー音が出る筈がないのだ。
 すると、さっきのエラー音は?!

 嫌な予感に駆られ、慌てて確認してみると、想像を絶する展開になっていた。
 いや、ウルトラマンマックスの内容じゃなくて。

 画面には、「HDDに異常があり、録画が実行できません」といった内容のエラーメッセージが表示されていたのだ。
 言うまでもなく、ウルトラマンマックスの放送は全然録画されていない。

 即座に、レコーダーの録画内容を確認。
 しかし、HDD内には録画データがない。
 一つもないのだ!
 前日、丸一日かけてチャプター編集した筈の、70時間オーバーにも及ぶデータがあった筈なのに、それらが完全に消滅していたのだ!

 茫然自失状態の中、出来る限り状況を確認し、データ復活の方法をネットで摸索。
 その結果「録画データそのものは消えていないが、それらの読み出しが不可能な状態になっている」事と、「この状態からの復旧例が過去にない」事が判明。
 どうやらこれは、パソコンでもよく発生する「管理フォルダの破損」によるものらしいが、復旧が出来ない以上、もはや消えたも同然である。
 だから、HDDの内容をリストとして表示するモードでは、しっかり表示される。
 だけど、もはやこれは「消える直前まで何が録画されていたか」を確認する程度にしか用を成さない。
 どうしようもないという現実を突きつけられ、筆者は、立ち上がれないほどの精神的ダメージを受けた。

 この、突然HDDの中身が読み出せなくなる現象について調べたが、どうやら、何の前触れもなく突然起こる事のようだ。
 筆者は、デッキ購入後約1年と3ヵ月後に発生したわけだが、中にはたった半年で発生した人も居るという。
 しかも、どうやら使用頻度ともあまり関係がないらしい。
 要するに、いつ爆発するかわからない爆弾みたいなものなのだ。
 さらに調べてみると、この現象は他メーカー機種でも発生するようで、先の鷹羽飛鳥氏の例も、この一種だと言える(そして、むしろあの程度で済んだなら幸運だったわけだ)。

 この状態は、HDDを初期化しなければ復旧しない。

 DVDレコーダー内のHDDを一度取り出して、これをパソコンに接続、内容データを吸い上げて、初期化したHDDに戻す方法も考えたが、吸い出したデータを再認識できる保証がない事と、この作業のためにさらに新規のHDDを二基用意しなければならない事が判明し、やむなく断念。
 断腸の思いで初期化するが、予想に反して作業はほんの一瞬で終了。
 「こんな…こんなちょっとの時間で、俺様が散々苦労して仕上げた編集結果が、すべて消滅しちまったのか!」と、心の中で叫ぶ。
 その後、一応問題なく現在に至っているのだが…本当の問題は、むしろここから発生した。

 この一件により、録画済みだった約180前後の録画タイトルと、その編集に費やした時間・労力・電気代(セコっ)がすべて水泡に帰したのだ。
 ちなみに、筆者は一つの番組をオープニング・各パート・予告・エンディングにチャプター分けし、オープニング前のジャンクションがあればそれも切り分けている。
 さらに、それぞれにチャプターネームを設定、加えて番組タイトルとサブタイトルを全て入れ、話題性の高い放送回などには注釈を書き込んで記録する。
 そんな作業をすべての番組に行うため、40タイトルも編集すると、休みがほぼ一日潰れてしまうのだ。
 180タイトルというと、それが四日分。
 愕然としない方がどうかしているだろう。

