ツンデレ
後藤夕貴
更新日:2006年1月29日
 最近よく目にする「ツンデレ」とは何か。
 このサイトに来る人で、この意味をご存知な方の割合は、恐らくだいたい半分くらいなのではないだろうか?
 今回は、この奇妙な単語について。

 「ツンデレ」とは、「ツンツン、デレデレ」の略で、要するに“最初はツンとした態度だけど、後からデレデレしたキャラに変わる”要素の事だ。
 恋愛系ゲームでは、これが良く用いられ、「ヒロインの第一印象が最悪であればあるほど」効果を発揮し、しかもうまく作用させる事が出来たら、一気にキャラ立ちも成功するという、夢のようなシチュエーションだ。
 ゲームで代表例を挙げろと言われると、筆者はやはり「To Heart」の保科智子が一番に出てくる。
 というか、筆者の中ではもう「クイーン・オブ・ツンデレ」に位置しているのだ。
 「To Heart」に登場するヒロインは、基本的には主人公・浩之に好意的か、あるいは少し距離を置いて接してくる者ばかりだが、智子だけは、唯一露骨に反発的な態度を取ってくる。
 挙句に、ものすごく素直じゃない。
 気の強い部分と弱い部分をバランス良く見せ、つけいる隙をチラつかせたと思って近づいたら、いきなり跳ね除けるようなタイプ。
 そんな智子と仲良くなり、雨の夜、浩之の自宅に泊める展開になってからはもう……お前、さっきまでのツンツンぶりはどこへ消えたのだーっ!! と叫び悶絶したくなるほど、甘ったるいラブラブモードに突入した。
 いやもう、これが膝叩いて悶絶するくらいで。
 鷹羽氏なんか、これでもんどり打ってアパートの壁に大穴開けたくらいなのだ。
 とにかく、この急転直下ぶりは凄まじく、ツンデレの温度差があまりにも激しすぎたため、「メガネ」「委員長」「巨乳」「関西弁」しか特徴のない、ものすごく地味なデザインの智子は、一気に大人気を獲得するに至った。
 いや、ヒロインの好き嫌いはともかく、ツンデレを語る上で、もっとも理想的な描かれ方をしたキャラの一人なのではないかと、マジメに思うのだ。
 無論、そのタイプのキャラクターの出るゲームや映像作品を完全フォローしているわけではないので、さらに上を行くツンデレ星人が居るかもわからないが、とにかくそういう感じだ。

 とりあえず、ここまで読んで未だにツンデレがピンと来ない人にも、ちょいとばかりツンデレ感を味わっていただこう。

 というわけで、突発的にこんなものを用意してみた。

◆例文1
※設定:A→男 B→同級生の女

A「よぉ」
B「何よ、話しかけないで」
A「なんだよお前、俺の顔見る度にいちいち噛み付くなって」
B「あんたがなれなれしく話しかけてくるからでしょ? 
  迷惑なのよ。友達と思われたくないし」
A「あーそうかよ! 悪かったな!」
B「で、何の用よ?」
A「ホレ、お前、定期落としただろ」
B「え?」
A「校門に落ちてた。俺に拾われて良かったな。
  どーせ、定期無くなって途方に暮れてたんだろ、ドジ」
B「よ、余計なお世話よっ!! あんた、なんでいっつも一言多いのよ!」
A「おめーもだろ! ったく、せっかく探してやったのに、礼くらい言えってんだ」
B「…あ、ありがとう…」
A「!」
B「今度、お礼…するから」
A「え? あ、ああ……う、うん」
B「じ、じゃあ、また明日ね」
A「ああ、また…明日、な」

◆例文2(設定は1と同)

