便利と危険のはざまに…
鷹羽飛鳥
更新日:2006年4月16日
 HDDレコーダーってお持ちですか?
 ビデオテープの代わりに、デッキに内蔵されたハードディスクにテレビ番組などを記録する機械です。
 もちろん、ハードディスクは本体内部に固定されているので、それだけだと、録画した番組はデッキの中にしか保存されませんから、例えば友達の家に持って行って一緒に見るというような、ビデオテープでは可能なことができません。
 発売当初は、そういう“見たら消す”人専用なのではないかというものもありましたが、現在は、DVD-Rなどの形で番組を録画した“物”を保管できるようにした“HDD内蔵DVDレコーダー”が主流です。
 もちろん、直接DVDに録画することもできます。
 ただ、DVDにしか録画できない、つまりハードディスクを内蔵していないモデルも発売されていたことや、HDD内蔵DVDレコーダーには外部とのメディアの出し入れ口が外見上DVDのトレイしかないこともあって、世間的には「DVDレコーダー」と呼ぶ方が通りがいいようです。
 一昨年のオリンピックを機にかなりメジャーになり、量産効果なのか、最近では当時よりだいぶ値段も下がってきたようです。

 鷹羽の家では、平成5年から使い続けていたビデオデッキが壊れたため、一昨年、パイオニアのDVR-620HSというデッキを買いました。

 買ってみて、凄く便利なことに感動しました。
 何しろ、ハードディスクに一旦全部貯め録りした後、番組ごとにまとめてDVDにできるわけですから、1つの番組ごとのDVDが簡単に作れます。
 各メーカーで呼び方は違いますが、ビデオデッキの標準と3倍速のように、録画レベルがいくつかあり、1枚のDVDに2時間録れるモードと、4時間録れるモードを使い分けるのが一般的なようですので、120分テープと比べても録画時間に遜色はないと言えるでしょう。
 しかも、ハードディスクからDVDへはデジタルダビングができますから、画質の劣化などが起きません。
 連続した番組(例えば、日曜朝7時半からの『轟轟戦隊ボウケンジャー』と、8時からの『仮面ライダーカブト』)でこれをやろうとすると、ビデオデッキの場合、『ボウケンジャー』が終わった直後にテープを入れ替えるという作業が必要になります。
 これだと、『ボウケンジャー』終了後のスポンサー紹介画像から連続している「仮面ライダーカブト、この後すぐ」というジャンクションはどうしても『ボウケンジャー』のテープにしか入りません。
 また、番組放送中に家を留守にすると、テープチェンジができません。
 こうなると、一旦1本のテープに両方録画して、後でダビングして分けるという作業が必要になりますが、これだと画質の劣化が避けられません。
 ところが、HDD内蔵DVDレコーダーでは、両方録画しておいて、DVDにダビングするときにジャンクションだけ『カブト』の方に入れるということが簡単にできます。

 同じように、CMをカットするのも思いのまま。
 もちろん容量に限度はありますが、1つのハードディスクに、色々な番組をごちゃごちゃ入れても、メニューの中であらかじめ特定の番組ごとにグループ分けしておけたり、さらにそれぞれの番組に、話数やサブタイトルなどの名前を付けておけたりするので、簡単に目的の番組を探せます。
 それを利用すれば、例えば1話だけ録り逃していた番組を、その周辺の話数だけハードディスク或いはDVD-RWに残しておいて、再放送の際に録り逃した1話だけ録り直して順番どおりにダビングする、なんていうこともできます。

 こういう魅力を知った人は、もうビデオテープなんか使っていられなくなるそうです。
 いやーね、おたくって。

 とはいえ、いいことばかりではありません。

 HDD内蔵DVDレコーダーは、メーカーや機種によって、使用できるメディアや編集機能なども随分違うそうです。
 例えば、うちのデッキはDVD-RとDVD-RWは使えますが、東芝やパナソニックの機種では使えるDVD-RAMが使えません。
 また、うちのはDVD-RWに直接録画したり、ダビングしたりした番組を自由に編集できますが、メーカーによってはDVD-RWでは編集ができなかったりもするそうです。
 なので、同じようなデッキでありながら、共通点は、
  テレビ番組等を録画できる
  録画した番組をDVDの形で保存できる

といった程度なのだとか。

 当然、同じメーカーのデッキでも、発売時期で機能が違いますから、自分の使っている機種の機能が友人のデッキにもあると思って話をすると、全く通じなかったりします。
 そして、ビデオデッキでは起こりえない、とっても笑えない事故が多発するのもまた事実なのです。
 今回は、そんなお話です。