 また後にわかったのだが、全話録画するつもりだった番組…実に12ものタイトルが「中途切れ」していた。
 中途切れというのは、全話録画するつもりだったタイトルの中に、録り漏らしが入ってしまう事。
 消失事件が起こる前、いくらかDVDメディアに逃がしていた、“まだ全話終了していない物”を確認した結果である。
 そのタイトルの中には、再放送が難しい&再放送が開始されても、該当話数に達するまでに時間がかかりすぎる物も多く含まれている上、番組が始まったばかりのものまである。
 筆者は、番組初期数話を録り逃し、或いは大き過ぎる穴を空けてしまった場合、たとえどんなに思い入れのあるタイトルであろうとも、その続きを録らない事にしている。
 結果、約5タイトルほどの新番組が完全消滅。
 唯一、「新・必殺仕事人」だけは、ビデオデッキ時代に標準録画していたもので補完が利く事が判明し、現在も継続録画している。
 しかし、喪失した物があまりに大きすぎたため、筆者は、DVDレコーダーで録画を続けていく事に対して懸念を抱くようになってしまった。
 いやマジな話、これを機会にDVDレコーダー自体を買い換えようかとも考えた程だ。
 その後、これは結局どのデッキでも起こりうる事態だという事を思い返し、そのまま継続利用する事に。
 その後は、録画するだけして、編集はおざなりという状態が2ヶ月ほど続いた。
 また、録画する番組タイトルも激減した。
 編集しても、もしまた消えてしまったら…という懸念があったため、どうしても作業に移れなかったのだ。

 年末が近づいた頃、さすがにそろそろなんとかしないと、と思ってDVDレコーダーの中身を見たら、なんと…録画時間は合計100時間を超過していた!

 その後、編集しては焼き出し、編集しては焼き出しを繰り返し、50枚スピンドルのDVD-Rをいくつも潰し、なんとか残り30時間まで減らす事に成功。
 この時点で、DVDレコーダーについてのあらたな問題に気がついた。

 よくよく考えれば、このDVDレコーダーというものは、「エラーチェック機能」や「最適化機能」がない。

 HDDは、データの書き込みや消去が何度も行われると、その領域内に細かなエラーが発生したり、或いは断片化したデータが無数に散らばってしまったりする。
 そしてこれらは、いずれHDDの運用に支障を来たす場合がある。
 これを抑えるため、パソコンのOSには「ドライブエラーチェック」「最適化」という機能が備わっている。
 これの存在を知らず、或いは知っていながら利用しなかったために、マシン環境が悪化してしまったという人も多いはずだ。
 DVDレコーダーの場合、こういった機能がまったくないため、HDDは書き込み・消去が連続で行われるだけとなり、エラーの要因だけが積み重なっていく。
 それら細かなエラーが、必ずしも今回のような大問題の発生源になるとは断定できないが、あまりよろしくない状態なのは間違いない。
 HDDの中にゴミが溜まるようなものなのだから、これを一掃するには、DVDレコーダーの場合初期化するしかない。
 という事は、HDDの状態を健全に維持するためには、適度に録画内容をすべて吐き出し、初期化する必要性が出てくる。
 …のだが、果たして何人の人が、そんなしちめんどくさい事をするだろうか。
 超人的に几帳面な人か、神懸り的に用心深い人でもない限り、まずやろうとはしないだろう。
 なんとなく、必ずと言っていいほどエラーが発生する状況が理解出来てきた。
 ひょっとしたらDVDレコーダーというものは、一台を十何年も使い続けるようなものではないのかもしれない。

 ――などという思考はひとまずおいといて。

 とにかく、一度HDDの中身が消失してしまうと、言い様のない虚無感と悔しさに襲われる事は間違いないようだ。
 少なくとも、すぐにひらき直れる人は、そうざらにはいないんじゃないかと思う。
 筆者の場合は、それが引き金になって結局以前より沢山録り溜めてしまうという状況に陥ったが、それよりも何よりも、一番まずいと思わされた影響は「入念な録画チェックをしなくなってしまった」という事だ。

 筆者の場合は、ほとんどがスカイパーフェクTV(CS放送)からの録画となっている。
 毎月末近くになると、スカパの会社から次の月の放送内容一覧をまとめた専門雑誌が届けられる。
 自分が契約しているチャンネルのページを開き、録画する物・多分録画する物・録画を検討する物のすべてに丸をつけておく。
 その後、毎朝雑誌を開き、その日にやる番組をチェックし、スカパのチューナーに予約を入れる。
 DVDレコーダーには、一切何もしない。
 予約時間になり、チューナーが自動的に動き出すと、接続されたDVDレコーダーに自動的に電源が入り、録画を開始する。
 放送が終わり、チューナーの電源が切れると、DVDレコーダーも電源が切れる。
 いつも、この「連動録画機能」で、番組を録画しているのだ。