A「よぉ、B」
B「何で、私に話しかけるのよ。迷惑だって言ってるでしょ?」
A「いちいちつっかかるなよ。席隣りなんだから挨拶くらいするだろ」
B「そんなの、どうでもいいわよ。馴れ馴れしくされるの、嫌いなの」
A「せっかく美人なのに、ツンツンしてるから損するんだよ、お前」
B「(照)よ、余計なお世話よっ!」
A「で、お礼はいつしてくれるんだよ?」
B「え?」
A「この前言ってたお礼。ま、ホントは期待なんかしてねーけど(笑)」
B「…はい」
A「あ、何、コレ?」
B「お、お弁当…」
A「弁当って…な、なんで?」
B「だってA君、いつもパンか学食でしょ?」
A「そうだけど、なんで、んな事知ってるんだよ?」
B「さ、さあ」
A「これって、まさかBの手作り?」
B「そ、そうだけど…。嫌いなのあったら、残していいから」
A「うお〜、マジかあ! オッケー! 手作り弁当ゲットおぉぉぉ!! 
  ありがとうB! すっげ〜嬉しいぜ!!」
B「ば、バカっ!! 大声出さないでよ、恥ずかしいでしょ!」
A「残すなんてとんでもない! ありがたくいただくよ、マジありがとう!」
B「よかったら、また…」
A「ん、なんだ?」
B「……な、なんでもないわよ! もうこっち向かないでよ。うっとうしいから!」

 お分かりだろうか。
 ものすご〜く要約したけど、だいたいこういう「お前、そこでいきなり素直になるなよ」的な反応をツンツンキャラにあえてやらせて、その落差を楽しむのが「ツンデレ」だ。
 いや、上記ではまだデレデレはしてないけど、ニュアンスは伝わるのではないだろうか。
 ここで、Bの態度の変化に、Aがいつもの喧嘩腰で対応したら、台無しなのだ。
 或いは、巧く使わないと良い効果が生まれない。

 要するに、表面的には嫌っているのに、実は大好き、という「素直になれない感」を愛でるのがツンデレの醍醐味なのだ。

 この「素直じゃねーな、おめー」タイプのツンデレは、物凄く数が多い。
 その中から一例を挙げるなら、筆者は「ローゼンメイデン(&同・トロイメント)」の翠星石(すいせいせき)を挙げたい。

 人形師ローゼンに作られた「人間のように動き、考え、話せる」精巧なドール“ローゼンメイデン”。
 その一体である翠星石は、特殊能力行使の際ブースターとなるミーディアム(契約者)を持たないドールだったが、ある日いきなり桜田ジュン(主人公)の家に飛び込んできて、新たな騒動の種となる。
 性格は極悪・邪悪・腹黒で、覗きと陰口と、同じドールの雛苺(ひないちご)を騙すのが大好き。
 加えてとんでもなく口が悪く、常に誰かにケンカを売っている。
 だが、実はジュンをはじめ、真紅や雛苺などの他のドールの事が大好き。
 そして、本来の彼女達の目的であるドール同士の戦い「アリスゲーム」にも否定的。
 結局は、喧嘩友達的存在だったジュンとの契約を果たし、完全な能力を覚醒させる。

 翠星石は、現状筆者が知る中でも、一二を争うほどのツンデレ代表だ。
 第二シーズン「ローゼンメイデン・トロイメント」の第四話「契約」では、(すでに真紅との契約を済ませている)ジュンと契約したいのに、それを素直に口に出せないため、戸惑い混乱してかえってジュンにきつく当たってしまう様子が、丁寧に描き込まれている。
 また、強がってジュン以外の人間と契約しようと電話ボックスに入り込み、片っ端から見知らぬ人に電話しまくるも、開いた電話帳のページの名前はすべて「桜田」姓だったりと、可愛らしいアホさかげんが楽しめる。
 結局は、同じドールで双子の妹の蒼星石(そうせいせき)の助力と、敵ドール・薔薇水晶との戦闘の影響で契約を果たすが、それまで気落ちしていた翠星石が、突然パワーMAX状態ではしゃぎ回るようになる展開は、もう萌えずにはいられない(笑)。
 第五話「手紙」では、ジュンが真紅といつも一緒に居る事に嫉妬して、ジュンの気を惹こうと掃除や料理を始めようとする姿がいじらしい(もちろんそれらは破壊行為に発展してしまうのだが)。

 とにかく、翠星石は邪悪さ満杯でありながらも、ツンデレ要素で一気に人気を獲得したという、ある意味本作最強のヒロインなのだ。
 今ではもう、すっかり真紅や雛苺を食ってるからなあ…。