 『魔法戦隊マジレンジャー』が終了した週の金曜日(2/17)深夜、突如鷹羽の家のデッキのハードディスクがエラーを起こしてしまいました。
 理由はよく分からないのですが、視聴済みでいらない番組を連続で削除している作業中に、メニュー画面から録画済みの番組のリストが消え失せ、電源スイッチも含めて作動不能になったのです。
 やむを得ずプラグを抜いて再起動させたところ、「HDDの情報が壊れているので初期化してください」という表示が出ましたが、メニュー画面を起こすと、番組リストが生き返っていました。
 試しに再生してみると、ちゃんと再生するし、チャプターごとの早送りなどもきちんとできます。
 ところが、「消去」や「チャプター編集」など、再生以外の機能は全く利きません。
 ではデータを逃がそうと、DVD-Rを入れてダビングしようとしても、「この機能(ダビング)は現在使用できません」との表示が…。
 また、再生している番組が終わると、その時点でエラーが起きて作動不能になってしまうことも分かりました。

 なんということでしょう、鷹羽はまだ『マジレンジャー』を1話もDVD-Rに逃がしていません。
 このままでは、せっかく全話録ったのに、全て失われてしまいます。
 ああ、この前『仮面ライダー響鬼』の全話一挙ダビングの時に、一緒にダビングするんだった…。
 あ、そういえば、『ウルトラマンマックス』も、『ウルトラマンティガ(CS放送中)』も、まだ全然ダビングしてないじゃん…。

 ともかく、説明書を見ると、どうしようもないらしいので、その日はしかたなく寝ました。
 翌朝、一番にサービスセンターに電話しようと心に決めて…。
 今夜が土曜日の夜でなくてよかった。
 え? ネットで同種事例を探せばいい? …ショックでそんなこと思いつきませんでした。

 翌朝、当然録れない『ウルトラマンマックス』(バルタン星人後編)を見た後、サービスセンターの営業開始を待って電話しました。
 そこでの答えは、「再生できるなら、ワンタッチダビングは可能かもしれません。それもできなければ、もうどうしようもありません。修理センターに持ち込んだとしても、データを抜き出せる可能性は低いでしょう」との返事。
 しかも、新潟にある修理センターは、土日は営業していません。
 説明書を見ると、「ワンタッチダビング」というのは、再生中、または番組リストで選んだ番組を、ボタン1つで高速デジタルダビングできるという機能でした。
 今まで何のためにあるか理解できなかったのですが、こういう時の切り札になりうるんですね。
 
 『轟轟戦隊ボウケンジャー』の放送開始まであと20時間強、それまでになんとか録画できるようにハードディスクを初期化しなければなりません。

 さて、DVD-Rを入れてワンタッチダビングしようとすると、「ビデオモードではワンタッチダビングできません」という冷たいメッセージが。
 鷹羽のデッキの場合、「VRモード」と「ビデオモード」という2種類の記録方法があって、ハードディスクはVRモード、DVD-Rはビデオモードでしか録画できず、DVD-RWでは両方できるようになっています。
 細かい違いはよく分かりませんが、パイオニア製品の場合、VRモードで記録されたデータでないとチャプター信号を打ち込んだりといった編集機能は使えず、ビデオモードで記録しないと他社のデッキでは再生できません。
 ハードディスクからDVD-Rへのデジタルダビングの際には、VRモードからビデオモードに自動で変換されますが、その逆はできないため、DVD-Rからハードディスクにダビングする場合はアナログダビングになります。
 
 さて、「ビデオモードではワンタッチダビングできません」ということは、どうやらDVD-RWを使えということのようです。
 DVD-RWは何度も録ったり消したりできる分、DVD-Rに比べて随分割高なので、普段鷹羽は買っていません。
 そこで、デッキを買った当初にサービスで付けてもらったDVD-RWを掘り出し、再トライです。
 メニュー画面を出して、ワンタッチダビングしようとすると、「この機能は使えません」との冷たいお答え。
 外出する用事があった鷹羽は、とぼとぼと家を後にしました。
 「ええい、『マジレンジャー』くらい、全話DVDになるんだから、金で済む問題じゃないのよ!」などと自分を慰めるしかありませんでした。
 頭の中では“『マジレンジャー』のDVDって、全話分買ったらいくらになるのかなぁ? 商品CMまでは補完できないんだろうなぁ”と不安が渦巻いていました。
 