 先の消失事件以降、なんとなくこれが面倒になり、一回でまとめて数日分の予約を入れるクセがついてしまった。
 しかし、うちのチューナーは旧型のため、最大16件しか予約が出来ない。
 対して、2006年3月現在、一週間内に録画する番組数は30件。
 しかもこれは、一回きりの映画や特別番組、また衝動的に見たくなった番組などは一切含んでいない。
 かなり切り詰めた状態でもこんなもので、消失事件以前は、最大50件近く録画していた事もある。
 だから、物理的にすべての録画を一度に行えるはずがない。
 結果的に、一週間中に何回か予約をし直すわけだが、時たま、予約し終えたつもりで穴を空けてしまうケースがやたらと多発するようになってしまった。
 これは、あくまで筆者の場合の話だが、とにかく、まめにチェックする気力が失われてしまったのはイタイ。
 あれから半年近く経つが、いまだに傷が癒えきってないような気分だ。
 その後、HDD消失で空いた穴を埋められたのは、たった数件程度に過ぎない。

 ああ、ウルトラマンマックスの懐かし怪獣編、ごっそりなくなっちまったもんなあ…CSでやるのいつだよ…

 なお、ここまで読んで「アホか! HDDにいくら貯められても、録ったものは即編集・即保存が基本だろうが!!」と唱える人が居るだろうが、残念ながらそれはまったくお門違いの意見だ
 それはあくまで「理想」に過ぎず、誰もが常に行えるものではない。
 人の生活スケジュールや録画映像のまとめ方などの都合で、どうしてもすぐにDVDに焼き出せない場合がありうる。
 筆者のように、失意に暮れたとはいえ無駄に溜め込んでしまうのはもちろん論外だが、几帳面な人でも、やむなく貯め続けてしまい、その結果被害に遭う事は充分にありうる筈だ。
 事実、前回の鷹羽氏はまるっきりそのパターンだった。
 そういう点を理解せず、安易に「バカだよなあ」などと陰口を叩くのはいかがなものかと、筆者は思う。

 まあそれ以前に、使い方なんか人それぞれなんだから、「わかっててもベストな手段が取れない」ケースが多々ある事など、普通なら容易に想像出来るはずなのだが。

 多少脱線するが、「連動録画機能」についてピンと来ない人も多いだろうから、補足説明しておこう。

 これは一部の機種にある特殊機能で、特定の外部入力端子に信号が入ってくると、それに反応して本体の電源が入り、自動的に録画を開始するというものだ。
 意外に便利なのだが、「番組情報を録画データに反映できない」「時間設定によっては前後が切れかねない」「地上波録画の予約とかちあうと大変」「うかつに信号発信元の電源を入れられなくなる」という欠点がある。
 特に筆者の場合は、連動録画機能がスカパのチューナーと直結しているため、スカパだけを見る場合はいちいち連動録画機能をオンにするスイッチを切らないとならず、また予約時間にスイッチを入れ忘れていると、みすみす一本見送ってしまう事になる。

 と、これだけのデメリットがありながらも、連動録画機能を使い続けているのには訳がある。
 まず、DVDレコーダー側とチューナー側の両方で予約をするという手間が省ける事が大きい。
 また、片方が録画予約し忘れた場合のリスクがない。
 それに、何より一度に処理できる予約数が段違いになる。
 加えて、番組情報をすべて一から入力し直している筆者のようなタイプの場合、ネットワークを利用した番組情報登録は邪魔者以外の何物でもないため、空白状態で登録されるのがありがたいのだ。
 そして最大のメリットは、一度電源が入ると、録画開始までのタイムラグがほとんどない事。
 これはうちのRD-X4のみなのかもしれないが、これが意外に重宝する。
 とにかく、限られた時間内に最低限の手間で録画予約を成立させるためには、この連動録画機能はどうしても重要になるのだ。