 もう一つ、こんな例を出してみよう。

◆例文3
※設定:ABは、それぞれ命を賭けた決闘を繰り返してきた男同士
 現在、AはBの所属する組織に、単身戦いを挑んでいる。

A「B! お前、どうしてここに?!」
B「たった一人でここに来るとは、度胸だけは大したものだな」
A「お前が今倒した奴…仲間じゃないのか?」
B「たまたま同じ組織に居るだけだ。仲間などとは思ってはいない。
  ――俺は、お前と戦えれば、それでいい」
A「B…」
B「こんな奴に、お前を殺せるとは思ってなかったがな」
A「一体、何を考えている?!」
B「――まだ先が長い。ほら、行くぞ」
A「な、何?」
B「お前との決着は、このアジトを壊滅させてからだ。
  それまで、お前に死んでもらうわけにはいかないのでな」
A「B…。ああ、わかった。行くぞ!!」
 AとB、アジトの最深部へ、共に疾走していく――

 これは、「ツンデレ」という言葉が流行るよりずっと昔からある、「心の通ったライバル同士」の図である。
 敵であるから「ツン」である筈なのに、ある特定の条件下では「デレ(仲間)」となる。
 敵である筈のライバルとの共闘なんて、特撮ヒーロー物やアニメなどでは、絶好の燃え(否・萌え)シチュエーションではないか。
 或いは、本当に和解して仲間になる場合もある。
 「超人機メタルダー」の独眼竜トップガンダーなどは、その好例だろう。

 主役の声優が、女子プロレスラーの某ティー鈴木だったという、ただそれだけのために、世紀の駄作扱いされてしまったOVA「冒険! イクサー3」という作品がある。
 これは、前作「戦え! イクサー1」の正当続編で、かつて素晴らしい決闘シーンを演じたイクサー1とイクサー2を再登場させたが、この時のイクサー2のツンデレっぷりは、もはや歴史に残るほどのものだ。
 ネオスゴールドの力で冥府から蘇ったイクサー2は、なおもイクサー1打倒に燃える。
 しかし、イクサー1はすでに戦線から離れており、再決戦の目処が立たない。
 イクサー1が自分の娘として作り出した、自分以上の潜在能力を持つイクサー3にアプローチするイクサー2。
 イクサー1をあぶりだすため、イクサー3を煽って決闘に持ち込むが、なぜか、以前のような卑劣な手段を用いたり、圧倒的な戦力で叩き潰すことができない。
 まるで特訓でもするかのような雰囲気でイクサー3を翻弄するイクサー2は、倒されても起き上がってくるイクサー3に、嘲笑とは違う微笑みを浮かべる。
 だが、結局はイクサー3を倒してしまう。
 倒れたイクサー3の髪をそっとすくいながら、
「わからん…イクサー1、お前はどうして、こんな娘を…」
と戸惑うイクサー2。

 だがその時、イクサー2とイクサー3をまとめて破壊してしまおうと放たれた、ネオス四天王の一人・ゴーレムのミサイルの雨が降り注ぐ。
 圧倒的火力に大破する決戦場を遠目に、一人高笑いするゴーレム。
 しかし、その背後にはテレポートしてきたイクサー2の姿が…。
「やはり、貴様か!」
「ネオス様の部下は…私だけで良いのだーっ!!」
「――下衆が!」
 ゴーレムの、振り向き様の攻撃を軽やかに交わし、上空からビームサーベルを一閃するイクサー2!
「ば、バカな! 強過ぎ……!!」
 真っ二つにされて大爆発するゴーレムと、それを背に、鋭い眼光を向けるイクサー2。
 あらたに打倒イクサー1を誓うイクサー2だったが…やっぱり、イクサー3はしっかり助けられていた。

 駄作と名高い「冒険! イクサー3」OVA版の中で、筆者が好きな数少ないシーンの一つ。
 このシーンの、(前作を知っている人は驚愕するだろう)イクサー2の態度は、まさにツンデレの王道である。
 いやあ、ゴーレム爆砕と同時にかかる、新・イクサー2のテーマが、物凄くかっこいいんだこれが!<話題が違う
 これを、戸田恵子のボイスで演じられてみなさい。
 全国数千万人は失禁確定のミリキですぜあーた!
 アンパンマンの中の人でも、こんなカッチョイイツンデレをやっていた事があるのですよ(笑)。