 そして、夕方。
 帰宅した鷹羽は、“そういえば、再生しながらのワンタッチダビングは、まだ試していなかった”と気づき、早速試してみました。

 成功!
 どうやら、再生中ならばダビング可能なようです。

 しかも、DVD-RWにVRモードでなら、番組の予約録画もそのままできる模様。
 “昨日のうちに気付いていれば、今朝の『マックス』を録り逃さずに済んだのに…”という後悔はひとまずおいて、必死のダビングが始まりました。
 何しろ、再生している最中の番組しかダビングできませんから、1話ずつ再生しながら、ダビング終了するごとに次の話を再生するという面倒な作業です。
 しかも、番組を最後まで再生するとフリーズすることが分かっているので、テレビの前から離れられません。
 高速ダビングとはいえ30分番組1本につき12分程度掛かるので、10話で2時間、『マジレンジャー』だけで10時間ほど掛かる計算です。
 順序としては、『ティガ』、『マジレンジャー』、前回CS放送で1話だけ録り逃して補完したばかりの『赤毛のアン』、『マックス』、『仮面ライダーカブト』、『牙狼(CS)』、金曜日からCSで再放送が始まる(つまり簡単に補完が利く)『おジャ魔女どれみナイショ』といった順番です。
 ダビングしているうちに、DVD-RWのストックが見る間に減っていきます。
 そりゃあ、普段は買わないんだから当たり前です。
 “出かける前に気付いていれば、帰りにDVD-RWを買ってきたのに…”という後悔が頭に浮かびますが、後悔というのは後で悔やむものだから仕方ないと自分に言い聞かせて就寝。

 とりあえず、『マジレンジャー』の30話までの救出は成功しました。
 ダビング作業が終わるころには、トリノオリンピックで、女子カーリングが劇的勝利を収めていました。
 この時点で、“日に何度か行われる電子番組表の自動ダウンロードの度にフリーズする”ことが分かっていたので、朝7時くらいの段階でプラグを入れ直しさえすれば、『ボウケンジャー』は録れるはずです。

 日曜日。
 仕事に出かける前に確認すると、『ボウケンジャー』は無事録画が開始されました。
 この分なら『カブト』も大丈夫だろうと、安心して仕事に出かけました。
 そして、仕事帰りにDVD-RWを買い、早速続きのダビングを始めました。
 なかなかはかどりませんが、とりあえずこの日は『マジレンジャー』の残りと『アン』、『ティガ』の救出に成功。
 夜遅くなったので、また明日。
 
 翌日、翌々日とダビングを続けているうちに、『マックス』の32話で、とんでもないことが起きてしまいました。
 なんと、再生した途端にフリーズしてしまったのです。
 うちのデッキは、「続き再生」といって、前回再生停止ボタンを押したシーンのコンマ数秒前から再生開始するのですが、『マックス』32話は、番組を最後まで見た状態で終わっていたのです。
 鷹羽は、大抵、番組を見ながらチャプターを打ち込んで、見終わった後にCMカットなどの編集を行っています。
 編集すると、続き再生はリセットされるので、ほかの番組は大丈夫だったのですが、どうやらこの話に限って、編集後に最後まで見てしまっていた或いはまだ編集していなかったようです。
 しかも、普通なら、最後まで見た後は、続き再生になっても、再び番組冒頭に戻るはずなのですが、ハードディスクの情報読み書きができない関係なのか、頑なに停止位置が変わらなくなっていたようです。
 そして、続き再生が番組ラストで、再生が終了した瞬間にフリーズするわけですから、そこでアウト、と。
 あわててプラグを抜き差しし直して、再生ボタンとチャプター巻き戻しボタンを連打して、数回のフリーズの後にようやくダビングできました。
 もちろん、フリーズする度にプラグを差し直しです。
 そうこうして、ようやく『マックス』のダビングも終わり、同じディスクに『カブト』と『牙狼』(どちらも1枚に4時間録画モード)のダビングに入りました。
 2話目でDVD-RWの容量がいっぱいになったと表示されたので、ダビングがちゃんとできたかチェックをすると、ダビングしたはずの番組が入っていない!
 どうやら、『マックス』ダビングでフリーズした影響で、DVDにダビングされたはずの番組をデッキが認識できなくなってしまったようです。
 ここらが潮時でしょう。
 『牙狼』は諦めざるを得ませんが、まぁ、どうしても残しておきたいほどではないので、涙を飲むことにします。

 こうして、なんとか重要な番組のほとんどを救出した鷹羽は、HDDを初期化して、今度はDVD-RWからHDDへのダビングと、HDDからDVD-Rへのダビングという二段構えの遠い道のりに入ったのでした。
 ちなみに、初期化の後で確認すると、『カブト』も『牙狼』の1話も無事録画されていました。
 どうやら、録画はできたけど、認識できなかったようです。
 だったら、残りの『牙狼』も無理矢理ダビングしてもよかったかもしれない…と、また後悔しましたが、後の祭り。
 なんだか、「後悔」の2文字がやたらと頭に住み着いた1週間でした。

 こうして、救出された番組達は3月いっぱい掛かって無事DVD-Rに生まれ変わりましたが、同時に『スーパー戦隊の秘密基地・マジレンジャー』の執筆作業を1か月近くにわたって停滞させてくれました。
 最大の反省点は、やはりDVD-R1枚分貯まったら、すぐダビングという基本を守らないとやばいということでしょうか。
 沢山録画できるということは、万一のことがあった場合、被害も大きいということなのです。

 DVDレコーダーをお使いの皆様、ゆめゆめ後悔することのなきよう、ご注意ください。

 → NEXT COLUM

→「気分屋な記聞」トップページへ