 …が、そんな便利なものにも、難点があったりする。
 それは、予約が終わるたびに一度電源が落ちる事で、再起動する度に分単位のタイムラグが発生してしまうことだ。

 以前、こんな事があった。
 チャンネルNECOで放送されていた「六神合体ゴッドマーズ」。
 4話ずつに分けて一つの番組として放送されたため、16件しか予約できないうちとしては大変助かった。
 しかし、この番組、なんと終了予定時刻と実際の番組の終了時間の差が、一分未満だった。
 そのため、必ず4番目の話数のエンディングが切れてしまうという事態に陥ってしまった。

 どういう事か詳しく説明しよう。
 筆者は、内容が削れる事を防ぐため、いつも放送開始一分前から予約をしておく。
 そうすると、連続放送される場合は終了予定時間より二分早く終わらせなければならない。
 たいがいの番組は、CS番組表の放送終了予定時間よりも少し早く終わり、二分間前後くらい同局のCMを流すのが定番だ。
 
 ところが、この「六神合体ゴッドマーズ」の場合、この余裕が二分を割ってしまっていた。
 という事は、例えば10:00に終了予定、続けて次の回が始まるというプログラムの場合、前番組を9:58終了、9:59次番組予約開始、という設定に出来ないわけだ。
 しかも、DVDレコーダーは58分と59分の間に電源オフ→再電源オンを行うため、どうしても連続録画が出来ない。
 連動録画機能を使う限り、他に選択肢も対策もないのだ!

それでは、その放送分だけ連動録画じゃなく、両方で予約をすればいいんじゃないか、と思われる人もいるだろうが、それは不可能。
 なぜなら、それをやるためにはDVDレコーダー背面部の配線を外し、別な外部入力端子に元々刺さっている別機器の配線と入れ替え、さらに録画予約をするという手間をかけねばならない。
 また、一度電源が切れてくれないと、一つのタイトルに複数の放送番組がまとめられてしまい、オリジナルタイトルの時間が増長。
 こうなると、編集時の話数区分やチャプター分けが、凄まじく困難になってしまうのだ。
 まして、今回の事故は、すでに放送が終わって時間が経ってから初めて気付いたものだった上、三回目の放送からは、この問題が改善されていたのだ。
 これでは、対処のしようがない。
 完全な、八方手塞がり状態だったわけだ。

 やむをえず、筆者は終わり際の削れたエンディングのチャプターを切り捨て、他の回のエンディングチャプターだけを抽出、これを一つのオリジナルタイトルに変換した後、合成して補うという形にして対応した。
 幸い、ゴッドマーズはエンディングテロップの内容があまり大きく変わらないため、さほど大きな影響がない。
 もっとも、以前こちらの設定ミスで「必殺仕事人」のエンディングを切ってしまって同様の方法で補完した時は、本当に身を切るような思いだった(注:必殺シリーズはエンディングでキャストとスタッフ情報がまとめて提示される)。
 だってね〜、あたしゃ再放送時にカットされる次回予告を見たいがために、8万もする必殺シリーズ(しかも何度も見直しているタイトル)のLDボックスを、複数買うほどのバカですから(笑)。

 と、こんな不便な部分もあってたまに泣かされるものの、やはり連動録画機能は捨て難い。
 要するに、ものぐさなだけなんだが。

 DVDレコーダーは、ビデオデッキとは比較にならないほど便利である反面、使い慣れれば慣れるほど、当初予想もしていなかったようなトラブルや不具合を知り、どこかで必ず後悔を強いられる。
 しかも、その後悔のほとんどは「あの時こうしておれば!!」という内容のものが多いと思う。

 「あの時、別な機種を買っていれば」
 「あの時、もっと予算を見込んでおけば」
 「あの時、全部内容をDVDに書き出しておけば」
 「あの時、予約確認をしておけば」
 「あの時、出来心でこんな番組を録画しなければ」

  
 貴方もDVDレコーダーを持っているなら、または買う予定があるなら、どこかで泣こう。
 そしてその泣いた理由を他者に伝え、共に情報を交換して問題発生に備えよう。

 DVDレコーダーを使うという事は、過去の犠牲を無駄にしない事と同意義なのである!

 ――さて、と。
 この溜まりまくった110時間越えの録画データ、どうやって編集しようか…

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