 ツンデレは、やおいでも定番だ。
 というより、むしろこちらの方が伝統としては古いかもしれない。
 なぜなら、元々「男同士の恋愛」という物に対して嫌悪感や違和感を持っているような、反発要素を含んだ相手を無理矢理その気にさせるのが本流なのだから、当然ツンデレ要素は山ほど湧いて来る。
 いや、まあ…和気藹々&最初からラブラブなやおいもありますけどね、そりゃもう。
 反抗的な相手を無理矢理自分のモノにするというシチュエーションは、やおいジャンルの定番中の定番で、かえって男性読者向けジャンルよりも洗練されているといえるだろう。
 特に二次創作系やおいでは、原作ではややつっぱっているタイプのキャラが受けに回され、ツンデレフォーマットを加えられる。
 筆者はあまりやおいには詳しくないのだが、古くは「機動戦士ガンダム」のシャアやガルマ、「キャプテン翼」の若林、「聖闘士星矢」の氷河、「天空戦記シュラト」のシュラトやガイ、「スラムダンク」の流川、「南国少年パプワくん」のキンタローやアラシヤマ、その師匠のマーカーなどは、かなりメジャーな「ツンデレ材料」ではないだろうか。
 その他、比較的新しいところでは、「鋼の錬金術師」のロイ、「ナルト」のカカシ先生、「ガンダムSEED」のアスラン、「テニスの王子様」の忍足侑士、「ひよこ探偵団ムヒョロジ」のムヒョ、「ハリーポッターシリーズ」のスネイプ先生、「頭文字D」の高橋涼介とか……ほらほら、どんどん出てくる出てくる♪

 え、筆者はそんなにやおい本を読んでいるのかって?
 いえいえ、そんな事はありませぬぞニョホホホホ。

 勝気なキャラクターを惚れさせるという演出ベースは、ジャンルを問わず人気がある。
 よくよく見てみると、ここで挙げた例よりもずっと以前から、数多く使われてきた伝統的な手法なのである。
 ただ、最近になってやっと、「ツンデレ」という便利な要約単語が生まれただけなのだ。
 かといって、このツンデレをそこら中で連発したら興醒めだろうし、恋愛シミュレーションのようにヒロインが複数居るタイプのゲームで、攻略対象全員がツンデレだったら、全然面白くないだろう(むしろスタート直後の雰囲気はイジメに近いんじゃないか?!)。

 だが稀に「逆ツンデレ」というのもあって、そちらで人気を稼ぐキャラクターも居る。
 最初は仲が良かったのに、途中から離反してしまう奴等の事だ。
 それはそのキャラの主義によるものだったり、または何かの思惑が生じたためだったりと、種類は色々。
 たたその中にある「好きな人のためにあえて敵に身を売った」みたいなパターンは、かなりの人気を誇る演出だ。
 で、最期に本当の事を話して絶命するとか、ね。
 「仮面ライダーX」の涼子なんかが、これに近いパターンだったなあ。

 ツンデレ。
 ハカイダーもツンデレ、タイガージョーもツンデレ、大文字さとるもツンデレ、真紅ももちろんツンデレ。
 木野さんも北岡弁護士も海堂もジョーカーも、みんなツンデレ。
 仮面ライダー王蛇もツンデレだ(ただしミラクルワールド限定)。

 プロメシュームやデスラー総統だってツンデレだし、ブラックオックスやロゼだってツンデレ。
 おお、アトラスだってアトムにあんなにツンデレしていたじゃないか(アニメ日本テレビ版限定)。

 西村左内、棺桶の錠、助け人の龍や糸井貢、大吉、市松、又右衛門に赤井剣之助、直次郎、死神、蘭兵衛、新次とおせいのコンビ、若、秀、おとわ、お加代、おりくと勇次の親子、新吉、政と竜、壱弐参、山田朝右衛門も、みんなツンデレ。
 特にやいとやは、翠星石に通じるツンデレ感がありますな(嘘)。
 要するに、なんでもかんでもツンデレなのだ(暴論)。

 でも、真のツンデレは、「地球戦隊ファイブマン」に登場した敵幹部・ガロア艦長だと思うのだが、いかがだろうか?
 第26話「九州だョン」を見ていただければ、それを必ず納得していただけることと思う。

 って、オチがこれかよ!!


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